303 / 492
第8章
302話 隻腕の噂
しおりを挟む
「な、なんでキルさんは、人間族なんかに頭を下げているんだ……?」
目の前の光景が信じられ無いのかドワーフ達が騒ぎ始める。
そしてエルフ達も少なからず動揺した様子だ。
「お、おい──早く頭上げろよ!」
俺は慌てて二人の顔を上げさせる。
それから、シャレが再びステージから呼び掛ける。
「これで、私が本気なのが分かってくれたと思う──確かに人間族は憎いが例外もいる。その例外がここにいるアトスだ」
続いてキルも話す。
「ワシも同じ意見だ。アトス見たいな良い人間も少なからずいる事を最近学ばさせて貰った──それに、この戦いはタダでさえワシらが不利だ。だがアトスの力があれば勝てる見込みがかなり上がる!」
キルの言葉を聞いて、胡散臭さそうな目線を向けてくる。
「アイツ強いのか?」
「大した事無いだろう、片腕失っているしよ」
そんな声が聞こえるが、別の場所からは俺を認める様な声も上がる。
「お前らはバカだな──あそこに居るアトスが居たから前回俺達は村に戻る事が出来たんだぜ?」
「そうさ──それにお前らドワーフの村での噂を知らねぇーのか?」
噂……?
何やら、ドワーフ達がニヤリと笑っていた。
よく見ると、俺を擁護してくれているドワーフ達は前回一緒に戦った者達だ。
「噂ってなんだよ?!」
「ふふ、お前達も最近、一度は聞いた事があるんじゃないか? ──隻腕のアトスの噂を」
隻腕?
俺は分からず頭を傾げていたが、他のドワーフ達は違った。
「え……? 村で噂になっていた隻腕ってアイツの事なのか……?」
「あぁ、そうだ。あの人間族こそが俺達ドワーフをモンスターから守ってくれた隻腕のアトスだ」
ドワーフの一人が周りに聞こえる様に大声で宣言すると、他のドワーフ達が一斉に俺の方に向き始めた──それも先程の様な侮蔑する様な表情では無く単純に驚いた様子に見える。
「ど、どうなっているんだ?」
状況が飲み込め無い俺に対して、隣に居るキルが笑いながら説明してくれる。
「はははは、実はな」
キルの話を聞くと、どうやら以前俺達が二つ名を付けられた時と同じく、村に帰って来たドワーフやフィール達人間族が俺の事を村中で噂した様で、今ではドワーフの村にいる者なら誰も知らない奴は居ないくらいに有名になった様だ……俺が……
「あはは、お兄さん良かったね──なんかカッコイイ呼び名だよ!」
ロピの声に俺は頷く。
「あ、あぁ! マジで良かったぜ! ──何か良く分からない奴、みたいな呼ばれ方はもう嫌だ!」
隻腕とか、めちゃくちゃカッコいいな、おい!
俺が喜んでいると、キルがドワーフ達に問い掛ける。
「どうだ、お前ら! 隻腕の噂は既に知らねぇー奴はいないと思うが、あの噂は全て事実だぜ? ──そんな隻腕がココに居て俺達に協力してくれるって言ってくれているんだ、拒否する理由がねぇーよな?」
キルの言葉に先程とは真逆の答えがドワーフ達から返って来る。
「おう! 俺は隻腕のお陰であの戦いを生き抜けたんだよ!」
「俺もだ!」
「隻腕が居れば人間族相手にするのなんて余裕だぜ!」
前回一緒に戦ったドワーフ達がまずは俺の協力に同意してくれる。
「お、俺は隻腕のお陰で親が戻ってきた、是非一緒に戦って欲しい!」
「噂を聞いてから、ずっと憧れていたんだ、俺はキルさんの考えに賛成だぜ!」
そして、他のドワーフ達までもが協力する事を認め始めた。
「よし、お前ら──俺達ドワーフ族は隻腕の協力に賛成って事で良いんだよな?!」
不敵な笑みを同胞に向けるキルにドワーフ族全員が声を合わす。
「「「「「「「おう!!」」」」」」」
こうして、いつの間にかドワーフ達は俺の事を認めていた。
そして、先程とは明らかに違う目付きになっており、尊敬の眼差しを感じる時さえある。
「ほっほっほ。流石アトス殿ですな──知らない所で、こんなにも噂になっているなんて」
リガスは愉快そうに笑う。
「このドワーフ達、見所がある……」
何やら少し怖い事を言いながらチルは首を縦に頷きドワーフ達を見回す。
ドワーフ達が賛成した後に、エルフ達も嫌々ながら一緒に戦う事を承知した──しかし、ドワーフ達みたいに心から認めた訳では無く俺を見る視線は未だ変わらず侮蔑する様に見てくる。
後の細かい所や今後の動きに対しては両族の代表達が集まって会議すると言う事になり解散する。
そして、シャレはかなり落ち込んだ様子で俺に近付き謝って来る。
「アトス、すまない……」
「いや、気にするな──それに戦う事は認めたんだろ?」
「あぁ──其処だけは押し通させて貰った」
「なら、良いじゃないか」
俺は、気を使う様にシャレに微笑む。
その後、俺達は再びフィール達に会いに行って色々話すが、結局エルフの村に入る事は認められ無かった様で一度ドワーフの村に帰る事にした様だ。
「さて、協力する事も決まったし俺もやる事やらないとな……」
俺は前々からある事を考えていたので、それを実行しようと動き出す……
目の前の光景が信じられ無いのかドワーフ達が騒ぎ始める。
そしてエルフ達も少なからず動揺した様子だ。
「お、おい──早く頭上げろよ!」
俺は慌てて二人の顔を上げさせる。
それから、シャレが再びステージから呼び掛ける。
「これで、私が本気なのが分かってくれたと思う──確かに人間族は憎いが例外もいる。その例外がここにいるアトスだ」
続いてキルも話す。
「ワシも同じ意見だ。アトス見たいな良い人間も少なからずいる事を最近学ばさせて貰った──それに、この戦いはタダでさえワシらが不利だ。だがアトスの力があれば勝てる見込みがかなり上がる!」
キルの言葉を聞いて、胡散臭さそうな目線を向けてくる。
「アイツ強いのか?」
「大した事無いだろう、片腕失っているしよ」
そんな声が聞こえるが、別の場所からは俺を認める様な声も上がる。
「お前らはバカだな──あそこに居るアトスが居たから前回俺達は村に戻る事が出来たんだぜ?」
「そうさ──それにお前らドワーフの村での噂を知らねぇーのか?」
噂……?
何やら、ドワーフ達がニヤリと笑っていた。
よく見ると、俺を擁護してくれているドワーフ達は前回一緒に戦った者達だ。
「噂ってなんだよ?!」
「ふふ、お前達も最近、一度は聞いた事があるんじゃないか? ──隻腕のアトスの噂を」
隻腕?
俺は分からず頭を傾げていたが、他のドワーフ達は違った。
「え……? 村で噂になっていた隻腕ってアイツの事なのか……?」
「あぁ、そうだ。あの人間族こそが俺達ドワーフをモンスターから守ってくれた隻腕のアトスだ」
ドワーフの一人が周りに聞こえる様に大声で宣言すると、他のドワーフ達が一斉に俺の方に向き始めた──それも先程の様な侮蔑する様な表情では無く単純に驚いた様子に見える。
「ど、どうなっているんだ?」
状況が飲み込め無い俺に対して、隣に居るキルが笑いながら説明してくれる。
「はははは、実はな」
キルの話を聞くと、どうやら以前俺達が二つ名を付けられた時と同じく、村に帰って来たドワーフやフィール達人間族が俺の事を村中で噂した様で、今ではドワーフの村にいる者なら誰も知らない奴は居ないくらいに有名になった様だ……俺が……
「あはは、お兄さん良かったね──なんかカッコイイ呼び名だよ!」
ロピの声に俺は頷く。
「あ、あぁ! マジで良かったぜ! ──何か良く分からない奴、みたいな呼ばれ方はもう嫌だ!」
隻腕とか、めちゃくちゃカッコいいな、おい!
俺が喜んでいると、キルがドワーフ達に問い掛ける。
「どうだ、お前ら! 隻腕の噂は既に知らねぇー奴はいないと思うが、あの噂は全て事実だぜ? ──そんな隻腕がココに居て俺達に協力してくれるって言ってくれているんだ、拒否する理由がねぇーよな?」
キルの言葉に先程とは真逆の答えがドワーフ達から返って来る。
「おう! 俺は隻腕のお陰であの戦いを生き抜けたんだよ!」
「俺もだ!」
「隻腕が居れば人間族相手にするのなんて余裕だぜ!」
前回一緒に戦ったドワーフ達がまずは俺の協力に同意してくれる。
「お、俺は隻腕のお陰で親が戻ってきた、是非一緒に戦って欲しい!」
「噂を聞いてから、ずっと憧れていたんだ、俺はキルさんの考えに賛成だぜ!」
そして、他のドワーフ達までもが協力する事を認め始めた。
「よし、お前ら──俺達ドワーフ族は隻腕の協力に賛成って事で良いんだよな?!」
不敵な笑みを同胞に向けるキルにドワーフ族全員が声を合わす。
「「「「「「「おう!!」」」」」」」
こうして、いつの間にかドワーフ達は俺の事を認めていた。
そして、先程とは明らかに違う目付きになっており、尊敬の眼差しを感じる時さえある。
「ほっほっほ。流石アトス殿ですな──知らない所で、こんなにも噂になっているなんて」
リガスは愉快そうに笑う。
「このドワーフ達、見所がある……」
何やら少し怖い事を言いながらチルは首を縦に頷きドワーフ達を見回す。
ドワーフ達が賛成した後に、エルフ達も嫌々ながら一緒に戦う事を承知した──しかし、ドワーフ達みたいに心から認めた訳では無く俺を見る視線は未だ変わらず侮蔑する様に見てくる。
後の細かい所や今後の動きに対しては両族の代表達が集まって会議すると言う事になり解散する。
そして、シャレはかなり落ち込んだ様子で俺に近付き謝って来る。
「アトス、すまない……」
「いや、気にするな──それに戦う事は認めたんだろ?」
「あぁ──其処だけは押し通させて貰った」
「なら、良いじゃないか」
俺は、気を使う様にシャレに微笑む。
その後、俺達は再びフィール達に会いに行って色々話すが、結局エルフの村に入る事は認められ無かった様で一度ドワーフの村に帰る事にした様だ。
「さて、協力する事も決まったし俺もやる事やらないとな……」
俺は前々からある事を考えていたので、それを実行しようと動き出す……
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる