上 下
275 / 492
第8章

274話 アトスの目覚め 2

しおりを挟む
 リガスが作った美味しいご飯を味わった俺はこれまでの話を聞く事にした。

「アレから、どうなったか教えてくれ」
「いいよー! 私達はお兄さんが囮りになってくれた後、少ししてから後を追ったの!」
「全員同意してアトス様の後を追いました」

 全員?! それは凄いな……そして嬉しい。

「追い掛けて、暫くしたらお兄さんが倒れているのを見つけたの──もう凄く危ない状態だったんだよー?」
「ご無事で本当によかったです……」

 確かに、あの怪我でよく生きていたな俺……

「ふむ。それからは急いでアトス殿をドワーフの村まで運び治療を施しました」
「自分で言うのもおかしいけど、良く間に合ったな」
「ほっほっほ。アトス殿はとても生命力が高いのでしょう」
「本当だよねー。普通だったら死んでいると思う」

 それから俺の状態が落ち着くまでドワーフの村に居た様だ。

「皆んなお兄さんの事心配してたよー」
「マーズは人間族の住処に戻りましたが、お大事にと言ってました」
「ほっほっほ。皆さん毎日の様にお見舞いに来ては食べ物などを置いて行きましたな」
「それを全部姉さんが食べてました……」

 チルはロピの事をジト目で睨む。

「あ、あはは──だって食べないで腐っちゃうのは勿体無いしね!」
「美味かったか?」
「うん! 最高に美味しかったよ!」

 ロピの笑顔を見ていたら、怒る気にもならないな。

「それから容体が少し安定したのですがいつまで経ってもアトス様が起きないので、エルフ族の村に向かいました」
「なんか、大鎌さんの村に良く効く薬があるって言ってたから向かったの!」
「そうか。ならここはエルフ族の村って事か?」
「そうだよー!」

 最後に三班の皆んなに会いたかったな

「ほっほっほ。他の者達もアトス殿と一緒について行きたいと言っておりましたがシャレ殿が断ったのですよ」
「本当は人間族を村に入れてはダメらしいのですがアトス様は特別の様です」
「なんか、皆んなお兄さんの事羨ましがってたよー? ──なんでだろうねー?」

 エルフの村なんて男なら一度は行ってみたいもんな……ふふ、実は俺も嬉しい!

 鼻の下を伸ばすと、またいつか見たいな事になりそうなので表情には出さないけどな!

「宝箱はリンクスからシッカリと頂いて皆で山分けしました」
「私達の分も有りますので後で見て下さい」
「ふふふ、コレで私達はお金持ちだよ!」

 それからは、ドワーフの村からリガスが俺の事をエルフ族の村まで運んだようだ。その後シャレがエルフ族に伝わる、貴重な良く効く薬をくれた様で俺に飲ませて一週間後に目を覚ましたらしい。

「結局俺は倒れてからどれくらいの時間が経ったんだ?」
「一ヶ月だよ」
「そんなにか?!」

 俺の感覚からしたら良く寝たくらいの感覚だったが、まさか一ヶ月も寝ていたなんて……

「大鎌さんには本当に感謝だよねー」
「うん、ここまで良く効くとは思わなかった」
「ふむ。恐らく代々伝わる貴重な薬だったのでしょうな」

 後でシャレにお礼を言っとこう。

「あ、そういえば──」

 何かを思い出した様にロピが走って部屋から出ていった。

 ロピのやつはどうしたんだ?

 勢い良く走って部屋を出て行ったが戻ってくる時も先程と同じくドダドダと騒がしく部屋に戻ってくる。

「姉さん、もっと静かに──」
「お兄さんコレ!」

 チルの小言を聞きたくなかったのかロピは反応せずに俺に向かってある物を渡してくる。

「ん?」
「お兄さんが倒れていた横に置いてあったから念の為一緒に持ってきたの!」

 ロピの手には古ぼけた本と宝石の様な真っ赤な玉がある。

 あぁ……これは確か変異体が俺にくれたやつか。

 ロピにお礼を言い本を開く。

「……うん、全く読めん!」

 何を書いているのか全然分からない。

「私にも見せてー!」

 ロピが横から覗き込む様に見たが直ぐに顔を元に戻す。

「うん、これ難しい奴だ!」

 俺と同じで全く分からなかったんだろうな……

 チルも分からず、古くから生きているリガスですらなんと書いているか分からない様だ。

「博識のリガスも分からないとなると、お手上げじゃないか?」
「ほっほっほ。そんな事はありませんぞ?」
「どう言う事だ?」
「ここはエルフ族の村なので、もしかしたら私より長く生きている者達がいるかもしれませんからな」

 ──なるほど、確かにエルフ族が長寿なのは世の中の常識だよな……多分?

 俺が前世の記憶でエルフの事を思い出そうとしていると、またもやロピが思い付いたかの様に発言した。

「あ、もう一つあったんだ──」

 ロピが再び走り部屋を出る。

「落ち着きがないな」
「ほっほっほ。アトス殿が起きて余程嬉しいのでしょう」
「姉さんはとても心配しておりました」
「そうか。嬉しいね……」
「ふむ。チル様もロピ殿も──もちろん私も心配しておりましたからな」

 ここに来て家族の温かみを感じる。

「そう言えば、三人は怪我とか無かったのか?」
「はい。軽症ばかりで暫く休んでたら直ぐに治りました」
「私も同じく一週間しないくらいで治りましたな」
「それは良かった」

 今回の戦いでは俺が一番重症だったわけか──まぁ、皆んな大した怪我じゃ無くて良かった。

 俺が一安心していると、ロピが戻って来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...