343 / 492
第8章
342話
しおりを挟む
「──ッ撃て!!」
エルフの掛け声と共に弓矢を放つ。
撃った先には盾を構えた人間族達が見える。
「俺達も行くぞー!」
相手が、弓矢の攻撃を防いでいる間にドワーフ達が距離を詰めて攻撃を仕掛ける。
「アタック!」
俺のサポートで、相手の盾で防ぐのがキツイ様で、向こうは堪らず距離を取ろうとする。
「ぬはは、先程は失敗と言っていたが、これだけでも十分凄いぞ、隻腕よ!」
次々と相手を倒していくドワーフ達。
確かに、サポートをすれば相手に勝てる……けど、俺がサポート出来るのは見えている範囲だけなんだよ……
周りの木々が邪魔な為、近くの者しかサポートが出来ない事に、悔しい気持ちになりながらも、目の前に集中する。
「ガード!」
俺のスキルで向こうの攻撃は一切効かなくなる。
流石に異常な出来事に相手は何が原因か考える……しかし、俺のスキルが見える筈も無く、またここまで大人数の為、誰が何をしているかなんて分からない。
終始、優勢に戦いが進む。
……ん? なんか臭うな……
先程まで臭わなかったが、今は何やら異臭がする──しかし、その正体が分からない。
そうこうしている内に、とうとう相手を倒す事が出来、一時の平穏が生まれる。
「隻腕よ、お前のスキルは本当に凄い──このまま移動して他の者達を手助けしよう」
「ああ、分かった」
直ぐに移動しようとするが……
「ちょっと待て……」
エルフが止める。
「なにか、臭わないか?」
「ん? ……本当だ、何か焦げ臭さいな」
「もしかして、火事か?」
俺の言葉に皆で周りの様子を見ると……
「──ッな?!」
戦いに集中して気が付かなかったが、周りの木々があちこち燃えていた。
「これは……どういう事だ?」
「恐らく、炎弾だろう……」
エルフの問いに、ドワーフは神妙な面持ちで答える。
「炎弾と誰かが戦っているのだろう。そして、その戦闘中に火が燃え移ったと考えるのが妥当だな……」
ロピ……
ドワーフが言う、炎弾と戦っているのはロピである。
しかし、ロピと別れて、まだそこまで時間が経ってない。
それだと言うのに、もうここまで火が回っているなんて……
「とにかく、移動するぞ──俺達は俺達で出来る事を全力でやるまでだ」
俺達は移動をしては仲間達を助ける。
そんな事を繰り返していると、周りはどんどん炎に包まれていくのが分かる。
「あぁ……我らの村が……」
燃え上がる木々を見ながらエルフ達は悲しそうにしている。
「悲しい気持ちは分かるが、今は仲間を助けるのが先だ──急ぐぞ?」
ドワーフの言葉に頷く様にして先を進む。
……ん? これって……チャンスか?
エルフ達が悲しんでいる中、俺はある事に気が付いた。
……おいおい、ロピの奴、何か秘策がある様な事言ってたけど、これの事か……?
改めて、燃え上がる木々を見て、気が付く。
木々が燃えて、かなり視界が広がった……
そして、エルフ達には悪いが、それは俺に取ったら好都合である。
「はは、流石ロピだぜ……」
ロピはいつも突拍子の無い事を思い付く。
「まさか、邪魔な木を燃やすなんてな……」
俺は、ついクスリと笑ってしまう。
「ん? 隻腕よ、どうした?」
「木々が燃えた事は確かに残念だが、これが俺達に取って状況を改善させるかもしれねぇーぞ?」
ニヤリと笑い掛ける俺にドワーフとエルフは首を傾げるのであった……
俺は自身のスキルについて軽く説明する。
「なるほど……確かに、それならこのまま視野が広がるのは好都合だな……」
「あぁ、既にかなり燃え上がっている。だが一つ問題がある……」
「問題?」
「あぁ、確かに今の時点で、結構視野が広がった……しかし、これでもまだ見え辛い事には変わりねぇんだよな……」
木々が燃えて、視界を遮る葉っぱなどは既に燃え尽きている。
しかし、一番視界を邪魔している木々は未だ健在だ。
その事を説明すると、次はドワーフがニヤリと笑う。
「がはは、それなら俺達に任せろ!」
「ん? 何か策があるのか?」
「あぁ、あるとも。生えている木が邪魔という事だろう?」
コクリと頷く俺。
「ならば、木々を切り倒していけば良いだけだ」
話を聞くと、実に単純な作戦であった。
それは、木を一本一本倒していくとの事だ。
「おいおい、そんな暇なんて無いぞ?」
「大丈夫だ、この燃え上がった木々であれば、根っこも燃えているだろうし、直ぐに切り倒す事が出来るだろう──それも2、3回斧を振れば倒れるくらいにな」
そんなに、軽く切り倒せるのかよ?!
「はは、それに隻腕のサポートが加わればどうだと思う?」
「おいおい、その言い方だとまさか……」
俺は無意識に笑みが溢れた。
「あぁ、そうだ。恐らく想像通り、隻腕のサポートがあれば一振りで倒す事が可能だろう」
ドワーフの案に希望が見え、エルフ達も先程の悲しい表情が一変した。
「なら、直ぐに取り掛かろう……認めたくは無いが、この人間のスキルは強力だ」
「そうだな。隻腕のスキル効果を受ける者は多ければ多い程、この戦争では有利になる」
「そういう事だ。ここで仲間を助けるよりも、木々を切り倒していく方が結果的には仲間達の助けになるだろう……」
こうして、俺達は周りにある木々を次々と切り倒していく事にした……
エルフの掛け声と共に弓矢を放つ。
撃った先には盾を構えた人間族達が見える。
「俺達も行くぞー!」
相手が、弓矢の攻撃を防いでいる間にドワーフ達が距離を詰めて攻撃を仕掛ける。
「アタック!」
俺のサポートで、相手の盾で防ぐのがキツイ様で、向こうは堪らず距離を取ろうとする。
「ぬはは、先程は失敗と言っていたが、これだけでも十分凄いぞ、隻腕よ!」
次々と相手を倒していくドワーフ達。
確かに、サポートをすれば相手に勝てる……けど、俺がサポート出来るのは見えている範囲だけなんだよ……
周りの木々が邪魔な為、近くの者しかサポートが出来ない事に、悔しい気持ちになりながらも、目の前に集中する。
「ガード!」
俺のスキルで向こうの攻撃は一切効かなくなる。
流石に異常な出来事に相手は何が原因か考える……しかし、俺のスキルが見える筈も無く、またここまで大人数の為、誰が何をしているかなんて分からない。
終始、優勢に戦いが進む。
……ん? なんか臭うな……
先程まで臭わなかったが、今は何やら異臭がする──しかし、その正体が分からない。
そうこうしている内に、とうとう相手を倒す事が出来、一時の平穏が生まれる。
「隻腕よ、お前のスキルは本当に凄い──このまま移動して他の者達を手助けしよう」
「ああ、分かった」
直ぐに移動しようとするが……
「ちょっと待て……」
エルフが止める。
「なにか、臭わないか?」
「ん? ……本当だ、何か焦げ臭さいな」
「もしかして、火事か?」
俺の言葉に皆で周りの様子を見ると……
「──ッな?!」
戦いに集中して気が付かなかったが、周りの木々があちこち燃えていた。
「これは……どういう事だ?」
「恐らく、炎弾だろう……」
エルフの問いに、ドワーフは神妙な面持ちで答える。
「炎弾と誰かが戦っているのだろう。そして、その戦闘中に火が燃え移ったと考えるのが妥当だな……」
ロピ……
ドワーフが言う、炎弾と戦っているのはロピである。
しかし、ロピと別れて、まだそこまで時間が経ってない。
それだと言うのに、もうここまで火が回っているなんて……
「とにかく、移動するぞ──俺達は俺達で出来る事を全力でやるまでだ」
俺達は移動をしては仲間達を助ける。
そんな事を繰り返していると、周りはどんどん炎に包まれていくのが分かる。
「あぁ……我らの村が……」
燃え上がる木々を見ながらエルフ達は悲しそうにしている。
「悲しい気持ちは分かるが、今は仲間を助けるのが先だ──急ぐぞ?」
ドワーフの言葉に頷く様にして先を進む。
……ん? これって……チャンスか?
エルフ達が悲しんでいる中、俺はある事に気が付いた。
……おいおい、ロピの奴、何か秘策がある様な事言ってたけど、これの事か……?
改めて、燃え上がる木々を見て、気が付く。
木々が燃えて、かなり視界が広がった……
そして、エルフ達には悪いが、それは俺に取ったら好都合である。
「はは、流石ロピだぜ……」
ロピはいつも突拍子の無い事を思い付く。
「まさか、邪魔な木を燃やすなんてな……」
俺は、ついクスリと笑ってしまう。
「ん? 隻腕よ、どうした?」
「木々が燃えた事は確かに残念だが、これが俺達に取って状況を改善させるかもしれねぇーぞ?」
ニヤリと笑い掛ける俺にドワーフとエルフは首を傾げるのであった……
俺は自身のスキルについて軽く説明する。
「なるほど……確かに、それならこのまま視野が広がるのは好都合だな……」
「あぁ、既にかなり燃え上がっている。だが一つ問題がある……」
「問題?」
「あぁ、確かに今の時点で、結構視野が広がった……しかし、これでもまだ見え辛い事には変わりねぇんだよな……」
木々が燃えて、視界を遮る葉っぱなどは既に燃え尽きている。
しかし、一番視界を邪魔している木々は未だ健在だ。
その事を説明すると、次はドワーフがニヤリと笑う。
「がはは、それなら俺達に任せろ!」
「ん? 何か策があるのか?」
「あぁ、あるとも。生えている木が邪魔という事だろう?」
コクリと頷く俺。
「ならば、木々を切り倒していけば良いだけだ」
話を聞くと、実に単純な作戦であった。
それは、木を一本一本倒していくとの事だ。
「おいおい、そんな暇なんて無いぞ?」
「大丈夫だ、この燃え上がった木々であれば、根っこも燃えているだろうし、直ぐに切り倒す事が出来るだろう──それも2、3回斧を振れば倒れるくらいにな」
そんなに、軽く切り倒せるのかよ?!
「はは、それに隻腕のサポートが加わればどうだと思う?」
「おいおい、その言い方だとまさか……」
俺は無意識に笑みが溢れた。
「あぁ、そうだ。恐らく想像通り、隻腕のサポートがあれば一振りで倒す事が可能だろう」
ドワーフの案に希望が見え、エルフ達も先程の悲しい表情が一変した。
「なら、直ぐに取り掛かろう……認めたくは無いが、この人間のスキルは強力だ」
「そうだな。隻腕のスキル効果を受ける者は多ければ多い程、この戦争では有利になる」
「そういう事だ。ここで仲間を助けるよりも、木々を切り倒していく方が結果的には仲間達の助けになるだろう……」
こうして、俺達は周りにある木々を次々と切り倒していく事にした……
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる