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第8章
288話 アトスの選択 2
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まるで、ロボットの様にひたすら口を開けて首を動かすシャレが正気に戻るまで結構な時間を用いた。
「す、すまない──少し取り乱した様だ……」
「あはは──大鎌さんの表情間抜けで面白かったよ──いたい!?」
ロピの言葉に隣に居たチルが後ろから叩く。
「姉さん、場所を弁えて」
「うぅ……」
重要な話をしている事は自覚していたのか妹を睨みつけながら黙るロピだが、チルは一向に気にしていない様だ。
「ま、間抜け……?」
初めて、そんな事を言われたのか、気の抜けた表情をしていたシャレだが直ぐに正気に戻る。
「そ、それではアトス達は我々に協力してくれるって事でいいのか?」
「あぁ」
すると、席を立ち上がりガッツポーズをする様に喜ぶ。
「よし! ──アトス達が居ればかなりの戦力だ!」
シャレの喜ぶ姿に水を刺すのも悪いと思いながらも、一つ気になる事を尋ねる。
「シャレ、一つ聞きたいんだが」
「なんだ? なんでも聞いてくれ!!」
俺達の協力を取り付ける事が出来て相当嬉しいのかシャレは目を輝かせながら聞いてくる。
聞きにくい……
「協力する事はいいんだが、他のエルフ達が俺達の協力を受け入れるのか? ──特に俺の……」
その言葉に苦虫を噛む様な顔になる。
「あ、ちなみにお兄さんが協力しないなら私は協力しないよー」
「私もです」
「ふむ。ご縁が無かったって事でしょうな」
三人の冷酷な発言にますます顔を青ざめるシャレ。
「ま、任せろ!」
何やら不安な言葉だ……
「あ、明日話し合う……」
そして、シャレは嬉しい反面、同族の説得をどうしようか考えながら再び自分の部屋に戻っていく。
「あれ、大丈夫か?」
「ふむ。どっちにしろ我々は協力するとは伝えましたからな──後はシャレ殿次第ですな」
「リガスの言う通りです。後はシャレが他のエルフ族を説得出来るかに掛かっております」
それから、俺達も明日に備えて各自部屋に戻った。
それから数時間後には日が昇り再び居間に皆んなで集まる。
「ふぁ~お兄さんおはようー」
ロピはまだ眠いらしく半目で挨拶してくる。
「あぁ、おはよう」
昨日は寝るのが遅かったからか俺も眠い……
すると、何やらいつもより派手な服装で登場するシャレ。
「皆んな、おはよう──今日は私がこの村にいるエルフ全員を説得する」
どうやら、説得する為に少々着飾った服装らしい。
「ほっほっほ。気合が入っておりますな」
「あぁ──ここでアトス達の協力が無いとエルフ達を取り返せないからな」
そんな時、扉がノックされ二ネットが入って来る。
「シャレ様、その格好はどうされたんですか?」
昨日の夜決まった事なので、まだ二ネットには俺達が協力する事を伝えて無いので不思議そうにしている。
「これから、エルフ達を説得しに行く」
「なんの説得ですか?」
「うん──ここにいるアトス達にエルフ奪還の手伝いを頼んだら承諾してくれてな、なので後は他のエルフ達にアトス達と一緒に奪還しに行く事を認めて貰う」
俺はシャレの話を聞いたら二ネットが以前の様に猛反対すると思っていたが反応は意外なものだった。
「成る程……確かにそれは気合を入れなければいけませんね」
「だろ?」
「ですが、それではダメです──来てください私が服装を選びます」
「あぁ──頼む。アトス達の協力は必須だと言ってもいいからな失敗はしたく無い」
シャレの言葉に二ネットは頷く。そして、俺の視線に気がつく様にこちらに顔を向けて来る。
「どうされましたか?」
表情に笑顔などは無くどこか冷たい感じがするが、不思議と最初の頃より雰囲気が柔らかく感じる。
「い、いや……」
俺がなんて言ったら良いか言葉を選んでいるとロピが代弁してくれる。
「お兄さんは、不思議がっているんだよ! 前みたいに怖い顔で怒鳴って来ない事に!」
ロピの率直な意見に二ネットは納得いったのか身体事アトスに向けて頭を下げる。
「えぇ?! ──ど、どうしたんだよ?」
いきなり二ネットに頭を下げられて俺が動揺していると、頭を上げた二ネットが説明してくれる。
「以前の戦いで分かりました──シャレ様の言う通り私達エルフだけでは全滅していたと思います」
以前とは十体程小型が出て来た時の事か。
「ですがアナタ達の力を借りる事で危機的な状況だった筈ですが蓋を開けてみたら皆が無傷で戦闘を終わっていました──もちろんアナタのスキルのお陰と言うのは一緒に戦っていたエルフ達は全員承知しております」
一度言葉を切り、俺の目を真剣に見る。
「これまでの私の非礼、並びに我々エルフ達の言動を謝ります──そして前回と言い、今回と言い協力して頂きありがとうございます」
もう一度深々と頭を下げて来る二ネットに気にしていない事を伝える。
「ありがとうございます。アナタと一緒に戦闘を行ったエルフ達は大丈夫だと思いますが、他は以前同様か更に態度が酷い者も出て来ますので先に伝えておきます」
「あ、あぁ──わかった」
「そうならない為にも私が説得してみせる!」
何やら意気込んでいるシャレと二ネットが着替えの為に一度部屋に戻る。
「なんか、いきなり態度が変わってビックリだねー」
「あぁ」
「ふむ。やっとアトス殿の凄さが分かったのでしょう」
「遅過ぎます」
それから少しして着替え終わったシャレ達と俺達はエルフ達が集まっている広場に向かう……
「す、すまない──少し取り乱した様だ……」
「あはは──大鎌さんの表情間抜けで面白かったよ──いたい!?」
ロピの言葉に隣に居たチルが後ろから叩く。
「姉さん、場所を弁えて」
「うぅ……」
重要な話をしている事は自覚していたのか妹を睨みつけながら黙るロピだが、チルは一向に気にしていない様だ。
「ま、間抜け……?」
初めて、そんな事を言われたのか、気の抜けた表情をしていたシャレだが直ぐに正気に戻る。
「そ、それではアトス達は我々に協力してくれるって事でいいのか?」
「あぁ」
すると、席を立ち上がりガッツポーズをする様に喜ぶ。
「よし! ──アトス達が居ればかなりの戦力だ!」
シャレの喜ぶ姿に水を刺すのも悪いと思いながらも、一つ気になる事を尋ねる。
「シャレ、一つ聞きたいんだが」
「なんだ? なんでも聞いてくれ!!」
俺達の協力を取り付ける事が出来て相当嬉しいのかシャレは目を輝かせながら聞いてくる。
聞きにくい……
「協力する事はいいんだが、他のエルフ達が俺達の協力を受け入れるのか? ──特に俺の……」
その言葉に苦虫を噛む様な顔になる。
「あ、ちなみにお兄さんが協力しないなら私は協力しないよー」
「私もです」
「ふむ。ご縁が無かったって事でしょうな」
三人の冷酷な発言にますます顔を青ざめるシャレ。
「ま、任せろ!」
何やら不安な言葉だ……
「あ、明日話し合う……」
そして、シャレは嬉しい反面、同族の説得をどうしようか考えながら再び自分の部屋に戻っていく。
「あれ、大丈夫か?」
「ふむ。どっちにしろ我々は協力するとは伝えましたからな──後はシャレ殿次第ですな」
「リガスの言う通りです。後はシャレが他のエルフ族を説得出来るかに掛かっております」
それから、俺達も明日に備えて各自部屋に戻った。
それから数時間後には日が昇り再び居間に皆んなで集まる。
「ふぁ~お兄さんおはようー」
ロピはまだ眠いらしく半目で挨拶してくる。
「あぁ、おはよう」
昨日は寝るのが遅かったからか俺も眠い……
すると、何やらいつもより派手な服装で登場するシャレ。
「皆んな、おはよう──今日は私がこの村にいるエルフ全員を説得する」
どうやら、説得する為に少々着飾った服装らしい。
「ほっほっほ。気合が入っておりますな」
「あぁ──ここでアトス達の協力が無いとエルフ達を取り返せないからな」
そんな時、扉がノックされ二ネットが入って来る。
「シャレ様、その格好はどうされたんですか?」
昨日の夜決まった事なので、まだ二ネットには俺達が協力する事を伝えて無いので不思議そうにしている。
「これから、エルフ達を説得しに行く」
「なんの説得ですか?」
「うん──ここにいるアトス達にエルフ奪還の手伝いを頼んだら承諾してくれてな、なので後は他のエルフ達にアトス達と一緒に奪還しに行く事を認めて貰う」
俺はシャレの話を聞いたら二ネットが以前の様に猛反対すると思っていたが反応は意外なものだった。
「成る程……確かにそれは気合を入れなければいけませんね」
「だろ?」
「ですが、それではダメです──来てください私が服装を選びます」
「あぁ──頼む。アトス達の協力は必須だと言ってもいいからな失敗はしたく無い」
シャレの言葉に二ネットは頷く。そして、俺の視線に気がつく様にこちらに顔を向けて来る。
「どうされましたか?」
表情に笑顔などは無くどこか冷たい感じがするが、不思議と最初の頃より雰囲気が柔らかく感じる。
「い、いや……」
俺がなんて言ったら良いか言葉を選んでいるとロピが代弁してくれる。
「お兄さんは、不思議がっているんだよ! 前みたいに怖い顔で怒鳴って来ない事に!」
ロピの率直な意見に二ネットは納得いったのか身体事アトスに向けて頭を下げる。
「えぇ?! ──ど、どうしたんだよ?」
いきなり二ネットに頭を下げられて俺が動揺していると、頭を上げた二ネットが説明してくれる。
「以前の戦いで分かりました──シャレ様の言う通り私達エルフだけでは全滅していたと思います」
以前とは十体程小型が出て来た時の事か。
「ですがアナタ達の力を借りる事で危機的な状況だった筈ですが蓋を開けてみたら皆が無傷で戦闘を終わっていました──もちろんアナタのスキルのお陰と言うのは一緒に戦っていたエルフ達は全員承知しております」
一度言葉を切り、俺の目を真剣に見る。
「これまでの私の非礼、並びに我々エルフ達の言動を謝ります──そして前回と言い、今回と言い協力して頂きありがとうございます」
もう一度深々と頭を下げて来る二ネットに気にしていない事を伝える。
「ありがとうございます。アナタと一緒に戦闘を行ったエルフ達は大丈夫だと思いますが、他は以前同様か更に態度が酷い者も出て来ますので先に伝えておきます」
「あ、あぁ──わかった」
「そうならない為にも私が説得してみせる!」
何やら意気込んでいるシャレと二ネットが着替えの為に一度部屋に戻る。
「なんか、いきなり態度が変わってビックリだねー」
「あぁ」
「ふむ。やっとアトス殿の凄さが分かったのでしょう」
「遅過ぎます」
それから少しして着替え終わったシャレ達と俺達はエルフ達が集まっている広場に向かう……
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