過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
249 / 492
第7章

248話 村の見回り

しおりを挟む
「デグいるかい?」

 俺の家の扉が鳴った。誰かが来た様だ。
 俺はまだ眠い身体を起こして扉に向かう。

「おう、ちょっと待ってくれ」

 顔だけ洗い、扉を開けるとそこにはネークとコナが居た。

「あはは、寝起きかい?」
「あぁ、それよりもどうした?」
「アタシ達も何か手伝おうと思ってね!」

 コナの言葉に隣に居るネークが頷く。

「住処の方はどうするんだ? 少しずつ家を建てるつもりなんだろ?」

 ネーク達に住む様に案内した土地には大きな家が一つしか無い為、現在は目下家の製作中である。

「あぁそれは他の者達に任せて来た。俺達はデグを手伝おうと思って」
「いいのか?」
「あぁ」

 ここまで言われたのなら何かしら手伝って貰おう。

「なら今日は俺達と村の見回りにでも行くか」

 俺は準備を済まし、いつもの集合場所に向かった……


「デグさん、おはようッス!」
「おう!」

 集合場所には既に全員が揃って居た。

「あれ? 今日はネークさんとコナさんも一緒ッスか?」
「あぁ、手伝ってくれると言うから連れて来た。今日は半分に分かれて回ろうと思うが、誰か……」

 手伝ってくれと俺が言う前にベムとレギュは一瞬でシクさんの腕を両脇から組む。

「なら副村長として、私はシク様と行動しようと思う……」
「わ、私も山神様と行きます!」
「なら、自分も……」

 ラバがベムの方に近付くのを俺は止める。

 すまんラバ……許せ

「お前はこっちに来い」
「え? え? なんでですか!?」
「いいから」

 理由も言わずに連れて行く。

「なら、俺達はこっちから回るから途中で合流しよう」
「あぁ。デグよ私達はいつも通りのルートで良いのか?」
「大丈夫だ!」

 シクさん達は毎日回るルートで俺達はルートを逆に辿る事にした。

「ひどいッス……」
「わ、悪かったよ……」

 シクさん達と別れた俺達は現在見回りの為、村を歩いている。だが、ベムと一緒に行動したいラバを無理やりこちらに引き連れたので、少し拗ねている様だ。

 俺が悪いが……

「ラバ君は、あのベムちゃんが好きなのかい?」
「ばっか! アンタは本当にデリカシーが無いね……そういうのは分かってても聞かないもんだよ!」

 ネークの質問にコナが注意する。

「な、なんの事ッスか!? 自分は別にベムさんの事を尊敬しているだけであり、す、好きなんて気持ちは持って無いッス!」

 ラバよ、それは好きですと言っている様なものだぞ……

「あはは、そうか。すまない」
「アタシの旦那が悪かったね?」

 二人は大人な対応でラバに謝る。

「じ、自分は別にベムさんの事を好きとか、そういう気持ちは無いッスけど、そう見えるッスか……?」

 恐る恐る聞くラバに二人は大きく一回頷く。

「デ、デグさんやばいッス。これ、もしかしてベムさんにもバレていますかね?」

 心配そうに見て来るラバに俺は応える。

「安心しろ、アイツは鈍感だから全く気付いていないと思うぞ」
「そ、そうですか……」

 少し肩を落とすラバであった。

 平和だな……

 俺は、こんな日常が続いていくことを願う。

「ラバ君、男は度胸さ。俺もコナと付き合うまではひたすらアピールしたもんさ」
「アンタ、やめな! 恥ずかしい……」

 コナが恥ずかしそうに顔を赤める。

 シクさんは人間族の俺から見ても、とんでも無く美人に見えるが、コナもかなり綺麗だな。

 獣人族は皆美人なのか? それによく聞くのはエルフを一目でも見れば惚れずにはいられないと言う程だし是非一度拝んでみたいものだ。

 そして、村を見回っていると声を掛けられた。

「おーい、デグさん!」
「おーう。どうした?」

 村のお年寄りが声を掛けて来た。

「今日はシク様居ないのかい?」
「あぁ、今日は分かれて見回っているから居ないな」
「そうかい、残念だね……ところで、そちらさんは?」

 先程まで寂しそうにしていた表情を一変させて、鋭い目線で睨み付ける様にネークとコナを見る。

「あ、あぁ。この二人は昨日この村で受け入れた、ネークとコナだ」

 すると、二人は自己紹介と挨拶をする。

「ハッ! アンタ達みたいな野蛮人はこの村には要らないよ!」

 急に騒ぎ出す、お年寄りに少し圧倒される。

「な、何を言うんだ! 野蛮なのはアンタ達人間族だろ!?」

 コナが言い返す為に前に歩こうとするがネークに止められる。

「ネーク、どきな!」
「コナ、ダメだ。ここで騒ぎになったら皆んなが困る、いいね?」

 一瞬だけ、普段物腰が柔らかいネークの表情が怒気を含む様に変わった。
 コナはそんなネークを見て、怒りを収める。

「わ、分かったからアタシにそんな怖い顔しないで……」

 すると、ニコリと笑顔に戻りコナに笑い掛ける。

「あぁ、すまない」

 そんなやり取りを気にもせずお年寄りは好き勝手な事を言っている。

「大体、アンタ達野蛮人と同じ空気だってアタシは吸いたく無いよ!」
「おいおい、なんでそんなに嫌うんだよ。シクさんだって同じ獣人族だぞ?」
「こんな奴らとシク様を一緒にしないでおくれ! シク様は本当に心優しい方なんだよ……なんかの罰で野蛮人の姿に変えられたのさ!」

 言っている事がメチャクチャだな……
 だが、年寄りは本当にそう思ってそうだ。

 それから、お年寄りを落ち着かせて俺達は見回りを再開する……


「二人共、すまない……」
「はは、良いさ。あんな態度は慣れているからね。俺達は気にしない」
「人間族全員が、あんな態度を取る訳じゃ無いとも知っているさ!」

 ネークとコナは快く許してくれる。

「それにしても、シク様は凄いね。あんな頭の固いお年寄りにも認められているなんて」
「本当だね、同じ獣人族としてアタシは、なんだか誇らしいよ!」

 二人は嬉しそうに話し合う。

「あぁ、シクさんはなんか不思議な人なんだよな。もちろん最初は二人みたいな態度を取られていたんだが、何故かいつの間にかあんな感じになっていたな」
「それに、ベムさんもシク様を崇拝しているッス!」

 シクさんの、あの不思議な雰囲気は何だろうな……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

モブ高校生、ダンジョンでは話題の冒険者【ブラック】として活動中。~転校生美少女がいきなり直属の部下とか言われても困るんだが~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は【ブラック】という活動名でダンジョンに潜っているAランク冒険者だった。  ダンジョンが世界に出現して30年後の東京。  モンスターを倒し、ダンジョンの攻略を目指す冒険者は、新しい職業として脚光を浴びるようになった。  黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。果たして、白桃の正体は!?  「才斗先輩、これからよろしくお願いしますねっ」  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※序盤は結構ラブコメ感がありますが、ちゃんとファンタジーします。モンスターとも戦いますし、冒険者同士でも戦ったりします。ガチです。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ※お気に入り登録者2600人超えの人気作、『実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する』も大好評連載中です!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...