過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
171 / 492
第6章

170話 リーダーはやり手?

しおりを挟む
 大鎌を持ったエルフが小型を倒してからと言うものの、次々とモンスターが現れた。

「お兄さん、モンスター凄い現れるね」
「流石にここまでだと思ってなかったな……」
「ですが、私達の所はまだ現れてなくて運がいいです」

 チルの言う通り、俺達三班の前にはまだモンスターが現れていないが時間の問題だろう。

「ふむ。あのリーダーはなかなかの者の様ですな」
「どう言う事だ?」
「モンスターが三班の前に現れない様に事前に察知して他の班に擦りつけております」
「「「え!?」」」

 全然気付かなかったな……。
 だが改めて思い出してみると、確かに時折変な方向に進んだりしていたが……。

「ほっほっほ。誰も気付いていませんが、あの者がリーダーだった事は我々に取ってはラッキーですな」
「リーダーさん凄い人だったんだね」
「はい。私達より気配察知が上手いなんて」
「人間族で、あそこまで気配を読めるって事はスキルか何かか?」

 本来、人間族は他の種族と比べて五感がそこまで鋭く無いのでモンスターなどの気配察知は苦手だとシクに習ったな。

「ならこのままモンスターが出ないで進めるかもね!」

 ロピが笑顔で言うと、奥の茂みが揺れ三班の前に小型が現れた……。

「あーあー、ロピのせいだな」
「え!?」
「姉さんのせい」
「また、このパターン!?」
「ロピ殿のせいですな」
「酷い!」

 流石にモンスターが多過ぎた為リーダーでも避ける事が出来なかったらしい。

 三班はモンスターと遭遇するのは初めての為参加者の体力はまだ有り余っている。

「よっしゃ! 俺が手柄を上げてやるぜ」
「まてまて、お前だけ良いカッコさせねぇーよ!」

 十人程の参加者が小型に向かって飛び出す。

「俺達の出番は無さそうだな」
「この先どこまで進むか分かりませんからな。体力は出来るだけ温存しておいた方が良いでしょう」

 俺とリガスが話していると、チルがロピの方を見つめて呟く。

「姉さんは、もう喋らないで!」
「チ、チルチャン?」
「姉さんは黙ってた方がいい」
「そんな酷い事言わないでよー」

 ロピはチルに抱き着き涙目になっている……。

「二人共、集中しなさい」
「「はい」」
「ほっほっほ。この先は更にモンスターが出そうですしな」

 俺達が話している内に小型は討伐されていた。

「リーダー見ていてくれたか!?」
「俺が一番活躍したよな? 見ててくれたか!?」

 報酬の為なのか必死にリーダーに向かってアピールする者達。

「えぇ。しっかりと見ていました。ですが報酬の分け前に関しては我々は一切関与しませんので、参加者様達でお決め下さい」

 それだけ言うとリーダーは絶え間なく辺りを確認して、再び歩き出した。
 他の班は出発してから既に五体程出現している様だから、俺達三班のリーダーがどれ程優秀なのか分かるな……。

 だが、その事を理解してない者も居た。

「おい、なんで俺達の班だけモンスター出て来ねぇーんだよ!」
「これじゃ、報酬の分け前が減っちまうぜ」
「他の班なんて五体くらい倒したらしいぞ!」
「やべぇーな。俺達はまだ一体だけだし……」

 参加者の会話を聞いてもリーダーは一切気にせず絶え間なく辺りを確認しながら慎重に進んでいる。

 それから日が沈み野宿する事になった……。

「なぁリーダーさんよ。今日でどれくらい進んだんだ?」
「まだ、全然進んでいないですね」
「前はどれくらい行ったんだ?」
「前回は三日目で進むのを断念しました」

 リーダーは暗い表情を浮かべる。

「心配するな。俺達は強いから余裕だって!」

 参加者の一人がリーダーの背中をバシバシ叩き元気付けている様だ。

「はは、ありがとうございます」

 リーダーは苦笑いしながらお礼を言う。

 そして、俺は気になる事を教えて貰う為リーダーの周りに誰も居なくなった所を見計らい話し掛ける。

「リーダー、今良いか?」
「えぇ。どうされましたか?」
「今日はリーダーのお陰でモンスターの遭遇が少なくて助かったよ」

 まずはお礼を言うとリーダーは驚いた顔をした。

「変な方向とかに偶に進んだりしてたのはモンスターと遭遇しないようにだろ?」
「気付いていたのですね」

 本当はリガスが気が付いた事だが黙っとこう。

「前回は三日目に断念したと言っていたが、その時点で全体のどれくらい進んでいたんだ?」
「……」

 言い辛い質問だったのかリーダーは黙り込んでしまう。
 だが、その反応で全然進んで居なかった事を理解してしまった。

「ちにみに、リーダーの考えではこのまま行けば目的地まで行けると思っているのか?」
「……正直言って、全く予想が出来ません……」

 小さい声ではあったがしっかりと応えてくれる。

「確かに人数は多いですから、前回よりは進めると思っています。ですがその先で一体どれくらいのモンスターが現れるか未知数なので全く分からないんですよ……」

 これは……無理そうだな……。

「あの偉そうなリンクスって男の班と副官の班以外は捨て駒班か?」
「──ッ!?」

 そして再びリーダーは驚いた表情で俺の事を見る。そして苦笑いしながら言う。

「はは……貴方は凄いですね」
「俺のパーティには有能な者が多いからな」
「それは頼もしい……」
「何かあった際は他の班が囮役って事か」
「確かに、そう言う命令はされていますが、安心して下さい。私は全力で三班が生きて帰れる様に立ち回るつもりです!」

 リーダーの瞳は今までで一番力の入ったものであった。

「分かった。リーダーの事を今は信じよう」
「ありがとうございます」

 リーダーは安堵したのか軽く胸をなでおろした。

「だけど、少しでも不満や怪しいと思ったら俺のパーティは離脱して逃げさせて貰うぜ?」
「そうならない様に精一杯努力します」

 ここまで奥に来てしまったら、俺達四人で戻るのは危険なので、単独で逃げる気は無いが、念の為変な行動をしたら戦力が減るという事を知らせる為に言っとく。

「なら俺は戻る。リーダーも何かあれば俺にも教えてくれ」
「分かりました」

 こうして、一日目が終わった……。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

処理中です...