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第5章

146話 モンスターの成長再び……

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「魔族さん大丈夫?」
「ほっほっほ。防御は大丈夫ですが攻撃の隙を作れませんな」
「あの巨体で初動が早すぎる……」

 ロピ達は小型の動きに翻弄されていた。相手の攻撃はリガスが上手く捌いている。だが小型が早い為攻撃の隙が全然無い……。

「このままでは埒があきませんな」
「ど、どうするのー?」
「ふむ。私以外にもう一人タンク役が居れば攻撃の隙を作れますが……」

 リガスの言葉に一人の男が応える。

「ぼ、僕にその役目を任せて貰えないでしょうか?」

 急いで駆けつけたのかイケメンは肩で息をしている。

「貴方は先程の方ですね」
「は、はい! 先程は命を助けて頂きありがとうございます!」
「いえいえ、ですが今の言葉は本気ですかな?」
「はい!」
「これから相手する小型は今までとは比較にならない程強いですよ?」
「貴方と二人なら問題無いです!」
「ほっほっほ。それでは私と一緒にタンク役お願いしても?」
「お任せ下さい!」
「ほっほっほ。頼もしいですね」

 リガスとイケメンは協力して小型を惹きつけるようだ。そして少し遅れてガルル達も到着する。

「チル、無事か!?」
「ロピさん、ご無事でしょうか?!」
「うん」
「大丈夫だよー!」

 二人はロピ達の無事を確認出来て笑顔を見せる。

「そっちは大丈夫だったのー?」
「はい。なんとか小型二体を始末しました」
「すごーい! なら残っているのはあの小型だけ?」
「その通りです」
「俺の活躍をチルに見せたかったぜ!」
「ググガはそんなに活躍したの?」
「おうよ!」

 四人は再会を喜び合うが、直ぐに小型の方に向き戦闘に集中する。

「おー、イケメンの奴やるなー」
「リガスと一緒に居る人?」
「イケメンさん、踊っているね」
「あれが彼の惹きつけ方です」

 リガス達の方を見ると息の合った連携を取っていた。どうやら基本はイケメンが舞を踊って惹きつけているようだ。そして致命傷になりそうな攻撃をリガスが防御する。

「カネル!」
「す、すごい……。一人で小型を……」
「ほっほっほ。貴方こそ、その舞見事ですな」
「あ、ありがとうございます!」

 二人はお互いの弱点をカバーする様に小型を抑える。タンク役が二人になった事により小型に隙が出来始める。

「ふふ、やっと合流出来たと思ったらかっこよすぎるわね!」
「あぁ! 私らの王子最高だぜ!」
「あの老紳士様もカッコいいです……」
「どっちも素敵」

 イケメンのパーティメンバーも到着したが、どうやらイケメンに見惚れているらしい。

「お前ら早く攻撃しろよ!」
「ふふ、醜い上に煩いと救い様が無いわね」
「あ? 小型の前にまずお前をやるぞ?」
「ふふ、やってみなさいよ」
「上等だ!」
「アナタ達! そんな言い争いしている場合じゃありませんよ!」
「みんな戦いに集中」

 商人達も到着した事により、この場に全員が集結した。

「アームズ……」
「よっしゃ! ぶちのめしてやるぜ!」
「ロピさん行ってきます」
「皆んな気をつけてねー!」

 チルがスキルを発動して小型に向かって走る。それをガルルとググガが追いかける。

「私も攻撃しないと」

 そしてロピがスリングショットを構える。それを見た後衛の女性四人はロピの隣に並び弓を構える。

「ふふ、貴方変わった武器で攻撃するのね」
「ん? これはお兄さんが作ってくれたの!」
「そんな事より攻撃するぞ!」
「後衛は一斉に攻撃しましょ!」
「私、頑張る……」

 商人達の方も弓を構える。

「皆さん、私達も弓を構えて攻撃です! 後衛の者は一斉にいきますよ」

 ピタの掛け声でロピも含めて後衛達全員が構えを取る。そしてリガスとイケメンが同時に小型から離れた瞬間を狙いピタが号令を出す。

「今です!」

 数えるのも難しい程の矢が一斉に小型に撃たれる。それは矢先が炎で燃えたり、風を纏っていたり、電気を帯びていたり、普通の矢であったりと様々である。その矢を小型に浴びせたが結果は……。

「う、うそー!?」
「ふふ、流石に私でもそろそろ笑えなくなるわね」
「俺らの攻撃効いてねぇーぜ?!」
「そ、そんなあり得ないです……」
「お手上げかも」

 小型に対して降り注いだ矢は殆どが外皮に弾かれてしまい、数本だけが突き刺さったのみである。もちろん俺自身が攻撃のサポートをしたのにもかかわらずにだ。後衛達が絶望する表情を浮かべている。

 だが前衛達による攻撃は違った。チル達は矢による攻撃が収まったのを待ち攻撃を放つ。

「余所見はいけない」

 チルによる攻撃が小型の横腹部分を抉る。

「俺達は眼中に無いってか!」
「ロピさんに視線を向けるな」

 間を空けず獣人兄弟の蹴りもロピが放った同じ箇所に正確に打ち込んだ。

 小型にダメージが入り距離を取ろうとする。

「逃がさない」
「その通りだぜ」
「ここで倒す!」

 三人による連撃が続く。攻撃の度に小型の横腹がヘコんでいく。だが小型も反撃の為尻尾を横薙ぎする様に攻撃する。

「ほっほっほ。その攻撃は通しません。カネル!」

 尻尾による横薙ぎはリガスによって止められる。

「流石、リガス」
「オッサンやるなー!」
「ググガ集中だ!」

 また三発の攻撃が小型を襲う。そして小型は攻撃でチル達を引き剥がすのでは無く、自ら逃げる事によりチル達から距離を取った。

「自分から距離を取る様になってきたな」

 先程までは絶対的な強者だった為自ら距離を取る必要は無かった。だが人数が増えた事により絶対的な強者では無くなった。攻撃が通るようになり小型が嫌がっている様にも見える。
 俺の考えている事を前衛達も考えていたらしい。

「二人共、小型が嫌がっている」 
「おう! もう一度三人で攻撃しようぜ!」
「次で決める」


 チル達は再び小型に向かって足を進める。それと同時にリガス達もタンクとしての役割を果たす為に足を動かす。 

 一斉に五人の人間が近づいて来ているのに小型が顔を向けていたのは別の場所であった……。

 それは後衛である。

 小型は五人の攻撃を躱し、後衛の方に走る。初動の動きが早い為一瞬で後衛達の所まで到着する。
 後衛に居た者達は、まさかここまで早く動けると思っていなかったんだろう……。

「……え?」
「こ、こいつもうこんな所まで!?」
「に、逃げて下さい!!」

 ピタの掛け声と共に十人以上で固まっていた後衛は散らばる様に一斉に逃げだす。逃げる反応としては皆戦闘経験などがある為早かった……。

 だがそれを上回る反応で小型は一人の商人を捕食した……。

「クソ……。やっちまったか……」

 商人は諦めた様に苦笑いをして、そのまま一飲みで食べられたのだ。

「コイツ!? まさか捕食を優先してこの状況を変えるつもりか?」

 俺は焦る。まさかここまで頭を使い戦っているとは思わなかった。この戦いが始まってから小型の動きに違和感などがあった。だが今までとは違うという程度の認識であったがその認識では甘かったようだ。

「考えて戦うモンスターなんて反則だろ……」

 俺はどうすればコイツを倒せるか良い案が出て来ないでいた。そしてその間にも小型は六回目の成長を始めた……。


 


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