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第7章
244話 デグ達の日常
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「デグさん、今大丈夫ですか?」
扉を叩く音に、俺は目が覚める。
「ちょっと、待ってくれ……」
寝起きの為、頭がハッキリせず俺はコップ一杯の水を飲む。
「ふぅ……」
渇いている喉を水で潤し、俺は家の扉を開ける。
「ラバ、どうした?」
「報告ッス!」
ラバが何やら書類を見ながら、俺に今日の予定を伝えて来る。
「以上ッスね」
「分かった分かった。お前は早くベムに告白でもしとけ」
「な、なんですか、いきなり!?」
ベムの事が好きなラバは顔を真っ赤にして叫び始める。
「そ、それよりも早く来てくださいね! そろそろ、ベムさんやシク様が集合場所に来ると思うので!」
「はいはい」
ベムはどうでも良いが、シクさんを待たす訳にはいかねぇーな!
俺は、顔を洗い軽く朝食を食べてから直ぐに家を出た。
「さて、今日も仕事頑張るか!」
俺は、自宅の扉を勢いよく開け放ち集合場所に向かう。
「シクさんおはようございます!」
俺が集合場所に到着すると、既にシクさんとベム、レギュが先に到着していた。
「遅い……」
「悪い悪い」
ベムには適当に返してシクさんの方を向く。
「それじゃ、シクさん今日もよろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそ宜しく頼む」
「デグさん、私も宜しくお願いします!」
元気よくレギュが挨拶してくれた。
うん、感じの良さそうな子だ。
「変態……」
「な!? 何を言いやがる!」
ベムの言葉の意味を二人は分かっていない様で、首を傾げていた。
「山神様、どういう意味ですか?」
「私にも分からん」
それから俺達は村の見回りの為歩き回る。
シクさんがこの村に来てから一ヶ月程経過した。最初は村人達の偏見が凄く、歩くだけ陰口を言う者が続出する。
まぁ、俺達の目の前で言えば村を追い出されると知っている為、本当に陰でコソコソ噂している程度ではあるが。
「シク様、疲れてませんか……?」
「ベムよ、まだ五分も歩いて無いぞ?」
「あはは、ベムさんは山神様の事を心配しているんですよ!」
この調子でベムがシクさんを神格化している為、行動する時はいつもシクさんの後を追う様に付いていく。
はは、これじゃどっちが副村長なのか判らないな。
そんな事もあり、シクさんとレギュには村の見回りを手伝ってもらう事にした。
「おや、シク様じゃないかい!」
「こりゃ、シク様この前は手伝って頂きありがとうございました」
「シク様、シク様! 私達とあそぼー!」
常に俺かベムがシクさんと一緒に行動する様になり、最初は陰口などを言っていた村人達だが今では獣人族にも慣れて俺やベムよりも人気者になった。
命の恩人だとは言え、なんだか悔しいぜ……
「あ、レギュの奴もいるぜ?」
「レギュ、あそぼー」
「ゴメンなさい。私にはしないといけない仕事があります」
「あはは、何言っているんだよ! レギュに仕事なんて無いだろ?」
村の子供達がレギュの手を引っ張り遊びに誘う。
「な、何を失礼な! 私にも立派な仕事があります!」
「レギュはなにするのー?」
「わ、私は……」
答えに迷ったのか、レギュが俺の方をチラチラと見て来る。
「レギュは、シクさんの護衛をしているんだ」
俺は子供達に向かって話し掛ける。
「でも、村長やベムさんが居ればシク様守れるじゃん!」
「む……確かに……」
「デグさーん……」
レギュが涙目で見て来る。
「あはは、まぁ二人より三人だ!」
子供に論破されてしまい、俺は笑って誤魔化す。
「ほら、やっぱり仕事なんて無いじゃん! レギュ遊ぼうぜ!」
「レギュ、あそぼー」
村の子供達の誘いから、なんとか逃げ出したレギュをベムが揶揄う。
「遊んでくれば良かったのに……」
「あーん、ベムさんまでいじめるー!」
「ふふふ、冗談。ごめんごめん……」
ベムがレギュの頭を背伸びして、優しく撫でる。
それからは、村の家を回る度にシクさんは声を掛けられてはお茶をしたり、手伝ったりした。
「なんか、俺達より頼られてないか……?」
「流石、シク様……デグとの人徳の違い……」
「いやいや、その中にはお前も入っているからな?!」
俺達が話している間も年寄り達に捕まったシクさんはお茶を出されて話を聞いてあげている。
「シク様、この前は助かりました」
「いや、何かあったらいつでも言ってくれ」
「シク様、これは家の畑で採れたモノなので少ないですが是非」
「いいのか? まだ、沢山獲れる訳では無いんだろう?」
「シク様に食べて貰いたいんです……」
年寄り達は顔をシワくちゃにしながら笑い掛ける。
「不思議な人だよな」
「うん……」
シクさん自身は一切笑っていないのだが、話している相手は笑顔なのだ。
「山神様、そろそろ次に行かないと間に合わないですよ!」
「ほうほう。それは時間を取らせてしまいすみません」
「いや、気にしないでくれ」
「シク様を独り占めなんてして居たら村八分にされてしまいますよ」
冗談だろうが、年寄りは大口を開けて笑っている。
「それじゃ、また来る」
「えぇ楽しみにしております」
そして、シクさんと一緒に他の家も回る。
シクさんは、この村に来て大分馴染んできたと思う。
だが、俺はこの時ガバイ達や、シクさんを良く思わない村人達の存在に気付いていなかった……
扉を叩く音に、俺は目が覚める。
「ちょっと、待ってくれ……」
寝起きの為、頭がハッキリせず俺はコップ一杯の水を飲む。
「ふぅ……」
渇いている喉を水で潤し、俺は家の扉を開ける。
「ラバ、どうした?」
「報告ッス!」
ラバが何やら書類を見ながら、俺に今日の予定を伝えて来る。
「以上ッスね」
「分かった分かった。お前は早くベムに告白でもしとけ」
「な、なんですか、いきなり!?」
ベムの事が好きなラバは顔を真っ赤にして叫び始める。
「そ、それよりも早く来てくださいね! そろそろ、ベムさんやシク様が集合場所に来ると思うので!」
「はいはい」
ベムはどうでも良いが、シクさんを待たす訳にはいかねぇーな!
俺は、顔を洗い軽く朝食を食べてから直ぐに家を出た。
「さて、今日も仕事頑張るか!」
俺は、自宅の扉を勢いよく開け放ち集合場所に向かう。
「シクさんおはようございます!」
俺が集合場所に到着すると、既にシクさんとベム、レギュが先に到着していた。
「遅い……」
「悪い悪い」
ベムには適当に返してシクさんの方を向く。
「それじゃ、シクさん今日もよろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそ宜しく頼む」
「デグさん、私も宜しくお願いします!」
元気よくレギュが挨拶してくれた。
うん、感じの良さそうな子だ。
「変態……」
「な!? 何を言いやがる!」
ベムの言葉の意味を二人は分かっていない様で、首を傾げていた。
「山神様、どういう意味ですか?」
「私にも分からん」
それから俺達は村の見回りの為歩き回る。
シクさんがこの村に来てから一ヶ月程経過した。最初は村人達の偏見が凄く、歩くだけ陰口を言う者が続出する。
まぁ、俺達の目の前で言えば村を追い出されると知っている為、本当に陰でコソコソ噂している程度ではあるが。
「シク様、疲れてませんか……?」
「ベムよ、まだ五分も歩いて無いぞ?」
「あはは、ベムさんは山神様の事を心配しているんですよ!」
この調子でベムがシクさんを神格化している為、行動する時はいつもシクさんの後を追う様に付いていく。
はは、これじゃどっちが副村長なのか判らないな。
そんな事もあり、シクさんとレギュには村の見回りを手伝ってもらう事にした。
「おや、シク様じゃないかい!」
「こりゃ、シク様この前は手伝って頂きありがとうございました」
「シク様、シク様! 私達とあそぼー!」
常に俺かベムがシクさんと一緒に行動する様になり、最初は陰口などを言っていた村人達だが今では獣人族にも慣れて俺やベムよりも人気者になった。
命の恩人だとは言え、なんだか悔しいぜ……
「あ、レギュの奴もいるぜ?」
「レギュ、あそぼー」
「ゴメンなさい。私にはしないといけない仕事があります」
「あはは、何言っているんだよ! レギュに仕事なんて無いだろ?」
村の子供達がレギュの手を引っ張り遊びに誘う。
「な、何を失礼な! 私にも立派な仕事があります!」
「レギュはなにするのー?」
「わ、私は……」
答えに迷ったのか、レギュが俺の方をチラチラと見て来る。
「レギュは、シクさんの護衛をしているんだ」
俺は子供達に向かって話し掛ける。
「でも、村長やベムさんが居ればシク様守れるじゃん!」
「む……確かに……」
「デグさーん……」
レギュが涙目で見て来る。
「あはは、まぁ二人より三人だ!」
子供に論破されてしまい、俺は笑って誤魔化す。
「ほら、やっぱり仕事なんて無いじゃん! レギュ遊ぼうぜ!」
「レギュ、あそぼー」
村の子供達の誘いから、なんとか逃げ出したレギュをベムが揶揄う。
「遊んでくれば良かったのに……」
「あーん、ベムさんまでいじめるー!」
「ふふふ、冗談。ごめんごめん……」
ベムがレギュの頭を背伸びして、優しく撫でる。
それからは、村の家を回る度にシクさんは声を掛けられてはお茶をしたり、手伝ったりした。
「なんか、俺達より頼られてないか……?」
「流石、シク様……デグとの人徳の違い……」
「いやいや、その中にはお前も入っているからな?!」
俺達が話している間も年寄り達に捕まったシクさんはお茶を出されて話を聞いてあげている。
「シク様、この前は助かりました」
「いや、何かあったらいつでも言ってくれ」
「シク様、これは家の畑で採れたモノなので少ないですが是非」
「いいのか? まだ、沢山獲れる訳では無いんだろう?」
「シク様に食べて貰いたいんです……」
年寄り達は顔をシワくちゃにしながら笑い掛ける。
「不思議な人だよな」
「うん……」
シクさん自身は一切笑っていないのだが、話している相手は笑顔なのだ。
「山神様、そろそろ次に行かないと間に合わないですよ!」
「ほうほう。それは時間を取らせてしまいすみません」
「いや、気にしないでくれ」
「シク様を独り占めなんてして居たら村八分にされてしまいますよ」
冗談だろうが、年寄りは大口を開けて笑っている。
「それじゃ、また来る」
「えぇ楽しみにしております」
そして、シクさんと一緒に他の家も回る。
シクさんは、この村に来て大分馴染んできたと思う。
だが、俺はこの時ガバイ達や、シクさんを良く思わない村人達の存在に気付いていなかった……
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