168 / 492
第6章
167話 出陣
しおりを挟む
百の兵士が行軍するのは圧巻の一言だ。
以前に居た世界なら人間が百人なんて少し栄えている場所に行けば、その倍の人数すら直ぐに見られるだろう。
だが、この世界で百の人間を見る事はそうそう無い。
「人がいっぱいだねー」
「姉さん、ウロチョロしてたら逸れるよ?」
「ほっほっほ。この人数で臨むなんて初めてですな」
目的地までは比較的緩やかな雰囲気で他の人達も仲間や周りの人達と楽しそうに話しながら歩いている様だ。
「この雰囲気も、さっきの人が影響しているのかなー?」
ロピの言う通り、先程リンクスの演説の影響で、皆んな堂々としているし、何やら自信に満ち溢れている様に見える。
現在一番前を歩いているのがリンクス達兵士なのだが、参加者とは逆で話など一切せずに統率の取れた動きで規則正しく行進している。
「前の人達静かだね」
「うん。全然話してない」
参加者と兵士達の表情がまるで正反対である事に疑問を持つ者は俺達以外に居ないのだろうか?
まぁ、実際は報酬さえ貰えればいいからそこまで意識しないよな……。
「この人数で移動してたら流石にモンス……」
「姉さんダメ」
ロピが何かを言い出す前にチルが手でロピの口を抑える。
「?」
「そう言う事を言うと本当に出てくる」
コクコクとロピが頷くのを確認してチルは手を退ける。
だが、チルの行動虚しく、それは起きた……。
「小型が現れたぞーー!!」
列の真ん中ら辺から複数の声が上がる。
「あーぁー、ロピのせいだわ」
「え!?」
俺の言葉にロピが反応する。
「これは姉さんのせい」
「チ、チルちゃん!?」
チルも同じ意見の様だ。
「ほっほっほ。ロピ殿のせいですな」
「違うよね!?」
三人から非難の視線を受けたロピは焦っている様だ。
「わ、私が言わなくたってこの人数なんだし、いずれモンスターと遭遇していたって!!」
「「「……」」」
「何か喋って!?」
俺達が話している間に複数の参加者が我先と小型に飛びつく様に攻撃を始める。
人数も人数なので小型は一瞬で討伐された。
「なんで、あんなに小型に群がったんだ?」
「確かにそうだよねー?」
「不思議です」
俺と獣人姉妹は首を傾げているとリガスが説明してくれた。
「ふむ。恐らくこの戦いで少しでも自分の名を上げたいんでしょう」
「名を上げる?」
チルの質問にリガスは丁寧に説明を続ける。
「はい。名声と言ってもいいと思いますがこの参加者の中で活躍するのが目的ですな」
「活躍する意味とかあるのー?」
「そうですな。参加者内で活躍すれば貰える報酬の配当が多く取れるからでしょうな」
確かに。この戦いで活躍した者と何もして無い者が同じ報酬額を貰うのはおかしいだろう。
やはり命が掛かっている為、そこら辺の評価は皆んなシビアである。
「恐らく活躍した者は活躍の度合いにもよると思いますが、宝箱一つ貰えると思いますぞ?」
「ホント!?」
リガスの言葉にロピが食い付く。
「なら、私達も活躍すれば武器代を払ってもお釣りが来るね!」
「ほっほっほ。そうですな」
「ならここでノンビリしてたら獲物を取られちゃうよ!?」
ロピは俺の腕を引っ張る様にして前の方に行こうとしている。
「ロピ、落ち着け」
「で、でも活躍しないと!」
前に視線を向けたり、俺に視線を戻したりと、よほど前に行きモンスターを倒したいらしい。
「まぁ、聞け。今活躍しようとして頑張っても疲れるだけだ。だったら本番である目的地で活躍した方が目立てる!」
「お? おぉー!」
俺の説明に納得したのか、パチパチと拍手しながらロピは足を止めた。
「ほっほっほ。アトス殿の言う通りですな。ここで体力や精神を減らすよりかは目的地まで体力を取っといたほうが良いと思いますぞ?」
「確かに!」
ロピは完全に納得したのか大人しくなり普段通り歩き出す。
「目的地着いたらバリバリ倒すよ!」
「私も頑張ります!」
ロピとチルは仲良く手を繋ぎながら少し前を歩く。
完全にモンスターが現れても他の参加者に任せる気満々の様だ。
その後もモンスターは度々現れたが直ぐに討伐される為特に危険も無く夜が来て野宿する事になった。
人数がいるので見張りなども楽で睡眠時間も取れる編成で有難い。
「あと、どれくらいかなー?」
「この人数だと流石に目的地まで時間かかりそうだな」
「通常であれば三日で着くと仰っておりましたな」
「それまでに少しでも強くなります!」
チルは俺達の少し離れた場所で型の訓練をしている。
そして目的地に着いてからの事を少し話し合う。
「目的地に着いても最初は戦闘に参加しないでいようと思うんだ」
「えー、なんでー?」
「まずは全体を見たいのと、危険だった場合に直ぐに逃げ易いように逃げ道の確保だな」
「アトス様に賛成です。ここでお金の為に無理して命を落とすより良いと思います」
「ふむ。私も賛成です」
「わ、私も!」
こうして目的地到着してからの方針をパーティ内で決め、他にも戦闘のフォーメーションや注意事項などを話し合い、より安全にドワーフの村に帰れる様話し合った。
以前に居た世界なら人間が百人なんて少し栄えている場所に行けば、その倍の人数すら直ぐに見られるだろう。
だが、この世界で百の人間を見る事はそうそう無い。
「人がいっぱいだねー」
「姉さん、ウロチョロしてたら逸れるよ?」
「ほっほっほ。この人数で臨むなんて初めてですな」
目的地までは比較的緩やかな雰囲気で他の人達も仲間や周りの人達と楽しそうに話しながら歩いている様だ。
「この雰囲気も、さっきの人が影響しているのかなー?」
ロピの言う通り、先程リンクスの演説の影響で、皆んな堂々としているし、何やら自信に満ち溢れている様に見える。
現在一番前を歩いているのがリンクス達兵士なのだが、参加者とは逆で話など一切せずに統率の取れた動きで規則正しく行進している。
「前の人達静かだね」
「うん。全然話してない」
参加者と兵士達の表情がまるで正反対である事に疑問を持つ者は俺達以外に居ないのだろうか?
まぁ、実際は報酬さえ貰えればいいからそこまで意識しないよな……。
「この人数で移動してたら流石にモンス……」
「姉さんダメ」
ロピが何かを言い出す前にチルが手でロピの口を抑える。
「?」
「そう言う事を言うと本当に出てくる」
コクコクとロピが頷くのを確認してチルは手を退ける。
だが、チルの行動虚しく、それは起きた……。
「小型が現れたぞーー!!」
列の真ん中ら辺から複数の声が上がる。
「あーぁー、ロピのせいだわ」
「え!?」
俺の言葉にロピが反応する。
「これは姉さんのせい」
「チ、チルちゃん!?」
チルも同じ意見の様だ。
「ほっほっほ。ロピ殿のせいですな」
「違うよね!?」
三人から非難の視線を受けたロピは焦っている様だ。
「わ、私が言わなくたってこの人数なんだし、いずれモンスターと遭遇していたって!!」
「「「……」」」
「何か喋って!?」
俺達が話している間に複数の参加者が我先と小型に飛びつく様に攻撃を始める。
人数も人数なので小型は一瞬で討伐された。
「なんで、あんなに小型に群がったんだ?」
「確かにそうだよねー?」
「不思議です」
俺と獣人姉妹は首を傾げているとリガスが説明してくれた。
「ふむ。恐らくこの戦いで少しでも自分の名を上げたいんでしょう」
「名を上げる?」
チルの質問にリガスは丁寧に説明を続ける。
「はい。名声と言ってもいいと思いますがこの参加者の中で活躍するのが目的ですな」
「活躍する意味とかあるのー?」
「そうですな。参加者内で活躍すれば貰える報酬の配当が多く取れるからでしょうな」
確かに。この戦いで活躍した者と何もして無い者が同じ報酬額を貰うのはおかしいだろう。
やはり命が掛かっている為、そこら辺の評価は皆んなシビアである。
「恐らく活躍した者は活躍の度合いにもよると思いますが、宝箱一つ貰えると思いますぞ?」
「ホント!?」
リガスの言葉にロピが食い付く。
「なら、私達も活躍すれば武器代を払ってもお釣りが来るね!」
「ほっほっほ。そうですな」
「ならここでノンビリしてたら獲物を取られちゃうよ!?」
ロピは俺の腕を引っ張る様にして前の方に行こうとしている。
「ロピ、落ち着け」
「で、でも活躍しないと!」
前に視線を向けたり、俺に視線を戻したりと、よほど前に行きモンスターを倒したいらしい。
「まぁ、聞け。今活躍しようとして頑張っても疲れるだけだ。だったら本番である目的地で活躍した方が目立てる!」
「お? おぉー!」
俺の説明に納得したのか、パチパチと拍手しながらロピは足を止めた。
「ほっほっほ。アトス殿の言う通りですな。ここで体力や精神を減らすよりかは目的地まで体力を取っといたほうが良いと思いますぞ?」
「確かに!」
ロピは完全に納得したのか大人しくなり普段通り歩き出す。
「目的地着いたらバリバリ倒すよ!」
「私も頑張ります!」
ロピとチルは仲良く手を繋ぎながら少し前を歩く。
完全にモンスターが現れても他の参加者に任せる気満々の様だ。
その後もモンスターは度々現れたが直ぐに討伐される為特に危険も無く夜が来て野宿する事になった。
人数がいるので見張りなども楽で睡眠時間も取れる編成で有難い。
「あと、どれくらいかなー?」
「この人数だと流石に目的地まで時間かかりそうだな」
「通常であれば三日で着くと仰っておりましたな」
「それまでに少しでも強くなります!」
チルは俺達の少し離れた場所で型の訓練をしている。
そして目的地に着いてからの事を少し話し合う。
「目的地に着いても最初は戦闘に参加しないでいようと思うんだ」
「えー、なんでー?」
「まずは全体を見たいのと、危険だった場合に直ぐに逃げ易いように逃げ道の確保だな」
「アトス様に賛成です。ここでお金の為に無理して命を落とすより良いと思います」
「ふむ。私も賛成です」
「わ、私も!」
こうして目的地到着してからの方針をパーティ内で決め、他にも戦闘のフォーメーションや注意事項などを話し合い、より安全にドワーフの村に帰れる様話し合った。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる