過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第6章

226話 見所のある三人……?

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 俺達は小型が来る度に倒し続けた。周囲には小型の死骸が多数広がっており、生まれてから今まで倒して来たモンスターの数より今回倒した数の方が多い。

 しかし、さらに目線を上げて周囲を見回すと数えるのも嫌になる程のモンスター達が俺達を見ていた……

「こんなに倒したのに、まだまだいるー」
「姉さん、弱音吐かないで!」
「だってー」

 ロピが弱音を吐きたい気持ちは分かる……

「た、確かに疲れるけど俺達って凄く無いか……?」

 誰かがボソリと呟く。

「馬鹿野郎! すげぇーに決まっているだろ! 周りを見ろよ。ここまで多く倒した事なんてねぇーよ!」
「そ、そうだよな? 俺もこんなに倒した事なんてねぇーよ!」

 状況は一切変わらず、疲れだけが溜まって行く状態ではあったが、どうやら気持ちの方は向上している様だ。

「お前らこそ馬鹿野郎! 全部アトスのお陰に決まってんだろ! アイツはきっと神の遣いだぜ?」
「そうだ、アトスが居なければ速攻で陣形が崩れてモンスター共に捕まっていたぜ! アイツはもしかしたら神自身かもな?」
「俺らはアトスに感謝しなきゃならねぇ!! アイツは多分この世界そのものだと思う……」

 約三名程、目の瞳孔を開きながらおかしな事を言っている奴らがいる。

「あの三人見所がある……」
「チ、チルちゃん……? な、何の見所があるのかな……?」
「ん? アトス様が神だという事に薄々気付いている……」

 更に一名、おかしな者がいるな……

 そんなこんなで、体力的には少しずつ限界に向かっているが、気持ちはまだまだ折れていない様だな。

「!?」

 だが、次の瞬間一瞬で状況が一変する事が起きる。

「おいおい、とうとう動き始めたぞ……」

 今まで人間達を大量に捕食した二体の中型であったが、成長が終わったのか動き始めた。

「こ、これは不味いですね……」

 マーズは中型の気配を一瞬で察知したのか、顔から冷や汗を流す。

「大分、気配の方が強くなりました……」
「あぁ、俺でも分かるくらいだからな……」

 それに、身体も二回り程大きくなった様に見える。

「デ、デケェ……」
「オイラ達、こんな奴倒せるの?」

 フィールとトインが中型を見て呟く。
 
 そして、今まで中型を守る様に周囲で固まっていた小型達が道を開ける様に移動する。

「親玉の登場かよ……」

 俺達を囲んでいる包囲網を解かず移動して、俺達と中型達の間に一本の道が出来た。

「や、やべぇーぞ」
「このまま、突っ込んで来る気だぜ?!」

 小型達が塞いでいる為逃げ道は無いし、前には中型二体がいる。

 それは、まるで虫籠の中に居るモンスターに俺達と言う生きた餌を入れた状態である。
 餌の俺達は虫籠から出られない為、絶対的な強者相手に体力が尽きるまでひたすら狭い虫籠の中で逃げ続けるしか無い……

「マーズ、変異体の気配はどうだ!?」
「かなり近い位置に居るのは確かですが、詳細な場所までは読みきれません!」

 もう少しだけ時間を稼がないといけない様だ……

「皆さん! 変異体は直ぐそこまで来ております。もう少しだけ耐え抜きましょう!」

 マーズの呼び掛けが耳に入っている者が一体何人いる事やら……

 全員が中型を見て動揺している。
 だが、中型が待ってくれる訳も無く少しだけ重心が下がるのが見えた瞬間だった……

「!? カネル!」

 本当に一瞬の出来事であった。気付いた時には中型二体が目の前に居て、リガスの盾に抑えられていた。

「な、なんて速さだ……」

 誰が呟いた言葉か分からないが、確かにその通りである。恐らくリガス以外は誰一人中型に反応出来た者が居ない……

 そして、二体の中型を抑えているリガスだったが、直ぐ様中型が尻尾による攻撃に入った。

 不味い……

「第二の盾 オーハン!!」

 カネルで中型を抑え込んでいたリガスがオーハンにて中型二体を最初の位置まで吹き飛ばした。

「す、すげぇ……」
「中型二体の攻撃を受け止めただと……?!」

 リガスに驚いている様だが、そんな暇は無い様だ。

「皆さん、次が来ます!! リガスさんは少し時間を置かないと次の防御が出来ないでしょうから、防御陣前へ出てください!」

 焦った声色でマーズが指示を出す。何を言われているか分からない者も居るが、とにかく、この状況が非常に不味い事であるのは誰が見ても分かる。

 リガス以外の防御担当が全員前に出て盾を構えた。

 耐え切れるのか……?

 中型二体も、まさか人間一人で自分達の攻撃を止められると思わなかったのか、少し警戒し様子を見ている様だ。

「いいですか、皆さん? 中型のスピードがかなり早いです。常に気を緩めず力を入れ続けて下さい!」

 マーズの言葉に防御担当の全員が腰を落とし中型の突撃に備える。

 後の問題は俺が中型のスピードに反応して仲間達に能力付与を掛けられるかだな……

「アトスさん、中型のスピードに反応出来そうですか?」

 マーズも俺と同じ事を心配をしていたらしい。

「反応は出来ないな……」

 俺の言葉を聞いてマーズが、なんとも言い様の無い表情をする。
 リガスのカネルが再び使えるまでの間、中型の突撃を防御担当だけで受けきるには、俺のスキルが必要不可欠だ。

「反応は出来なくても先読みでなんとかしてやる……」

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