過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第7章

268話 別れ……

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 完全にやられた……ガバイにいい様に踊らされた……

 アイツはこの村に来た時から恐らく乗っ取りを考えていた。もちろん人間族の住処を追い出されたなんて嘘だと分かっていたが、こんな事になるなら断っとけば……

 過ぎた事の筈だが後悔の念は止まらない。

 今更だが水路の話も、アレは別の事をしていたな……
 村長としての認識の甘さが招いた結果に自分自身を殴り飛ばしたい気持ちになる。

「クソ、まだ追って来てやがる……」

 現在俺達は小型10体程に追い掛けられている。こちらは二十人程しか居ない為戦うのは無理だ。

「デグ……どうする……?」

 走りながらベムが聞いてくる。

「何も思いつかねぇ……このままだといずれ体力の限界が来て捕まるし──かと言って戦うのは無理だし……」

 八方塞がりである。これすらもガバイの戦略だと思うと怒りが込み上がって来る。

「とにかく、逃げるしか無いッス!」
「ラバさんの言う通りです!」

 ラバとレギュは後ろを見ながら呟く。

「まだ、平気ですがいつ体力の限界が来るか分からないッス!」
「私も……体力には自信が無い……」
「大丈夫です! ベムさんが疲れたら私が運びます!」

 レギュの言葉と真面目な表情にベムは微笑む。

「ありがとう……」

 だが、本当にどうする……? モンスターから逃げ続けて結構経ったが一向に引き離せる気配は無い。
 俺は無意識の内にシクさんの方に目線が行ってしまった。

「……」

 シクさんは背後の十体程居る小型に顔を向け何なら考えている様だ。

「ネーク、そっちは大丈夫か?」

 俺達より身体能力が高い為、まだまだ余裕がありそうだ。

「俺達は大丈夫だ……」

 しょうがない事ではあるが、いつものネークでは無い。
 そして、スピードを落としてシクさんの隣まで行くと、何やら二人で話している様子であった。

「どうでしょうか……?」
「それで助かるなら」

 二人は頷き合う──なんだ?

「デグ、そっちは体力的にそろそろ限界か?」

 ネークの言う通り、俺を含め体力自慢のレギュですら息を切らしている。

「あぁ……申し訳無いが俺達は、そう長く走ってられないな」
「そうか……」

 何やら決意した様に頷いたネークは俺の顔を見る。

「色々助かった。人間族は嫌いだがデグは例外だったよ」
「なにを言って──」

 ネークは他の獣人族に大声を出す。

「お前ら! 準備はいいか!?」
「「「「おう!」」」」
「行くぞ!」

 そう言って、獣人族達はどんどんとスピードを上げて行く。

「お、おいネーク!」

 俺の言葉に一切反応せずに先に進む。

「ど、どうしたッスか?!」
「わ、分かりません!」
「置いてかれた……?」

 他の三人も状況が分からない様で、焦っている。すると、シクさんが俺達四人に話し掛けて来た。

「皆んな、元気でな」
「や、山神様何言っているんですか……?」
「シク様……?」
「──私達が惹きつけるから、お前達は私達と別の場所に向かうんだ」

 シクさんの言葉にレギュとベムが反応する。

「い、嫌です! 私は山神様に着いていきます!」
「私も……」

 二人の返答に首を振るシクさん。

「お前達ではダメだ。言っては悪いが足手纏いだ」

 シクさんからの厳しい言葉に二人は何も言えない。

「二人共、一緒に過ごせて楽しかったぞ」

 多くは語らず、シクさんは二人の頭を一度撫でると俺の方にやって来る。

「デグ、二人を頼むぞ?」
「シ、シクさん行くなよ!」

 先程同様首を振る。

「これしか助かる道は無い──さっきガバイ達が投げて来た玉の効力が効いている今なら私とネークを追ってくる筈だからな」
「で、でもよ──これじゃ前と一緒だ! また、シクさんに……」

 シクさんは俺にもベム達と同じ様に頭を撫でてくれた。

「デグ、お前は立派な村長だったしリーダーの素質がある。このままめげずに生きろ」

 そう言うとシクさんの足が淡く光始めた。そしてスピードを上げてどんどんネーク達と同じ方向に向かって走って行く。

「山神様!」
「シク様……」

 二人はシクさんを追い掛けようとするが俺は必死に抑え込む。

「デグさん離して!」
「デグ離せ……」
「ダメだ! 見ただろ──俺達が追い掛けても追付けねぇ!」

 俺だって追い掛けたい! だが、シクさんに言われた事を守らねぇーと!

「ラバ! 俺達はシクさんとは別の方向に向かうぞ!」
「分かったッス!」

 俺は二人を無理矢理引っ張り別方向へと走り出す。シクさんの言った通り玉の効力の影響か小型達は一体たりともこちらには来なかった。
 その後も暫く走り続けたが流石に限界を感じて立ち止まる。

「はぁはぁ……皆んな無事か?」
「大丈夫ッス、怪我は無いッス!」

 ラバ以外の二人は、いつまで経ってもシクさんの方を見ていた。

「デグ……私達はまたシク様に助けられたの……?」
「あぁ……そうだ……」

 俺とベムがシクさんに助けられたのはこれで二度目である。そして一度目の時はアトスを宜しく頼むと言われたのにも関わらず結局は一緒に居てやれて無い──だからせめて今回の約束は絶対守ると誓った。

「山神様、大丈夫でしょうか……?」

 レギュに取っても、シクさんに助けられるのはこれで二度目か……

 落ち込んでいる姿を見てベムがすかさずレギュの事を抱きしめた。

「シク様は最強だから平気……」
「はは……そうですよね」

 ベムはレギュの事を妹の様に扱っている為、自分が落ち込んでいる暇では無いと思ったのか先程とは違って力の篭った視線を向けて来た。

「デグ……これからどうする……?」
「そうだな……今更村に戻っても、どうせろくな事にはならないだろう」

 下手したら捕まって殺されるかもしれない。

「結局ガバイの企みや目的が分からないままだが、一先ずは俺達四人が安心して暮らせる場所を探すぞ」

 何をするに置いても体制を一度立て直さないとな。

「よっしゃ! いつまでもクヨクヨなんてしてられねぇーぜ!」
「そうッス!」
「私はいつか強くなってもう一度山神様と会います!」
「私もレギュの意見に同意……」
「なら、俺達の最終目的はアトスとシクさんを見つける事だな!」

 俺の言葉に全員が大きく頷いた。
 
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