過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
121 / 492
第5章

120話 ロピの希望

しおりを挟む
 しばらく待っているとガルルが戻って来た。両手で小さめな箱を持っている。

「お待たせしました」

 そう言って取り出したのは俺がリガスに頼んでいた代物だ!

「おー! これこれ!」

 俺はその代物を触ったり叩いたり持ったりなど色々試していた。

「おい、クソ人間! 商品をそんなに触るんじゃねぇーよ!」
「あ、使えない方の商人さんがなんか言っている」
「なんだと!?」
「べー」

 ロピ達が何やら騒いでいるが今はそれどころじゃ無いな。俺がロピの為に作ろうとしている武器にはコイツが必要になる。だが実際に前世では気軽に手に入る代物だったがこの世界では作れるか微妙だった。なのでリガスに大体の特徴を伝えると同じ様な物があると聞いたので、もしかして作れるかと思い探し回ったが、やっと見つかった……。

「お兄さんどう?」
「あぁ。多分大丈夫だと思う」
「よーし! そしたらこんな場所早く離れよう」
「お前失礼だな……」
「だって、獣人族ってうるさいんだもん!」

 いやいや、お前も獣人族だからね?

「ガルル、この材料を売ってくれ」
「勿論。ですが今回、代金は要りません」
「「「え?」」」

 俺とロピだけでは無くググガまでが驚いた顔をする。

「あ、兄貴流石に金は取ろうぜ」
「いや、今回は全面的に俺達の勘違いから始まった訳だし貰うわけにはいかん」
「ありがとうー!」
「う、うむ」

 ロピは最高の笑顔でガルルにお礼を言う。こっちとしては大してお金など持って無いので助かる。

「どっかの獣人商人とは大違い」
「おい、なんでこっちを見やがる」
「別にー」
「これに関しては商人として俺が正しいからな! その材料結構高いんだからな」

 今回の材料は南部でしか手に入らないと聞く。実際には他の場所にもあるかもしれないが、リガスは生きてきて見た事が無いと言っていた。

「ガルルいいのか?」
「えぇ。その代わりと言ってはアレですが今回の件は許してもらいたい」
「勿論だ、今は全く気にして無い。なぁロピ?」
「うん! 商人さん、こんな高価な物をありがとう!」

 俺とロピは自分達の寝床に戻る事にした。ロピは少しずつだが自分の武器になる材料が集まって来たのが嬉しいらしく、ニコニコ鼻歌を歌いながら歩いている。

「お兄さん、いつ完成しそうー?」
「うーん、後は武器の土台作りとかだけだな」
「木を使うんだっけ?」
「そうだな。そっちは明日かな」
「えー」

 ロピ的には直ぐにでも作りたかったのか口を膨らませて抗議してくる。

「今から探しに行こうよ」
「もう、大分暗くなって来たからだーめ」
「ケチー!」

 先程までの上機嫌ぶりが嘘の様に次は不満そうな目を先に向けて歩いている。だがロピの手はしっかりと俺の手を握っている。それが何故が可笑しくて俺は笑ってしまう。

「ん? なんで笑っているの! 私は怒っているの!」
「すまんすまん」
「むー!」

 ゆっくりと歩いていてもそこまで広くない休憩所なので直ぐに着いた。

「アトス様、姉さんお帰りなさい」
「チルちゃーん!」
「?」

 ロピがチルに抱き着いた。そしてチルはそれを受け入れ抱き締めていた。

「チルちゃん、材料あったの!」
「良かったね」
「うん! 後は明日土台になる木を見つける為にジャングルで探しまくるよー」

 ロピは力こぶを作っている。どうやら頑張る事を表しているらしい。俺はそんな様子を少し離れた場所で見ていたらリガスが話しかけて来た。

「ほっほっほ。アトス殿見つかったのですか?」
「あぁ。なんと昨日絡んで来た獣人の商人達が持っていたよ」
「ふむ。なかなか面白い展開ですな」
「あそこでチルを止めといて良かった」
「ほっほっほ」

 チルのやつ本気であの二人を火炙りにしようとしていたからな。

「それでロピ殿の武器は作れそうなんです?」
「大丈夫そうだ。後は明日土台になる木を探すだけだな」
「そうしましたら、ジャングルに入るので明日は全員で行動の方が良さそうですな」

 これで近々ロピの武器が完成するだろう。後はその武器でロピがどれくらい強くなれるかだな。まぁ武器を変えただけで劇的に強くなれるとは思わないけど今よりは強くなれると思う。

「チルちゃん明日はジャングルだよー」
「おー」
「私も強くなるよー」
「おー。でも姉さんは私が守るよ?」
「なんて、可愛い妹なの!」

 再度ロピは妹を抱きしめる。チルも姉に抱き締められて満更でも無いのか笑っている。

「お兄さん明日はいつから出発?」
「ほっほっほ。気が早いですなー」
「姉さんは楽しみなんだよ」
「うん!」
「なら、朝早くから行くか?」
「「いくー!」」
「ほっほっほ。では明日の朝ご飯は早めに準備ですな」

 それからは、チルの訓練をロピが手伝っている。やはり組手になると、チルの方が一歩も二歩も上手の為、直ぐ転ばされたりしている。

「チルも大分強くなったよな」
「ふむ。そうですな」

 何故かリガスはチルの組手の様子を見て歯切れの悪い回答をした。

「最初の頃なんてロピと変わらなかったと思うんだけどな」
「スキルも近接よりですし」
「確かにな。ロピは遠距離タイプのスキルだよな」
「ロピ殿のスキルは使い方がなかなか難しいですな。ですがアトス殿が考えた武器ならピッタリです」
「ロピの為に頑張らないとな!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...