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第6章

190話 いつもと違う……

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「今日見張りか……」
「面倒くさいよねー」

 夜間の見張りはローテーションで行う事に決まって、今日の夜は俺達が担当する事になっている。

「おー、今日はアトス達が見張りか」
「なら安心だな」

 フィールとトインが俺達の方を向いて話してくる。

「お? アトスか、なら熟睡しても問題無さそうだな」

 この前の戦闘から更に三日程経過したが、
あの戦闘で、どうやら俺のスキルが強いと三班の間で話題になった。
 もちろん自分自身でも弱いと思っていないが、他の者達の反応は思った以上だった。

 あれからモンスター達は毎日の様に大木付近に現れては、討伐するの繰り返しを行っている。

「流石にこんなに殺到されると疲れが取れにくいよな……」

 その時、その時でモンスターの強さはバラバラだし現れる数もバラバラである。
 だが、日が経つに連れてモンスターを倒しやすくなって来た。その理由としては、俺の指示に三班が従ってくれる様になったからだと思う。

 モンスターとの戦闘になる度にサポートにて攻撃力や防御力を上げていたら、いつの間にか感謝される様になり気付いたら俺が指示した通りに皆が動いてくれる様になった。

 そうする事で連携も取れて来て今では人数が二十人程しか居ないにもかかわらず小型であれば五体なら安全に倒せるまでになった。

「やっと、神の言う事を聞く様になって来ましたね」
「チ、チルちゃんの言葉は一先ず無視をして、確かにお兄さんの指示でチームワーク良くなって来たと思う」
「ふむ。元々個々の能力も皆さん高いですからな。連携が取れるようになって更に効率良く倒せる様になりましたからな」

 先程、俺の指示を聞く様になったとは言ったものの、戦闘時の指揮を俺が全て取り仕切っている訳では無いんだよな……。

 むしろ、そういうのはこの前の特攻作戦で懲りた。俺は要所要所での指示を出すだけであり、全体の指揮はマーズが取っている。

「でも、力を認められるのは単純に嬉しいな」
「むしろ、アトス様の力に気付くのが遅過ぎます」
「それは言えてるよねー」
「ほっほっほ。アトス様の力は見ただけでは分かり辛いですからな」

 自分自身でスキルの効果を受けられない為、俺のサポートが一体どれくらい効力があるか受けてみたいな……。

「それじゃ、オイラ達は寝るからよろしくな」
「何かあれば遠慮なく起こしてくれ」

 各自、大木の枝に作られた住処に寝転がり睡眠を取り始めた。

「さて、長い長い夜の始まりだな」
「今日はジャングルも静かですし何も無ければ良いですね」

 俺達は大木に作った見張り台に移動して四人で背中合わせに四方向を見る様な形で座り込む。

「ロピ、寝るなよ?」
「し、失礼な!」
「姉さんが寝たら起こしてあげるね」
「チルちゃんも失礼!」
「ほっほっほ。そう言って寝るのがロピ殿ですな」
「魔族さんが一番失礼だよ!?」

 皆んなでロピを揶揄い見張りに集中する。音なども聞き漏らさない様にと基本は話さないで見張りをする。
 夜になっても行動するモンスターは結構いるらしく、寝ている時など大木の下を動く振動で熟睡出来なかったりする。
 
 ただし、基本は気付かれない為通り過ぎるのを黙って待っているだけである。

 ここに来てから既に一週間程経過したが、まだリンクス達の姿は現れない。
 マーズが言うには早くても、もう一週間程掛かるだろうとの見解だ。

「このままなら後一週間くらいなら、やり過ごせそうだな」

 他の三人には聞こえないくらいの声量で呟く。
 食料は果物とかなら沢山獲れる為、ご飯には困らないし、寝る場所も比較的安全に寝れるので、なんとかなりそうである。

 他の三班も、思っていたより安全に過ごせている為か、皆んな怯えた素振りなども無い。

 その時、背後からお腹が鳴る音が聞こえた。

「あ、あはは。お腹減ったねー」

 恥ずかしそうに小声でロピが呟く。

「お腹一杯は食べられないから、しょうがないよな」
「明日、私の分もあげるね」
「ふむ。無事に帰れましたらロピ殿の好きな料理を沢山お作り致しましょう」
「えへへ、魔族さんの料理楽しみー」

 皆んなと少し話し、再び見張りに戻る。再び静まり返った空間の中モンスターなどの気配が無いか集中していると、何かが近付いて来る気配がした。

「アトス様、恐らくモンスターです……」

 チルの言葉に頷くと近付いて来る方向に向き直す。

「ふむ。少し気配がいつもより強めに感じますな」
「そうだよねー、私もそう思う」

 二人が言っている事は理解が出来る。あまり気配を読むのが上手くない俺ですら何かが近付いて来るのが分かる程だ。

「アトスさん、何かありましたか?」

 マーズが起き出して、こちらに来た様だ。

「かなり、強い気配を感じます」
「まだ、姿は見えないがこちらに向かって来ている」
「恐らく、向こうは私達に気が付いて無いでしょうけど、これだけ気配が凄いなら全員起こした方が良さそうですね」

 そう言って、マーズは全員を起こしに向かう。

 極力気配を消して近付いて来るモンスターを待っていると、ゆっくりと姿を現した……。

「見えましたな」
「な、なにあれ……」
「は、初めて見ます……」

 ロピとチルが困惑した様子で近付いて来るモンスターを見る。

「おいおい、アイツは何だ?」

 俺達が見ているものは今まで見た事ない姿をしていた……
 



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