過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
347 / 492
第8章

346話

しおりを挟む
「それでは、ギルさんさようなら」

 グダの言葉と同時に他のゴブリン達が一斉に襲い掛かる。

「──ッここまでか……」

 四方から何十体というゴブリン達がギルに攻撃する為に距離を詰めて来ている。

 手に持っている巨大なハンマーで攻撃したとしても、恐らく防がれる事は目に見えている。

 しかし、タダで殺される程、諦めの良い男では無いギル。

「うむ。せめて少しでも道連れにしてやる」

 武器を構え、最初に到達する者に向けて全力の一撃を放とうと決心するギルの姿に少なからず、ゴブリン達も恐怖を覚える。

 しかし、ゴブリン達は攻撃の手を緩める事なく、一人目のゴブリンが短刀を握りギルに向かって攻撃を仕掛けた。

「お前はワシと一緒に逝けッ!」

 ハンマーをフルスイングして、飛び掛かる様に攻撃をして来た者に直撃させる。

 流石は、小型を一人で倒せる程の実力を持つだけあり、直撃したゴブリンは仲間を巻き込みなが吹き飛ばされた。

 しかし、相手は確実に自分達の役目を遂行していた。

「仲間の敵だ、死ね」

 ギルが武器を振り抜いた直後を狙う様に三人のゴブリンが短刀を突き立てる様にして攻撃する。

「──ふむ。全員逃げ切れるだけの時間は作れたか……」

 誰に問い掛ける訳もなく、独り言を呟いたギルは最後の時を噛み締める様にして目を瞑る。

「「「ッ?!」」」

 だが、どうやら最後の時には、まだ早かった様だ。

 いつまで経っても、相手の攻撃が来ない事を不思議に思い、再び目を開けると……

 なんと、目の前には三体のゴブリン達が短刀を押し当てているのにも、関わらずギルの身体を貫けない様子であった。

「……はは、いつ見ても、すげぇ……な」

 ギルは顔を周囲に動かすと、遠くの方で、アトスがこちらに向かって手を伸ばしていたのだ。

「──ッ感謝するぜ、アトス!」

 片手で握り締めていた武器に再び力を込めて、ギルに攻撃してきた三人を吹き飛ばす様にハンマーを振る。

「オラッ!」

 倒す目的では無く、自身から引き剥がす為の攻撃だったので、三体は後ろに吹き飛ばしたが、倒せてはいない。

「まぁ、アトスの助けがあるって言うなら、まだ頑張れそうだな」

 笑みを浮かべるギルを見て、ゴブリン達は無意識に距離を取る。

「グ、グダさん! ど、どうすりゃいい?!」

 三人で一斉に攻撃したのにも関わらず、一切ダメージを負ってない敵に、どう対応すれば良いか迷っている様子だ。

「……貴方……どんな身体をしているんですか……?」

 グダも、今の攻撃でギルを確実に仕留められると思っていた様だ。

「ふむ。それは教えられんな」

 アトスの事を敵に知られる訳にはいかない為、真実を隠すギル。

「まぁ……小型の攻撃ですら、かなり軽減出来るんだから、人間達の攻撃が効かないのも納得だな……」

 ゴブリン達には聞こえない様に、ギルは独り言の様に呟き、状況整理をしていた。

「み、皆さん──とにかくもう一度攻撃しますよ!」

 グダの指示により、ゴブリン達が、また一斉に攻撃を仕掛けて来る。

 しかし、結果は同じであった……

「クッ、どうなっている?!」

 状況が全く分からないゴブリン達は、ギルの事を、何やら異様な者を見る感じで、先程より更に距離を取る。

「グダさん、どうする!?」

 ギルに一切攻撃が効かない為、他に何か手が無いか考えるグダ。

 しかし、ゴブリン達に取っては更に追い討ちを掛ける様な出来事が起きる。

「な、なんだあれ?!」

 一人のゴブリンが指を指す。

 そこには白い光が円状にして、どんどん広がり、少しすると、ギルやグダ達までも包み込む様に広がった。

「一体何が……」

 次から次へと起こる出来事。

「──ッ?!」

 そして、白い光は青い光に変化する。

「ははは、アトスの奴が、また何かをやらかしたか?」

 誰が、この様な事を起こしたかは、見なくても分かる様だ。

「この光に、どんな効果があるかは知らんが、そろそろ反撃させてもらおうか」

「──ッ皆さん、一ノ陣!」

 グダの掛け声にゴブリン達は一斉に武器から盾に持ち直す。

 そして、ギルの攻撃を五人ずつで、防御し、その後直ぐにスイッチする形で他の五人が防御する。

 それは、まるでモンスターとの戦闘方法と同じであった。

「──ッニノ陣!」

 グダの言葉に盾から武器に切り替えたゴブリン達は一斉に攻撃を仕掛ける。

「これは凄い……」

 しかし、どんなに攻撃されてもギルにはダメージが入らない様だ。

「馬鹿な……なんで効かない──ッ一ノ陣!」

 動揺しながらも、的確に指示を出すグダ。

「何で急に……考えられるとしたら……」

 チラリと自分達の足元に目を向ける。

 そこには今も尚、青く光続けている光が目に入る。

「コイツのせいですかね……」

 先程の戦闘で変わった点はそれしか無い……

 更に状況を観察する為に周囲を見渡すが、一体誰が、この光を発生させているかは分かる筈も無かった。

「どうやら、このまま戦っていても部が悪そうです」

 グダは門から退却する人間族達を見て、退却する事を決める。

「皆さん! 今回は引きますよ──一の陣を形成しながら門に向かいます!」

 戦況を冷静に判断したグダはギルの仲間達が集まって来る前に、退却する。

 後を追いたい所だが、グダに走る力までは残っておらず、その場に座り込む。

「ふぅ……なんとか凌いだか……」

 ゴブリン達が立ち去る姿を見るギル。

「こうしちゃ、居られない──仲間をたすけねぇーと」

 こうして、ギルはまだ戦っている仲間達の所に移動するのであった。 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。 同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。 そこでウィルが悩みに悩んだ結果―― 自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。 この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。 【一話1000文字ほどで読めるようにしています】 召喚する話には、タイトルに☆が入っています。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...