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第8章

289話 エルフ会議

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 シャレの家を出ただけで相当なエルフの数がツリーハウスの上から見え、更には一箇所に集中的に人数が集まっている所がある。

「大鎌さん、なんであそこにあんなに集まっているのー?」
「あぁ、朝に集まる様にと伝えてあるからな、あそこでアトス達の事を伝えようと思う」

 それにしても改めて見ると、とんでもない数だな……
 俺は一箇所に集まっているエルフ達を見るが一族の半数以上が集まっているだけあり、かなり多い。

 俺達は広場に向かいながら歩き広場まで行く。

 すると、最初はシャレの姿を見て次々と美しいやら、何やらと盛り上がる男エルフ達──そんな声にシャレは言われ慣れているのか特に反応もせずに少し高台になっているステージに向かって歩く。

「な、なんかアイドルみたいだな」
「お兄さん、アイドルってなーに?」

 ロピを始め、チルとリガスも気になるのか俺の方を見て来る。

「うーん、憧れ的な存在や崇拝される人的な事を言うんだと思う……」

 俺自身もアイドルとは何か? と聞かれると上手く応えられないが大体の意味合いは合っているだろう。

「ふーん、なら大鎌さんの後ろに付き従う様に動いている人とかはなんて言うの?」

 恐らく二ネットの事だろう。

「うーん、マネージャー?」
「どういう意味ー?」
「その、アイドルをお世話する様な……存在……?」

 何やら俺も良く分からないけど適当に答えた。

 独り言の様に呟いていると、先程までシャレの存在に心奪われていたエルフ達だが、シャレの後を付いていく俺に視線が移された。

「お、おい──あれ人間族じゃねぇか?!」

 一人のエルフの言葉があっという間に広がり、今ではシャレより俺の方がエルフ達の視線を集めている状況だ。

「なんでこんな所に人間族がいるのよ?!」
「き、きっと捕縛したんだろ?」
「でも、縛られたりしてないぞ?!」

 人間族に良い印象を持っていないエルフ達は次々と俺から距離を取る様に離れていく。

「はぁ……」

 その反応を見て前を歩くシャレがため息を吐く。

「シャレ様、ここでシッカリと説得しないと後で大変な事になりますから、頑張って下さい」
「今からアトスを紹介するのが気が重い……二ネット替わってくれ……」
「無理です」

 ピシャリと断られてしまい、分かっていた事だが落ち込むシャレ──しかし家を出る前から覚悟は決めていたので表情を引き締めてステージに登る。

 なんか俺まで緊張して来たぞ……

 少し高台になっているステージの中央まで行き俺達は止まる。
 エルフ達はシャレが今から何を話すか気になる様で必然と静かになった。

「皆、よく集まってくれた」

 シャレは大きな声でエルフ全員に聞こえる様に話す。

「今回皆に集まって貰ったのは、我々エルフ族の女性が人間に拐われた件について話したいからだ」

 いくつもの村でエルフ達は人間族に襲われている。

「人間族に襲われたエルフは必ず取り返す!」
「「「「おう!」」」」
「だが、無闇に助けに行っても返り討ちに逢うだろう」

 シャレの言葉を否定する様に何人かが声を上げる。

「そんな事ねぇよ!」
「そうだ──俺達エルフ族が人間族共に負ける筈がねぇ!」

 剣を掲げ、弓を掲げて他のエルフ達も同意する。

「静まりなさい!」

 騒つき始めたエルフ達を二ネットが一声で黙らす。
 静かになった事を確認して再びシャレが話し始める。

「皆の意見も分かる……だが勇敢と無謀を履き違えてはいけない」

 シャレはステージから全体を見回す。

「私は一人で小型を倒す事が出来る」

 その言葉に驚く者は居らず、エルフ族の中では有名なのかもしれない。

「私以外にも何人かのエルフは一人で小型を倒せる程の猛者が居る──しかし、今の人間族からエルフを取り返すには全然戦力が足らないと断言する」

 その言葉に更に反発する声が上がる。

「臆病者! ──何をビビっている!」
「そうよ──私の妹は今頃……」

 あちこちから、非難の声が上がる。

「皆が思っている事は分かるつもりだ──それを分かって尚言うが、我々だけでは無理だ」

 非難する声はまだあるが、シャレ程の人物がこんなにも必死に言ってる事に思う事があるのか半数は黙って話を聞いている──そして、周りが黙っているので他の者達も黙りまた静寂が生まれた。

 一人のエルフが一言シャレに問い掛けた。

「なら、どうすれば助けられる?」

 その言葉を待っていたかの様にシャレは一度深呼吸して俺の方をチラリと見る。

「助ける方法はある──それは此処にいる者達の助けを借りる」

 そう言って、シャレは俺達に注目が集まる様に一歩下がり手を俺達に向けた。

「おいおい……分かっては居たけど歓迎してくれている感じじゃねぇーな……」
「あはは、そうだねー。特にお兄さんに向いている視線は凄い事になっているよー」
「アトス様……消しますか?」
「ほっほっほ。お手伝いします」

 チルとリガスの言葉にシャレと二ネットが一瞬焦る。

「──ッ消さねぇーよ!?」

 なんて物騒な二人だ……今にも動き出そうとしている二人を言葉で制して前を向くと、やはり物凄い形相で睨まれているのを感じる……
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