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第9章
357話
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ここが、そうなのか……
プブリウスとかと言う私達を買う貴族の屋敷の門には、2人程見張りが立っていた。
「では、いきましょう」
門に居る見張りに聴こえないくらいの声で呟き歩き始める。
「む? 何だ貴様らは!」
奴隷商と私を含めた獣人達を怪しげに睨み付ける見張り達。
「私は、奴隷商人でございます──プブリウス様に獣人の奴隷をお届けしに参りました」
奴隷商がチラリと私達を見たので、少しの間、頭の布を取り払い、顔を見せた。
「確かに、獣人族だな……よし、確認を取るから少し待て」
そう言って、1人の見張りが屋敷の中に向かったが少しして、直ぐに戻って来た。
「確認が取れたから、ついて来い」
見張りの指示に従い私達は屋敷の中に入る。
高い塀などで囲まれていた屋敷だったが、中に入ると手入れが行き届いている庭が私達を迎え入れる。
「ひ、広いですね……」
キャリは無意識なのか、自身の思っている事が口に出ていた。
庭を通過し、屋敷の中に入る。
「凄いな……」
デグ達の村で住んでいた時の建物とは比にならないくらい、大きさも内装も立派であった。
私以外の者達も、この様な場所を初めて見たのか、しきりにチラチラと周りを確認していた。
「おい、この先にプブリウス様が居る。態度には気を付けろよ?」
「はいはい、重々承知しております」
「プブリウス様が声を掛けるまで頭を上げる事の無い様に頼むぞ」
その事については、既に奴隷商から聞いていた為、問題無い。
大きな両開きの扉を開き中に入る。
そこには、中肉中背の四十代くらい男が椅子に座ってこちらを見ていた。
表情は柔らかく、相手を安心させる雰囲気を醸し出していた。
また、部屋に入って気が付いたのは、部屋内に居る執事やメイドは全員獣人族であるのに気がつく。
「プブリウス様、奴隷を持ってきました」
「おお、奴隷商を貴方は、なんと仕事が早い──予定ではもっと遅い到着と聞いていましたが?」
「はい。ですがプブリウス様が楽しみにしていると思い、昼夜歩き続けました」
奴隷商の言葉にプブリウスは嬉しそうに口元を緩めた。
「そうでした。これは代金も弾まないとですね」
「ありがとうございます」
「いいのですよ。貴方の頑張りに報いたいだけなのですから」
それから、プブリウスは隣に居る獣人に代金を持ってくる様に言った。
「それでは、貴方が連れてきた獣人達を見せて頂きてもよろしいですかな?」
「えぇ、もちろんです──どの獣人も選りすぐりな者達になります」
「ほぅ。それは楽しみです」
椅子に座りながらも、期待が高まっているのか、身を少し乗り出しながら奴隷商が布を取るのを待っていた。
「おぉー」
奴隷商は順番に布を取っていき、その度に少しずつプブリウスの腰が上がっていく。
「おぉー! その女獣人凄くセクシーですね」
リッテの姿を見て興奮する様に見つめる。
その視線に晒されたリッテも、今までの様子とは考えられ無い様なお淑やかな態度でニコリとプブリウスに微笑みかける。
そして、次にキャリの布を取った時もプブリウスは興奮する。
「おぉ……そのオドオドしている姿はそそりますね……」
プブリウスに見られている事に、落ち着かないのか、キャリは両手を胸の前に持っていき、少しでも自身とプブリウスの間に壁を作りたかった様だ。
そして、その後ガルルとググガを見た時は別の意味で興奮していた。
「その2人は戦えるのですか?」
「えぇ、バッチリです」
「なら、アレに出場させましょう!」
アレとは何だ……?
プブリウスの言葉に疑問を持っていると……
「では、プブリウス様、こちらが最後の獣人になります」
「おぉ、そうですか──早く見せて下さい」
「かしこまりました」
そう言って、奴隷商が私に被されていた布を取り出した。
「──ッ!? お、おぉ……」
プブリウスは勢い良く椅子から立ち上がり、呆然とした様子で少しの間、私を見つめていた。
「ど、奴隷商よ……」
「はい?」
「貴方は最高の奴隷商人です……」
プブリウスはゆっくりと、こちらに近づいて来ると、いきなり目の前で膝を折って私の前に跪く。
「私はプブリウスと申します──良ければ貴方のお名前をお教え下さい」
「シ、シクだが……?」
急な態度に、驚き敬語を使うのを忘れてしまった……
「シクさんですね……貴方は本当に美しい……」
「ありがとうございます」
「敬語なんて不要ですよ」
「しかし、私は……」
プブリウスは頭を左右に振る。
「確かに奴隷かもしれませんが、貴方だけは特別です──是非敬語を取り払って私とお話し下さい」
「……分かった」
プブリウスの様子を隣の方で見ていたガルル達は人間族には聴こえない程小さい声で話していた。
「シク様に、何かあったら直ぐにやるぞ?」
「兄貴、任せてくれ──シク様には手を出させねぇ」
「うふふ、私の女神であるシク様に手を出してみなさい……あの男を捻り潰すわ」
「あ、あわわ……み、皆さん落ち着いてください……」
何やら物騒な事を話し合っている様だが、特に何かされる訳もなく、プブリウスは元の位置まで戻り、再び椅子に座った。
「奴隷商よ、貴方は相当優秀な事が分かりました──これからも利用致しましょう」
「ありがとうございます」
こうして、私達はプブリウスの奴隷となった……
プブリウスとかと言う私達を買う貴族の屋敷の門には、2人程見張りが立っていた。
「では、いきましょう」
門に居る見張りに聴こえないくらいの声で呟き歩き始める。
「む? 何だ貴様らは!」
奴隷商と私を含めた獣人達を怪しげに睨み付ける見張り達。
「私は、奴隷商人でございます──プブリウス様に獣人の奴隷をお届けしに参りました」
奴隷商がチラリと私達を見たので、少しの間、頭の布を取り払い、顔を見せた。
「確かに、獣人族だな……よし、確認を取るから少し待て」
そう言って、1人の見張りが屋敷の中に向かったが少しして、直ぐに戻って来た。
「確認が取れたから、ついて来い」
見張りの指示に従い私達は屋敷の中に入る。
高い塀などで囲まれていた屋敷だったが、中に入ると手入れが行き届いている庭が私達を迎え入れる。
「ひ、広いですね……」
キャリは無意識なのか、自身の思っている事が口に出ていた。
庭を通過し、屋敷の中に入る。
「凄いな……」
デグ達の村で住んでいた時の建物とは比にならないくらい、大きさも内装も立派であった。
私以外の者達も、この様な場所を初めて見たのか、しきりにチラチラと周りを確認していた。
「おい、この先にプブリウス様が居る。態度には気を付けろよ?」
「はいはい、重々承知しております」
「プブリウス様が声を掛けるまで頭を上げる事の無い様に頼むぞ」
その事については、既に奴隷商から聞いていた為、問題無い。
大きな両開きの扉を開き中に入る。
そこには、中肉中背の四十代くらい男が椅子に座ってこちらを見ていた。
表情は柔らかく、相手を安心させる雰囲気を醸し出していた。
また、部屋に入って気が付いたのは、部屋内に居る執事やメイドは全員獣人族であるのに気がつく。
「プブリウス様、奴隷を持ってきました」
「おお、奴隷商を貴方は、なんと仕事が早い──予定ではもっと遅い到着と聞いていましたが?」
「はい。ですがプブリウス様が楽しみにしていると思い、昼夜歩き続けました」
奴隷商の言葉にプブリウスは嬉しそうに口元を緩めた。
「そうでした。これは代金も弾まないとですね」
「ありがとうございます」
「いいのですよ。貴方の頑張りに報いたいだけなのですから」
それから、プブリウスは隣に居る獣人に代金を持ってくる様に言った。
「それでは、貴方が連れてきた獣人達を見せて頂きてもよろしいですかな?」
「えぇ、もちろんです──どの獣人も選りすぐりな者達になります」
「ほぅ。それは楽しみです」
椅子に座りながらも、期待が高まっているのか、身を少し乗り出しながら奴隷商が布を取るのを待っていた。
「おぉー」
奴隷商は順番に布を取っていき、その度に少しずつプブリウスの腰が上がっていく。
「おぉー! その女獣人凄くセクシーですね」
リッテの姿を見て興奮する様に見つめる。
その視線に晒されたリッテも、今までの様子とは考えられ無い様なお淑やかな態度でニコリとプブリウスに微笑みかける。
そして、次にキャリの布を取った時もプブリウスは興奮する。
「おぉ……そのオドオドしている姿はそそりますね……」
プブリウスに見られている事に、落ち着かないのか、キャリは両手を胸の前に持っていき、少しでも自身とプブリウスの間に壁を作りたかった様だ。
そして、その後ガルルとググガを見た時は別の意味で興奮していた。
「その2人は戦えるのですか?」
「えぇ、バッチリです」
「なら、アレに出場させましょう!」
アレとは何だ……?
プブリウスの言葉に疑問を持っていると……
「では、プブリウス様、こちらが最後の獣人になります」
「おぉ、そうですか──早く見せて下さい」
「かしこまりました」
そう言って、奴隷商が私に被されていた布を取り出した。
「──ッ!? お、おぉ……」
プブリウスは勢い良く椅子から立ち上がり、呆然とした様子で少しの間、私を見つめていた。
「ど、奴隷商よ……」
「はい?」
「貴方は最高の奴隷商人です……」
プブリウスはゆっくりと、こちらに近づいて来ると、いきなり目の前で膝を折って私の前に跪く。
「私はプブリウスと申します──良ければ貴方のお名前をお教え下さい」
「シ、シクだが……?」
急な態度に、驚き敬語を使うのを忘れてしまった……
「シクさんですね……貴方は本当に美しい……」
「ありがとうございます」
「敬語なんて不要ですよ」
「しかし、私は……」
プブリウスは頭を左右に振る。
「確かに奴隷かもしれませんが、貴方だけは特別です──是非敬語を取り払って私とお話し下さい」
「……分かった」
プブリウスの様子を隣の方で見ていたガルル達は人間族には聴こえない程小さい声で話していた。
「シク様に、何かあったら直ぐにやるぞ?」
「兄貴、任せてくれ──シク様には手を出させねぇ」
「うふふ、私の女神であるシク様に手を出してみなさい……あの男を捻り潰すわ」
「あ、あわわ……み、皆さん落ち着いてください……」
何やら物騒な事を話し合っている様だが、特に何かされる訳もなく、プブリウスは元の位置まで戻り、再び椅子に座った。
「奴隷商よ、貴方は相当優秀な事が分かりました──これからも利用致しましょう」
「ありがとうございます」
こうして、私達はプブリウスの奴隷となった……
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