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第6章
199話 三日経過
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そこには、神妙な面持ちをしたマーズが立っていた。
今現在、俺達は大木の上におり、マーズからの話を聞いている。
「皆さん、アレから三日経ちましが、リンクスが現れません」
マーズの言葉に三班全員の表情が暗くなる。
「しかも、アレから毎日、中型達が来ては私達を探しています」
俺達の場所を察知して来たのか最近では、木に体当たりなどして、人間が木の上に居ないか確認までする様になって来た。
「恐らく、近い内にモンスター達に見つかってしまうかもしれませんので、三班だけでの脱出を試みたいと思います」
マーズが下した判断とは、勝算が無いと言っていた方法であった……
「なぁ、それって俺達は生きて帰れるのか?」
「もちろんです! この三日間で作戦を練りましたが十分に勝算はあります」
嘘でも、勝算がある事を伝えないと、恐らくパニックになる為、マーズは力強く脱出可能と言い切る。
「基本は木の上を移動しようと思っています」
「木の上?」
「えぇ。アトスさん達が試した方法ですが、一度も見つからずに移動が出来た様です」
その言葉を聞いて少しだけ騒つく。
「ただ、安心してはダメです。その時がたまたま見つからなかっただけの可能性もありますので」
直ぐにマーズが指摘し、三班全員の気を引き締めさせる。
「もし、モンスターに見つかった場合はどうするんだ?」
「基本は逃げに徹します。戦ってしまうと、他のモンスターが集まって来てしまう可能性がありますので」
ここにいるモンスター達は考えて行動出来るタイプの為、少しでも討伐に手こずると直ぐに仲間が駆けつけて来てしまうだろう。
「一応想定日数は五日間で脱出しようと思っています」
「五日間か……」
全員が五日と言う言葉に反応する。
「五日間辛抱すれば……」
「だな、そしたら家族に会える」
「お、俺は帰ったら沢山女を抱いてやる!」
「おい、俺も連れてけ!」
帰ると言う言葉に皆が過剰に反応する。
「皆さん、落ち着いて下さい。残酷でありますが、五日とは何も問題が起きずに移動出来た場合だと認識しといて下さい」
マーズの言葉に多少は騒ぎが収まるが、先程マーズが力強く勝算があると言った為、希望を持つ事が出来たのだろう。ここ最近で皆の表情は一番明るい事に気付く。
「マーズ、出発はいつだ?」
「明日の朝にしようかと。丁度モンスター達が水場に移動した後に行くのが良いと思いまして」
「分かったぜ!」
「オイラ、やっと帰れるのか……?」
「あぁ、トイン良かったな!」
「うぅ……フィールが何度も励ましてくれたお陰だ……」
見た目に反して、トインは相当精神的に弱いのか、何度も心が折れそうになっていたらしい。それをフィールがケアーしていた様だ。フィールはトインだけでは無く他のメンバー全員の心のケアーもしていたらしく、そのお陰か今の所皆、希望に溢れている。
周囲が盛り上がっている中、マーズが近付いて来る。
「アトスさん、出発は明日の朝です」
「あぁ……。木の上移動でどこまで行けるかだな」
「えぇ。一度もバレずに移動出来れば恐らく五日で抜け出せます」
「もし、木の上移動がバレたら?」
「その時は、手の打ち様が無いです……」
周囲に悟られない様に話していたつもりだったが、どうやら気配を消して聴いていた者がいた様だ。
「やっぱり、勝算は低いのか」
後ろを振り向くと、フィールが居た。
「フィールさん……」
「まぁ、マーズとアトスが話している所を何度か見たが、その度に表情が優れなかったもんな……」
どうやら、俺達の秘密話を何度か見ていたらしい。
「……フィールさんにはお伝えしといたほうが良さそうですね」
マーズはこれまでの俺との会話や勝算についてフィールに伝える。
「マジかよ……」
「えぇ。ですが、木の上移動がバレなかった場合は本当に脱出可能です」
マーズの言葉にフィールは何度か頷く。
「勝算が皆無よりはマシだな……」
自分自身を納得させて、フィールは顔を上げる。
「どっちにしろ、その作戦に賭けるしか無さそうだな」
「そうなります」
「なら全力だな!」
「もちろんです。それにこっちにはアトスさん達が居ますからね」
「それもそうだ!」
急にマーズから振られて驚きつつも、俺は大きく頷く。
「任せろ!」
「はは、頼もしいぜ」
それからは、明日の事前準備として食料を集めたりする事にした。
「よし、果物多めでいいんだよな?」
「えぇ。仮に動物を捕まえて来ても、この状況だと火すら焚けませんからね」
「任せろ! 練習も含めて木の上を移動してみるぜ!」
そう言って、フィール達は日が沈むくらいに、沢山の果物を抱えて帰ってきた。
「いやー、参った参った。途中で小型と遭遇しちまってな……」
「大丈夫だったんですか?」
「あぁ。なんとか木の上に登ったり、隠れたりしたら、追うのを止めてくれたぜ」
「それは良かったです」
小型一体を巻くのも相当大変だが、何事も無くて良かった。
すると、ロピ達が近付いて来た。
「ふむ。今の話、何か引っかかりますな……」
「ん?」
「いや、何が引っかかるか、自分でも分かりませんが……」
珍しく、リガスが顎に手を置いて考えている。
「それよりも決行は明日の朝なんだし、早く寝ないとだね!」
「姉さん、さっきも寝てなかった?」
「い、嫌だなー。な、何を言っているんだか……」
ロピは俺の視線を気にしているのか、チラチラと俺を見ている。
そんな和やかな雰囲気で夜を迎え、遂に決行が明日に迫っている中、事件は起きた……
今現在、俺達は大木の上におり、マーズからの話を聞いている。
「皆さん、アレから三日経ちましが、リンクスが現れません」
マーズの言葉に三班全員の表情が暗くなる。
「しかも、アレから毎日、中型達が来ては私達を探しています」
俺達の場所を察知して来たのか最近では、木に体当たりなどして、人間が木の上に居ないか確認までする様になって来た。
「恐らく、近い内にモンスター達に見つかってしまうかもしれませんので、三班だけでの脱出を試みたいと思います」
マーズが下した判断とは、勝算が無いと言っていた方法であった……
「なぁ、それって俺達は生きて帰れるのか?」
「もちろんです! この三日間で作戦を練りましたが十分に勝算はあります」
嘘でも、勝算がある事を伝えないと、恐らくパニックになる為、マーズは力強く脱出可能と言い切る。
「基本は木の上を移動しようと思っています」
「木の上?」
「えぇ。アトスさん達が試した方法ですが、一度も見つからずに移動が出来た様です」
その言葉を聞いて少しだけ騒つく。
「ただ、安心してはダメです。その時がたまたま見つからなかっただけの可能性もありますので」
直ぐにマーズが指摘し、三班全員の気を引き締めさせる。
「もし、モンスターに見つかった場合はどうするんだ?」
「基本は逃げに徹します。戦ってしまうと、他のモンスターが集まって来てしまう可能性がありますので」
ここにいるモンスター達は考えて行動出来るタイプの為、少しでも討伐に手こずると直ぐに仲間が駆けつけて来てしまうだろう。
「一応想定日数は五日間で脱出しようと思っています」
「五日間か……」
全員が五日と言う言葉に反応する。
「五日間辛抱すれば……」
「だな、そしたら家族に会える」
「お、俺は帰ったら沢山女を抱いてやる!」
「おい、俺も連れてけ!」
帰ると言う言葉に皆が過剰に反応する。
「皆さん、落ち着いて下さい。残酷でありますが、五日とは何も問題が起きずに移動出来た場合だと認識しといて下さい」
マーズの言葉に多少は騒ぎが収まるが、先程マーズが力強く勝算があると言った為、希望を持つ事が出来たのだろう。ここ最近で皆の表情は一番明るい事に気付く。
「マーズ、出発はいつだ?」
「明日の朝にしようかと。丁度モンスター達が水場に移動した後に行くのが良いと思いまして」
「分かったぜ!」
「オイラ、やっと帰れるのか……?」
「あぁ、トイン良かったな!」
「うぅ……フィールが何度も励ましてくれたお陰だ……」
見た目に反して、トインは相当精神的に弱いのか、何度も心が折れそうになっていたらしい。それをフィールがケアーしていた様だ。フィールはトインだけでは無く他のメンバー全員の心のケアーもしていたらしく、そのお陰か今の所皆、希望に溢れている。
周囲が盛り上がっている中、マーズが近付いて来る。
「アトスさん、出発は明日の朝です」
「あぁ……。木の上移動でどこまで行けるかだな」
「えぇ。一度もバレずに移動出来れば恐らく五日で抜け出せます」
「もし、木の上移動がバレたら?」
「その時は、手の打ち様が無いです……」
周囲に悟られない様に話していたつもりだったが、どうやら気配を消して聴いていた者がいた様だ。
「やっぱり、勝算は低いのか」
後ろを振り向くと、フィールが居た。
「フィールさん……」
「まぁ、マーズとアトスが話している所を何度か見たが、その度に表情が優れなかったもんな……」
どうやら、俺達の秘密話を何度か見ていたらしい。
「……フィールさんにはお伝えしといたほうが良さそうですね」
マーズはこれまでの俺との会話や勝算についてフィールに伝える。
「マジかよ……」
「えぇ。ですが、木の上移動がバレなかった場合は本当に脱出可能です」
マーズの言葉にフィールは何度か頷く。
「勝算が皆無よりはマシだな……」
自分自身を納得させて、フィールは顔を上げる。
「どっちにしろ、その作戦に賭けるしか無さそうだな」
「そうなります」
「なら全力だな!」
「もちろんです。それにこっちにはアトスさん達が居ますからね」
「それもそうだ!」
急にマーズから振られて驚きつつも、俺は大きく頷く。
「任せろ!」
「はは、頼もしいぜ」
それからは、明日の事前準備として食料を集めたりする事にした。
「よし、果物多めでいいんだよな?」
「えぇ。仮に動物を捕まえて来ても、この状況だと火すら焚けませんからね」
「任せろ! 練習も含めて木の上を移動してみるぜ!」
そう言って、フィール達は日が沈むくらいに、沢山の果物を抱えて帰ってきた。
「いやー、参った参った。途中で小型と遭遇しちまってな……」
「大丈夫だったんですか?」
「あぁ。なんとか木の上に登ったり、隠れたりしたら、追うのを止めてくれたぜ」
「それは良かったです」
小型一体を巻くのも相当大変だが、何事も無くて良かった。
すると、ロピ達が近付いて来た。
「ふむ。今の話、何か引っかかりますな……」
「ん?」
「いや、何が引っかかるか、自分でも分かりませんが……」
珍しく、リガスが顎に手を置いて考えている。
「それよりも決行は明日の朝なんだし、早く寝ないとだね!」
「姉さん、さっきも寝てなかった?」
「い、嫌だなー。な、何を言っているんだか……」
ロピは俺の視線を気にしているのか、チラチラと俺を見ている。
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