上 下
167 / 492
第6章

166話 アトス達は参加する

しおりを挟む
 エルフのトラクから宝の噂を聞いた日から一週間が経ち募集の日になった。

「よーし、皆んな準備はいいー?」
「姉さん、私は準備完了した」
「ほっほっほ。私も大丈夫でございます」

 俺以外の三人の目線がこちらに向く。

「お兄さんはー?」
「うん、大丈夫だ。いこうか」
「「「おー!」」」

 俺達は準備を万全にして集合場所である、村の入り口に向かう。

「おい、アイツらって……」
「あぁ、最近一気に名を上げた奴らだな」

 道を歩いていると、周りに居る人が騒ぎ始める。そして、集合場所に到着すると騒ぎはより一層強まった。

「おい、鉄壁がいるぞ」
「雷弾と剛腕もだ!」
「アイツら今回の件に参加するのか?」
「そしたら心強いぜ!」

 注目を浴び始めたな……

「見ろよ、アイツらの装備すげーぞ?!」
「確かに……派手では無いが装備しているものは、どれも一級品だな」

 参加者なのか、ドワーフが俺達の装備を見て感心していた。
 それもそうだろ、今装備している物はこの村一番と言われているドワーフが手によりをかけて作り上げた一品である。

「ほっほっほ。注目されていますなー」
「俺達には不釣り合いな装備だもんな」
「ドワーフさん達が無料で作ってくれたからいいじゃん!」
「動きやすいです」

 集合場所には、多くの人達が集まっていた。
 種族はバラバラであるが皆顔付きは戦士である。

「この人数だと結局あの莫大な報酬があっても分け合ったら少ないんじゃねぇーか?」
「そ、そんな事ないと思うけど……」
「ふむ。確かにこの人数だと実際どれくらい貰えるか分かりませんな」
「大丈夫」

 すると、チルが断言する様に大丈夫だと言い出した。 

「ん? なんで大丈夫だって言い切れるんだ?」

 チルは不思議そうに首を傾げる。

「だって、どうせここに居る人達はモンスターに食われてしまうと思います」
「「「……」」」

 ありえる話だがチルの言葉に周りに居る何人かが困惑した表情を浮かべる。

「ほっほっほ。流石チル様ですな、一瞬で場の雰囲気を掌握しましたな」
「?」

 リガスの言う通り、先程までは皆和やかな雰囲気で話したり笑っていたりしたが、チルの一言により気合いを入れ直す者、参加をやめようと考える者など、辺り一帯が静けさに包み込まれたのである。

 そして静寂になったタイミングを見計らったのか、大きく一度太鼓の音みたいなのが鳴り響く。俺達を含む参加者は音の方を振り向く。
 すると、この前参加募集の演説をしていた人間族が現れた。

「皆の者、本日はお集まり頂き嬉しく思う!!」

 兵士の後ろには更に何十人かの兵士が整列していた。

「今日、この時間にこの場所に居るという事は、私共の募集に参加する者と認識する!」

 兵士の言葉に参加者達は大きく頷く。

「この前話した通りこれからモンスターの集まっている場所に向かう。道中の食料や水は我々の方で用意するから安心してくれ」

 まさかの食料等は兵士持ちと聞き参加者から喜びの声が上がる。

「おー! 太っ腹だぜ!!」
「人間族にしてはやるじゃねぇーか!」
「 これで報酬まで貰えるなんて最高だな」

 参加者全員が喜ぶ。

「ほっほっほ。確かに太っ腹ですな」
「あぁ。運搬なども兵士達がするなんてな……」
「私達からしたら楽でいいね!」 
「戦うのみです!」

 それからは、注意事項やモンスターによる人員的被害などの保証はしないなど、改めて報酬の話と命の危険がある事を説明された。

「私からの話は以上になる! 最後にこのチームのリーダーから挨拶がある!」

 ゆっくりと兵士達が開けた道を歩いてくる者がいる。
 その男に関しては他の兵士とは比べ物にならない程豪華な装飾と立派な防具と武器を装備していた。

「皆の者、私の為に集まってくれて感謝する」

 男は兵士が用意した台に乗り一度参加者を見回した。

「私の名はリンクスと言う。このチームのリーダーをさせてもらう」

 ロピがリンクスと名乗る男を見ながら呟く。

「あの人ってこの前馬に乗っていた人だね」
「ふむ。そうですな」
「なんか、雰囲気が違うね」
「私もそう思った」

 あの時は、もっと怪しい感じで醜悪な笑みを浮かべていたが今は好感が持てる。

「我々が挑戦しようとしている場所は過酷だ……。だが! 貴方達の様な強き者が入れば怖い者無しだ!!」

 リンクスの言葉に参加者が沸き起こる。

「貴方達は強い! その力を是非我々に貸して欲しい!!」

 一気に参加者の心を惹きつけたな……。

「ふむ。あの者上手いですな」
「あぁ。こういうのも才能か……」
「お兄さんだって負けてないよ!」
「そうです、アトス様の方が上です!」

 身内贔屓が激しいが嬉しいものだ。

「ふむ。あれはスキルとは別の才能ですな」
「隊を率いるなら大切なスキルだねー」
「羨ましいぜ」
「ほっほっほ。アトス殿だってスキルとは別の才能があるでは無いですか」

 ん? そんな才能あるか?

「先読みですよ、アトス様!」
「チル様の言う通りです。人間族所か魔族の私でさえアトス殿程深く先を読む事は出来ませんからな」
「お兄さんと鬼ごっこしても絶対捕まえられないもんねー」

 確かに体力が持つ限りロピとチルには捕まる気がしないな……。

「アトス殿も立派な才覚者ですぞ」

 はは、ここは素直に喜んどくかな。

 それからは、隊列を組みジャングルを歩き始める。その数は総勢百くらい居そうだ……。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...