208 / 492
第6章
207話 シャレとキル
しおりを挟む
モンスターの大群に追われて、私達はひたすら奥に向かって逃げている。
「あはは、副官よ! これは到達出来るのでは無いか?」
「ハッ! 前回の遠征時より大分進んでおります」
リンクス達の言葉が耳に入って来る。
この二人は同族の仲間でさえ、平気に囮に使う奴らだ……
これだから人間族は嫌いなんだ。人口が他種族に比べてかなり多いからなのか、直ぐに仲間を見捨てる。
「シャレよ、逃げる準備だけはしとけよ」
「宝を手に入れたら例のモノを投げ付けて、直ぐに離脱する」
私は、返事をせずに足だけを動かし続けた。
後ろを振り返ると、モンスター達は一定の距離を保って追って来る。
やっぱり、変に感じる。なんだか捕食しようと追って来ていると言うよりも、私達を何処かに追い込んでいる様に感じる。
私は、このままだと不味い展開になる事しか想像が付かない為、私と同じ様にこの異変に気付いてそうなドワーフに意見を聞こうと近付く。
「なんじゃ?」
私が近付いて来るのが分かったのか、ドワーフは私が声を掛ける前に話し掛けて来た。
「急に済まない。私はエルフのシャレと言う」
「ワシは、ドワーフのキルじゃ」
キルは自分の身長以上のハンマーを軽々と持ち上げながら走っている。そして、私と同じく一人でモンスターを討伐出来る者でもある。
「前回の生き残りとして聞きたい。初日から、この状況何か変では無いか?」
「気付いておったか……。ワシも何処か変だとは思っていた」
やはり私同様、この異様な状況にキルは気が付いた様だ。
「キルから見てどこが変なのか聞きたい」
「……まず、モンスターが少な過ぎた。そして、今はモンスターが多過ぎる」
キルは後ろを振り向く。
「私はまるで、捕食するのでは無く、どこかに私達を追い詰めたい様に見える」
「なるほど……そこまでは考えて無かったが、そう言われると確かにそう思えて来る」
「恐らくこのままだと不味い展開になる気がするが、何か良い案はあるか?」
私の質問にキルは少し考え込む。
「思いつかんな……。戦うにしても、あの数のモンスター相手では直ぐに全滅してしまいそうだ」
今追い掛けて来ているのは全て小型だが、前回の撤退時には中型の姿も見受けられた。戦闘などしていたら、更にモンスター達を集めてしまいそうである。
「打つ手無しか……?」
「悔しいが、ワシらには思いつかん……」
すると、徐々にだが逃げるのに遅れて来ている者達が現れ始めた。
無理も無い……湖から、ここまで全力で走り続けているので疲れるのは当然である。
「遅れて来る者が現れたな」
キルは周囲を見渡し呟く。
「キル達は平気なのか?」
「我々ドワーフは、そんな柔な鍛え方などしておらん!」
確かにドワーフ達には、まだまだ余裕がありそうである。
「これが、前回の参加者達だったら、まだまだ逃げられたんだがな……」
キルの言う通りである。前回と今回の参加者では、元々の自力が段違いに感じる。今回の参加者でも強い者は居るが、私が見た所、殆どが口だけの様に感じる。案の定、モンスターに追い掛けられているプレッシャーのせいなのか、今にも足が止まりそうな者達が何人も居る。
「はぁはぁ……し、死にたくねぇ」
「クソ……こいつらどこまで追い掛けて来るんだよ!」
そろそろ、何か行動移さないと、人数が減っていく一方だぞ……
私は、リンクス達の方を向くが二人は不適な笑みを浮かべているだけで、この状況を、どうにかしようとは考えていないようだ。
「アイツらが何を考えているか分からないが、指示を待っているだけでは、どうやら生き残れ無さそうだな」
そう言うと、キルは同胞達に声を掛ける。
「お前達、どうやら不味い状況になっちまった!」
「へへ、だからお前にリーダーは向いてないって言っただろう!」
「そうだそうだ。お前は作るのと、腕っ節しか取り柄が無いんだから」
「あはは、それは言えているな!」
こんな状況だと言うのにドワーフ達のノリは軽い。
「うるせぇーぞ。今からは生き残る事だけを考えろ! 同胞達の命を第一に考えて、余裕があれば他も助けてやれ」
「「「「「「おう!!」」」」」」
キルの言葉で、先程まで笑っていたドワーフ達の表情が引き締まる。そしてこの状況を打破するべくドワーフ達は周囲を隈無く観察しながらモンスター達から逃げる。
私達程では無いが、よく取れたチームワークだ。
すると、早速一人のドワーフが何かを感じたらしい。
「ん!?」
「どうした」
「周囲にモンスターが多過ぎて分かり辛いが前にもモンスターが居る気配を感じる」
「なんだと……?」
この先で更にモンスターがいるだと?
やられた……今私達を追って来ているモンスターはこれが狙いだったのか?!
「おいおい、まじかよ……」
すると、近くで私やドワーフ達の話を聞いていた参加者が叫び始める。
「なんなんだよ!! 前にもモンスターがいるだと!? ふざけんな!」
若干、錯乱しているのか男は大声で叫び始める。それが伝染する様に周囲に広まり次々と騒ぎ始める。
だが、足を止められるはずも無く私達は前に進み続ける。
「ん!?」
そして、先程のドワーフがまた何かを感じ取った様だ。
「次はなんだ?」
「キ、キル。見てみろよ……」
「ん?」
私もドワーフが指差した方向を見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「中型が二体だと……」
「キル、どうする!?」
「馬鹿野郎、道は前か後ろにしかねぇんだよ、やるしかねぇーだろ!」
キルの言う通り、後ろには大量の小型達がいて、前には中型が二体だ……やるしか無い。
ドワーフ達は武器を構える。そして、それを見た別の参加者達も覚悟を決める様に自身の武器を構えて中型に突っ込む。
だが、私はモンスター達では無い所で視線が止まっている。
「嘘……生きている……?」
そこには、中型達に追いかけられている人間達に目が止まっていた。
「あはは、副官よ! これは到達出来るのでは無いか?」
「ハッ! 前回の遠征時より大分進んでおります」
リンクス達の言葉が耳に入って来る。
この二人は同族の仲間でさえ、平気に囮に使う奴らだ……
これだから人間族は嫌いなんだ。人口が他種族に比べてかなり多いからなのか、直ぐに仲間を見捨てる。
「シャレよ、逃げる準備だけはしとけよ」
「宝を手に入れたら例のモノを投げ付けて、直ぐに離脱する」
私は、返事をせずに足だけを動かし続けた。
後ろを振り返ると、モンスター達は一定の距離を保って追って来る。
やっぱり、変に感じる。なんだか捕食しようと追って来ていると言うよりも、私達を何処かに追い込んでいる様に感じる。
私は、このままだと不味い展開になる事しか想像が付かない為、私と同じ様にこの異変に気付いてそうなドワーフに意見を聞こうと近付く。
「なんじゃ?」
私が近付いて来るのが分かったのか、ドワーフは私が声を掛ける前に話し掛けて来た。
「急に済まない。私はエルフのシャレと言う」
「ワシは、ドワーフのキルじゃ」
キルは自分の身長以上のハンマーを軽々と持ち上げながら走っている。そして、私と同じく一人でモンスターを討伐出来る者でもある。
「前回の生き残りとして聞きたい。初日から、この状況何か変では無いか?」
「気付いておったか……。ワシも何処か変だとは思っていた」
やはり私同様、この異様な状況にキルは気が付いた様だ。
「キルから見てどこが変なのか聞きたい」
「……まず、モンスターが少な過ぎた。そして、今はモンスターが多過ぎる」
キルは後ろを振り向く。
「私はまるで、捕食するのでは無く、どこかに私達を追い詰めたい様に見える」
「なるほど……そこまでは考えて無かったが、そう言われると確かにそう思えて来る」
「恐らくこのままだと不味い展開になる気がするが、何か良い案はあるか?」
私の質問にキルは少し考え込む。
「思いつかんな……。戦うにしても、あの数のモンスター相手では直ぐに全滅してしまいそうだ」
今追い掛けて来ているのは全て小型だが、前回の撤退時には中型の姿も見受けられた。戦闘などしていたら、更にモンスター達を集めてしまいそうである。
「打つ手無しか……?」
「悔しいが、ワシらには思いつかん……」
すると、徐々にだが逃げるのに遅れて来ている者達が現れ始めた。
無理も無い……湖から、ここまで全力で走り続けているので疲れるのは当然である。
「遅れて来る者が現れたな」
キルは周囲を見渡し呟く。
「キル達は平気なのか?」
「我々ドワーフは、そんな柔な鍛え方などしておらん!」
確かにドワーフ達には、まだまだ余裕がありそうである。
「これが、前回の参加者達だったら、まだまだ逃げられたんだがな……」
キルの言う通りである。前回と今回の参加者では、元々の自力が段違いに感じる。今回の参加者でも強い者は居るが、私が見た所、殆どが口だけの様に感じる。案の定、モンスターに追い掛けられているプレッシャーのせいなのか、今にも足が止まりそうな者達が何人も居る。
「はぁはぁ……し、死にたくねぇ」
「クソ……こいつらどこまで追い掛けて来るんだよ!」
そろそろ、何か行動移さないと、人数が減っていく一方だぞ……
私は、リンクス達の方を向くが二人は不適な笑みを浮かべているだけで、この状況を、どうにかしようとは考えていないようだ。
「アイツらが何を考えているか分からないが、指示を待っているだけでは、どうやら生き残れ無さそうだな」
そう言うと、キルは同胞達に声を掛ける。
「お前達、どうやら不味い状況になっちまった!」
「へへ、だからお前にリーダーは向いてないって言っただろう!」
「そうだそうだ。お前は作るのと、腕っ節しか取り柄が無いんだから」
「あはは、それは言えているな!」
こんな状況だと言うのにドワーフ達のノリは軽い。
「うるせぇーぞ。今からは生き残る事だけを考えろ! 同胞達の命を第一に考えて、余裕があれば他も助けてやれ」
「「「「「「おう!!」」」」」」
キルの言葉で、先程まで笑っていたドワーフ達の表情が引き締まる。そしてこの状況を打破するべくドワーフ達は周囲を隈無く観察しながらモンスター達から逃げる。
私達程では無いが、よく取れたチームワークだ。
すると、早速一人のドワーフが何かを感じたらしい。
「ん!?」
「どうした」
「周囲にモンスターが多過ぎて分かり辛いが前にもモンスターが居る気配を感じる」
「なんだと……?」
この先で更にモンスターがいるだと?
やられた……今私達を追って来ているモンスターはこれが狙いだったのか?!
「おいおい、まじかよ……」
すると、近くで私やドワーフ達の話を聞いていた参加者が叫び始める。
「なんなんだよ!! 前にもモンスターがいるだと!? ふざけんな!」
若干、錯乱しているのか男は大声で叫び始める。それが伝染する様に周囲に広まり次々と騒ぎ始める。
だが、足を止められるはずも無く私達は前に進み続ける。
「ん!?」
そして、先程のドワーフがまた何かを感じ取った様だ。
「次はなんだ?」
「キ、キル。見てみろよ……」
「ん?」
私もドワーフが指差した方向を見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「中型が二体だと……」
「キル、どうする!?」
「馬鹿野郎、道は前か後ろにしかねぇんだよ、やるしかねぇーだろ!」
キルの言う通り、後ろには大量の小型達がいて、前には中型が二体だ……やるしか無い。
ドワーフ達は武器を構える。そして、それを見た別の参加者達も覚悟を決める様に自身の武器を構えて中型に突っ込む。
だが、私はモンスター達では無い所で視線が止まっている。
「嘘……生きている……?」
そこには、中型達に追いかけられている人間達に目が止まっていた。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる