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第6章
206話 撤退……?
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「お、おい。シャレよ、この状況どうすれば良い?」
目の前にはモンスターの大群が出現していた。それは前回の遠征で撤退した数の比では無いくらい多い……
「リンクス」
「な、なんだ!?」
「撤退だ……」
「じょ、冗談じゃない! また撤退など許さんからな!」
リンクスと言い争っている内にモンスター達はどんどん出現していく。
「なら、お前はここにいろ」
そう言い私は移動しようとする。
「ど、どこに行く!」
「逃げるに決まっているだろう?」
「ゆ、許さんぞ! 逃げたら宝箱は渡さん」
「リンクス、周りを見てみろ」
私の言葉に従いリンクスは周囲を見回す。
「て、撤退する!」
「マジで、これはヤバイぞ!?」
「なんなんだよこの数は!」
どうやら、リンクスの指示を待たずに各班のリーダー達が撤退命令を下していた。
「お前は残ればいい。私は撤退もするし、宝箱もちゃんと貰う」
「ック……」
リンクス自身も、この状況は不味い事くらい分かっているだろう。だが、三度の挑戦をして、三回とも失敗に終わるのが嫌なのだ。
「それじゃ、私は行くぞ?」
「ま、待て! 撤退を認めるから私も連れて行け」
悔しそうに周囲を見回した後にリンクスは撤退を認めた。
だが、決断が遅かった様だ……それは、リンクスだけでは無く他の班も同じで、モンスター達は私達が来た道を塞ぐ様に立ち位置を取っていた。
「お、おい! 来た道に戻れねぇーぞ!?」
「モンスター達が塞いでやがる!」
「ど、どうすりゃいいんだよ!?」
偶然なのか、モンスター達はドワーフの村に行くまでの道を塞いでいた。
「クッ……シャレよ! どうすれば良い?!」
逃げる方向なんて一つしか無い。私はリンクスに伝える。
「奥に逃げるしか無い」
「なんだと……?」
リンクスは今居る湖の更に奥を見る。そこは来た時以上に草木が密集しており、より一層太陽の光が届かなそうな場所に見える。
「あ、あそこに逃げるのか?」
「それしか、道は無い」
何故だがかモンスター達は私達を追い掛けず、まるで陣地を広げる様、そして私達を包囲する様に移動している感じがする。
「気のせい……? モンスターがそんな事考えて行動する筈ない……」
私がモンスターを観察していると、リンクスが全体に号令を発声させる。
「皆の者! 森の奥に向かって逃げるぞ!!」
よく通る声は周囲の班にも聞こえたらしく、全員が奥に向かって一斉に走り出す。
「し、死にたくねぇ!」
「お、おい押すな!」
「食われる……食われちまう……」
参加者はパニック状態になっており、陣形も崩れて我先にと逃げていた。
すると、今までこちらの様子を見ていたモンスター達も動きだし、私達を追ってくる。
「き、来やがった!」
「助けてくれー!!」
「ひぃ……」
百人の人間の姿は、モンスターからしたらご馳走に見えるだろう。
モンスターは私達を見て追い掛けて来るが、大群の為地響きが凄く、その振動がまた一層恐怖になりパニック状態を引き起こす……
「む、無理だ……こんな数のモンスターに追い掛けられて逃げられる筈ねぇ」
「おい! 諦めんな」
「な、なんだよ! あの数は!?」
今回の遠征に来た参加者のほとんどが、ここに来るまでは強気発言などして舐めていたが、今はその逆であった……
「こんな遠征に参加しなきゃ良かった」
「いいから走れ!」
「母ちゃん……ごめんよ……」
あちこちから、参加者の悲痛な言葉が耳に入って来る。
「シャ、シャレよ逃げ切れるのか?」
「分からん。だが少し様子がおかしいな……」
この数のモンスター達に追い掛けられているのにもかかわらず、何故か一人も犠牲者が出ていない……
「そんな事ありえるのか?」
自問自答をしている私にリンクスが問い掛けて来る。
「お、おい! 何がおかしいのだ!?」
「気にするな。とにかくお前は走れ」
まるでモンスター達によって、ある場所に追い詰められている様に感じる。
だが、モンスターにそんな知力があるなんて聞いた事も無いし、ますます謎が深まるばかりだな……
「ク、クソ。なんでこうも失敗するんだ……」
「リンクス様、ご無事でしたか」
モンスターから逃げていると、副官が姿を現した。
「おぉ、お前も無事であったか」
「不思議な事に今の所犠牲者は出ておらず、全員逃げています」
「こ、この状況どうすれば良い!」
「村に戻れる態勢 状況ではありませんし、逆に利用しましょう」
そう言うと、周りに聴こえないように話し始める。
「なるほどな! お前は頭が回って便りになる」
「ありがとうございます」
何やら副官に吹き込まれてリンクスの機嫌は治った様だ。
「おい、シャレよ」
リンクスの言葉に顔だけ向く。
「副官とも話し合ったのだが、このまま本来の目的を遂行しようと思う」
「どういう意味だ……?」
「どうせ、元々奥に進むつもりだったのだ、このまま目的地に向かう」
「リンクス様の言う通り。目的が遂行出来次第コイツを各班に投げ付けて私達は逃げる」
「他の者達も私の為に犠牲になるなら本望だろ」
副官の手には、前回撤退する時に雷弾達が居た三班に投げつけたモノがあった。
「目的のモノを手に入れたら、コイツを投げつけてモンスター達が他の班に惹きつけられている内に逃げる」
「シャレよ、お前だけは私達と一緒に逃げれば良い」
「リンクス様の寛大な判断に感謝するが良い」
私は、リンクスの表情を見ると、先程迄が嘘の様に、今は不敵な笑みを浮かべていた……
目の前にはモンスターの大群が出現していた。それは前回の遠征で撤退した数の比では無いくらい多い……
「リンクス」
「な、なんだ!?」
「撤退だ……」
「じょ、冗談じゃない! また撤退など許さんからな!」
リンクスと言い争っている内にモンスター達はどんどん出現していく。
「なら、お前はここにいろ」
そう言い私は移動しようとする。
「ど、どこに行く!」
「逃げるに決まっているだろう?」
「ゆ、許さんぞ! 逃げたら宝箱は渡さん」
「リンクス、周りを見てみろ」
私の言葉に従いリンクスは周囲を見回す。
「て、撤退する!」
「マジで、これはヤバイぞ!?」
「なんなんだよこの数は!」
どうやら、リンクスの指示を待たずに各班のリーダー達が撤退命令を下していた。
「お前は残ればいい。私は撤退もするし、宝箱もちゃんと貰う」
「ック……」
リンクス自身も、この状況は不味い事くらい分かっているだろう。だが、三度の挑戦をして、三回とも失敗に終わるのが嫌なのだ。
「それじゃ、私は行くぞ?」
「ま、待て! 撤退を認めるから私も連れて行け」
悔しそうに周囲を見回した後にリンクスは撤退を認めた。
だが、決断が遅かった様だ……それは、リンクスだけでは無く他の班も同じで、モンスター達は私達が来た道を塞ぐ様に立ち位置を取っていた。
「お、おい! 来た道に戻れねぇーぞ!?」
「モンスター達が塞いでやがる!」
「ど、どうすりゃいいんだよ!?」
偶然なのか、モンスター達はドワーフの村に行くまでの道を塞いでいた。
「クッ……シャレよ! どうすれば良い?!」
逃げる方向なんて一つしか無い。私はリンクスに伝える。
「奥に逃げるしか無い」
「なんだと……?」
リンクスは今居る湖の更に奥を見る。そこは来た時以上に草木が密集しており、より一層太陽の光が届かなそうな場所に見える。
「あ、あそこに逃げるのか?」
「それしか、道は無い」
何故だがかモンスター達は私達を追い掛けず、まるで陣地を広げる様、そして私達を包囲する様に移動している感じがする。
「気のせい……? モンスターがそんな事考えて行動する筈ない……」
私がモンスターを観察していると、リンクスが全体に号令を発声させる。
「皆の者! 森の奥に向かって逃げるぞ!!」
よく通る声は周囲の班にも聞こえたらしく、全員が奥に向かって一斉に走り出す。
「し、死にたくねぇ!」
「お、おい押すな!」
「食われる……食われちまう……」
参加者はパニック状態になっており、陣形も崩れて我先にと逃げていた。
すると、今までこちらの様子を見ていたモンスター達も動きだし、私達を追ってくる。
「き、来やがった!」
「助けてくれー!!」
「ひぃ……」
百人の人間の姿は、モンスターからしたらご馳走に見えるだろう。
モンスターは私達を見て追い掛けて来るが、大群の為地響きが凄く、その振動がまた一層恐怖になりパニック状態を引き起こす……
「む、無理だ……こんな数のモンスターに追い掛けられて逃げられる筈ねぇ」
「おい! 諦めんな」
「な、なんだよ! あの数は!?」
今回の遠征に来た参加者のほとんどが、ここに来るまでは強気発言などして舐めていたが、今はその逆であった……
「こんな遠征に参加しなきゃ良かった」
「いいから走れ!」
「母ちゃん……ごめんよ……」
あちこちから、参加者の悲痛な言葉が耳に入って来る。
「シャ、シャレよ逃げ切れるのか?」
「分からん。だが少し様子がおかしいな……」
この数のモンスター達に追い掛けられているのにもかかわらず、何故か一人も犠牲者が出ていない……
「そんな事ありえるのか?」
自問自答をしている私にリンクスが問い掛けて来る。
「お、おい! 何がおかしいのだ!?」
「気にするな。とにかくお前は走れ」
まるでモンスター達によって、ある場所に追い詰められている様に感じる。
だが、モンスターにそんな知力があるなんて聞いた事も無いし、ますます謎が深まるばかりだな……
「ク、クソ。なんでこうも失敗するんだ……」
「リンクス様、ご無事でしたか」
モンスターから逃げていると、副官が姿を現した。
「おぉ、お前も無事であったか」
「不思議な事に今の所犠牲者は出ておらず、全員逃げています」
「こ、この状況どうすれば良い!」
「村に戻れる態勢 状況ではありませんし、逆に利用しましょう」
そう言うと、周りに聴こえないように話し始める。
「なるほどな! お前は頭が回って便りになる」
「ありがとうございます」
何やら副官に吹き込まれてリンクスの機嫌は治った様だ。
「おい、シャレよ」
リンクスの言葉に顔だけ向く。
「副官とも話し合ったのだが、このまま本来の目的を遂行しようと思う」
「どういう意味だ……?」
「どうせ、元々奥に進むつもりだったのだ、このまま目的地に向かう」
「リンクス様の言う通り。目的が遂行出来次第コイツを各班に投げ付けて私達は逃げる」
「他の者達も私の為に犠牲になるなら本望だろ」
副官の手には、前回撤退する時に雷弾達が居た三班に投げつけたモノがあった。
「目的のモノを手に入れたら、コイツを投げつけてモンスター達が他の班に惹きつけられている内に逃げる」
「シャレよ、お前だけは私達と一緒に逃げれば良い」
「リンクス様の寛大な判断に感謝するが良い」
私は、リンクスの表情を見ると、先程迄が嘘の様に、今は不敵な笑みを浮かべていた……
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