過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第8章

274話 アトスの目覚め 2

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 リガスが作った美味しいご飯を味わった俺はこれまでの話を聞く事にした。

「アレから、どうなったか教えてくれ」
「いいよー! 私達はお兄さんが囮りになってくれた後、少ししてから後を追ったの!」
「全員同意してアトス様の後を追いました」

 全員?! それは凄いな……そして嬉しい。

「追い掛けて、暫くしたらお兄さんが倒れているのを見つけたの──もう凄く危ない状態だったんだよー?」
「ご無事で本当によかったです……」

 確かに、あの怪我でよく生きていたな俺……

「ふむ。それからは急いでアトス殿をドワーフの村まで運び治療を施しました」
「自分で言うのもおかしいけど、良く間に合ったな」
「ほっほっほ。アトス殿はとても生命力が高いのでしょう」
「本当だよねー。普通だったら死んでいると思う」

 それから俺の状態が落ち着くまでドワーフの村に居た様だ。

「皆んなお兄さんの事心配してたよー」
「マーズは人間族の住処に戻りましたが、お大事にと言ってました」
「ほっほっほ。皆さん毎日の様にお見舞いに来ては食べ物などを置いて行きましたな」
「それを全部姉さんが食べてました……」

 チルはロピの事をジト目で睨む。

「あ、あはは──だって食べないで腐っちゃうのは勿体無いしね!」
「美味かったか?」
「うん! 最高に美味しかったよ!」

 ロピの笑顔を見ていたら、怒る気にもならないな。

「それから容体が少し安定したのですがいつまで経ってもアトス様が起きないので、エルフ族の村に向かいました」
「なんか、大鎌さんの村に良く効く薬があるって言ってたから向かったの!」
「そうか。ならここはエルフ族の村って事か?」
「そうだよー!」

 最後に三班の皆んなに会いたかったな

「ほっほっほ。他の者達もアトス殿と一緒について行きたいと言っておりましたがシャレ殿が断ったのですよ」
「本当は人間族を村に入れてはダメらしいのですがアトス様は特別の様です」
「なんか、皆んなお兄さんの事羨ましがってたよー? ──なんでだろうねー?」

 エルフの村なんて男なら一度は行ってみたいもんな……ふふ、実は俺も嬉しい!

 鼻の下を伸ばすと、またいつか見たいな事になりそうなので表情には出さないけどな!

「宝箱はリンクスからシッカリと頂いて皆で山分けしました」
「私達の分も有りますので後で見て下さい」
「ふふふ、コレで私達はお金持ちだよ!」

 それからは、ドワーフの村からリガスが俺の事をエルフ族の村まで運んだようだ。その後シャレがエルフ族に伝わる、貴重な良く効く薬をくれた様で俺に飲ませて一週間後に目を覚ましたらしい。

「結局俺は倒れてからどれくらいの時間が経ったんだ?」
「一ヶ月だよ」
「そんなにか?!」

 俺の感覚からしたら良く寝たくらいの感覚だったが、まさか一ヶ月も寝ていたなんて……

「大鎌さんには本当に感謝だよねー」
「うん、ここまで良く効くとは思わなかった」
「ふむ。恐らく代々伝わる貴重な薬だったのでしょうな」

 後でシャレにお礼を言っとこう。

「あ、そういえば──」

 何かを思い出した様にロピが走って部屋から出ていった。

 ロピのやつはどうしたんだ?

 勢い良く走って部屋を出て行ったが戻ってくる時も先程と同じくドダドダと騒がしく部屋に戻ってくる。

「姉さん、もっと静かに──」
「お兄さんコレ!」

 チルの小言を聞きたくなかったのかロピは反応せずに俺に向かってある物を渡してくる。

「ん?」
「お兄さんが倒れていた横に置いてあったから念の為一緒に持ってきたの!」

 ロピの手には古ぼけた本と宝石の様な真っ赤な玉がある。

 あぁ……これは確か変異体が俺にくれたやつか。

 ロピにお礼を言い本を開く。

「……うん、全く読めん!」

 何を書いているのか全然分からない。

「私にも見せてー!」

 ロピが横から覗き込む様に見たが直ぐに顔を元に戻す。

「うん、これ難しい奴だ!」

 俺と同じで全く分からなかったんだろうな……

 チルも分からず、古くから生きているリガスですらなんと書いているか分からない様だ。

「博識のリガスも分からないとなると、お手上げじゃないか?」
「ほっほっほ。そんな事はありませんぞ?」
「どう言う事だ?」
「ここはエルフ族の村なので、もしかしたら私より長く生きている者達がいるかもしれませんからな」

 ──なるほど、確かにエルフ族が長寿なのは世の中の常識だよな……多分?

 俺が前世の記憶でエルフの事を思い出そうとしていると、またもやロピが思い付いたかの様に発言した。

「あ、もう一つあったんだ──」

 ロピが再び走り部屋を出る。

「落ち着きがないな」
「ほっほっほ。アトス殿が起きて余程嬉しいのでしょう」
「姉さんはとても心配しておりました」
「そうか。嬉しいね……」
「ふむ。チル様もロピ殿も──もちろん私も心配しておりましたからな」

 ここに来て家族の温かみを感じる。

「そう言えば、三人は怪我とか無かったのか?」
「はい。軽症ばかりで暫く休んでたら直ぐに治りました」
「私も同じく一週間しないくらいで治りましたな」
「それは良かった」

 今回の戦いでは俺が一番重症だったわけか──まぁ、皆んな大した怪我じゃ無くて良かった。

 俺が一安心していると、ロピが戻って来た。
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