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第8章
316話
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「アタック!」
ダメか……
「ガード!」
これもダメ……
「スピード!」
やっぱりダメだ……
「お兄さん、ダメそうー?」
「あぁ……やっぱり直線のままだな……」
現在俺達は、訓練中である。
「何が悪いのでしょう?」
「ふむ。こればかりは感覚的な感じがしますな」
マーズの手紙で炎弾率いる軍がエルフの村に攻めて来ると知った俺達は、戦いがあるまでに少しでも強くなろうとここ最近は毎日訓練をしている。
炎弾達が一体いつ攻めて来るか分からないが恐らく、そう遠くないだろう。
エルフ族とドワーフ族は攻め込まれても良い様に、現在猛スピードで強固な壁を建設している。
「果たして、間に合うのか……」
一年後に戦うと思っていた俺達は、一年を通して戦いの準備を行おうと動き始めた所だったが、マーズの手紙で、そうも言ってられ無い状況になり現在は急いで準備の真っ最中である。
主に建設部分はドワーフ達が行っており、シャレたちエルフ族は周囲に罠を仕掛けたり偵察したりしている様だ。
俺達も何か手伝おうとシャレとキルに申し出た所、俺達は少しでも身体を休めている様にと言われ、折角だからと思い訓練している次第だ。
「うーん、出来ねぇーな」
一旦地面に座り込み、もう一度最古のエルフに言われた事を思い出す。
付与スキルとは線ではあらず、円である。
しかし、付与スキルとは円でもあらず、本質は線と円を掛け合わせたものである。
この本を読んだ者は、先ず円を意識するべし。
そして円の後は再び線を意識するべし。
「──って言われてもな……」
まず、円すら描けねぇーよ!
俺が、頭を抑えて唸っているとロピが話し掛けて来る。
「お兄さんは、どんな風に考えて円を描こうとしているの?」
「ん? それゃー、まぁ直ぐな線を曲げていって最終的に円にする感覚かな……?」
自分自身も、まだ感覚が掴めて居ないが、真っ直ぐに敷かれたラインを曲げて円を描こうとしている──だが、それが出来ないのが現状だ……
「ふっふっふっふ」
何やら、ロピが手を組んで目を瞑り笑っている。
「アトス様、出来そうな気配はあるのでしょうか?」
すると、急にチルが話し掛けて来る。
「うーん、全然ダメだ……全く手応えが無いんだよなー」
俺がチルに応えると、近くで腕を組んでいたロピが更に大きな声で笑い出す。
「ふ、ふっふっふっふ」
何やら、聞いてくれてアピールをしているな……
「私も何か手伝える事があれば良かったのですが……申し訳ございません」
「いや、こればかりは俺の問題だからな……」
「ふむ。最古のエルフの話を聞く限り昔の付与スキル者は出来た様ですし、何か感覚的なキッカケが必要そうですな」
リガスも話に加わるが、誰一人としてロピに声を掛けない。
だが、ロピは諦め無かった──そしてしつこかった……
「ぐぁはっはっはっはははははは」
まるで、魔王の様に笑うロピに対して、流石に無視する事が出来なかったのか、チルが話し掛ける。
「姉さん、何か言いたい事でもあるの?」
「うん!」
良くぞ聞いてくれた! と言わんばかりの笑顔で俺達三人を見渡す。
「私は、分かったんだよ」
「何が?」
「お兄さんの出来ない理由が! ──そして、出来る方法もね!」
自身満々のロピ。
「ふむ。ロピ殿は何故アトス殿が円を作れないか分かるのですかな?」
「もちろん!」
ロピは少し勿体付けてから口を開く。
「お兄さんが出来ない理由は考え方が間違えているからだよ!」
「「「考え方?」」」
俺達三人が首を傾げる。
「そう! 答えはお兄さんがさっき言った中にあるんだよ!」
「な、なんだ──教えてくれロピ!」
ここ最近、何の進展も無かった為、俺は藁に縋る思いでロピに質問する。
恐らく、今の俺は高い壺などを売られても買ってしまうだろう。
「ふふふ、そんなに教えて欲しい?」
俺の反応が面白いのかニヤリと笑うロピ。
「あ、あぁ教えて欲しい!」
「なら、今日……一緒に寝てもいいー?」
何やら、自分で言っときながら恥ずかしそうにしながら聞くロピ。
「全然いいから教えてくれ!」
「チルちゃんもだよ?」
「あぁ、問題ない!」
「魔族さんも!」
ロピの声にニコニコと顔を綻ばせるリガス。
「あぁ──久しぶりに全員で寝よう。だから教えてくれ」
恐らく、ここ最近はシャレの家に住んでいる為、別々の部屋に寝て居たので寂しかったのだろう。
俺から言質を取り満足したのかロピは大きく頷く。
「しょうがないなー!お兄さんだから特別に教えてあげるね?」
「あぁ──頼む」
一度コクリと頷いたロピは説明してくれる。
「さっきお兄さんは円を作ろうとする時にどんなイメージで作っているって言った?」
「えっと……確か、直ぐな線を曲げていって最終的に円にする感覚って言ったな」
「そうだね! その考え方がそもそも間違っているんだよー」
ロピの言いたい事が分からない俺は首を傾げる。
「ふふ──考え方をもっと柔軟してみてよ!」
「柔軟?」
「そう──直線から円を作るんじゃ無くて最初から円を作ればいいんだよ!」
「──ッ!?」
ロピの言葉に頭の中で衝撃が走った……
「それだ……」
「ふふ」
俺の言葉にロピは手を組んだまま、何度も頭を上下に動かす。
「お兄さんも気が付いた様だね?」
「あぁ……流石ロピだ……試してみる価値は大有りだ」
「ふぁはっはっはっは!」
ロピのアドバイスを元に俺は再び立ち上がり挑戦してみる事にした……
ダメか……
「ガード!」
これもダメ……
「スピード!」
やっぱりダメだ……
「お兄さん、ダメそうー?」
「あぁ……やっぱり直線のままだな……」
現在俺達は、訓練中である。
「何が悪いのでしょう?」
「ふむ。こればかりは感覚的な感じがしますな」
マーズの手紙で炎弾率いる軍がエルフの村に攻めて来ると知った俺達は、戦いがあるまでに少しでも強くなろうとここ最近は毎日訓練をしている。
炎弾達が一体いつ攻めて来るか分からないが恐らく、そう遠くないだろう。
エルフ族とドワーフ族は攻め込まれても良い様に、現在猛スピードで強固な壁を建設している。
「果たして、間に合うのか……」
一年後に戦うと思っていた俺達は、一年を通して戦いの準備を行おうと動き始めた所だったが、マーズの手紙で、そうも言ってられ無い状況になり現在は急いで準備の真っ最中である。
主に建設部分はドワーフ達が行っており、シャレたちエルフ族は周囲に罠を仕掛けたり偵察したりしている様だ。
俺達も何か手伝おうとシャレとキルに申し出た所、俺達は少しでも身体を休めている様にと言われ、折角だからと思い訓練している次第だ。
「うーん、出来ねぇーな」
一旦地面に座り込み、もう一度最古のエルフに言われた事を思い出す。
付与スキルとは線ではあらず、円である。
しかし、付与スキルとは円でもあらず、本質は線と円を掛け合わせたものである。
この本を読んだ者は、先ず円を意識するべし。
そして円の後は再び線を意識するべし。
「──って言われてもな……」
まず、円すら描けねぇーよ!
俺が、頭を抑えて唸っているとロピが話し掛けて来る。
「お兄さんは、どんな風に考えて円を描こうとしているの?」
「ん? それゃー、まぁ直ぐな線を曲げていって最終的に円にする感覚かな……?」
自分自身も、まだ感覚が掴めて居ないが、真っ直ぐに敷かれたラインを曲げて円を描こうとしている──だが、それが出来ないのが現状だ……
「ふっふっふっふ」
何やら、ロピが手を組んで目を瞑り笑っている。
「アトス様、出来そうな気配はあるのでしょうか?」
すると、急にチルが話し掛けて来る。
「うーん、全然ダメだ……全く手応えが無いんだよなー」
俺がチルに応えると、近くで腕を組んでいたロピが更に大きな声で笑い出す。
「ふ、ふっふっふっふ」
何やら、聞いてくれてアピールをしているな……
「私も何か手伝える事があれば良かったのですが……申し訳ございません」
「いや、こればかりは俺の問題だからな……」
「ふむ。最古のエルフの話を聞く限り昔の付与スキル者は出来た様ですし、何か感覚的なキッカケが必要そうですな」
リガスも話に加わるが、誰一人としてロピに声を掛けない。
だが、ロピは諦め無かった──そしてしつこかった……
「ぐぁはっはっはっはははははは」
まるで、魔王の様に笑うロピに対して、流石に無視する事が出来なかったのか、チルが話し掛ける。
「姉さん、何か言いたい事でもあるの?」
「うん!」
良くぞ聞いてくれた! と言わんばかりの笑顔で俺達三人を見渡す。
「私は、分かったんだよ」
「何が?」
「お兄さんの出来ない理由が! ──そして、出来る方法もね!」
自身満々のロピ。
「ふむ。ロピ殿は何故アトス殿が円を作れないか分かるのですかな?」
「もちろん!」
ロピは少し勿体付けてから口を開く。
「お兄さんが出来ない理由は考え方が間違えているからだよ!」
「「「考え方?」」」
俺達三人が首を傾げる。
「そう! 答えはお兄さんがさっき言った中にあるんだよ!」
「な、なんだ──教えてくれロピ!」
ここ最近、何の進展も無かった為、俺は藁に縋る思いでロピに質問する。
恐らく、今の俺は高い壺などを売られても買ってしまうだろう。
「ふふふ、そんなに教えて欲しい?」
俺の反応が面白いのかニヤリと笑うロピ。
「あ、あぁ教えて欲しい!」
「なら、今日……一緒に寝てもいいー?」
何やら、自分で言っときながら恥ずかしそうにしながら聞くロピ。
「全然いいから教えてくれ!」
「チルちゃんもだよ?」
「あぁ、問題ない!」
「魔族さんも!」
ロピの声にニコニコと顔を綻ばせるリガス。
「あぁ──久しぶりに全員で寝よう。だから教えてくれ」
恐らく、ここ最近はシャレの家に住んでいる為、別々の部屋に寝て居たので寂しかったのだろう。
俺から言質を取り満足したのかロピは大きく頷く。
「しょうがないなー!お兄さんだから特別に教えてあげるね?」
「あぁ──頼む」
一度コクリと頷いたロピは説明してくれる。
「さっきお兄さんは円を作ろうとする時にどんなイメージで作っているって言った?」
「えっと……確か、直ぐな線を曲げていって最終的に円にする感覚って言ったな」
「そうだね! その考え方がそもそも間違っているんだよー」
ロピの言いたい事が分からない俺は首を傾げる。
「ふふ──考え方をもっと柔軟してみてよ!」
「柔軟?」
「そう──直線から円を作るんじゃ無くて最初から円を作ればいいんだよ!」
「──ッ!?」
ロピの言葉に頭の中で衝撃が走った……
「それだ……」
「ふふ」
俺の言葉にロピは手を組んだまま、何度も頭を上下に動かす。
「お兄さんも気が付いた様だね?」
「あぁ……流石ロピだ……試してみる価値は大有りだ」
「ふぁはっはっはっは!」
ロピのアドバイスを元に俺は再び立ち上がり挑戦してみる事にした……
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