過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第7章

252話 日常

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「デグ、見回りの時間だよ」

 扉からネークの声が聞こえる。

「あぁ、今行く」

 ネークの言葉で目が覚めた俺は急いで朝の準備を整えて外に出た。

 昨日は色々あって帰って直ぐ寝てしまったな。

「あはは、どうやら今起きた様だね?」
「デグは、アタシ達と違って寝起き悪いね」
「いつも、悪いな」

 最近はネークとコナが毎日起こしに来てくれるのが日課となっている。

「デグも早くお嫁さんを貰うべきだよ」
「あぁ、それはアタシも賛成だ」
「そうすれば、毎朝奥さんに起こして貰って遅れる事が無いしね」
「……」

 何も言い返せないのがキツいぜ……

「デグはお嫁さん欲しく無いのかい?」
「あぁ? そりゃ俺も良い年齢だし欲しいとは思うけどよ」
「なら、見つけなよ。デグなら選り取り見取りだろ?」

 コナが顔を俺の方に向けながら聞いてくる。

「全然、選り取り見取りなんかじゃねぇーよ……」

 自分で言ってて悲しいが事実だ……

「俺の事は良いんだよ! ほっとけ!」

 俺の否定に二人は顔を向けながら可笑しそうに笑う。

「あはは、悪かった悪かった」
「それにしても、本当に不思議だね。デグは獣人族のアタシから見てもモテそうに思うんだけどね……」
「確かに、村の村長であり、男気があって、戦闘も出来るし、言う事無いよね?」

 ネークとコナが、不思議そうな表情を浮かべるが、俺が聞きたいくらいだぜ。
 
 なんで俺はモテない!?

 そして、二人は俺の横で堂々とイチャついている。

 なんだか、朝から精神的に削られるぜ……

 イチャつくなと直接言うのも負けた感じがするので、最大限の抗議として横目で睨み付けるが、二人は全く気が付いて無い様だ。そして集合場所に到着する。

「二人共おはよう……」

 ベムの挨拶にネークとコナが返す。

 すると、俺が疲れている様子を敏感に感じ取ったのかレギュが心配そうな表情で聞いてくる。

「デグさん、元気無いですがどうしたんですか?」

 レギュの心配してくれる優しさが身に染みるぜ……

「自分の体臭に参っているんだと思う……」
「ちげぇーよ! それに俺は臭くねぇ!!」

 俺の否定に獣人族三人が俺の方を見て少し驚いた顔をした。

「「「え?」」」
「え?」

 俺が三人に顔を向けると直ぐに逸らされた。

「お、おいネーク、コナどうしたんだよ……?」

 俺は笑みを浮かべて聞く。

「い、いや。何でも無い」
「あ、あぁ。何でも無いさ」

 何だ……? さっきまで楽しく会話してたじゃねぇーか。
 続いて三人目の獣人であるシクさんに聞く。


「シ、シクさん……俺は臭くねぇーよな……?」
「……」

 シクさんは俺の事を上から下まで二往復くらい見回した後に答える。

「デグ、昨日身体を拭いて無いだろう? 人間族には分からなくても我々獣人族は分かる」

 た、確かに昨日は疲れて直ぐに寝てしまった。
 だけど、そんなの他の奴らも、ついついそうなるだろ?!

「お、男なら一日くらい身体拭かないのは普通だよな?!」

 俺は、ラバに聞く。

「自分は毎日身体を拭いているッス!」

 う、嘘だ! 俺は三日に一度くらいしか拭いてないぞ?!

「やっぱり、臭かった……」

 ベムの言葉が心に突き刺さり、その場に座り込んでしまう。

 別にベムにどう思われようが今更気にしないが、他の女性に臭いと思われていたならショックがデカい……

「デ、デグさん! だ、大丈夫です! 山神様は嗅覚が優れているだけで私達からしたら全然臭わないです!」
「ホントか……?」
「は、はい!」

 レギュの満面の笑みに、またもや救われる。

「レギュ、時には正直に言ってあげるのが良い事もある……」

 笑いながら座り込んでいる俺を見下ろしている。

 きょ、今日は言い返しても分が悪そうだから辞めとこう……


「さ、さぁ見回り開始だ。今日も俺達は向こうから回る。行くぞ!」

 俺はベムから少しでも距離を取る様に歩き始める。

「逃げた……」

 何やら後ろで言っているが無視だ! 後ろを向かずに俺はどんどん進んで行くと後ろから声が掛かる。

「デ、デグさん、もうベムさん居ないので歩くペース落としても平気ッス」
「お、おう」

 後ろを向くとラバとネーク、コナが居た。

「さて、のんびり行くか」

 ここは大人な三人の為先程の話を特に蒸し返したりはせず見回りを開始する。

「おや? デグさん見回りかい?」

 途中で老婆に声を掛けられる

「おう、何か困った事無いか?」
「大丈夫、何かあれば言うからさ」
「なんでも言ってくれ!」

 去り際に村人はネークとコナを睨み付ける。

「あたしゃ、野蛮人と一緒の空気を吸いたく無いたらありゃしないよ! それに、なんでシク様がこっち来ないんだい!」

 俺達に聞こえない様に言っているつもりかもしれないがハッキリと聞こえた。恐らく俺が聞こえているので、聴覚が良い獣人族である二人も聴こえているだろう……

 やはり、シクさん以外の獣人族に対する風当たりは相当に悪い。だが、最近はそうでも無い住人達も居る。

「あ! 獣人族のネークとコナが来た!」

 見回りの途中で次は子供達が声を掛けてきた。

「ネーク、あそぼ?」
「あはは、見回りが終わったら大歓迎さ」
「コナ! 抱っこして!」
「こ、困ったね……」

 子供達からしたらシクさんと同種族ってだけで親近感が湧いているのか大人達の様な偏見は無い為直ぐに懐いた。
 また、その親達も二人が自分達の子供を丁寧に扱っている事が分かった為、今では笑顔でその様子を見ているくらいである。

 こうして、少しずつではあるが移住して来た獣人達も徐々にこの村に慣れて来ている様に感じる。

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