309 / 492
第8章
308話 シクとネーク
しおりを挟む「シク様、お願いします」
ネークが私に向かって話し掛けて来た。
目の前には、今まで見た事も無い獣人族達が私を見ている。
私はデグ達と別れてからの出来事を思い出す。
あの時、デグ達にモンスターが向かわない様に私が囮になって、ネーク達に合流した。
それから、ネークが人間族の王であるラシェン王の殺害を決意し、その為には私と言う存在が獣人族を集める為に必要だと言われ、協力する事にした。
「まさか、ここまで集まるとはな……」
ネークはとにかく、獣人族達に手紙を送りまくり、ひたすら人数を集め続けた。
どうやら、手紙には必ず私の事を記載していた様で、そこには獣人族にダブル持ちが現れた事と一緒に人間族を倒す旨が書かれていた様だ。
長年に渡り、人間族に虐げられて来た獣人族は私という存在もあった事からか、どんどん人数が増えていき、今では一体何人の獣人族がネークの計画に賛同したか分からない。
そして本日は、そんな集まって来た獣人族達の前に初めてのお披露目と言う事でネークより一言話して欲しいと言われた次第であった。
改めて、目の前に居る光景を見るが、見える範囲は全て獣人族で埋め尽くされていた──しかも驚く事に、まだまだ居る様で、余りにも多く一箇所に集まるとモンスター達が集まって来てしまう為、何回か分ける様だ。
「別に、私が話さなくても良いんじゃ無いか?」
あまりの人数に圧倒されてしまい、ネークに、やりたく無い意思を伝えるが、首を振られてしまう。
はぁ……
私は心の中でため息を吐き話す。
「私はシクだ──これからよろしく頼む」
それだけ言うと一歩下がり、話はこれで終わりだと意思表示する。
すると、少ししてガヤガヤと話し声が始まった。
そして、ある一人の獣人族がこちらに向かって話し掛けてくる。
「本当にその人がダブル持ちなのかよ」
その言葉に周りも頷く。
「そうだよな? 俺達は獣人族にダブル持ちが出たから、人間達と戦う事にしたんだぜ?」
「あぁ、ダブル持ちが居ないなら俺は降りるぜ?」
何故、ここまでダブル持ちが重宝されるか、分からなかったので前にネークに聞いてみた所、どうやら獣人族に取ってダブル持ちは勝利の象徴と昔から言い伝えられていた様だ。
なんでも、獣人族の歴史の中で大きな戦いには必ずと言って良い程ダブル持ちの存在が確認されており、その戦は全て勝利を納めている事から、ダブル持ちが入れば戦いに勝てると言われている。
私から言ったら、そんなのはタダの偶然だろうと思うが、昔から親に言い聞かされて来た獣人族達は、その事を信じ切っている様子である。
まぁ、その言い伝えをネークは私を使って利用し、この人数を集めたのだから、凄いな。
私が本当にダブル持ちか疑問の声が上がり、どんどんと騒ぎが大きくなっていくのを見たネークは一歩前に出て言い放つ。
「皆、ここに居る白き閃光は本物だ!」
ん? 白き閃光?
「今から、この白き閃光にダブル持ちな事を披露して貰う」
そう言って、ネークはチラリと私の方を見る。
「披露しろと?」
私の言葉にコクリと頷く。
「あぁ、分かったよ……」
早く終わらせてしまいたい私は周りに見やすい様に、まずは拳に炎を纏わせる。
「まず一つ目の能力は拳に炎を纏わす事の出来る武器強化だ」
ネークの解説を聴きながら、私に注目する獣人達。
「そして、もう一つの身体強化がこの白き閃光の二つ名になった由来だ、よく見ていろ!」
成る程……私の白髪と身体強化のスピードを合わせた二つ名の訳か。
「白き閃光だなんて初めて聞いたぞ?」
周りに聞こえない様にネークに質問する。
「はは、すみません──シク様と呼ぶより、白き閃光の方が周りも納得しやすいと思いまして」
そして、ネークもまた周りに聞こえない様に、周りに見えない様に苦笑いする。
「では、シク様そろそろ」
顔を引き締めたネークに頷き私は脚に力を入れる。
「ふぅ……」
一呼吸置いた後に私は奥の方にある木の上に移動した。
スキルを手に入れてから、結構経過したと思ったが、やはりまだ扱い切れていない様子だ。
そして、先程までネークの隣にいた筈の私が突然と姿を消した事に、獣人達は驚いて居た。
「き、消えたぞ?!」
「ど、どこ行った?」
「ダ、ダブル持ちは本当だったんだな……」
反応は色々で、驚いている者、喜んでいる者、そして私が何処に行ったか探している者まで居た。
「これで分かっただろう! 白き閃光はダブル持ちな事を」
ネークの言葉が耳に入って居ないのか、ざわつきが凄い。
そして、何人かがようやく私の姿を見つけた。
「お、おい! あそこにいるぞ!」
私を指差した獣人から皆が私を視認した。
そして、私は再びスキルを発動させてネークの元に一瞬で戻る──また、私が消えた事に驚く獣人にネークが話し掛ける。
「この、白き閃光が居れば、我々獣人族は人間族に勝てる!」
その言葉に獣人達が反応する。
「あぁ、ダブル持ちが居るなら勝てるよな?!」
「そうだぜ! 獣人族の歴史ではダブル持ちが居た時の戦で負けた事ねぇーしな!」
「よっしゃー、滾ってきたぜ!!」
本当に勝てるという認識が波紋を起こす様に獣人達に広がり、ここに居る全員がネークの計画に参加する意思を示した様だ……
ネークが私に向かって話し掛けて来た。
目の前には、今まで見た事も無い獣人族達が私を見ている。
私はデグ達と別れてからの出来事を思い出す。
あの時、デグ達にモンスターが向かわない様に私が囮になって、ネーク達に合流した。
それから、ネークが人間族の王であるラシェン王の殺害を決意し、その為には私と言う存在が獣人族を集める為に必要だと言われ、協力する事にした。
「まさか、ここまで集まるとはな……」
ネークはとにかく、獣人族達に手紙を送りまくり、ひたすら人数を集め続けた。
どうやら、手紙には必ず私の事を記載していた様で、そこには獣人族にダブル持ちが現れた事と一緒に人間族を倒す旨が書かれていた様だ。
長年に渡り、人間族に虐げられて来た獣人族は私という存在もあった事からか、どんどん人数が増えていき、今では一体何人の獣人族がネークの計画に賛同したか分からない。
そして本日は、そんな集まって来た獣人族達の前に初めてのお披露目と言う事でネークより一言話して欲しいと言われた次第であった。
改めて、目の前に居る光景を見るが、見える範囲は全て獣人族で埋め尽くされていた──しかも驚く事に、まだまだ居る様で、余りにも多く一箇所に集まるとモンスター達が集まって来てしまう為、何回か分ける様だ。
「別に、私が話さなくても良いんじゃ無いか?」
あまりの人数に圧倒されてしまい、ネークに、やりたく無い意思を伝えるが、首を振られてしまう。
はぁ……
私は心の中でため息を吐き話す。
「私はシクだ──これからよろしく頼む」
それだけ言うと一歩下がり、話はこれで終わりだと意思表示する。
すると、少ししてガヤガヤと話し声が始まった。
そして、ある一人の獣人族がこちらに向かって話し掛けてくる。
「本当にその人がダブル持ちなのかよ」
その言葉に周りも頷く。
「そうだよな? 俺達は獣人族にダブル持ちが出たから、人間達と戦う事にしたんだぜ?」
「あぁ、ダブル持ちが居ないなら俺は降りるぜ?」
何故、ここまでダブル持ちが重宝されるか、分からなかったので前にネークに聞いてみた所、どうやら獣人族に取ってダブル持ちは勝利の象徴と昔から言い伝えられていた様だ。
なんでも、獣人族の歴史の中で大きな戦いには必ずと言って良い程ダブル持ちの存在が確認されており、その戦は全て勝利を納めている事から、ダブル持ちが入れば戦いに勝てると言われている。
私から言ったら、そんなのはタダの偶然だろうと思うが、昔から親に言い聞かされて来た獣人族達は、その事を信じ切っている様子である。
まぁ、その言い伝えをネークは私を使って利用し、この人数を集めたのだから、凄いな。
私が本当にダブル持ちか疑問の声が上がり、どんどんと騒ぎが大きくなっていくのを見たネークは一歩前に出て言い放つ。
「皆、ここに居る白き閃光は本物だ!」
ん? 白き閃光?
「今から、この白き閃光にダブル持ちな事を披露して貰う」
そう言って、ネークはチラリと私の方を見る。
「披露しろと?」
私の言葉にコクリと頷く。
「あぁ、分かったよ……」
早く終わらせてしまいたい私は周りに見やすい様に、まずは拳に炎を纏わせる。
「まず一つ目の能力は拳に炎を纏わす事の出来る武器強化だ」
ネークの解説を聴きながら、私に注目する獣人達。
「そして、もう一つの身体強化がこの白き閃光の二つ名になった由来だ、よく見ていろ!」
成る程……私の白髪と身体強化のスピードを合わせた二つ名の訳か。
「白き閃光だなんて初めて聞いたぞ?」
周りに聞こえない様にネークに質問する。
「はは、すみません──シク様と呼ぶより、白き閃光の方が周りも納得しやすいと思いまして」
そして、ネークもまた周りに聞こえない様に、周りに見えない様に苦笑いする。
「では、シク様そろそろ」
顔を引き締めたネークに頷き私は脚に力を入れる。
「ふぅ……」
一呼吸置いた後に私は奥の方にある木の上に移動した。
スキルを手に入れてから、結構経過したと思ったが、やはりまだ扱い切れていない様子だ。
そして、先程までネークの隣にいた筈の私が突然と姿を消した事に、獣人達は驚いて居た。
「き、消えたぞ?!」
「ど、どこ行った?」
「ダ、ダブル持ちは本当だったんだな……」
反応は色々で、驚いている者、喜んでいる者、そして私が何処に行ったか探している者まで居た。
「これで分かっただろう! 白き閃光はダブル持ちな事を」
ネークの言葉が耳に入って居ないのか、ざわつきが凄い。
そして、何人かがようやく私の姿を見つけた。
「お、おい! あそこにいるぞ!」
私を指差した獣人から皆が私を視認した。
そして、私は再びスキルを発動させてネークの元に一瞬で戻る──また、私が消えた事に驚く獣人にネークが話し掛ける。
「この、白き閃光が居れば、我々獣人族は人間族に勝てる!」
その言葉に獣人達が反応する。
「あぁ、ダブル持ちが居るなら勝てるよな?!」
「そうだぜ! 獣人族の歴史ではダブル持ちが居た時の戦で負けた事ねぇーしな!」
「よっしゃー、滾ってきたぜ!!」
本当に勝てるという認識が波紋を起こす様に獣人達に広がり、ここに居る全員がネークの計画に参加する意思を示した様だ……
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる