180 / 492
第6章
179話 旧友との再会
しおりを挟む
「その子から手を離せ……」
先程絡まれた時よりも、数段怒気の篭った声色で男達に言い放つ。
「あ? おいおい……」
「なんだよ、コイツめちゃくちゃ綺麗だぞ!?」
男達はトラクだと思われるエルフを二人で押さえ込み、三人目の男はズボンを半分程脱いでいた。
「その子から今すぐ離れろと言っているんだ!」
いくら憎い人間族でも普段は極力穏便に済まそうとする私だが、目の前の光景を見て過去の私を見ている様で気付いた時には男達に突っ込んでいた。
多少は戦闘の心得があったのか、三人は私の動きに反応してきたが、所詮は冒険者崩れなのだろう、私の相手では無かった。
「こ、コイツ強いぞ!」
一人目の男を一撃で沈め、二人目の攻撃を避けてから顎に一発入れ気絶させる。
「お、お前達……」
一瞬で二人を気絶させた私に敵わないと悟ったのか、三人目の男は仲間達を置いて一人で逃げ出した。
仲間を置いて逃げるなんて、やはり人間族は最悪だな……。
私は地面に座り込んでいるトラクに声を掛ける。
「大丈夫か?」
「は、はい!」
トラクは慌てて立ち上がり、自身に着いた汚れを叩き落としている。
「あ、あの。助けて頂きありがとうございます!」
トラクは私がシャレだと言う事に気付いていない様だ。
「一つ、聞きたいんだが名前は?」
「これは、失礼しました。私はトラクと申します」
やっぱり……。
「宜しければ、貴方のお名前を教えて頂いても?」
私は自身の名前を名乗らず、胸にしまっているペンダントをトラクの前に見える様に掲げる。
「……シャレちゃんなの?」
先程まで笑顔だった顔が驚愕した表情に変わる。
「ひ、久しぶりだな、トラク」
「シャレちゃん!!」
トラクが飛びつく様に抱き付いて来た。
「おいおい、危ないぞ?」
「ずっと、会いたかったよー!」
トラクは泣いているのか、私の胸に顔を埋めて、声が震えていた。
「あぁ……私もずっと会いたかった……」
それから私達は再会を分かち合う様に暫くの間抱き合う。
「シャレちゃん、今までどこにいたの?」
少し落ち着いたらしく、トラクは私から離れて過去の事を聞いて来た。
「あの事件の後は親戚が住んでいる村にお母様と一緒にお世話になっていたんだ」
「そっか……。無事で良かったよ」
「あぁ、私もトラクが無事で本当に良かった……」
それからは積もる話もあるだろうと言う事でトラクの住んでいる家に向かう事にした。
今日は泊まる事にもなったので、事前に側近であるエルフに伝えて心配しない様に言いトラクの家に向かった。
「到着! シャレちゃん、ここが今の私の家だよ」
「トラクはここに住んでいるの?」
「うん」
笑顔でこちらを見ているが、私の表情は固まる。
これは外で寝るのと大差無いのでは……?
トラクの家は屋根があるだけで周りに風を遮る壁が無いのだ。
「今日から私の部屋で寝泊まりするといい」
「ん、なんで?」
「こんな場所に寝てたら、いつ襲われるか分からん!」
「あはは、私なんかを襲う人なんていないよ」
トラクは先程襲われそうになった事を忘れているのか?
「それよりも、座って座って!」
「し、しかし」
「今、お茶用意するね」
そう言って鼻歌を歌いながらお茶を用意するトラクの背中を私は懐かしむ様に見ている。
「おまたせ」
こうして、私達はお茶を飲みながらお互いの過去話に花を咲かせた。
「そうか、トラクは武器職人になる為にドワーフの村に来たんだな」
「そうなの」
「昔から手先が器用だったもんな」
このペンダントだって幼い子供が作ったとは思えない程の出来である。
「あはは、シャレちゃんは不器用だったもんね」
「ムッ? そ、そんな事ない私は普通だ、トラクが器用過ぎただけだ!」
親友に会えた事が嬉しかったのか、私は普段出さない表情、声、感情を露わにした。
「トラクはなんで武器職人を目指したんだ?」
私の問いに、先程まで笑っていたトラクは真剣な顔で言ってきた。
「シャレちゃんの役に立ちたくて!」
「私の?」
「そう。あの事件以来、私は自分の無力さが情けなかったんだよ」
「あれは、別にトラクの所為じゃ無いし気にすることなんて無い」
それにトラクは十分に私を助けてくれた。このペンダントが無ければ、人間族に弄ばれた時に心が壊れていただろう……。
そして、何かあるたびに私はこのペンダントに助けられて来た。
「私は、シャレちゃんの助けになりたくて戦闘訓練もしたけど、そっちは全然だったんだよ」
「昔から運動神経はそれ程良くなかったしな」
「そうなの。だから私に出来る事は何かと思って、考えた結果が武器職人の道なの」
「武器職人?」
「そう。戦闘訓練して村で凄く強くなったのを知っているから、シャレちゃんの使用する武器をいつでもメンテナンス出来るようにと思って!」
私はトラクの話を聞いた後に自分でも気付かずにどうやら泣いていたらしい。
「シャ、シャレちゃん!? なんで泣いているの?」
「……え? 私泣いている?」
あの事件以降、私は意識的に悲しい事や辛い事があっても泣かない様にしていたが、親友の心温まる想いに私は悲しくも、辛くも無いのに泣いていた。
その日はそれ以上話さず私はトラクに抱かれながら暖かい温もりの中眠りに落ちるのであった……。
先程絡まれた時よりも、数段怒気の篭った声色で男達に言い放つ。
「あ? おいおい……」
「なんだよ、コイツめちゃくちゃ綺麗だぞ!?」
男達はトラクだと思われるエルフを二人で押さえ込み、三人目の男はズボンを半分程脱いでいた。
「その子から今すぐ離れろと言っているんだ!」
いくら憎い人間族でも普段は極力穏便に済まそうとする私だが、目の前の光景を見て過去の私を見ている様で気付いた時には男達に突っ込んでいた。
多少は戦闘の心得があったのか、三人は私の動きに反応してきたが、所詮は冒険者崩れなのだろう、私の相手では無かった。
「こ、コイツ強いぞ!」
一人目の男を一撃で沈め、二人目の攻撃を避けてから顎に一発入れ気絶させる。
「お、お前達……」
一瞬で二人を気絶させた私に敵わないと悟ったのか、三人目の男は仲間達を置いて一人で逃げ出した。
仲間を置いて逃げるなんて、やはり人間族は最悪だな……。
私は地面に座り込んでいるトラクに声を掛ける。
「大丈夫か?」
「は、はい!」
トラクは慌てて立ち上がり、自身に着いた汚れを叩き落としている。
「あ、あの。助けて頂きありがとうございます!」
トラクは私がシャレだと言う事に気付いていない様だ。
「一つ、聞きたいんだが名前は?」
「これは、失礼しました。私はトラクと申します」
やっぱり……。
「宜しければ、貴方のお名前を教えて頂いても?」
私は自身の名前を名乗らず、胸にしまっているペンダントをトラクの前に見える様に掲げる。
「……シャレちゃんなの?」
先程まで笑顔だった顔が驚愕した表情に変わる。
「ひ、久しぶりだな、トラク」
「シャレちゃん!!」
トラクが飛びつく様に抱き付いて来た。
「おいおい、危ないぞ?」
「ずっと、会いたかったよー!」
トラクは泣いているのか、私の胸に顔を埋めて、声が震えていた。
「あぁ……私もずっと会いたかった……」
それから私達は再会を分かち合う様に暫くの間抱き合う。
「シャレちゃん、今までどこにいたの?」
少し落ち着いたらしく、トラクは私から離れて過去の事を聞いて来た。
「あの事件の後は親戚が住んでいる村にお母様と一緒にお世話になっていたんだ」
「そっか……。無事で良かったよ」
「あぁ、私もトラクが無事で本当に良かった……」
それからは積もる話もあるだろうと言う事でトラクの住んでいる家に向かう事にした。
今日は泊まる事にもなったので、事前に側近であるエルフに伝えて心配しない様に言いトラクの家に向かった。
「到着! シャレちゃん、ここが今の私の家だよ」
「トラクはここに住んでいるの?」
「うん」
笑顔でこちらを見ているが、私の表情は固まる。
これは外で寝るのと大差無いのでは……?
トラクの家は屋根があるだけで周りに風を遮る壁が無いのだ。
「今日から私の部屋で寝泊まりするといい」
「ん、なんで?」
「こんな場所に寝てたら、いつ襲われるか分からん!」
「あはは、私なんかを襲う人なんていないよ」
トラクは先程襲われそうになった事を忘れているのか?
「それよりも、座って座って!」
「し、しかし」
「今、お茶用意するね」
そう言って鼻歌を歌いながらお茶を用意するトラクの背中を私は懐かしむ様に見ている。
「おまたせ」
こうして、私達はお茶を飲みながらお互いの過去話に花を咲かせた。
「そうか、トラクは武器職人になる為にドワーフの村に来たんだな」
「そうなの」
「昔から手先が器用だったもんな」
このペンダントだって幼い子供が作ったとは思えない程の出来である。
「あはは、シャレちゃんは不器用だったもんね」
「ムッ? そ、そんな事ない私は普通だ、トラクが器用過ぎただけだ!」
親友に会えた事が嬉しかったのか、私は普段出さない表情、声、感情を露わにした。
「トラクはなんで武器職人を目指したんだ?」
私の問いに、先程まで笑っていたトラクは真剣な顔で言ってきた。
「シャレちゃんの役に立ちたくて!」
「私の?」
「そう。あの事件以来、私は自分の無力さが情けなかったんだよ」
「あれは、別にトラクの所為じゃ無いし気にすることなんて無い」
それにトラクは十分に私を助けてくれた。このペンダントが無ければ、人間族に弄ばれた時に心が壊れていただろう……。
そして、何かあるたびに私はこのペンダントに助けられて来た。
「私は、シャレちゃんの助けになりたくて戦闘訓練もしたけど、そっちは全然だったんだよ」
「昔から運動神経はそれ程良くなかったしな」
「そうなの。だから私に出来る事は何かと思って、考えた結果が武器職人の道なの」
「武器職人?」
「そう。戦闘訓練して村で凄く強くなったのを知っているから、シャレちゃんの使用する武器をいつでもメンテナンス出来るようにと思って!」
私はトラクの話を聞いた後に自分でも気付かずにどうやら泣いていたらしい。
「シャ、シャレちゃん!? なんで泣いているの?」
「……え? 私泣いている?」
あの事件以降、私は意識的に悲しい事や辛い事があっても泣かない様にしていたが、親友の心温まる想いに私は悲しくも、辛くも無いのに泣いていた。
その日はそれ以上話さず私はトラクに抱かれながら暖かい温もりの中眠りに落ちるのであった……。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
解体の勇者の成り上がり冒険譚
無謀突撃娘
ファンタジー
旧題:異世界から呼ばれた勇者はパーティから追放される
とあるところに勇者6人のパーティがいました
剛剣の勇者
静寂の勇者
城砦の勇者
火炎の勇者
御門の勇者
解体の勇者
最後の解体の勇者は訳の分からない神様に呼ばれてこの世界へと来た者であり取り立てて特徴らしき特徴などありません。ただひたすら倒したモンスターを解体するだけしかしません。料理などをするのも彼だけです。
ある日パーティ全員からパーティへの永久追放を受けてしまい勇者の称号も失い一人ギルドに戻り最初からの出直しをします
本人はまったく気づいていませんでしたが他の勇者などちょっとばかり煽てられている頭馬鹿なだけの非常に残念な類なだけでした
そして彼を追い出したことがいかに愚かであるのかを後になって気が付くことになります
そしてユウキと呼ばれるこの人物はまったく自覚がありませんが様々な方面の超重要人物が自らが頭を下げてまでも、いくら大金を支払っても、いくらでも高待遇を約束してまでも傍におきたいと断言するほどの人物なのです。
そうして彼は自分の力で前を歩きだす。
祝!書籍化!
感無量です。今後とも応援よろしくお願いします。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる