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第6章

186話 水場での出来事 3

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 地面に下りてからはモンスターに遭遇しない様細心の注意を払って住処に戻る途中だ。

「アトス様、あちこちで気配があります」
「なんか、どこ歩いても遭遇しそうだよね」

 姉妹は耳や鼻をフル稼働して周囲を探る。

「雷弾と剛腕の言う通りだ、これは不味いぜ……」
「もう一度木の上を移動した方が良さそうか?」
「確かに、それもアリだが、木の上だと移動し辛いから戻るまで時間がかかるぜ?」

 確かに人間族である俺達は木の上だと異様に遅い為、住処に戻るまで相当時間が掛かりそうだ……。

「このまま地面を進む方が得策か……」
「そう言う事だな……」

 水を飲み終わったからなのか、モンスター達は思い思いの場所に移動したり休んだりと好きにしている。

「お兄さん、モンスターと遭遇したら逃げるの?」
「悩むな……」

 遭遇する度に逃げていたら、住処に戻れないだろう。かと言って逃げずに戦ってもキリが無さそうだしな。

「私はいつでも戦闘準備出来ています」
「ほっほっほ。チル様と同じく私も大丈夫です」

 戦闘好きは、やはり戦いを御所望か。

「その時の状況次第だな」

 俺達は、それからも暫く歩き続けた。

「今の所順調だぜ」

 斥候が呟く。

「ふむ。貴方のお陰ですよ」
「そのスキルはとても便利」
「へへ、ありがとうよ」
「あはは、このままモンスターとか現れないかもね!」

 ロピが話し終えた瞬間に茂みで音がなり、一瞬で戦闘態勢を整えた俺達の目の前に一体の小型が出現した。

「「「……」」」
「わ、私じゃ無い、私じゃ無い」

 俺達の突き刺す様な視線が効いたのか必死に弁明をするロピ。

「今は、そんな場合じゃないな」
「そ、そうだよ。早く倒そう!」
「アトス様……」
「逃げ続けても埒が明かないからな」
「ほっほっほ。そうこなくては」
「これ以上増えたら逃げるぞ」
「「「はい!」」」

 そうすると、チルとリガスが小型に向かって走り出す。

「ほっほっほ。この遠征に参加してまともな戦闘はこれが初ですかな?」
「腕が鳴る」

 チル達がモンスターに向かっている間にロピも腰からスリングショットを引き抜く。

「メガネさんに即席で作って貰った武器を試す時が来たよ」

 スリングショットを小型に向けて構える。

「1……2……」

 ロピの口からカウントを数える声が聞こえる。
 そうこうしていると、リガスとチルが小型の目の前まで到着する。小型は直ぐに攻撃する為に頭を薙ぎ払う様に動かした。

「リガスお願い」
「ほっほっほ。お任せ下さい」

 背中に背負っていた盾を取り出すと、地面に突き刺した。

「カネル!」

 リガスが小型の攻撃を食い止める。

「アームズ……」
「アタック!」

 チルが攻撃を放つ前に赤いラインを足元に敷く。そしてその間に素早く腹部に入り込みチルは重い一撃を放つ。

「よし、いつもののパターンだな」

 小型の身体がチルの攻撃により少し浮かび上がった様に見える。
 小型は一度距離を取る為に後ろに下がる。以前までは、このままチルとリガスがそのまま追撃して同じ事を繰り返して討伐するのが必勝パターンだったが、今はもう一人頼りになる攻撃担当がいる。

「3……4……5」

 ロピのカウントが5までいき、尚且つ小型は俺達から距離を取る為に離れた場所に居るが今のロピに距離は関係無い。
 ロピの持つ小石にはバチバチと電気が放電されており、周りの音を吸収する様に音が徐々に大きくなる。

「フィンフショット!!」

 ロピのスリングショットから放たれた雷弾は二つ名に恥じない勢いで小型に向かって飛んでいく。

「アタック!」

 その雷弾にチルの時同様赤いラインを敷き攻撃力をサポートする。

 そして、雷弾は小型の頭を撃ち抜き、そのまま貫通した……。

「す、すげぇ……」

 驚いた表情で斥候と遠距離担当が呟く。

 雷弾で撃ち抜かれた小型は、そのまま地面に倒れ込み動かなくなった。

「ほっほっほ。ロピ殿の攻撃は相変わらず凄いですな」
「流石、私の姉さん」
「えへへ、そうかなー?」

 チルとリガスはロピの雷弾が小型に当たった後に、更に追撃をしようと走っていたが、その必要が無くなった為、こちらに戻って来る。

「ふむ。ロピ殿、以前より威力が上がったのでは?」
「私も、そう思った」

 ロピはスリングショットを見つめる。

「多分、メガネさんが作ったスリングショットの性能がいいのかも」
「流石、武器職人だな。俺の作ったスリングショットとは違うな!」
「ふむ。武器職人が作るだけで、こうも違うとは驚きですな」
「なら例の材料で作った武器なら姉さんは最強になれる」

 チルの言う事は少し大袈裟かもしれないが、確かに今作って貰っているスリングショットなら更に威力が増すと考えると、とんでもない事だな……。

 俺達が話していると、斥候達も近付いて来る。

「い、いやー。噂には聞いていたがこれ程までとは思わなかったぜ……」
「ロピさん、凄いです! 俺も遠距離として憧れます」

 二人は、俺達の戦闘を見て感動しているらしい。

「小型を速攻で倒したし、本当にすげぇーや……」

 斥候はロピ達三人を見回した後に俺の方に向き合う。

「だけど、アトスは実際何をしたんだ?」

 頭にハテナマークを浮かび上がらせながら聞いてくる。

「あはは、お兄さんの凄さは実際にその時になってみないと実感湧かないよね」
「ほっほっほ。そうですな、ただ見ているだけでは分からないですな」
「アトス様は神である為凡人達には凄さが理解仕切れない」

 尊敬する三人が次々と俺を褒めるので更に混乱する二人であった……



 
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