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第8章
327話
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「よぅ──エルフ共……お前らの門をぶっ壊して悪かったな」
そこには凶悪な笑みを浮かべたオーガ族のバルオールがニルトンに向かって話し掛けていた。
バルオールは、門を破壊した後に強者を探すべく周囲を見渡し、ニルトンを選んだ様だ。
そんな、バルオールに標的にされたニルトンは苦虫を噛む様な表情をする。
「何故、お前らは人間族なんかの味方をする?」
オーガ族は数ある種族の中でも戦闘を好む種族であり、強者こそが絶対的な存在である。
その為、オーガ族の代表には常に種族の中で一番強い者が選べれる。
そして、今のオーガ族代表がバルオールであった。
バルオールは、何かしらの突然変異なのか、周りにいるオーガ族とは似ている様で全く違う存在の様にニルトンには見えている様だ。
それも、その筈で周りにいるオーガ族の体色が青色に対してバルオールだけは紫色である──また、身体も周りの者よりも二回りほど大きい。
「俺はよ……強い奴が好きなんだよ」
「……」
「俺は今まで、自分が最強だと思ってたんだが、蓋を開けてみたら、そうでも無かった」
「意味が分からん、どういう事だ?」
「俺は、人間族と戦って負けた──それも一対一の勝負でな」
バルオールの言葉にニルトンは少しだけ驚く。
オーガ族のバルオールといえば肉体戦では右に出る者は居ないと言われているくらいの存在である。
唯一、対抗出来そうな相手といえば、人間族のグンドウであろう。
「負けたとは、人間族総隊長であるグンドウにか……?」
「いや、違う。俺が負けたのは炎弾だな」
「炎弾だと?」
「ガハハ、手も足も出なかったな!」
何が、そんなにおかしいのかバルオールが笑う。
「まぁ、そんなこんなで一対一の戦いに敗れた俺は炎弾の下に付いたわけよ──俺は決して人間族の奴隷になったつもりはねぇ」
ニヤリと笑みを溢しニルトンを見る。
──クソ……厄介な者な目を付けられたもんだな……
ニルトンは頭の中で素早く計算を始める。
相手のオーガ族は、そこまで人数が多く無い。
しかし、人数では勝てたとしても、実力では圧倒的に向こうが上とエルトンは理解をする。
──まともにやり合えるのは、私も含めてごく僅か……
ニルトンの直ぐ近くには三人のエルフが少し後ろで武器を構えてオーガ族を見ている。
その三人とはアトス達との模擬戦にニルトンと一緒に出ていた者達である。
──俺を合わせて四人くらいしか、一対一で対応出来そうに無いな、後は一人のオーガに複数を当たらすか……
ニルトンがどうするべきが考えていると、バルオールが再び話し掛けて来た。
「そういえば、念の為に聞いとくぞ」
「……なんだ?」
「お前ら、降参してラシェン王の奴隷になる気は無いか?」
バルオールは面倒くさそうに、耳を穿りながらニルトンに確認する。
「──ッ誰があんな奴らの奴隷になるか!」
エルトンの回答を聞いたバルオールは、面倒くさそうな表情から、再度笑顔になる。
「ガハハ、そうこなくちゃな? ──ここで奴隷になる事を選んだら興醒めだ」
「この戦闘狂め……」
「褒め言葉として受け取っとくぜ?」
凶悪な笑みを浮かべたバルオールは背中に背負っていた大きな斧を取り出した。
「お前はこの村の中では相当な強さを持っていそうだったからな──楽しみだ」
「──ッ……」
ニルトンも、腰に下げていた剣を引き抜く。
「ニルトン様、我々も一緒に戦います」
そう言ってニルトンの後ろに控えていた三人も武器を構えてバルオールを見据える。
そんな様子を見たバルオールは一度溜息を吐く。
「はぁ……俺は純粋な勝負がしてぇーんだよ」
バルオールが仲間のオーガ族に合図を送る。
すると、ニルトン以外の三人の前に別のオーガ達が立ちはだかった。
「俺達の勝負を邪魔するな」
「「「ック」」」
三人のエルフはバルオールから目の前のオーガに向かって武器を構え直した。
「ほかの奴らも俺とソイツの試合を邪魔すんなよ? したら殺すぞ?」
周りを威圧する様に言い放つバルオール。
周囲に睨みを効かせ、勝負に入ってくるなと圧力を掛ける。
そして、そんなバルオールを見ながらニルトンは仲間のエルフ達に声を掛ける。
「皆、俺の事は心配しないで、自分の相手に集中してくれ──数ではこちらが有利だ、一人に対して複数で当たるんだ!」
ニルトンの言葉にエルフ達は不承不承ながら頷く。
「お前もやる気になってくれて嬉しいぜ?」
「俺がお前に勝ったら、次は俺の下に付くのか?」
ニルトンの言葉にバルオールはここに来て一番大きな声で笑う。
「ガハハハハ、誰がお前の様な弱者に負けるって?」
可笑しそうに笑ったと思ったらいきなりバルオールの笑みが消えた……
「エルフの分際で、あまり調子乗るなよ? ──もうお喋りは終わりだ」
どうやら、バルオールの琴線に触れてしまった様だ。
そして、バルオールは大きな斧を構える。
「そこまで大口を叩いたんだ、少しは耐えろよ?」
こうして、エルトン率いるエルフ族とバルオール率いるオーガ族の戦いが始まった……
そこには凶悪な笑みを浮かべたオーガ族のバルオールがニルトンに向かって話し掛けていた。
バルオールは、門を破壊した後に強者を探すべく周囲を見渡し、ニルトンを選んだ様だ。
そんな、バルオールに標的にされたニルトンは苦虫を噛む様な表情をする。
「何故、お前らは人間族なんかの味方をする?」
オーガ族は数ある種族の中でも戦闘を好む種族であり、強者こそが絶対的な存在である。
その為、オーガ族の代表には常に種族の中で一番強い者が選べれる。
そして、今のオーガ族代表がバルオールであった。
バルオールは、何かしらの突然変異なのか、周りにいるオーガ族とは似ている様で全く違う存在の様にニルトンには見えている様だ。
それも、その筈で周りにいるオーガ族の体色が青色に対してバルオールだけは紫色である──また、身体も周りの者よりも二回りほど大きい。
「俺はよ……強い奴が好きなんだよ」
「……」
「俺は今まで、自分が最強だと思ってたんだが、蓋を開けてみたら、そうでも無かった」
「意味が分からん、どういう事だ?」
「俺は、人間族と戦って負けた──それも一対一の勝負でな」
バルオールの言葉にニルトンは少しだけ驚く。
オーガ族のバルオールといえば肉体戦では右に出る者は居ないと言われているくらいの存在である。
唯一、対抗出来そうな相手といえば、人間族のグンドウであろう。
「負けたとは、人間族総隊長であるグンドウにか……?」
「いや、違う。俺が負けたのは炎弾だな」
「炎弾だと?」
「ガハハ、手も足も出なかったな!」
何が、そんなにおかしいのかバルオールが笑う。
「まぁ、そんなこんなで一対一の戦いに敗れた俺は炎弾の下に付いたわけよ──俺は決して人間族の奴隷になったつもりはねぇ」
ニヤリと笑みを溢しニルトンを見る。
──クソ……厄介な者な目を付けられたもんだな……
ニルトンは頭の中で素早く計算を始める。
相手のオーガ族は、そこまで人数が多く無い。
しかし、人数では勝てたとしても、実力では圧倒的に向こうが上とエルトンは理解をする。
──まともにやり合えるのは、私も含めてごく僅か……
ニルトンの直ぐ近くには三人のエルフが少し後ろで武器を構えてオーガ族を見ている。
その三人とはアトス達との模擬戦にニルトンと一緒に出ていた者達である。
──俺を合わせて四人くらいしか、一対一で対応出来そうに無いな、後は一人のオーガに複数を当たらすか……
ニルトンがどうするべきが考えていると、バルオールが再び話し掛けて来た。
「そういえば、念の為に聞いとくぞ」
「……なんだ?」
「お前ら、降参してラシェン王の奴隷になる気は無いか?」
バルオールは面倒くさそうに、耳を穿りながらニルトンに確認する。
「──ッ誰があんな奴らの奴隷になるか!」
エルトンの回答を聞いたバルオールは、面倒くさそうな表情から、再度笑顔になる。
「ガハハ、そうこなくちゃな? ──ここで奴隷になる事を選んだら興醒めだ」
「この戦闘狂め……」
「褒め言葉として受け取っとくぜ?」
凶悪な笑みを浮かべたバルオールは背中に背負っていた大きな斧を取り出した。
「お前はこの村の中では相当な強さを持っていそうだったからな──楽しみだ」
「──ッ……」
ニルトンも、腰に下げていた剣を引き抜く。
「ニルトン様、我々も一緒に戦います」
そう言ってニルトンの後ろに控えていた三人も武器を構えてバルオールを見据える。
そんな様子を見たバルオールは一度溜息を吐く。
「はぁ……俺は純粋な勝負がしてぇーんだよ」
バルオールが仲間のオーガ族に合図を送る。
すると、ニルトン以外の三人の前に別のオーガ達が立ちはだかった。
「俺達の勝負を邪魔するな」
「「「ック」」」
三人のエルフはバルオールから目の前のオーガに向かって武器を構え直した。
「ほかの奴らも俺とソイツの試合を邪魔すんなよ? したら殺すぞ?」
周りを威圧する様に言い放つバルオール。
周囲に睨みを効かせ、勝負に入ってくるなと圧力を掛ける。
そして、そんなバルオールを見ながらニルトンは仲間のエルフ達に声を掛ける。
「皆、俺の事は心配しないで、自分の相手に集中してくれ──数ではこちらが有利だ、一人に対して複数で当たるんだ!」
ニルトンの言葉にエルフ達は不承不承ながら頷く。
「お前もやる気になってくれて嬉しいぜ?」
「俺がお前に勝ったら、次は俺の下に付くのか?」
ニルトンの言葉にバルオールはここに来て一番大きな声で笑う。
「ガハハハハ、誰がお前の様な弱者に負けるって?」
可笑しそうに笑ったと思ったらいきなりバルオールの笑みが消えた……
「エルフの分際で、あまり調子乗るなよ? ──もうお喋りは終わりだ」
どうやら、バルオールの琴線に触れてしまった様だ。
そして、バルオールは大きな斧を構える。
「そこまで大口を叩いたんだ、少しは耐えろよ?」
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