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第6章
232話 アトスの目覚め
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「シク!?」
俺は離れていくシクに手を伸ばして叫ぶと、一度目の前が真っ暗になり目が覚める……
「アトス様!?」
「お兄さん!」
「アトス殿!」
何が起きているのか分からず周りを見ていると、どうやら俺はチルに背負われているらしい。
そして、何故か左腕から激痛を感じ、違和感も感じる。
「何が、何やら……」
まだ、意識がハッキリしていない為戸惑う。
「アトスさん、起きて良かったです……」
マーズが安堵した様子で俺を見ているが、その表情とは真逆の心配そうな表情を浮かべている三人の顔が目に入る。
「あぁ……三人共無事だったか……」
三人を中型から守る為に押し出した所で記憶が消えていたので、怪我も無い姿を見て安堵する。
「アトス殿、申し訳ありません。私が動けなかったばかりに!」
リガスが深く頭を下げる。
「お兄さん、私達の為にごめんね……」
「私達のせいでアトス様の、ひ、左腕が……」
左腕……? そういえば、シクの夢を見ていた時から痛みが凄かったけど……
俺はここに来て、やっと自身の左腕がどうなっているか確認した。
ひ、左腕が……無い……
「私達を助けて頂いた後に、アトス殿の左腕を中型に食べられてしまいました……本当に申し訳ありません」
「お兄さん、ごめんね……」
「アトス様の大事な左腕を……すみません……」
俺よりも三人の方が左腕の事を気にしている。
左腕無くなっちまったか……
まぁ、三人が無事だったんだしいいか。むしろ、あの状況で左腕だけで助かったのは運が良い事だしな!
「三人共、気にすんな!」
俺は三人になるべく責任を感じて欲しく無い為、笑顔で気にしてない事を伝える。
「こんな左腕より三人が無事だった事の方が嬉しい!」
「アトス殿……」
「はは、俺達家族だろ?」
俺の言葉を聞いた瞬間、ロピとチルの目から涙が溢れ、ロピが背後から抱き付いて来た。
「お、お兄さーん!!」
顔をぐぢゃぐぢゃにしながら泣き始めるロピとチルに、つい笑ってしまう。
「おいおい、二人共こんな状況なのに……まったく……」
「ほっほっほ。では家族として私も混ざらせて頂きます」
俺を背負ったチルを中心にロピとリガスが抱き付いて来る。
「こんな怪我よりも家族全員が生きている事を喜ぼうぜ!」
「うん!」
「はい……」
「そうですな」
周りを見ると、モンスター達で溢れ返っている為、俺はロピとリガスに離れる様に言う。
「それで、今どんな状況なんだ?」
俺の言葉にマーズが現状を話してくれる。
「なるほど……」
俺は周囲を見渡すと、変異体が中型二体に、いい様に攻撃されている姿が目に映る……
「このままだと、変異体が倒されて、今度こそ逃げられるチャンスが無くなります」
マーズの説明に周囲の人間が悲痛の表情を浮かべた。
「お、お兄さん、どうすればいいかな……?」
ロピが縋る様な言葉で質問してくる。
「……」
俺は少しの間考え、ある結論に至る。
「よし、変異体と協力して中型を倒そう」
俺の言葉に誰もが驚き、聞き返す。
「ア、アトス、今なんて言ったんだ!?」
「オイラ、アトスが何言っているか理解出来なかった……」
また、ドワーフ族も騒ぎ始める。
「お、おいアトスよ。今変異体を助けると言ったか?」
「勘弁してくれよ!」
「そいつの言う通りにしたら直ぐに全滅しちまう!!」
次にエルフのシャレの反応を見ると、ドワーフとは逆の様だ。
「成る程……敵の敵は味方か……」
「何を訳分からん事を言っている! シャレよ逃げるぞ!!」
「お前だけ逃げればいいだろ?」
「な、なぁ!?」
「私は、あの人間族に賛成だ。それに人間族にしとくのは勿体ないくらい仲間想いだしな……」
何やら俺の知らない所で株が上がっている……?
三班のメンバーは概ね賛成してくれたが、他のメンバーは疑問を持つ者ばかりであった。
「皆んなー! 最初に約束した筈だよ!! お兄さんの言う事を聞くって!」
反感の声が結構多い為、ロピが問い掛ける。
「それは確かに約束したけど、流石にぶっ飛んだ考えには付いて行けねぇーよ!」
誰かが言った言葉に賛同する声が多い。
「馬鹿野郎! お前らみたいな奴はアトスの言う事を聞いてればいいんだよ!」
「そうだぞ。アトスの言う事聞いてれば生きて帰れるんだよ!」
「アトスの言葉を理解出来ないとは……哀れな……」
俺の信者みたいな三人の言葉にチルも呟く。
「本当にその通り……これだから愚か者は……」
俺の作戦に賛同派と反対派に分かれてしまう。
「困りましたね……今は争っている暇なんて無いのですがね……」
「マーズは俺の作戦どう思うんだ?」
「? もちろん賛成ですよ?」
何を今更? と言わんばかりにマーズは俺を見てくる。
「はは、なら反対意見があろうがやるか!」
「どの道、他に作戦も思いつきませんし、今考えると変異体と協力する考えは良い案だと思います。そんな作戦思いつきませんでしたよ……」
マーズが何度も首を上下に振り頷いている。
「中型を一体でも減らせたら大分違いますし、それならもしかして……」
既に変異体と協力して中型を倒した後の事も考えている辺り、流石である……
俺は離れていくシクに手を伸ばして叫ぶと、一度目の前が真っ暗になり目が覚める……
「アトス様!?」
「お兄さん!」
「アトス殿!」
何が起きているのか分からず周りを見ていると、どうやら俺はチルに背負われているらしい。
そして、何故か左腕から激痛を感じ、違和感も感じる。
「何が、何やら……」
まだ、意識がハッキリしていない為戸惑う。
「アトスさん、起きて良かったです……」
マーズが安堵した様子で俺を見ているが、その表情とは真逆の心配そうな表情を浮かべている三人の顔が目に入る。
「あぁ……三人共無事だったか……」
三人を中型から守る為に押し出した所で記憶が消えていたので、怪我も無い姿を見て安堵する。
「アトス殿、申し訳ありません。私が動けなかったばかりに!」
リガスが深く頭を下げる。
「お兄さん、私達の為にごめんね……」
「私達のせいでアトス様の、ひ、左腕が……」
左腕……? そういえば、シクの夢を見ていた時から痛みが凄かったけど……
俺はここに来て、やっと自身の左腕がどうなっているか確認した。
ひ、左腕が……無い……
「私達を助けて頂いた後に、アトス殿の左腕を中型に食べられてしまいました……本当に申し訳ありません」
「お兄さん、ごめんね……」
「アトス様の大事な左腕を……すみません……」
俺よりも三人の方が左腕の事を気にしている。
左腕無くなっちまったか……
まぁ、三人が無事だったんだしいいか。むしろ、あの状況で左腕だけで助かったのは運が良い事だしな!
「三人共、気にすんな!」
俺は三人になるべく責任を感じて欲しく無い為、笑顔で気にしてない事を伝える。
「こんな左腕より三人が無事だった事の方が嬉しい!」
「アトス殿……」
「はは、俺達家族だろ?」
俺の言葉を聞いた瞬間、ロピとチルの目から涙が溢れ、ロピが背後から抱き付いて来た。
「お、お兄さーん!!」
顔をぐぢゃぐぢゃにしながら泣き始めるロピとチルに、つい笑ってしまう。
「おいおい、二人共こんな状況なのに……まったく……」
「ほっほっほ。では家族として私も混ざらせて頂きます」
俺を背負ったチルを中心にロピとリガスが抱き付いて来る。
「こんな怪我よりも家族全員が生きている事を喜ぼうぜ!」
「うん!」
「はい……」
「そうですな」
周りを見ると、モンスター達で溢れ返っている為、俺はロピとリガスに離れる様に言う。
「それで、今どんな状況なんだ?」
俺の言葉にマーズが現状を話してくれる。
「なるほど……」
俺は周囲を見渡すと、変異体が中型二体に、いい様に攻撃されている姿が目に映る……
「このままだと、変異体が倒されて、今度こそ逃げられるチャンスが無くなります」
マーズの説明に周囲の人間が悲痛の表情を浮かべた。
「お、お兄さん、どうすればいいかな……?」
ロピが縋る様な言葉で質問してくる。
「……」
俺は少しの間考え、ある結論に至る。
「よし、変異体と協力して中型を倒そう」
俺の言葉に誰もが驚き、聞き返す。
「ア、アトス、今なんて言ったんだ!?」
「オイラ、アトスが何言っているか理解出来なかった……」
また、ドワーフ族も騒ぎ始める。
「お、おいアトスよ。今変異体を助けると言ったか?」
「勘弁してくれよ!」
「そいつの言う通りにしたら直ぐに全滅しちまう!!」
次にエルフのシャレの反応を見ると、ドワーフとは逆の様だ。
「成る程……敵の敵は味方か……」
「何を訳分からん事を言っている! シャレよ逃げるぞ!!」
「お前だけ逃げればいいだろ?」
「な、なぁ!?」
「私は、あの人間族に賛成だ。それに人間族にしとくのは勿体ないくらい仲間想いだしな……」
何やら俺の知らない所で株が上がっている……?
三班のメンバーは概ね賛成してくれたが、他のメンバーは疑問を持つ者ばかりであった。
「皆んなー! 最初に約束した筈だよ!! お兄さんの言う事を聞くって!」
反感の声が結構多い為、ロピが問い掛ける。
「それは確かに約束したけど、流石にぶっ飛んだ考えには付いて行けねぇーよ!」
誰かが言った言葉に賛同する声が多い。
「馬鹿野郎! お前らみたいな奴はアトスの言う事を聞いてればいいんだよ!」
「そうだぞ。アトスの言う事聞いてれば生きて帰れるんだよ!」
「アトスの言葉を理解出来ないとは……哀れな……」
俺の信者みたいな三人の言葉にチルも呟く。
「本当にその通り……これだから愚か者は……」
俺の作戦に賛同派と反対派に分かれてしまう。
「困りましたね……今は争っている暇なんて無いのですがね……」
「マーズは俺の作戦どう思うんだ?」
「? もちろん賛成ですよ?」
何を今更? と言わんばかりにマーズは俺を見てくる。
「はは、なら反対意見があろうがやるか!」
「どの道、他に作戦も思いつきませんし、今考えると変異体と協力する考えは良い案だと思います。そんな作戦思いつきませんでしたよ……」
マーズが何度も首を上下に振り頷いている。
「中型を一体でも減らせたら大分違いますし、それならもしかして……」
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