過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第8章

335話

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「──ッなに?!」

 バルオールは、急に目の前に登場したリガスに驚く。

「ほっほっほ。ニルトンさんご無事ですかな?」
「……あ、あぁ」

 とても、良いタイミングで登場したリガスを驚いた様子で見る。

「どこかお怪我はありませんか?」
「だ、大丈夫……です」
「ふむ。それは良かった」

 ニルトンの無事が確認出来き、微笑む。

 この状況に似つかわしく無い表情を浮かべるリガスに少し遅れてチルも登場する。

「リガス、流石だね」
「ほっほっほ。お褒め頂き光栄で御座います」

 敬う様に一度チルに頭を下げる。

 そんなやり取りを見ていたバルオールが口を開く。

「お前らは誰だ? ──いや、そんな事はどうでも良い、そこの魔族よ俺と戦え」

 良い獲物が見つかったと言う様に凶悪な笑みを浮かべるバルオール。

 そんな笑みを浮かべられて居て尚、リガスの表情は崩れない。

「ほっほっほ。戦うとは私とですかな?」
「あぁ、そうだ。今のやり取りで確信している──お前は強い」
「いえいえ、私などまだまだですな」
「がはは、そう謙遜するな」

 先程までニルトンに向けて居た退屈そうな表情だったバルオールだったが、今では満面の笑みを浮かべていた。

「リガス、こいつは私が戦う」

 そんなリガスとバルオールの間に入り込む様にチルは身体を動かした。

「あ? お前は誰だよ?」
「私? 私はリガスのご主人様」

 チルの言葉を聞いて、チラリとリガスを見るバルオール。

「えぇ、そこにいらっしゃる方は私のご主人様になります」
「ほぅ……」 

 自身の攻撃をいとも簡単に防御したリガスのご主人様に興味を持った様だ。

「お前も強いのか?」
「修行中の身」
「がはは、そうかそうか──ふむ、そこの魔族の主人って事なら戦ってみたいとは思うが、貴様は、まだ子供だろ?」
「年齢なんて関係無い」
「確かにそうだが、俺が気が乗らねぇーんだよな……」

 頭をガシガシと掻き毟る。

「なぁ、魔族よ──俺と戦え」
「ほっほっほ。私のご主人様を倒したら相手してあげても良いですぞ?」

 リガスの言葉にチルはコクリと頷く。

「はぁ……」

 そのやり取りで大きな溜息を吐くバルオールは一度大きく息を吸い込んだと思ったら急にリガスに向かって走り出す。

「お前らの都合なんぞ俺には関係ねぇーな!」

 バルオールが大斧を勢い良くリガスに向かって振り下ろす。

「がはは、喰らえや!」

 その攻撃は、とんでも無いスピードでリガスの脳天目掛けて振り下ろされている。

 普通の者では反応すら出来ないスピード。
 そんな斧をリガスは少し身体を捻るだけで避ける。
 そして、リガスは直ぐ様バルオールの襟首を掴み、そのまま顔面を地面に叩き付けてから、抑え込んだ。

「──ッ!?」
「ほっほっほ。驚いておりますな」

 今の体制はバルオールが地面にうつ伏せにされており、リガスが上に乗って後ろ首を持ちながら抑え込んでいるのだ。

「リガス、私の獲物だから殺しちゃダメ」
「ふむ。それもそうですな──」

 チルの言葉にリガスは頷き、バルオールの拘束を解いた。

「……」

 そんなバルオールは信じられない様な視線を向ける。

「何故、殺さなかった?」
「ほっほっほ。貴方くらいならば、いつでも倒せますからな──それであればご主人様の糧になってもらった方が良いと思いまでして」

 リガスの言葉に、バルオールの頭の血管が一、二本切れる様な音が聞こえる。

「てめぇ……俺をコケにするつもりか?」

 あまりにも苛ついているのか、そこに笑みは無く、まさに鬼の形相であった。

 そして、リガスに1対1では、敵わない事を悟ったバルオールは……

「おい! お前らはこの魔族を倒せ──とんでもねぇー程、強ぇーから手が空いている奴全員で片付けろ」

 バルオールの言葉に他のオーガ達がリガスを囲む様にして集まる。

「ほっほっほ。これはこれは手厚い歓迎ですな」

 リガスの言葉に、更に怒りが増すバルオール。

「お前ら、絶対にソイツを殺すな──だが動けなくなるまで徹底的に痛めつけろ、そして俺の前に連れて来い」

 バルオールの指示に頷く部下達は、そのままリガスに向かって攻撃を仕掛けた。

「さぁてと、俺は、お前の相手をすればいいのか?」

 リガスの事は部下に任せバルオールはチルに向く。

「俺は今、てめぇーの奴隷に苛ついているんだよ……だからお前をアイツの目の前でブチ殺す」
「私はお前なんかに負けない」
「はぁ……どいつもこいつも苛つくぜ……」


お互い睨み付けると、バルオールが先に動き出す。

 大斧を拾い上げチルに横一閃を放った。

「──ほぅ」

 バルオールの横切りは空を切る。

「アームズ……」

 大斧の攻撃を避けたチルは直ぐ様ガラ空きの腹部目掛けて拳を放った。

「──ッヴッ……」
「まだ、終わらない」

 追撃する様に何発もの拳をバルオールの身体に打ち込む──そして、何発連続で撃ち込み、最後の一撃を撃ち込んでバルオールを吹き飛ばした。

 しかし、バルオールはゆっくりと起き出す。

「……確かに、魔族の言う通り強いな、けど所詮はそこに居るエルフに毛か生えた程度だ」

 バルオールがチルに向かって歩き出す。

「無傷……」

 バルオールが言う、そこにいるエルフであるエルトンが呟いた。

「効かないなら、効くまで攻撃すればいい」

 そう言うと、チルは又もや連続で攻撃を浴びせる為に走り出す。

 そして、先程同様──いや、先程よりも速い回転で拳を叩き込んでいく。

 しかし……

「がはは、全然効かんわ!」

 バルオールには一切効かない様子だ。

「次は俺から行くぜ?」

 そう言うとバルオールがチルに攻撃を仕掛ける。

「──ッヴ!?」

 バルオールの蹴りがチルの腹部に突き刺さる。

「──ッハン! まだ終わらないぜ?」

 先程、避けられた為かバルオールは威力重視では無くチル同様に速さ重視で大斧を器用に使いチルに攻撃する。

「がはは、避けろ避けろ」
「──ック……」

 バルオールの攻撃を避けたり、防いだりするが、何回かに一回は攻撃を食らってしまう。

 大斧をあまりにも器用に使う為、反撃する隙を見つけられずに居た。

 蓋を開けてみると、リガスが異常に強いだけであり、この場ではリガス以外にバルオールを倒せる者いない様だ……
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