過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第8章

317話

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 俺はロピに言われたアドバイスを先ずは呟く。

「直線から円を作るんじゃ無く……最初から円を作る……」

 俺は一度頭の中で整理をして集中する。

 そして目を瞑りながら呟く。

「アタック!」

 俺は目を開けて結果を見ると……

「ダメか……」

 付与スキルはいつも通り直線になっているだけであった。

 出来ると言う感覚が多少あったが為に少し落ち込む俺にロピが直ぐ様声を掛けて来る。

「お兄さん──諦めちゃダメだよ! お兄さんはまだ、直線に囚われているよ!」

 まだ、囚われているか……

「ふむ。一つ提案よろしいですかな?」

 すると、リガスが話掛けて来た。

「言い方も変えてみては?」
「言い方?」
「えぇ──アトス殿は毎回スキルを発動する際に攻撃であればアタックや防御ならガードと声を出しているので、それすらも変えてみては如何でしょうか?」
「あ、それいいかも! 流石魔族さん!」
「ほっほっほ。お褒め頂き光栄でございます」

 掛け声を変えてみる……か……

 俺のスキルの特性は何だと言われれば人のサポートだよな……いわば助けるとかだよな……

「助ける……救助……ペルプ……」

 掛け声を何にするか、思い付く事を口にする。

「よし決めた……」

 口で色々呟いていると、ある言葉が浮かぶ。

「お兄さん、決まったの?」
「あぁ、決まったぜ」
「ならやってみよー!」
「楽しみです」
「ふむ、どうなるやらですな」

 皆んなの言葉に一度頷き──俺は再び集中する為に目を瞑る。

 直線では無く、初めから円を出現させる様なイメージを頭の中で描いていく。
 
 そして、今までの掛け声では無く、円を出現させる為の専用の言葉を呟く。

「ベルグングサークル……」

 すると、人一人が入れるくらいの小さい円が出現する。

 その円は白く光っていた。

 更に、その円は波紋が広がる様にどんどん広がっていき──遂には木々が邪魔でどこまで波紋が広がったか分からないほどになったが、円の中は常に白く光っていた。

「おっしゃーー!! 出来たぜ!!」

 もう一度良く見回すと地面は白く光っていた。

「「「──ッ…………」」」

 俺は嬉しさのあまり、飛び跳ねて喜んでいると、三人が黙り込んでいた──それゃそうだよな……付与スキルを視認する事が出来るのは俺だけだし……

 成功した事を三人に伝える為に話し掛け様とすると、何故か三人は俺では無く地面に顔を向けていた。

「あはは、なんだか一人で騒いで悪いな──なんとか成功したぜ!」

 三人からの言葉を待つが一向に黙り込んで地面を見ている。

「な、なぁ──どうした?」

 ん? なんで誰も反応してくれないんだ?

 俺が更に続けて話し掛けようとすると、チルが呟く。

「これがアトス様の作られた円……?」

 チルは身体をゆっくり一回転させながら地面を見渡している。

 続いてリガスが呟く。

「ふむ。綺麗ですな──こんなのは初めてです」

 チル同様、グルリと地面を見回している。

「な、なぁ──みんな一体どうしたんだ?」

 俺が疑問を口にすると、ロピが応えてくれる。

「私達にもお兄さんが作った円が見えるの!」

 ん? 見える?

「見えるって、この地面にある白い光がか?」
「うん! 一体どこまで広がっているんだろうねー」

 おいおい──マジかよ、この円が見えるって事はこれからは、いちいち先読みしなくても良くなったって事か!? 

 そうなれば相当使い勝手が良くなるぞ!

 俺は早速、この円にどの様な効果があるが調べるべく、三人に声を掛ける。

「なぁ、この光の中で何か感じるか? もしくはパワーアップされた感はあるか?!」

 俺の言葉を聞いて、三人は飛び跳ねたり、近くの木に攻撃してみたりするが……

「ふむ。変化無いですな」
「残念ながら、いつも通りの様な気がします」
「私もそうかもー」

 三人の言葉に俺は愕然とする。

「こ、こんなに苦労したのに効果無し……?」

 地面に膝を着く。

 そんな様子を見たチルが慌てて支えてくれる。

「ア、アトス様、大丈夫でしょうか?」
「あはは、お兄さんが壊れた!」
「姉さん、黙って!」
「──ッヒィ!」

 チルの迫力ビビるロピは一瞬で黙り込む。

「アトス様、今回は円に出来ただけで一歩前進しました──落ち込まないで下さい」
「そ、そうだよな」
「はい──それに、まだ私達が気が付いて無いだけで何かしらの効果があるかもしれません」
「そ、そうかな……?」

 娘のチルに慰められる親ってどうよ?

 すると、リガスが笑い出す。

「ほっほっほ」

 リガスの笑いに再びチルが睨み付けて怒鳴る。

「リガス──今は冗談言っても笑えないよ?」
「そうだーそうだー! 魔族さん笑ったらチルちゃんに怒られるんだよー!」
「姉さんは、まだ黙ってて!」
「──ッはい!」

 チルの注意にリガスは更に言葉を重ねる。

「いえいえ、アトス様──これは成功ですぞ?」
「え?」

 成功と言う言葉に反応する俺。

「最古のエルフの言葉をもう一度ヨーク思い出して見てください」

 俺はリガスに言われた通りもう一度考える。

 えーっと……確か。

 付与スキルとは線ではあらず、円である。

 しかし、付与スキルとは円でもあらず、本質は線と円を掛け合わせたものである。

 この本を読んだ者は、先ず円を意識するべし。

 そして円の後は再び線を意識するべし。


「だったよな……?」
「ふむ。そうですな」
「後は、線と円の掛け合わせでしょうか?」

 チルの言葉にリガスが頷く。

「普通に考えればそうですな」
「線と円の掛け合わせ……リガスは、この先の意味が分かるのか?」
「いえ、申し訳無いですが流石にこれ以上は分かりかねますな」

 その後も毎日訓練をして円を描く事は出来る様になったが、それ以上の成果は現れる事は無かった……

 そして、とうとう炎弾率いる軍がエルフ族の村に攻め込んで来たのであった……
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