上 下
227 / 492
第6章

226話 見所のある三人……?

しおりを挟む
 俺達は小型が来る度に倒し続けた。周囲には小型の死骸が多数広がっており、生まれてから今まで倒して来たモンスターの数より今回倒した数の方が多い。

 しかし、さらに目線を上げて周囲を見回すと数えるのも嫌になる程のモンスター達が俺達を見ていた……

「こんなに倒したのに、まだまだいるー」
「姉さん、弱音吐かないで!」
「だってー」

 ロピが弱音を吐きたい気持ちは分かる……

「た、確かに疲れるけど俺達って凄く無いか……?」

 誰かがボソリと呟く。

「馬鹿野郎! すげぇーに決まっているだろ! 周りを見ろよ。ここまで多く倒した事なんてねぇーよ!」
「そ、そうだよな? 俺もこんなに倒した事なんてねぇーよ!」

 状況は一切変わらず、疲れだけが溜まって行く状態ではあったが、どうやら気持ちの方は向上している様だ。

「お前らこそ馬鹿野郎! 全部アトスのお陰に決まってんだろ! アイツはきっと神の遣いだぜ?」
「そうだ、アトスが居なければ速攻で陣形が崩れてモンスター共に捕まっていたぜ! アイツはもしかしたら神自身かもな?」
「俺らはアトスに感謝しなきゃならねぇ!! アイツは多分この世界そのものだと思う……」

 約三名程、目の瞳孔を開きながらおかしな事を言っている奴らがいる。

「あの三人見所がある……」
「チ、チルちゃん……? な、何の見所があるのかな……?」
「ん? アトス様が神だという事に薄々気付いている……」

 更に一名、おかしな者がいるな……

 そんなこんなで、体力的には少しずつ限界に向かっているが、気持ちはまだまだ折れていない様だな。

「!?」

 だが、次の瞬間一瞬で状況が一変する事が起きる。

「おいおい、とうとう動き始めたぞ……」

 今まで人間達を大量に捕食した二体の中型であったが、成長が終わったのか動き始めた。

「こ、これは不味いですね……」

 マーズは中型の気配を一瞬で察知したのか、顔から冷や汗を流す。

「大分、気配の方が強くなりました……」
「あぁ、俺でも分かるくらいだからな……」

 それに、身体も二回り程大きくなった様に見える。

「デ、デケェ……」
「オイラ達、こんな奴倒せるの?」

 フィールとトインが中型を見て呟く。
 
 そして、今まで中型を守る様に周囲で固まっていた小型達が道を開ける様に移動する。

「親玉の登場かよ……」

 俺達を囲んでいる包囲網を解かず移動して、俺達と中型達の間に一本の道が出来た。

「や、やべぇーぞ」
「このまま、突っ込んで来る気だぜ?!」

 小型達が塞いでいる為逃げ道は無いし、前には中型二体がいる。

 それは、まるで虫籠の中に居るモンスターに俺達と言う生きた餌を入れた状態である。
 餌の俺達は虫籠から出られない為、絶対的な強者相手に体力が尽きるまでひたすら狭い虫籠の中で逃げ続けるしか無い……

「マーズ、変異体の気配はどうだ!?」
「かなり近い位置に居るのは確かですが、詳細な場所までは読みきれません!」

 もう少しだけ時間を稼がないといけない様だ……

「皆さん! 変異体は直ぐそこまで来ております。もう少しだけ耐え抜きましょう!」

 マーズの呼び掛けが耳に入っている者が一体何人いる事やら……

 全員が中型を見て動揺している。
 だが、中型が待ってくれる訳も無く少しだけ重心が下がるのが見えた瞬間だった……

「!? カネル!」

 本当に一瞬の出来事であった。気付いた時には中型二体が目の前に居て、リガスの盾に抑えられていた。

「な、なんて速さだ……」

 誰が呟いた言葉か分からないが、確かにその通りである。恐らくリガス以外は誰一人中型に反応出来た者が居ない……

 そして、二体の中型を抑えているリガスだったが、直ぐ様中型が尻尾による攻撃に入った。

 不味い……

「第二の盾 オーハン!!」

 カネルで中型を抑え込んでいたリガスがオーハンにて中型二体を最初の位置まで吹き飛ばした。

「す、すげぇ……」
「中型二体の攻撃を受け止めただと……?!」

 リガスに驚いている様だが、そんな暇は無い様だ。

「皆さん、次が来ます!! リガスさんは少し時間を置かないと次の防御が出来ないでしょうから、防御陣前へ出てください!」

 焦った声色でマーズが指示を出す。何を言われているか分からない者も居るが、とにかく、この状況が非常に不味い事であるのは誰が見ても分かる。

 リガス以外の防御担当が全員前に出て盾を構えた。

 耐え切れるのか……?

 中型二体も、まさか人間一人で自分達の攻撃を止められると思わなかったのか、少し警戒し様子を見ている様だ。

「いいですか、皆さん? 中型のスピードがかなり早いです。常に気を緩めず力を入れ続けて下さい!」

 マーズの言葉に防御担当の全員が腰を落とし中型の突撃に備える。

 後の問題は俺が中型のスピードに反応して仲間達に能力付与を掛けられるかだな……

「アトスさん、中型のスピードに反応出来そうですか?」

 マーズも俺と同じ事を心配をしていたらしい。

「反応は出来ないな……」

 俺の言葉を聞いてマーズが、なんとも言い様の無い表情をする。
 リガスのカネルが再び使えるまでの間、中型の突撃を防御担当だけで受けきるには、俺のスキルが必要不可欠だ。

「反応は出来なくても先読みでなんとかしてやる……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...