257 / 492
第7章
256話 ガバイの暗躍 2
しおりを挟む
「親父、会場の準備終わったぜ?」
「この前と同じ場所で設営はバッチリだぜ」
そこにはサット、マットがこの村では似つかない様な服装を着て父親のガバイに話し掛ける。
「二人共ご苦労。そろそろ村人達が集まって来る時間だからお茶の準備を頼む」
そして、二人より更に立派な服装を着ているのがガバイであり、彼は前回同様に建物の入り口付近に立ち、村人達を出迎える様だ。
「今日も、村人達に野蛮人達について教えてやらないとな」
ガバイは闇に包まれた外を見つめて呟く。
「少しでも早く奴らを追い出さないと計画の邪魔になる……」
ガバイがブツブツと独り言を言っていると、ゾロゾロとしかし静かに村人達が建物に集まって来た。
すると、ガバイは直ぐに顔に笑顔を貼りつけて集まって来た村人に声を掛ける。
「皆さん、本日もようこそいらっしゃいましたね。さぁさぁコチラです」
村人、一人一人丁寧に対応をして席に座らす。ガバイ自身の見た目は誰が見ても良くは無い……だが彼は持ち前の話術を巧みに扱い相手に不快感を与えず接する事が出来るようだ。
「さぁ、こちらへどうぞマダム」
「あはは、ガバイさんマダムなんて。私はそんな玉じゃないよ」
「いえいえ、この村の女性は皆美しい。私は人間族の住処で住んでおりましたが、その時に居たマダムに引けを取りませんよ?」
ガバイの言葉は明らかに大袈裟に言った言葉であるが、褒められて嫌な人はいない為、ガバイに煽てられた者達は皆笑顔で席に着いていく。
そして、最後の村人が建物に入る所を確認し、ガバイは外の様子を見るが特に問題無いと判断し扉を閉めた。
しかし、ガバイが気付かないだけで実際には一人の青年が暗闇に紛れる様にガバイ達の様子を伺っていたのだ。
「何を始めるか分からないけど、ますます怪しいッスね!」
闇に紛れ込んでいたのはラバであった。
「これは、何の話をしているか聞いた方が良さそうッスね」
そう言うと、ラバは扉からでは無く屋根に静かに登り始めてガバイ達の様子を伺おうと試みている様だ。
「あんまり、こういうの得意じゃ無いけどベムさんの為に頑張るッス!」
そして、なんとか登り切り屋根の隙間から中の様子を伺う。
「皆さん、本日もお集まり頂き誠にありがとうございます」
ガバイが村人に礼をするに連れて、少し後ろに並んでいた息子達も頭を下げる。
「さて、本日も野蛮人達が如何に危険な存在で、更に我々の様な高貴な種族と同列に扱われている異変についてお話ししましょう」
ガバイが一度手を叩くと、息子達が茶菓子などを配り始める。
「ただ、私の話を聴くだけでは暇だと思いますので、息子達が配るお菓子を食しながら聴いて頂ければと思います」
全員に配り終えたのを確認して話を進めるガバイ。
「では、まず一つ目として野蛮人の凶暴な所です。元々野蛮人は戦闘を好む様で、前回一緒に小型を討伐した者から聞いた話では、戦闘時に豹変し殆ど一人で倒し切ってしまった様です」
この言葉に村人達は少し騒めく。
「これは、確かに村にしたら頼もしいですが、その分怖い反面もありますね……」
ガバイが語尾を濁す様に呟くと、村人達は次に何の言葉が出て来るのか気になってしょうがない様だ。
「もし、野蛮人共が我々人間族の村を乗っ取ろうとしたら、直ぐにでも我々はやられてしまうでしょう!」
語尾を弱くした後に強い言葉で村人達に語り掛ける事で、村人達はどんどんガバイの話に惹きつけられている様だ。
「皆さん! このまま野蛮人共にこの村をいい様にされても悔しく無いのですか?!」
どんどんと熱の篭った口調に席に座っている村人達も熱が入り席を立ち上がる者達が続出する。
「そうだ! ガバイさんの言う通りだぜ」
「あぁ、俺達人間族の村なのに野蛮人達が居るのはおかしい!!」
「そうよ! 野蛮人なんて居なくなるべきだわ!」
村人達が次々思う事をぶちまける様に話し始め、流石に声が大きくなってしまいガバイは静止させる。
「皆さん、ありがとうございます。それで私は考えました」
ガバイが何を話すか知りたい為に全員が静まり返る。
「野蛮人共をこの村から追い出そうと思いますーーもしそこでデグさん達が庇う様であれば悲しい選択ですが反対する人達も一緒にこの村を追放します」
先程まで勢いよく自分達の意見を述べていた者達も、村長であるデグや反対意見を言う者まで村から追放すると聞き、色々思う事がある様だ。
「ガ、ガバイさん、それは同じ人間族も反対した場合は追放するって事かい?」
一人の男性が恐る恐るガバイに質問する。
「えぇ。最初は抵抗があると思いますが考えて下さい、このままだと他の種族達がどんどんこの村に集まり住む様になります。そうなったら我々では流石に抵抗出来ませんよ?」
少し、強い口調で周りに語り掛けるガバイ。
「人数が増えたら勿論我々では勝てません。そうしたら逆に私達人間族がこの村から追い出されてしまうかもしれませんよ? ですが、今の状況ならまだギリギリ間に合います!」
皆が、悩む仕草をしている。
そして、時間も大分経った為、ガバイが解散を持ちかけた。
「では、本日はここまでです。いいですか? 皆さんよく考えて見て下さい。今はキツイ選択ですが、先を考えると正しいです。このまま野放しにしていると、我々がこの村を追い出されますからね? そこの部分を考えて下さい。また、次の機会に皆さんの意見を聞こうと思います」
こうして、村人達はどんどんと建物を出て行く。
そして屋根に登って今のやり取りを聴いていた男もバレない様に闇に紛れ込む様にしてその場から立ち去ったのであった……
「この前と同じ場所で設営はバッチリだぜ」
そこにはサット、マットがこの村では似つかない様な服装を着て父親のガバイに話し掛ける。
「二人共ご苦労。そろそろ村人達が集まって来る時間だからお茶の準備を頼む」
そして、二人より更に立派な服装を着ているのがガバイであり、彼は前回同様に建物の入り口付近に立ち、村人達を出迎える様だ。
「今日も、村人達に野蛮人達について教えてやらないとな」
ガバイは闇に包まれた外を見つめて呟く。
「少しでも早く奴らを追い出さないと計画の邪魔になる……」
ガバイがブツブツと独り言を言っていると、ゾロゾロとしかし静かに村人達が建物に集まって来た。
すると、ガバイは直ぐに顔に笑顔を貼りつけて集まって来た村人に声を掛ける。
「皆さん、本日もようこそいらっしゃいましたね。さぁさぁコチラです」
村人、一人一人丁寧に対応をして席に座らす。ガバイ自身の見た目は誰が見ても良くは無い……だが彼は持ち前の話術を巧みに扱い相手に不快感を与えず接する事が出来るようだ。
「さぁ、こちらへどうぞマダム」
「あはは、ガバイさんマダムなんて。私はそんな玉じゃないよ」
「いえいえ、この村の女性は皆美しい。私は人間族の住処で住んでおりましたが、その時に居たマダムに引けを取りませんよ?」
ガバイの言葉は明らかに大袈裟に言った言葉であるが、褒められて嫌な人はいない為、ガバイに煽てられた者達は皆笑顔で席に着いていく。
そして、最後の村人が建物に入る所を確認し、ガバイは外の様子を見るが特に問題無いと判断し扉を閉めた。
しかし、ガバイが気付かないだけで実際には一人の青年が暗闇に紛れる様にガバイ達の様子を伺っていたのだ。
「何を始めるか分からないけど、ますます怪しいッスね!」
闇に紛れ込んでいたのはラバであった。
「これは、何の話をしているか聞いた方が良さそうッスね」
そう言うと、ラバは扉からでは無く屋根に静かに登り始めてガバイ達の様子を伺おうと試みている様だ。
「あんまり、こういうの得意じゃ無いけどベムさんの為に頑張るッス!」
そして、なんとか登り切り屋根の隙間から中の様子を伺う。
「皆さん、本日もお集まり頂き誠にありがとうございます」
ガバイが村人に礼をするに連れて、少し後ろに並んでいた息子達も頭を下げる。
「さて、本日も野蛮人達が如何に危険な存在で、更に我々の様な高貴な種族と同列に扱われている異変についてお話ししましょう」
ガバイが一度手を叩くと、息子達が茶菓子などを配り始める。
「ただ、私の話を聴くだけでは暇だと思いますので、息子達が配るお菓子を食しながら聴いて頂ければと思います」
全員に配り終えたのを確認して話を進めるガバイ。
「では、まず一つ目として野蛮人の凶暴な所です。元々野蛮人は戦闘を好む様で、前回一緒に小型を討伐した者から聞いた話では、戦闘時に豹変し殆ど一人で倒し切ってしまった様です」
この言葉に村人達は少し騒めく。
「これは、確かに村にしたら頼もしいですが、その分怖い反面もありますね……」
ガバイが語尾を濁す様に呟くと、村人達は次に何の言葉が出て来るのか気になってしょうがない様だ。
「もし、野蛮人共が我々人間族の村を乗っ取ろうとしたら、直ぐにでも我々はやられてしまうでしょう!」
語尾を弱くした後に強い言葉で村人達に語り掛ける事で、村人達はどんどんガバイの話に惹きつけられている様だ。
「皆さん! このまま野蛮人共にこの村をいい様にされても悔しく無いのですか?!」
どんどんと熱の篭った口調に席に座っている村人達も熱が入り席を立ち上がる者達が続出する。
「そうだ! ガバイさんの言う通りだぜ」
「あぁ、俺達人間族の村なのに野蛮人達が居るのはおかしい!!」
「そうよ! 野蛮人なんて居なくなるべきだわ!」
村人達が次々思う事をぶちまける様に話し始め、流石に声が大きくなってしまいガバイは静止させる。
「皆さん、ありがとうございます。それで私は考えました」
ガバイが何を話すか知りたい為に全員が静まり返る。
「野蛮人共をこの村から追い出そうと思いますーーもしそこでデグさん達が庇う様であれば悲しい選択ですが反対する人達も一緒にこの村を追放します」
先程まで勢いよく自分達の意見を述べていた者達も、村長であるデグや反対意見を言う者まで村から追放すると聞き、色々思う事がある様だ。
「ガ、ガバイさん、それは同じ人間族も反対した場合は追放するって事かい?」
一人の男性が恐る恐るガバイに質問する。
「えぇ。最初は抵抗があると思いますが考えて下さい、このままだと他の種族達がどんどんこの村に集まり住む様になります。そうなったら我々では流石に抵抗出来ませんよ?」
少し、強い口調で周りに語り掛けるガバイ。
「人数が増えたら勿論我々では勝てません。そうしたら逆に私達人間族がこの村から追い出されてしまうかもしれませんよ? ですが、今の状況ならまだギリギリ間に合います!」
皆が、悩む仕草をしている。
そして、時間も大分経った為、ガバイが解散を持ちかけた。
「では、本日はここまでです。いいですか? 皆さんよく考えて見て下さい。今はキツイ選択ですが、先を考えると正しいです。このまま野放しにしていると、我々がこの村を追い出されますからね? そこの部分を考えて下さい。また、次の機会に皆さんの意見を聞こうと思います」
こうして、村人達はどんどんと建物を出て行く。
そして屋根に登って今のやり取りを聴いていた男もバレない様に闇に紛れ込む様にしてその場から立ち去ったのであった……
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる