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第7章
265話 デグ達の宴会
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「あはは、おいさっきのガバイの表情見たかよ! 気分爽快だぜ!」
デグは昼間の出来事を語る様に話す。
「もう何度も聞いた……でも確かに何度思い出しても気分爽快……」
隣に座っているベムも同意する。今はデグの家で宴会を開いている。
「山神様、こちらの料理も食べて下さい」
参加者はいつものメンバーと獣人族達、そして最近獣人族──特にコナ──を気に入っているお年寄りが机を囲み座っている。
「あのガバイの悔しそうな表情は本当に良かったッス」
「あぁ、あの顔な!」
デグはニコニコしながら盛り上がっている。
「おい、コナよこっちに来てお酒を注いでくれんかのう?」
「ふふ、アタシで良いなら喜んで」
コナは席を立ち上がりお年寄りの所まで移動する。
「本当に良い子じゃな……」
「あはは、ありがとう。アタシもお爺さんと出会えて良かったよ」
コナの言葉に同意する様に他の獣人族も次々に話始める。
「俺も爺さんと会えて良かった」
「あぁ、人間族にこんな良い人がいるとは思ってなかった」
それぞれが思っている事を呟くが、お年寄りは何を言われてもニコニコした表情で──それはまるで孫達を見ている様な表情だ。
少しすると、ネークとコナが私の前に来た。
「シク様、今回もあなたのお陰で助かりました」
ネークは深々と頭を下げる。
「私は何もして無いが?」
「いえ、シク様がダブル持ちになった事でガバイ達を追い出せそうなので、やはり貴方のお陰だ」
スキルは偶々手に入ったものであり私自身何か行動を起こしてネーク達を助けた訳では無いので、なんともむず痒い。
「シク様、アタシからもお礼を言わせてよ!」
ネークに続いてコナまでもが感謝を示す様に頭を下げた。
「私は何もして無いから気にするな」
私のぶっきらぼうな言葉に二人はクスリと笑う。
「シク様は不思議な人だ。獣人族でありながら人間族に慕われ、更には我々も貴方を慕っている」
「あぁ、旦那の言う通りだ。シク様を初めて見た時から何故か凄い人だと感じたけど、まさかダブル持ちになるとは思っても見なかったよ」
「それは私もだ」
それからも他の獣人族が一人ずつ私の前に来ては、背筋がむず痒くなる様な褒め言葉を投げかけられた。
「ここまで来ると物語の主役になった気分だ」
私の呟きにベムとレギュが反応する。
「山神様はいつだって物語の主役ですよ!」
「レギュの言う通り……シク様は立っているだけでかっこいいです……」
「私、大きくなったら山神様みたいな存在になります!」
「既に充分大きいと思う……」
ベムの行き着く視線はただ一箇所。女性特有の胸に付いている二つの膨らみだ。
ベムとは大違いでレギュのは結構な大きさに育っていた。それを見たベムは自身の胸に手を持っていき、観察する様に触る。
「唯一この事に関してはレギュが憎たらしい……」
ベムの言葉など耳には入って来ないのか、今は美味しい料理を口一杯に頬張っていた。
すると先程までラバと盛り上がっていたデグが来た。
「シクさん、あのスキル凄かったな」
「あぁ、自分でも制御出来ない程早かった」
「あはは、ちげぇーね。俺達なんて反応すら出来なかったからな」
デグの言う通り、私が移動した際三人は私の事を見失っていた。
「あれなら、どんなにモンスターに追い掛けられても一瞬で逃げ切れるな」
スキルを手に入れる前でもスピードにはそこそこ自信があったが、やはりモンスター達を振り切れる程では無かった──しかし今回のスキルを手に入れた事により恐らく小型程度なら問題無く逃げ切れると思う。
「ダブル持ちか……シクさんが羨ましいぜ!」
デグは少し酔っている様で顔を赤い。
「俺もアトスやシクさんみたいに高ランクのスキルだったらな」
少ししみじみとデグは呟く。
「私も昨日まではDランクだったから気持ちは分かる」
「やっぱり、ランクが低いとどうしてもモンスターを倒す時に手間取るんだよな」
これは私も同じ考えだ。やはり低ランクだと、小型に攻撃しても効いているのか分からないほど反応が無い。特に私の場合は自身の拳だった為尚更である。
「デグは、武器を良いものにすればまだ戦えるだろ?」
「あぁ。俺もそこに関してはラッキーだった。ランクが低くても良い武器であれば小型にも攻撃が通るからな」
ニカリと笑いコップに入っている酒を一気に飲み干す。
「これからは、モンスターが出現した場合シクさんに頼っちまうかもしれないが、よろしく頼む」
「あぁ。私に出来る事なら協力しよう」
私が間を置かずに返答したのが嬉しかったのか、デグが嬉しそうにする。
「チクショ、アトスの奴が羨ましいぜ! こんな美人で優しい人が母親だったなんてよ!」
私自身はまだ少年の事を思い出せないが、悪い母親よりは良い母親だった事を願おう。
そして、この日の宴会は終始楽しい雰囲気で終わった。
しかし、私達が楽しんでいる間にもガバイは策を巡らし行動していた事を私達は、まだ気が付いて無かった。それが、後に今の私達の笑顔を完全に奪い去ってしまう事も……
デグは昼間の出来事を語る様に話す。
「もう何度も聞いた……でも確かに何度思い出しても気分爽快……」
隣に座っているベムも同意する。今はデグの家で宴会を開いている。
「山神様、こちらの料理も食べて下さい」
参加者はいつものメンバーと獣人族達、そして最近獣人族──特にコナ──を気に入っているお年寄りが机を囲み座っている。
「あのガバイの悔しそうな表情は本当に良かったッス」
「あぁ、あの顔な!」
デグはニコニコしながら盛り上がっている。
「おい、コナよこっちに来てお酒を注いでくれんかのう?」
「ふふ、アタシで良いなら喜んで」
コナは席を立ち上がりお年寄りの所まで移動する。
「本当に良い子じゃな……」
「あはは、ありがとう。アタシもお爺さんと出会えて良かったよ」
コナの言葉に同意する様に他の獣人族も次々に話始める。
「俺も爺さんと会えて良かった」
「あぁ、人間族にこんな良い人がいるとは思ってなかった」
それぞれが思っている事を呟くが、お年寄りは何を言われてもニコニコした表情で──それはまるで孫達を見ている様な表情だ。
少しすると、ネークとコナが私の前に来た。
「シク様、今回もあなたのお陰で助かりました」
ネークは深々と頭を下げる。
「私は何もして無いが?」
「いえ、シク様がダブル持ちになった事でガバイ達を追い出せそうなので、やはり貴方のお陰だ」
スキルは偶々手に入ったものであり私自身何か行動を起こしてネーク達を助けた訳では無いので、なんともむず痒い。
「シク様、アタシからもお礼を言わせてよ!」
ネークに続いてコナまでもが感謝を示す様に頭を下げた。
「私は何もして無いから気にするな」
私のぶっきらぼうな言葉に二人はクスリと笑う。
「シク様は不思議な人だ。獣人族でありながら人間族に慕われ、更には我々も貴方を慕っている」
「あぁ、旦那の言う通りだ。シク様を初めて見た時から何故か凄い人だと感じたけど、まさかダブル持ちになるとは思っても見なかったよ」
「それは私もだ」
それからも他の獣人族が一人ずつ私の前に来ては、背筋がむず痒くなる様な褒め言葉を投げかけられた。
「ここまで来ると物語の主役になった気分だ」
私の呟きにベムとレギュが反応する。
「山神様はいつだって物語の主役ですよ!」
「レギュの言う通り……シク様は立っているだけでかっこいいです……」
「私、大きくなったら山神様みたいな存在になります!」
「既に充分大きいと思う……」
ベムの行き着く視線はただ一箇所。女性特有の胸に付いている二つの膨らみだ。
ベムとは大違いでレギュのは結構な大きさに育っていた。それを見たベムは自身の胸に手を持っていき、観察する様に触る。
「唯一この事に関してはレギュが憎たらしい……」
ベムの言葉など耳には入って来ないのか、今は美味しい料理を口一杯に頬張っていた。
すると先程までラバと盛り上がっていたデグが来た。
「シクさん、あのスキル凄かったな」
「あぁ、自分でも制御出来ない程早かった」
「あはは、ちげぇーね。俺達なんて反応すら出来なかったからな」
デグの言う通り、私が移動した際三人は私の事を見失っていた。
「あれなら、どんなにモンスターに追い掛けられても一瞬で逃げ切れるな」
スキルを手に入れる前でもスピードにはそこそこ自信があったが、やはりモンスター達を振り切れる程では無かった──しかし今回のスキルを手に入れた事により恐らく小型程度なら問題無く逃げ切れると思う。
「ダブル持ちか……シクさんが羨ましいぜ!」
デグは少し酔っている様で顔を赤い。
「俺もアトスやシクさんみたいに高ランクのスキルだったらな」
少ししみじみとデグは呟く。
「私も昨日まではDランクだったから気持ちは分かる」
「やっぱり、ランクが低いとどうしてもモンスターを倒す時に手間取るんだよな」
これは私も同じ考えだ。やはり低ランクだと、小型に攻撃しても効いているのか分からないほど反応が無い。特に私の場合は自身の拳だった為尚更である。
「デグは、武器を良いものにすればまだ戦えるだろ?」
「あぁ。俺もそこに関してはラッキーだった。ランクが低くても良い武器であれば小型にも攻撃が通るからな」
ニカリと笑いコップに入っている酒を一気に飲み干す。
「これからは、モンスターが出現した場合シクさんに頼っちまうかもしれないが、よろしく頼む」
「あぁ。私に出来る事なら協力しよう」
私が間を置かずに返答したのが嬉しかったのか、デグが嬉しそうにする。
「チクショ、アトスの奴が羨ましいぜ! こんな美人で優しい人が母親だったなんてよ!」
私自身はまだ少年の事を思い出せないが、悪い母親よりは良い母親だった事を願おう。
そして、この日の宴会は終始楽しい雰囲気で終わった。
しかし、私達が楽しんでいる間にもガバイは策を巡らし行動していた事を私達は、まだ気が付いて無かった。それが、後に今の私達の笑顔を完全に奪い去ってしまう事も……
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