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第6章
191話 変異体
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「お、お兄さんアレ何……?」
怯えた様に聞いてくるロピに答えの分からない俺は、ただ黙っている事しか出来なかった……。
気配の正体は、もちろんモンスターだが、その姿が普通のモンスターとは異なっていた。通常は巨大な芋虫型で色鮮やかであり、色自体の個体差はあるものの、外皮などは硬く滑らかである。
だが、今俺達が見ているモンスターは形は同じだが、外皮から毛が無数に生えている……いや、あれは毛と言うよりはトゲか?
「あんなモンスター見た事無いです」
「ふむ……」
リガスはモンスターの事を観察する様に黙って見ている。
「あのモンスター凄い大きくないか?」
その異様な形をしたモンスターは、中型よりも大きい様に見える。
「アトスさん、皆さんを起こして来ました」
マーズが再び見張り台に戻って、モンスターを確認する。
「あ、あれは一体……」
やはりマーズもモンスターの正体が分からないのか困惑している様だ。起こされた面々も木の上からモンスターを見るが皆な驚きを隠せないでいる。
「アトス殿……」
モンスターの動きを観察していると、リガスから声を掛けられる。
「ん?」
「あれは、恐らく変異体ですな」
モンスターから一切視線を外さずにリガスが言う。
「変異体?」
「長く生きて来ましたが一度だけ遭遇した事があります」
変異体を見ると丁度大木の下を通過する所であった。そして大木の真下で一度止まり何かを探る様に身体にビッシリ付いているトゲを動かしている。
しばらく動かしてから、何も見つけられなかったのか、またゆっくりと進み始め俺達は気配が無くなるまでジッとしていた。
「リガス、アイツは何なんだ?」
「私も正体までは分かりません。しかし私達魔族の間では変異体と呼んでいます」
リガスは俺達に変異体について分かる事を教えてくれた。
「私が変異体と遭遇した事があるのは子供の時ですな」
「子供?」
「えぇ。その時はまだ親と一緒に行動しておりましたが、その子供の時ですら皆さんに悪いですが全員掛かって来ても問題無いくらいには強かったと自負しております」
えぇ……、子供の頃からそんなに強かったのかよ……。
「その時は私と、両親、それから祖父と祖母までおりましたが、皆んな今の私より強かったですな」
「魔族さんより強いとか……」
「ほっほっほ。当時スキルを使えなかった私など魔族の中では雑魚でしたからな」
恐らく、ここにいる全員が一斉に掛かってもリガスには勝てないだろう。
「ある日気配を感じて家族で見に行ったんです。小型程度なら私以外一人で倒せましたしな」
「魔族って凄いんだねー」
「そして気配の正体を見た時に変異体がいました。今のとは別の姿でしたがその変異体も通常のモンスターとは異なった形をしておりました」
変異体と言うだけあって、同じ変異体でも姿はバラバラなのか?
「私も含めて魔族は好戦的なので早速倒しに掛かったのですが……」
珍しく歯切れの悪い感じでリガスが言葉を途中で切る。
「返り討ちに遭いましたな」
その言葉に聞いていた全員が驚く。もちろん俺もだ。
小型を一人で倒せると言う事は最低でも一人で五人分の戦闘力があると言う事だし、実際にはそれ以上であると思う。
リガス以外の家族四人の合計で二十人分の戦闘力があり。子供のリガスを入れたりしたら魔族五人で二十人以上の戦力は優に超えていると見て良いだろう。
戦力が二十人も居れば中型を一体倒すのに十分だが、それでも返り討ちに遭ったと言う事は、変異体とは相当強いって事か……?
「そ、それで魔族さん達はどうなったの?」
「情け無くはありますが、全員で必死に逃げましたな」
「逃げ切れた……?」
「ふむ。三日三晩逃げ続けましたが、しつこく追って来ましてな、子供の私は体力的にも限界でしたので、祖父が変異体を惹きつけている内に逃げました」
凄い昔の事とは言えやはり身内を亡くす悲しさはキツイものである……。
チルは優しくリガスの肩に手を置く。
「ほっほっほ。チル様ありがとうございます」
コクリと頷くチル。
「わ、私も!」
続いてロピも逆の肩に自身の手を置き慰めている様だ。
「ほっほっほ。私は幸せ者でございますな」
「今ではリガスも私の家族」
「そうだよー。魔族さんはお爺ちゃん枠なんだから」
「えぇ、私もチル様、ロピ殿、アトス殿を家族だと思っております」
うんうん、これでこそ家族だな。俺は三人を包み込む様に優しく抱く。
俺達が家族の親睦を深めている横でマーズ達は変異体について考えている様だ。
「変異体に見つかったら不味いですね」
「アイツを見たら速攻で逃げるしかねぇーな」
「オイラの毒も効かなそうだ……」
確かに……リガスの話を聞く限り、今の人数で太刀打ち出来る気がしないな。
「リンクス達が来るまで早くても後一週間は掛かります、それまでは今まで通り耐え凌ぐしかありませんね」
マーズの判断に、フィール、トインを含めた三班全員が頷く。
「しかし、このまま情報が無いのも不安なので、明日からは無理しない範囲で情報収集もおこないましょう」
「おう、この地域はなんか変だし賛成だ」
「フィールの言う通り、ここら辺は変だからな……、オイラも情報は集めといた方がいいと思う」
反対意見も無く全員が賛成した為明日から班に分かれて早速情報収集開始する様だが、問題は変異体だけでは無かった……
怯えた様に聞いてくるロピに答えの分からない俺は、ただ黙っている事しか出来なかった……。
気配の正体は、もちろんモンスターだが、その姿が普通のモンスターとは異なっていた。通常は巨大な芋虫型で色鮮やかであり、色自体の個体差はあるものの、外皮などは硬く滑らかである。
だが、今俺達が見ているモンスターは形は同じだが、外皮から毛が無数に生えている……いや、あれは毛と言うよりはトゲか?
「あんなモンスター見た事無いです」
「ふむ……」
リガスはモンスターの事を観察する様に黙って見ている。
「あのモンスター凄い大きくないか?」
その異様な形をしたモンスターは、中型よりも大きい様に見える。
「アトスさん、皆さんを起こして来ました」
マーズが再び見張り台に戻って、モンスターを確認する。
「あ、あれは一体……」
やはりマーズもモンスターの正体が分からないのか困惑している様だ。起こされた面々も木の上からモンスターを見るが皆な驚きを隠せないでいる。
「アトス殿……」
モンスターの動きを観察していると、リガスから声を掛けられる。
「ん?」
「あれは、恐らく変異体ですな」
モンスターから一切視線を外さずにリガスが言う。
「変異体?」
「長く生きて来ましたが一度だけ遭遇した事があります」
変異体を見ると丁度大木の下を通過する所であった。そして大木の真下で一度止まり何かを探る様に身体にビッシリ付いているトゲを動かしている。
しばらく動かしてから、何も見つけられなかったのか、またゆっくりと進み始め俺達は気配が無くなるまでジッとしていた。
「リガス、アイツは何なんだ?」
「私も正体までは分かりません。しかし私達魔族の間では変異体と呼んでいます」
リガスは俺達に変異体について分かる事を教えてくれた。
「私が変異体と遭遇した事があるのは子供の時ですな」
「子供?」
「えぇ。その時はまだ親と一緒に行動しておりましたが、その子供の時ですら皆さんに悪いですが全員掛かって来ても問題無いくらいには強かったと自負しております」
えぇ……、子供の頃からそんなに強かったのかよ……。
「その時は私と、両親、それから祖父と祖母までおりましたが、皆んな今の私より強かったですな」
「魔族さんより強いとか……」
「ほっほっほ。当時スキルを使えなかった私など魔族の中では雑魚でしたからな」
恐らく、ここにいる全員が一斉に掛かってもリガスには勝てないだろう。
「ある日気配を感じて家族で見に行ったんです。小型程度なら私以外一人で倒せましたしな」
「魔族って凄いんだねー」
「そして気配の正体を見た時に変異体がいました。今のとは別の姿でしたがその変異体も通常のモンスターとは異なった形をしておりました」
変異体と言うだけあって、同じ変異体でも姿はバラバラなのか?
「私も含めて魔族は好戦的なので早速倒しに掛かったのですが……」
珍しく歯切れの悪い感じでリガスが言葉を途中で切る。
「返り討ちに遭いましたな」
その言葉に聞いていた全員が驚く。もちろん俺もだ。
小型を一人で倒せると言う事は最低でも一人で五人分の戦闘力があると言う事だし、実際にはそれ以上であると思う。
リガス以外の家族四人の合計で二十人分の戦闘力があり。子供のリガスを入れたりしたら魔族五人で二十人以上の戦力は優に超えていると見て良いだろう。
戦力が二十人も居れば中型を一体倒すのに十分だが、それでも返り討ちに遭ったと言う事は、変異体とは相当強いって事か……?
「そ、それで魔族さん達はどうなったの?」
「情け無くはありますが、全員で必死に逃げましたな」
「逃げ切れた……?」
「ふむ。三日三晩逃げ続けましたが、しつこく追って来ましてな、子供の私は体力的にも限界でしたので、祖父が変異体を惹きつけている内に逃げました」
凄い昔の事とは言えやはり身内を亡くす悲しさはキツイものである……。
チルは優しくリガスの肩に手を置く。
「ほっほっほ。チル様ありがとうございます」
コクリと頷くチル。
「わ、私も!」
続いてロピも逆の肩に自身の手を置き慰めている様だ。
「ほっほっほ。私は幸せ者でございますな」
「今ではリガスも私の家族」
「そうだよー。魔族さんはお爺ちゃん枠なんだから」
「えぇ、私もチル様、ロピ殿、アトス殿を家族だと思っております」
うんうん、これでこそ家族だな。俺は三人を包み込む様に優しく抱く。
俺達が家族の親睦を深めている横でマーズ達は変異体について考えている様だ。
「変異体に見つかったら不味いですね」
「アイツを見たら速攻で逃げるしかねぇーな」
「オイラの毒も効かなそうだ……」
確かに……リガスの話を聞く限り、今の人数で太刀打ち出来る気がしないな。
「リンクス達が来るまで早くても後一週間は掛かります、それまでは今まで通り耐え凌ぐしかありませんね」
マーズの判断に、フィール、トインを含めた三班全員が頷く。
「しかし、このまま情報が無いのも不安なので、明日からは無理しない範囲で情報収集もおこないましょう」
「おう、この地域はなんか変だし賛成だ」
「フィールの言う通り、ここら辺は変だからな……、オイラも情報は集めといた方がいいと思う」
反対意見も無く全員が賛成した為明日から班に分かれて早速情報収集開始する様だが、問題は変異体だけでは無かった……
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