過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第6章

219話 モンスターの異変 2

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「お前ら早くなんとかするのだ!!」

 モンスターに囲まれてしまった私達は現在百人程で円陣を組みモンスター達の対処をしようとしている。

 円陣の中心では、リンクスと副官が兵士や参加者達に命令をしているが、命の掛かっているこの状況で命令に従う者など居るはずもない。

「な、なんなんだよこの数は!」
「こんなの助からねぇーよ……」

 円陣のあちこちから弱音や文句、泣き声や怒声などが聞こえて来る。

 私自身も実際の所諦めている。いくら一人で小型を倒せるくらい強くても、この数は無理だ……

 周囲を見回すと、雷弾達の戦闘が見えた。

「素晴らしい連携だな……」

 鉄壁が一人で小型の攻撃を受け切っている事自体が驚愕に当たるが、その後の攻撃も、素晴らしかった。剛力の攻撃で弱らせた後にトドメに雷弾の攻撃とは……。

「聞いていた以上の実力だな」

 ドワーフの村で商人達が流していた噂だが正直に言ってあまり信じては無かった。しかし、今の流れる連携を見て嘘では無い所かそれ以上であり、雷弾については私の予想を遥かに超えていた。

「四人目のよく分からない奴は未だに何しているか分からないな」

 人間族の男なんて、どうでも良いが謎の男ではある。

「お、おい……なんか叫んでいるぞ?」

 参加者の言う通り、いきなり中型が奇声を放ち始めた。
 すると、小型達が一斉に向かって来るのが見える。

「ヒィィー!? 副官、小型達が来るぞ! どうする!?」
「お、落ち着いて下さい。こちらには歴戦の兵士や参加者が居ります。この程度簡単に蹴散らしてくれるでしょ!」

 この二人は上官として本当に大丈夫なのだろうか?

「とにかく、今は目の前に集中だな」

 倒す事を意識する事より、この場を凌ぐ事を意識した方が良さそうだな。

 周りを見回すと、円陣を組んだは良いが今まで一緒に居たわけじゃ無いので、連携などは取れる訳も無く、直ぐに円陣が崩れてしまう。

「た、助けてくれー!」
「クソ! こっち来んなよ!」

 まず初めに二人ほどが小型に捕まる。そして足だけを噛み切られ地面に這い蹲りながらも、逃げようとする人間を何故か捕食せず、口に咥えて後方に下がって行った……

 な、何しているんだ……?

「何故、その場で食わない……?」

 周囲を見回すと次々と犠牲者が出て来るが、その全ての人間が捕食されずに後方に移動させられる。

 そして、徐々に小型達は包囲網を狭めて来ており、動くスペースが限られて来る。

 そして一体の小型が私に向かって突進して来たので避けてから大鎌で攻撃をする。

「このっ!」

 トラクが作ってくれた大鎌を一振りすると、とても切れ味が良く今までとは段違いであった。

「流石、トラクだ。これなら……」

 今までは自分で作成した大鎌で戦っていたが、直ぐに刃こぼれなどする為遠慮して振っていた。だが、この鎌なら今までより全然大丈夫そうだ。

 私は、何度も何度も大鎌をモンスターに振り続ける。
 すると、何度目か分からない攻撃で小型が地面に倒れ込んだ。

「ふぅ……」

 一度深呼吸をして、一休みしたい所では有るが、そんな暇も無く次から次へと小型が向かって来る。

「やはり、倒すのは辞めて凌ぐ事を優先した方が良さそうだ」

 周りを見ると、既に冒険者や兵士達は思い思いにバラけており、小型からしたら実に狩りやすい状況だろう。


 そして私は大鎌を振るのは必要最低限にして、なんとか標的にならない様立ち回ったりしながら時間が経過していくのを待つ。

 その間にも次々と小型に捕らえられた人間は後方に移動させられている。

 未だに何故人間達をその場で捕食しないかは謎だが既に百人程居た数が半分程に減っていた。

「ヒィィー!?」
「リンクス様、お静かに! 黙っていれば小型に気付かれる事はありません」
「ほ、本当か!?」
「えぇ。以前本を読んだ所、モンスターは視力が弱い為、遭遇時は物音を立てずにジッとしていれば人間を認識出来ない様です」
「おぉ!? 流石副官だな!」

 そう言うと、リンクスと副官はその場に座り込み黙り込んだ。
 しかし、そんな情報が正しい訳も無く副官が呆気なく小型に捕まり連れて行かれた。

「ッグァァァ、リンクス様助けて下さい!!」
「──ッ!?」

 それを目の前で見ていたリンクスは腰が抜けたのか立ち上がれず声も上げられないようだ。

「なんて光景だ……」

 次々と捕獲されては連れてかれている姿を見ていると、もはや絶望的な光景しか見えない。
 しかし、更なる絶望が起きた。

「!?」

 何やら、とんでもない気配を察知した私は周囲を見回すと先程連れてかれた人間達を中型が捕食した様で、中型が成長したらしい……

 そして、そのとんでもない気配は連続して周囲を包み込む。

 五十人程が中型の目の前に一か所に集められて次から次へと捕食していくのが見える。
 捕食する度に中型が成長をしているのか、気配がどんどん強くなるのを感じる。

「こんな化け物を倒せる筈が無い……」

 生まれてきてから今まで、ここまで強力な気配を持つモンスターには遭遇した事が無い。

 私も含めて参加者全員があまりの気配に足が震えている。
 しかし、何故か雷弾達のグループは力強く今でも小型達の戦闘をしているのが視界の端に映った……
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