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第6章
193話 変異体VS中型
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俺達は木の上から水場を見回したが、とんでもない事になっていた。
「中型が二体……」
俺の呟きに誰一人答える事が出来なかった。
「それにあのモンスターの数……」
まず、水場には二体の中型が居た。珍しい中型が同じ場所に二体居るだけで驚きなのに、なんと番いなのかお互い特に争う事も無く寄り添う様に水を飲んでいた。
そして、その周りには何十体と言う小型が二体の中型に付き従う様に周りを固めていた。
「お、おい。これはどう言う事なんだ……?」
斥候は目の前の光景に驚いているらしい。
「こんなの初めて……」
「私もです……」
「ふむ。まるで二体の中型に付き従っている様に見えますな」
リガスの言う通りなのだが、そんな事ありえるのか?
本来モンスターは群れないと言われている。自由気ままに生活し人間を見つけたら捕食する。そこにモンスターが複数居た場合は奪い合いになる。
「あ、あり得ないぜ……モンスターが群れを成すなんて……」
この前の休憩所での戦いでは、複数の小型相手と戦ったが、結局は一番強い小型が最初に獲物を捕食する権利があっただけで、特に他の小型と力を合わせて戦った訳では無いが、目の前の光景では、明らかに小型が中型に付き従っている様に見える。
「あれって絶対中型の事守っているよね?」
「ロピ殿の言う通りで、恐らく私達が近付けば襲って来ますな……」
これ以上はこの場に留まるのは危険だな。
「よし、この情報をマーズに伝えるぞ」
「だな、これ以上ここに居たら危ねぇ」
斥候が住処に戻る為足を動かそうとした、その時……
「マジかよ……次から次へと……」
「斥候さん、どうしたのー?」
「前方からモンスターだ」
「えー、逃げられそうー?」
斥候がいつも通り耳に手を添えて気配を読むのに集中する。
「ダメだ、この辺りにモンスターが多すぎて、近づいて来ている事しか分からねぇ」
「あと、どれくらいか分かるか?」
「足音の大きさ的に直ぐそこだな」
「なら、ソイツが通り過ぎたら移動しよう」
木の上で待っていると、モンスターが一体こちらにユックリと向かってくるのが見えた。
だが、その正体を視認した瞬間に俺を含むチーム全員の動きが固まった……。
そしてやっとの思いでチルが呟いた。
「変異体……」
前方から水場にゆっくりと、禍々しい気配を周囲に振り撒きながら変異体が近づいて来る。
「お、おいおい。もしかしてこの集団に更に変異体まで加わるのか!?」
「そ、それだったら私達で倒せないよ」
「リガス、勝機はある……?」
チルが、この小型を率いる中型二体に加えて変異体が参加した場合の勝敗を聞き出す。
「ふむ。今のメンバーでは確実に無理ですな。仮にこの前みたいに百人居たとしても確実に負けますな」
それも、そうだろう。人間族の住処を壊して壊滅状態にしたのも中型二体である。人間族の中には何人もの戦闘員が居たはずだ。本来、住民を守りながらとは言え、討伐人数としては充分足りていただろう。
しかし、逆に人数の多さがネックになったんだろうな……。
討伐人数としては充分足りたが、非戦闘員が捕食される度に中型はどんどん成長しただろう。この前戦闘した小型でさえ五人程捕食しただけだと言うのに、物凄く強化された。それが中型だとしたら計り知れない程の強さになっただろう……。
「お、お兄さんどうしよう」
「落ち着け、俺達の目的は変異体や中型の討伐じゃ無くて、生き抜く事なんだから」
「ほっほっほ。アトス殿の言う通りですぞ。モンスターとは戦わなければいいだけですな」
「流石にアレらに挑むのは危険ですね」
チルだけは、少し残念そうにしているのが、俺としては恐ろしい……。
変異体の登場により中型二体は水場から少し離れて、待ち構える様な位置に移動した。
「本当に小型が従っているねー?」
中型二体の少し後ろに綺麗に並ぶ小型達は、まるで人間の兵士と変わらないな。
変異体は中型と向き合う様な位置になり一度止まる。
「ん? なにしているんだ?」
モンスターの鳴き声なのか辺りにあまり聞いた事の無い高い音や低い音が鳴り響く。
「ふむ。何やらお互い話し合っている様に見えますな」
「モンスター同士で会話しているのー?」
「そんな所初めて見ました……」
恐らく、チルだけでは無く殆どの者がモンスター達が会話している所なんて見た事が無いと思う。
暫くモンスター達は会話をした後に鳴き声みたいな音がピタリと止む。
「終わったみたいだね」
「このまま、奥に移動してくれれば嬉しいんだがな……」
俺達はモンスターの集団が移動する事を願い息を殺して待ち続けていると、ここに来て何度目か分からないが、目の前の光景に驚愕した。
辺りが静寂に包み込まれていたのだがいきなり何かを叩きつける様な音が響いた。
「な!?」
「え、どう言う事!?」
なんと、中型二体がいきなり物凄いスピードで変異体に近づき、尻尾を使って左右から挟み込む様に変異体を攻撃したのである。
「な、何が起こっているんだ……?」
仲間同士だと思っていた中型と変異体は、いきなり争い始めたのである……
「中型が二体……」
俺の呟きに誰一人答える事が出来なかった。
「それにあのモンスターの数……」
まず、水場には二体の中型が居た。珍しい中型が同じ場所に二体居るだけで驚きなのに、なんと番いなのかお互い特に争う事も無く寄り添う様に水を飲んでいた。
そして、その周りには何十体と言う小型が二体の中型に付き従う様に周りを固めていた。
「お、おい。これはどう言う事なんだ……?」
斥候は目の前の光景に驚いているらしい。
「こんなの初めて……」
「私もです……」
「ふむ。まるで二体の中型に付き従っている様に見えますな」
リガスの言う通りなのだが、そんな事ありえるのか?
本来モンスターは群れないと言われている。自由気ままに生活し人間を見つけたら捕食する。そこにモンスターが複数居た場合は奪い合いになる。
「あ、あり得ないぜ……モンスターが群れを成すなんて……」
この前の休憩所での戦いでは、複数の小型相手と戦ったが、結局は一番強い小型が最初に獲物を捕食する権利があっただけで、特に他の小型と力を合わせて戦った訳では無いが、目の前の光景では、明らかに小型が中型に付き従っている様に見える。
「あれって絶対中型の事守っているよね?」
「ロピ殿の言う通りで、恐らく私達が近付けば襲って来ますな……」
これ以上はこの場に留まるのは危険だな。
「よし、この情報をマーズに伝えるぞ」
「だな、これ以上ここに居たら危ねぇ」
斥候が住処に戻る為足を動かそうとした、その時……
「マジかよ……次から次へと……」
「斥候さん、どうしたのー?」
「前方からモンスターだ」
「えー、逃げられそうー?」
斥候がいつも通り耳に手を添えて気配を読むのに集中する。
「ダメだ、この辺りにモンスターが多すぎて、近づいて来ている事しか分からねぇ」
「あと、どれくらいか分かるか?」
「足音の大きさ的に直ぐそこだな」
「なら、ソイツが通り過ぎたら移動しよう」
木の上で待っていると、モンスターが一体こちらにユックリと向かってくるのが見えた。
だが、その正体を視認した瞬間に俺を含むチーム全員の動きが固まった……。
そしてやっとの思いでチルが呟いた。
「変異体……」
前方から水場にゆっくりと、禍々しい気配を周囲に振り撒きながら変異体が近づいて来る。
「お、おいおい。もしかしてこの集団に更に変異体まで加わるのか!?」
「そ、それだったら私達で倒せないよ」
「リガス、勝機はある……?」
チルが、この小型を率いる中型二体に加えて変異体が参加した場合の勝敗を聞き出す。
「ふむ。今のメンバーでは確実に無理ですな。仮にこの前みたいに百人居たとしても確実に負けますな」
それも、そうだろう。人間族の住処を壊して壊滅状態にしたのも中型二体である。人間族の中には何人もの戦闘員が居たはずだ。本来、住民を守りながらとは言え、討伐人数としては充分足りていただろう。
しかし、逆に人数の多さがネックになったんだろうな……。
討伐人数としては充分足りたが、非戦闘員が捕食される度に中型はどんどん成長しただろう。この前戦闘した小型でさえ五人程捕食しただけだと言うのに、物凄く強化された。それが中型だとしたら計り知れない程の強さになっただろう……。
「お、お兄さんどうしよう」
「落ち着け、俺達の目的は変異体や中型の討伐じゃ無くて、生き抜く事なんだから」
「ほっほっほ。アトス殿の言う通りですぞ。モンスターとは戦わなければいいだけですな」
「流石にアレらに挑むのは危険ですね」
チルだけは、少し残念そうにしているのが、俺としては恐ろしい……。
変異体の登場により中型二体は水場から少し離れて、待ち構える様な位置に移動した。
「本当に小型が従っているねー?」
中型二体の少し後ろに綺麗に並ぶ小型達は、まるで人間の兵士と変わらないな。
変異体は中型と向き合う様な位置になり一度止まる。
「ん? なにしているんだ?」
モンスターの鳴き声なのか辺りにあまり聞いた事の無い高い音や低い音が鳴り響く。
「ふむ。何やらお互い話し合っている様に見えますな」
「モンスター同士で会話しているのー?」
「そんな所初めて見ました……」
恐らく、チルだけでは無く殆どの者がモンスター達が会話している所なんて見た事が無いと思う。
暫くモンスター達は会話をした後に鳴き声みたいな音がピタリと止む。
「終わったみたいだね」
「このまま、奥に移動してくれれば嬉しいんだがな……」
俺達はモンスターの集団が移動する事を願い息を殺して待ち続けていると、ここに来て何度目か分からないが、目の前の光景に驚愕した。
辺りが静寂に包み込まれていたのだがいきなり何かを叩きつける様な音が響いた。
「な!?」
「え、どう言う事!?」
なんと、中型二体がいきなり物凄いスピードで変異体に近づき、尻尾を使って左右から挟み込む様に変異体を攻撃したのである。
「な、何が起こっているんだ……?」
仲間同士だと思っていた中型と変異体は、いきなり争い始めたのである……
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