上 下
199 / 492
第6章

198話 待機する事が最善……?

しおりを挟む
「強くなる為?」
「そうだよー。中型達は変異体に勝つ為に自分達を強くする必要があるからね!」
「ま、待ってください。ロピさんの言い方だと、中型達がそこまで考えて私達人間を探していると言う事でしょうか?」
「え? そうだよ?」

 ロピの発言にマーズも含めて一同は戸惑いを隠せない。そもそも、モンスター達に考える知恵など持っていないと思っている者達からしたら、ロピの言葉は信じられないのだろう。

 だが、逆に俺とチル、リガスは別だ。以前に戦った小型達は何か考えながら攻撃などをしている感じがした為ロピの言葉を素直に納得した。

「ロピの言っている事はあり得るな……」
「ア、アトスさんどういう事でしょうか?」
「俺達の二つ名が付いた戦いを知っているか?」
「えぇ。休憩所の戦いですよね? 商人達が触れ回っていたので、ドワーフの村にいる者達で知らない人は居ないかと」

 マーズの言葉に三班全員も頷く。

「商人達がどういう風に伝えていたのか知らないが、その時の戦いで俺達は小型と戦ったんだ」
「確か人間を複数捕食した小型との戦闘だったと聞いています」
「あぁ。その時の小型達の動きがまるで考えながら戦っているとしか思えない感じだった」

 そこから、俺はマーズ達に小型が普段行わなかった連続攻撃だったり、タンク役を無視してロピに直接攻撃しに来たりした事を話した。

「その様な事があるなんて、信じられませんね……」
「あぁ、だが実際にあった事だ。そして今回の中型に付き従う小型達を見て前以上に考えながら行動しているんじゃ無いかと思えてくる」

 水場で見ていた時もそうだが、変異体と中型が戦闘を始めた際、中型が奇声を上げた時は、まるで小型達に突っ込む様に指示した様に見えた。

「じゃ、ロピさんの考えはあり得ると言う事でしょうか?」
「俺はロピの考え方に納得はした」
「私も姉さんの考え方は正しい様な気がします」
「ほっほっほ。むしろ今思うとそれしか考えられませんな」

 マーズ達は未だに信じ切れていない様だ。

「にわかには信じがたいですが、アトスさん達がそう考えるって事は、あり得るのでしょう……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。一旦整理させてくれ」

 フィールが頭を抑えながら話し始める。

「毎晩来る様になった中型達は変異体との戦闘で勝つ為に俺達を探しているって事か?」
「恐らくな」
「って事は、中型達は俺達の場所を何となく気が付いているから、毎晩ここら辺に来るって事か!?」
「それは……分からない。気配を察知してここに集まって来ている可能性もあるな」
「マジかよ……」

 フィールは力が抜けたのか座り込む。

「オ、オイラ達これからどうすればいいんだよ?!」

 全員がマーズに視線を向ける。

「……日にち的にそろそろリンクス達が来る予定なのでもう少しだけ待ちましょう」
「だ、大丈夫なのか?」
「どっちにしろ、今はモンスター達が活発に行動しているので移動するのにも向かないでしょうし、待ちましょう」

 マーズの意見に反対意見が出なかった為、後数日だけ大木に留まる事にした。

「そうと決まれば食料を確保しに行くか」

 先程まで座り込んでいたフィールであったが、気分を切り替える様に言い放つ。

 こういう所は流石だ。フィールの掛け声で黙り込んでいた三班全員も動き始めた。

「それじゃ、ここから移動する事も想定して多めに食料取ってくるぜ!」
「オ、オイラはまだ立ち直れてない」
「うるせぇ! いいからお前も来い」
「マ、マーズ助けてくれー」

 そう言って、フィールはトイン達を複数連れて食料を探しに向かった。

「助かりますね……」

 マーズはフィール達が走り去った後を見て呟く。

「自分も辛いのに明るく振る舞っているもんな」
「えぇ。フィールさんみたいな存在が居るだけで周りもいくらかは落ち着きますからね」

 先程の話を聞いた者達の中では酷くショックや、何度目か分からない絶望を覚えた者も少なくないが、チームの一人でも明るく振る舞う事で、周りもそれに連れて心が軽くなったりするものだ。

「それで、今後どうするんだ?」
「そうですね……もし、リンクス達が来ない様であれば、この人数で脱出を試みないとですね」
「勝算はあるのか……?」

 俺がマーズに問い掛けると苦虫を噛み締めた様な表情を浮かべて呟く。

「無い……に等しいです」

 分かって居た事だが、自分以外の者に改めて言われると、なんとも言えない感情になるものだ……。

「仮にリンクス達が来た場合の勝算は……?」
「その場合も難しいとしか言えないですね。アトスさん達の話を聞いて、モンスター達が考えて行動する場合だったら、単純な作戦は意味が無いでしょうし」

 今、俺達が居る場所から安全な場所まで行くには最低でも四日は掛かるだろうな……

「勝算が無い事を全員に伝えるのか?」
「いえ、これ以上悲報を伝えたら、耐えられない者まで出てくるでしょうから言いません」
「それがいいと思う」

 こうして、俺達はリンクス達が来るまでひたすら待つ事にした……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...