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第8章
326話
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「キル! ──ゴブリン共が来るぞ!」
そこには、ドワーフ達が武器を構えて敵を待ち構えていた。
自分達が作った防壁や門が破壊された事により多少のショックを受けながらも、直ぐに切り替えて陣形を整える。
「クソ、ワシの考えではもう少し時間を稼げる予定だったんだがな……」
ドワーフ族の代表であるキルが表情を歪めて悔しがる。
「しょうがねぇよ──まさかオーガ族の、それもバルオールが来るなんて思いも付かなかったんだしよ」
キルを慰める様に別のドワーフが言葉を掛ける。
「それにしても、まさかオーガ族もゴブリン族も人間族に着くなんてな……」
群れを成してコチラに走り寄って来るゴブリンを見ながらキルは呟いた。
「あぁ、あんな人間族みたいや糞共に着くなんて信じられねぇーぜ」
そんなやり取りをしていると、ゴブリン族がキル達の前まで到着する。
そして、ゴブリン族を代表している者なのか一人のゴブリンが前に出て話し掛けて来た。
「ドワーフ族の皆さん、こんにちは──私はゴブリン族の代表を勤めておりますグダと申します」
とても丁寧に挨拶するグダに対して、キル達は少し戸惑っている様子である。
「さて、ドワーフの皆さん、ここで争ってお互い痛い目に遭うのは割に合わないと思うのですよ──そこでどうでしょうか?」
グダが愛想の良い顔でキル達に話し掛ける。
「良ければ、抵抗せずにラシェン王の下に付きませんか?」
「ふざけるな! 誰が人間族共の奴隷なんてなるものか!」
グダの提案に直ぐ様否定するキル。
分かりきった返答だとは言え、グダはやや、疲れた様に首を振る。
「はぁ……キルさんもドワーフ族の代表でしょ……このままでは同胞が沢山死にますよ?」
「──ッ!? お前、何故俺の名前を……?」
「それは、もう知っておりますとも、戦う相手の情報を調べるのは当たり前でしょ?」
グダは、何を当たり前の事を? と言う様な表情をキルに向ける。
そして更に言葉を続けた。
「貴方だけではありませんよ? エルフ族の代表であるシャレさんの事や、その側近であるニネットさん、トラクさんなど色々知っておりますとも」
言葉や態度は低姿勢だが、目の奥が笑っていないとキルは感じる。
そんなキルをおかしそうに笑うグダ。
「他にも、ここには良く知っている人がいますね……」
そう言うと、グダの視線がキルから、櫓の方に切り替わる。
「お前……アトスを知っているのか……?」
「えぇ、知っていますとも……」
グダは昔を懐かしむ様な表情を浮かべたが、キルには昔、アトスとグダの間に何があったか知らない為、より一層訝しげにグダを見る。
「何故、アトスの事を知っているか教えて貰っても良いか?」
「ふふふ、それは我々と一緒にラシェン王の下に付くのであれば幾らでもお教え致しましょう」
どうやら、グダは教えるつもりは無い様だ。
「フンッ、なら教えなくて良いぞ」
「全く……ラシェン王の素晴らしさが分からないとは不憫な種族ですね……」
グダは哀れむ視線をキル達、ドワーフ族に向ける。
「はは、それはそっくりそのまま貴様に返すぞ? ──糞な人間族などの奴隷になっているお前らを哀れに思う」
キルの言葉に、グダの額に一筋の青筋が浮かび出る。
しかし、愛想の良い表情は崩れる事は無かった。
「何故、そこまで嫌がるのです? ──ラシェン王の下に付けば、人間族の住処で住める上に、モンスターの脅威に振り回せられる事も無くなるのですよ?」
「フンッ、その代わり人間族からどの様な扱いを受けるか分かったもんじゃない」
キルの言う通り、人間族の奴隷にされた場合、一体どんな扱いを受けるかは不明である。
「ラシェン王は、我々にも不当な扱いをせずに人間族と変わらない扱いをしてくれると約束して頂きました」
「まさか、お前はそんな保証も無い人間族なんかの口約束を信じているのか?」
ここに来て、キルはグダを馬鹿にする視線を向ける。
「貴方とは、話が合わない様ですね……」
「あぁ、ワシもそう思っていた所だ……」
「全く……オークと言い、脳筋共は話が通じ無い者達が多いですね……」
どうやら、キル達を説得するのは諦めた様子のグダは味方に向けて手をあげる。
すると、ゴブリン達は一斉に武器を構えた。
「後悔しませんか? ──今なら、まだ貴方の同胞が傷付く前に事を収める事が出来ますよ?」
グダは最後の警告を施す様にキルに向かって話し掛ける。
「くどい! ワシらは人間族なんかの奴隷になるつもりは無い!」
キルも仲間達に向かって合図を送る。
すると、ドワーフ達が武器を構えた。
「では、無理やりにでもラシェン王の前に連れて行かせてもらいますよ?」
「ハンッ! ひ弱なゴブリン共に何が出来る」
「ははは、貴方達ドワーフの知識は古いですな……」
「「……」」
お互い、暫く見つめ合い、一斉に声を張り上げた。
「皆さん、脳筋のドワーフ達に私達の強さを見せ付けてやりましょう!」
グダの言葉にゴブリン達が呼応する様に動き出す。
「お前ら、ひ弱なゴブリン達をワシらドワーフ族の強さを見せつけてやろうでは無いか!」
キルの言葉にドワーフ達が一斉に前に向かって走り出す。
こうして、ここでもドワーフとゴブリンの戦いが始まったであった……
そこには、ドワーフ達が武器を構えて敵を待ち構えていた。
自分達が作った防壁や門が破壊された事により多少のショックを受けながらも、直ぐに切り替えて陣形を整える。
「クソ、ワシの考えではもう少し時間を稼げる予定だったんだがな……」
ドワーフ族の代表であるキルが表情を歪めて悔しがる。
「しょうがねぇよ──まさかオーガ族の、それもバルオールが来るなんて思いも付かなかったんだしよ」
キルを慰める様に別のドワーフが言葉を掛ける。
「それにしても、まさかオーガ族もゴブリン族も人間族に着くなんてな……」
群れを成してコチラに走り寄って来るゴブリンを見ながらキルは呟いた。
「あぁ、あんな人間族みたいや糞共に着くなんて信じられねぇーぜ」
そんなやり取りをしていると、ゴブリン族がキル達の前まで到着する。
そして、ゴブリン族を代表している者なのか一人のゴブリンが前に出て話し掛けて来た。
「ドワーフ族の皆さん、こんにちは──私はゴブリン族の代表を勤めておりますグダと申します」
とても丁寧に挨拶するグダに対して、キル達は少し戸惑っている様子である。
「さて、ドワーフの皆さん、ここで争ってお互い痛い目に遭うのは割に合わないと思うのですよ──そこでどうでしょうか?」
グダが愛想の良い顔でキル達に話し掛ける。
「良ければ、抵抗せずにラシェン王の下に付きませんか?」
「ふざけるな! 誰が人間族共の奴隷なんてなるものか!」
グダの提案に直ぐ様否定するキル。
分かりきった返答だとは言え、グダはやや、疲れた様に首を振る。
「はぁ……キルさんもドワーフ族の代表でしょ……このままでは同胞が沢山死にますよ?」
「──ッ!? お前、何故俺の名前を……?」
「それは、もう知っておりますとも、戦う相手の情報を調べるのは当たり前でしょ?」
グダは、何を当たり前の事を? と言う様な表情をキルに向ける。
そして更に言葉を続けた。
「貴方だけではありませんよ? エルフ族の代表であるシャレさんの事や、その側近であるニネットさん、トラクさんなど色々知っておりますとも」
言葉や態度は低姿勢だが、目の奥が笑っていないとキルは感じる。
そんなキルをおかしそうに笑うグダ。
「他にも、ここには良く知っている人がいますね……」
そう言うと、グダの視線がキルから、櫓の方に切り替わる。
「お前……アトスを知っているのか……?」
「えぇ、知っていますとも……」
グダは昔を懐かしむ様な表情を浮かべたが、キルには昔、アトスとグダの間に何があったか知らない為、より一層訝しげにグダを見る。
「何故、アトスの事を知っているか教えて貰っても良いか?」
「ふふふ、それは我々と一緒にラシェン王の下に付くのであれば幾らでもお教え致しましょう」
どうやら、グダは教えるつもりは無い様だ。
「フンッ、なら教えなくて良いぞ」
「全く……ラシェン王の素晴らしさが分からないとは不憫な種族ですね……」
グダは哀れむ視線をキル達、ドワーフ族に向ける。
「はは、それはそっくりそのまま貴様に返すぞ? ──糞な人間族などの奴隷になっているお前らを哀れに思う」
キルの言葉に、グダの額に一筋の青筋が浮かび出る。
しかし、愛想の良い表情は崩れる事は無かった。
「何故、そこまで嫌がるのです? ──ラシェン王の下に付けば、人間族の住処で住める上に、モンスターの脅威に振り回せられる事も無くなるのですよ?」
「フンッ、その代わり人間族からどの様な扱いを受けるか分かったもんじゃない」
キルの言う通り、人間族の奴隷にされた場合、一体どんな扱いを受けるかは不明である。
「ラシェン王は、我々にも不当な扱いをせずに人間族と変わらない扱いをしてくれると約束して頂きました」
「まさか、お前はそんな保証も無い人間族なんかの口約束を信じているのか?」
ここに来て、キルはグダを馬鹿にする視線を向ける。
「貴方とは、話が合わない様ですね……」
「あぁ、ワシもそう思っていた所だ……」
「全く……オークと言い、脳筋共は話が通じ無い者達が多いですね……」
どうやら、キル達を説得するのは諦めた様子のグダは味方に向けて手をあげる。
すると、ゴブリン達は一斉に武器を構えた。
「後悔しませんか? ──今なら、まだ貴方の同胞が傷付く前に事を収める事が出来ますよ?」
グダは最後の警告を施す様にキルに向かって話し掛ける。
「くどい! ワシらは人間族なんかの奴隷になるつもりは無い!」
キルも仲間達に向かって合図を送る。
すると、ドワーフ達が武器を構えた。
「では、無理やりにでもラシェン王の前に連れて行かせてもらいますよ?」
「ハンッ! ひ弱なゴブリン共に何が出来る」
「ははは、貴方達ドワーフの知識は古いですな……」
「「……」」
お互い、暫く見つめ合い、一斉に声を張り上げた。
「皆さん、脳筋のドワーフ達に私達の強さを見せ付けてやりましょう!」
グダの言葉にゴブリン達が呼応する様に動き出す。
「お前ら、ひ弱なゴブリン達をワシらドワーフ族の強さを見せつけてやろうでは無いか!」
キルの言葉にドワーフ達が一斉に前に向かって走り出す。
こうして、ここでもドワーフとゴブリンの戦いが始まったであった……
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