過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第6章

158話 職人トラク

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「ふむふむ」

 エルフのトラクがメガネを手で押し上げながら俺達の話を聞いている。

「そのスリングショット面白いですね。是非私に作らせて下さい!」  

 トラクの目の奥は、とても輝いており、まるで子供が新しいオモチャを見つけたかの様だ。
 その反応を見ていたロピもトラクの事が気に入ったのか笑顔で頭を上下に動かしている。

「うんうん。そういう反応を待っていたんだよー」
「何の事です?」

 俺達がドワーフにスリングショットの製作を断られていた事を知らないトラクは首を傾げる。
 昨日の出来事を話すとトラクは呆れた表情を作る。

「はぁ。これだから頭の固いドワーフ族は嫌ですね……」
「だよね、だよね!」
「あの人達は技術があるので自分達が作ってきた武器が最高だと思っているんですよ」

 トラクはやれやれと言うように、左右に振り始める。

「今存在する武器の代表的なのは全てドワーフ族が過去に作った代物と言われています」
「そうなのか?」
「はい。ですが武器職人はドワーフ達以外にも居ますからね、様々な武器を開発しようと皆頭を捻っていますが、ドワーフだけは元々ある武器を如何に丈夫で斬れ味の良い武器に出来るかを重要視していますね」

 成る程。そういえばドワーフの村で見た店には代表的な物しか無かったな。
 人間族の住処に居た時とかは、もっと奇抜な武器とかもあったはずだけど……。

「それで、是非私にスリングショットを作らせて欲しいです!」

 トラクは真剣な目で見てくる。そしてロピは腕を前に組み、大仰に頷く。

「よし、メガネさんに私の武器を作る許可をあげるよ」
「め、メガネって私の事ですか……? でも、嬉しいです!」

 トラクはありがとう御座いますとロピに向かって頭を下げ、ロピは精一杯励む様にと言いトラクの肩をポンポンと叩いている。

「ほっほっほ。これではどちらがお客様か分かりませんな」
「てか、なんでロピの奴あんなに偉そうなんだ?」
「それでこそ姉さんです」

 それからロピとトラクはスリングショットについて話し合い、俺は基礎的な作り方をトラクに伝えた。

「す、凄いですね……」
「ふふ、そうでしょー?」
「アトスさんがスリングショットを考えたんですか?」
「あ、あぁそうだとも……」

 本当は俺が考えた武器では無く前世での武器をそのまま真似て作っただけなのだが、そんな事を説明出来るはずも無く自分で作った事にしてしまった……。

「お兄さんは凄いでしょ?」
「えぇ。この石を飛ばす為の伸びる素材を見つけた所か、それを利用するなんて……」
「メガネさんは心して武器を作る様に!」
「は、はい! 私ことエルフ族トラクは誠心誠意スリングショットを造らせて頂きます!」
「よし、私の為に最強武器を頼むよ!」
「はい!」

 ロピとトラクは右手を天井に突き出し鼓舞する様に何度も上げては下げてを繰り返して、気合いを入れている。

「二人共、気合いを入れるのは良いがスリングショットには何個か問題があるだろ?」
「「え?」」

 二人はそんなものあるの? って感じの表情だ。

「恐らく、トラクに作って貰えればフィンフショットならいくら撃っても問題なさそうだが、ツェーンショットは……」
「確かに、お兄さんに作って貰ったスリングショットは一発撃って壊れちゃったよね……」

 ツェーンショットの反動は相当なものらしく、生半可な材料では直ぐに壊れてしまいそうだが……。
 
 トラクに説明すると、今店にある材料ではその反動に耐えられる材料は無いとの事だ。

「ふむ。そういえばロピ殿、例の材料をトラク殿に見て頂いてみては?」
「例の材料?」
「ほっほっほ。赤茶色の木ですよ。アトス殿の技量では加工出来なかった」

 あ、あれか。スリングショットの土台になる木を探している時に周りの木と全然違う色の木が有ったけど、丈夫過ぎて俺の技量では加工出来なかったんだよな……。

「そういえば、あったね!」

 ロピは急いで荷物から赤茶色の木を取り出しトラクに見せた。

「ほぇー。これは珍しい材料ですね……」
「これが何の材料か分かるのか?」
「いえ、見た事無いですね」
「そんなに珍しい木なのか!?」
「いえいえ、こういう材料は良く取れるんですよ」

 トラクの話では、こういう色違いの木などは珍しく無く良く取れるそうだ。だが、その一つ一つが特性を持っており武器に加工するまで、どの様な特性なのか分からないらしい。

「おー。なら武器を作ってからのお楽しみなのー?」
「そうですね。とっても珍しい特性とかもあるらしいので楽しみにしてて下さい!」 

 だが、今回の赤茶色の木であってもツェーンショットの反動に恐らく耐えられ無いだろうと言うのがトラクの考えである。

「そっか……」
「ただ、そのツェーンショットで無ければ前回アトスさんが作った武器より威力、飛距離共に良い物を作れますよ」

 ロピは大分落ち込んで居たが、とりあえず赤茶色の木を使用したスリングショットの作成を依頼した。

 お金については、トラクに少し待って貰う様頼んでみると、新しい武器と出会わせてくれたと言う事で無料で良いと言ってくれたが、流石にそれは悪いと思い後で払う事を約束した。


 
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