過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
214 / 492
第6章

213話 生きる希望

しおりを挟む
「リーダーさん、どう? お兄さん居たー?」
「いえ、まだアトスさんの気配は感じられませんね」

 現在、私達は変異体に追われながらアトス様を探している。

「リガス、変異体の様子は?」
「ふむ。特に変わった様子は有りませんな」

 変異体は時折トゲを飛ばして来るが私達に対してはあまり意味が無いと分かったのか、最初程は飛ばして来なくなった。

「スピードはそこまで無いのが救いですな」
「だけど、何か考えてそう……」

 このままなら追いつかれる事は無いが結局体力の差でいずれは追い付かれてしまうだろう。

「ん?」

 マーズが何かを察知した様だ。

「お兄さん、見つけた!?」
「いえ、どうやらフィールさん達の様です」

 暫く移動すると、体力温存組であるフィール達と合流した。

「雷弾達無事だったか!」
「うん! しっかり変異体を連れてきたよー」

 マーズは変異体が遠距離攻撃を仕掛けて来る事を素早く報告して注意喚起を行う。
 また、変異体の方も新しい人間が加わった事が分かったのか、また遠距離攻撃を再開した。

「うぉ!?」

 いきなり飛んできたトゲに慌てながら避けるフィール達。最初は逃げながら後ろの攻撃を避けるのに戸惑っていたが暫くすると、それも慣れたのか今では特に問題無く会話をしている。

「それじゃ、後はこのままアトスの所まで行けばいいのか?」
「えぇ。今アトスさんを探しています」

 マーズは先頭に移動しアトス様を探している。

「斥候さん、お兄さんの足音聞こえるー?」
「いや、まだアトスらしき足音は聞こえねぇ」

 斥候も手を耳にあてながらアトス様を探している様だ。

「アトス様は絶対生きている……」
「ほっほっほ。アトス殿が簡単に死ぬはず有りませんな」
「アトス様は最強だから」

 リガスと話しているとマーズはまたもや何かに反応する。

「誰かがこちらに来ますね」
「お、お兄さんかな?!」
「そこまでは分かりませんが、行ってみましょう」

 私達は移動を続けると三人の人間がこちらに走って来るのが見える。

「お、おい。アイツらアトスが助けようとしていた奴らだぞ!」

 フィールは両手を上げてこちらの存在をアピールするが、後ろに変異体がいる時点で、こちらには既に気付いているだろう。

 私達は三人と合流する。

「ねぇ! お兄さんはどこ!?」

 姉さんは直ぐにアトス様の確認を行う。

「わ、悪い……アトスは俺達を助ける為に一人でモンスターを惹きつけて逃げている」
「は、早く。後ろの変異体をアトスの所に連れていかねぇーと!」
「アイツは生きている! 俺達の為に囮になったんだ、早くアイツの所に!」

 アトス様はどうやら一人で、あの大群を惹きつけている様だ。

「ほっほっほ。本当になんてお方だ」
「リガス、笑い事じゃない。でも本当に流石アトス様です」
「二人共! 早くお兄さん助けに行くよ!!」

 私とリガスは姉さんに手を引かれて移動スピードを少し上げる。

「では、アトスさんは向こうの方に行かれたんですね?」
「あぁ。なんか変な玉みたいなのを持っていたが……もしかして……?」
「えぇ。以前に一つだけ例の玉をお渡ししていたのですが、恐らくそれを使用してモンスター達の注意を惹いたんでしょう」

 マーズがこれまでの状況を三人から聞き取っている様だ。

「お兄さん流石だよねー。あの三人の目見た? 全然違うよね!」
「うん! 私も見たよ。アトス様が三人に希望を与えたんだよ!」

 足を止めた時は、体力的にも気持ち的にも絶望だった為か、三人は諦め、目に光が宿って居なかった。
 だが、今はどうだろう? 必死にアトス様を助ける為に情報をマーズに伝えている目には光が……希望が宿っている様に見える。

「「私達の時と同じ!!」」

 以前の私達も希望や生きる意味を持てず、ただ毎日を生きていただけであった。だがアトス様と出会い、生きる意味と楽しさを教えて貰った。

「チルちゃん、魔族さん、お兄さんを絶対助けようね!」
「うん!」
「皆んなで家に帰りましょう」

 そして、暫くするとマーズと斥候が同時に反応する。

「居ましたね」
「見つけたぜ!」

 どうやら、モンスターの大群を見つけた様だ。

「お兄さんは無事?!」
「恐らく、このスピードで移動しているので先頭にアトスさんがいる筈です」

 まだ、目視出来ていないが私達でも気配を感じる程には近付いて来た。
 そして、私達を追っている変異体も気が付いているのか、先程よりもスピードが少しずつ上がってきている。

「ッチ、なんか変異体のスピードが上がってきたな」
「オイラ、流石に疲れてきた……」
「皆さん、頑張って下さい! あと少しでアトスさんと合流出来ます!!」

 マーズの声により一層三班に気合が入る。

「アトス、待っててくれよ!」
「俺達を助けてくれたお礼をまだしてないんだ。絶対死ぬなよ……」
「アトスを絶対助ける!」

 アトス様に助けられた三人は他の者よりも更に気合が入っている様だ。

「それでは皆さん、移動速度を早めて、変異体とモンスター達を合流させます!!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」」

 こうして、私達はモンスターの大群に向かいスピードを上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...