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第8章

294話 ニネットの変貌

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「ま、待ってくれ!」

 ロピ、チル、リガスに断られてしまったシャレは慌てて引き止める。

「わ、私が説得するから、待ってくれ!」
「そ、そうです──シャレ様と私でなんとかするので」

 シャレだけではなくニネットまで慌てている。

「皆、分かっていないだけなんです」

 今まで、俺の事を毛嫌いしていたニネットが話して来る。

「私も、アトスさんの事を最初はここに居る者達と同じ見方をしていました──ですが、一緒に戦ったり日々の生活を見て分かりました」

 ニネットは俺を見る。

「アトスさんは、他の人間族と違うと──普通は人間族が私達を見るときは下世話な視線を送って来ますがアトスさんからは少ししか感じません」

 やべ……さり気なく見ていたつもりなのにバレていたのか……

 ニネットの言葉にロピとチルが無言で睨んでくる。

「それに、戦闘面でも最初は良く分かりませんでした──いえ、今でも良く分からないですがアトスさんのスキルはとんでも無く強い事だけは分かります」

 複数の小型が出現した際に俺達はシャレ達を手伝った──その際に俺のスキルでサポートした時、エルフ達、全員が驚いていたもんな……

「我々だけでは、人間族から同胞を奪い返す事は出来ません」

 その言葉にシャレも頷く。

「なので、シャレ様と私で説得しますので、もう暫くお待ち頂けませんでしょうか?」

 ニネットは俺に詰め寄って来た。普段は鋭い目付きだが、今は懇願する様な視線に、俺は思わず……

「あ、あぁ──わ、分かった」

 と返答すると、ニネットはスクッと再び俺から距離を取り、表情もいつも通りに戻ってシャレに話し掛ける。

「シャレ様、アトスさんから待って頂ける様、言質を取りました」
「流石、ニネットだ!」

 シャレは側近であるニネットを褒め称え──またニネットも、とても嬉しそうな表情と少し満足気にドヤ顔をしている。

 そんな様子を俺は唖然と口を開けたまま見ていた。

「いやいや──こ、コェーよ!? なんだよその変貌は!」
「お、お兄さん──エルフさん達は皆んなこうなのかな……?」
「恐ろしいです……」
「ほっほっほ。長く生きているだけあって男心を知り尽くしていますな」

 俺達は流れる様なニネットの言動に若干の恐怖を感じた……

 その後、人間族から同胞を奪還する際に俺達の力を借りるかどうかの会議は一旦お開きになり、また後日に持ち越される事になった。

 エルフ達が解散する際に、先程試合したエルトンが俺の方を睨み殺さんばかりの勢いで見ていた為、俺は怖くなりロピの陰に隠れる。

「んー? お兄さんどうしたの?」
「い、いや──今日のロピは凄かったなーって……」
「えへへ──もっと褒めていいんだよー?」

 ……単純でよかった。

 エルフ達が解散した後にニネットが話し掛けて来る。

「皆さん、今日はお疲れ様でした──本日はシャレ様の家に戻って頂き休んで貰って構いません」

 俺達は少し警戒する様にニネットから距離を取るが、当の本人はいつもの表情であった。

「アトス──必ず皆を説得するからもう少し待ってくれ」
「あ、あぁ──それは構わないが……」
「そ、そうか良かった」

 一安心したシャレはまだ村長としてやる事が有るらしく先に家に戻ってて来れと言って二ネットと何処かに歩いて行く。

「俺達は戻るか」
「ふむ。そうですな──アトス殿も今日は疲れたのでは?」
「いや、そんな事は──」
「──無理は行けません。まだ完全に治った訳では無いのですから」

 チルが有無を言わなせない勢いで俺に休む様に言ってくる。

「分かった、分かったよ」

 チルに背中を押されながら家に帰る途中ロピが試合に付いて思い出す様に話す。

「それにしても、魔族さん強過ぎだよねー」
「ほっほっほ。いえいえそんな事無いですぞ」
「いやいや、リガスが対人戦で負ける所が想像付かないんだが?」
「私もーお兄さんと同じー! 魔族さんは人との戦いなら負けないんじゃ無い?」

 ロピの質問にリガスはおかしそうに笑う。

「ほっほっほ。いえいえそんな事無いですぞ?」
「負けた事あるのか?」
「えぇ、それは勿論。まず同じ種族である魔族には勝てた事が無いですな」

 リガスの言葉に俺を含めた三人が驚く。

「リガスが一度も勝てた事無いって……一体どれくらい強いんだよ……」
「魔族さんと同じ種族の人ってそんなに強いんだね……」
「リガスより強いとか想像出来ません」

 世の中、まだまだ分からないもんだな……

「ほっほっほ。私なんて魔族の中で言えば、まだまだ若者ですから」
「ちなみに、魔族以外に負けた事もあるかのか?」

 俺の言葉にリガスは頷く。

「ふむ。一度だけありますな」
「えー? その相手は何族だったの?!」
「魔族以外でリガスに勝てる種族……」

 リガスは思い出す様に話し始める。

 


 
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