過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
266 / 492
第7章

265話 デグ達の宴会

しおりを挟む
「あはは、おいさっきのガバイの表情見たかよ! 気分爽快だぜ!」

 デグは昼間の出来事を語る様に話す。

「もう何度も聞いた……でも確かに何度思い出しても気分爽快……」

 隣に座っているベムも同意する。今はデグの家で宴会を開いている。

「山神様、こちらの料理も食べて下さい」

 参加者はいつものメンバーと獣人族達、そして最近獣人族──特にコナ──を気に入っているお年寄りが机を囲み座っている。


「あのガバイの悔しそうな表情は本当に良かったッス」
「あぁ、あの顔な!」

 デグはニコニコしながら盛り上がっている。

「おい、コナよこっちに来てお酒を注いでくれんかのう?」
「ふふ、アタシで良いなら喜んで」

 コナは席を立ち上がりお年寄りの所まで移動する。

「本当に良い子じゃな……」
「あはは、ありがとう。アタシもお爺さんと出会えて良かったよ」

 コナの言葉に同意する様に他の獣人族も次々に話始める。

「俺も爺さんと会えて良かった」
「あぁ、人間族にこんな良い人がいるとは思ってなかった」

 それぞれが思っている事を呟くが、お年寄りは何を言われてもニコニコした表情で──それはまるで孫達を見ている様な表情だ。

 少しすると、ネークとコナが私の前に来た。

「シク様、今回もあなたのお陰で助かりました」

 ネークは深々と頭を下げる。

「私は何もして無いが?」
「いえ、シク様がダブル持ちになった事でガバイ達を追い出せそうなので、やはり貴方のお陰だ」

 スキルは偶々手に入ったものであり私自身何か行動を起こしてネーク達を助けた訳では無いので、なんともむず痒い。

「シク様、アタシからもお礼を言わせてよ!」

 ネークに続いてコナまでもが感謝を示す様に頭を下げた。

「私は何もして無いから気にするな」

 私のぶっきらぼうな言葉に二人はクスリと笑う。

「シク様は不思議な人だ。獣人族でありながら人間族に慕われ、更には我々も貴方を慕っている」
「あぁ、旦那の言う通りだ。シク様を初めて見た時から何故か凄い人だと感じたけど、まさかダブル持ちになるとは思っても見なかったよ」
「それは私もだ」

 それからも他の獣人族が一人ずつ私の前に来ては、背筋がむず痒くなる様な褒め言葉を投げかけられた。

「ここまで来ると物語の主役になった気分だ」

 私の呟きにベムとレギュが反応する。

「山神様はいつだって物語の主役ですよ!」
「レギュの言う通り……シク様は立っているだけでかっこいいです……」

「私、大きくなったら山神様みたいな存在になります!」
「既に充分大きいと思う……」

 ベムの行き着く視線はただ一箇所。女性特有の胸に付いている二つの膨らみだ。
 ベムとは大違いでレギュのは結構な大きさに育っていた。それを見たベムは自身の胸に手を持っていき、観察する様に触る。

「唯一この事に関してはレギュが憎たらしい……」

 ベムの言葉など耳には入って来ないのか、今は美味しい料理を口一杯に頬張っていた。

 すると先程までラバと盛り上がっていたデグが来た。

「シクさん、あのスキル凄かったな」
「あぁ、自分でも制御出来ない程早かった」
「あはは、ちげぇーね。俺達なんて反応すら出来なかったからな」

 デグの言う通り、私が移動した際三人は私の事を見失っていた。

「あれなら、どんなにモンスターに追い掛けられても一瞬で逃げ切れるな」

 スキルを手に入れる前でもスピードにはそこそこ自信があったが、やはりモンスター達を振り切れる程では無かった──しかし今回のスキルを手に入れた事により恐らく小型程度なら問題無く逃げ切れると思う。

「ダブル持ちか……シクさんが羨ましいぜ!」

 デグは少し酔っている様で顔を赤い。

「俺もアトスやシクさんみたいに高ランクのスキルだったらな」

 少ししみじみとデグは呟く。

「私も昨日まではDランクだったから気持ちは分かる」
「やっぱり、ランクが低いとどうしてもモンスターを倒す時に手間取るんだよな」

 これは私も同じ考えだ。やはり低ランクだと、小型に攻撃しても効いているのか分からないほど反応が無い。特に私の場合は自身の拳だった為尚更である。

「デグは、武器を良いものにすればまだ戦えるだろ?」
「あぁ。俺もそこに関してはラッキーだった。ランクが低くても良い武器であれば小型にも攻撃が通るからな」

 ニカリと笑いコップに入っている酒を一気に飲み干す。

「これからは、モンスターが出現した場合シクさんに頼っちまうかもしれないが、よろしく頼む」
「あぁ。私に出来る事なら協力しよう」

 私が間を置かずに返答したのが嬉しかったのか、デグが嬉しそうにする。

「チクショ、アトスの奴が羨ましいぜ! こんな美人で優しい人が母親だったなんてよ!」

 私自身はまだ少年の事を思い出せないが、悪い母親よりは良い母親だった事を願おう。

 そして、この日の宴会は終始楽しい雰囲気で終わった。
 しかし、私達が楽しんでいる間にもガバイは策を巡らし行動していた事を私達は、まだ気が付いて無かった。それが、後に今の私達の笑顔を完全に奪い去ってしまう事も……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...