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第5章
118話 休憩所での出来事 2
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チルの暴走をなんとか抑える事が出来た。
そして今は二人の獣人を縛り上げて目を覚ますのを待っている状況だ。チルは納得がいかないのかスキがあれば火炙りにしてやろうと、獣人の周りをウロウロしている。
「リガス、アトス様が少しでも離れたらヤルよ?」
「かしこまりました」
なんか、コソコソとリガスと話しているな……。これは目を離さない方がいいかな。
「ねぇ、お兄さん」
「なんだ?」
「チルちゃんがどんどん逞しくなっていくよ……」
目を虚空にしてロピは乾いた笑いをしていた。それから少し時間を置き、獣人達が目を覚ました。
「ヴゥ……、気絶しちまったのか」
「起きたか?」
俺が声を掛けると凄い勢いでこちらを睨みつけて来た。
「お前……。クソ人間族が……」
「ヴゥ……気絶していたのか……」
「兄貴、目が覚めたか!」
「あぁ、すまない」
口調の悪い方が安堵した表情に一瞬だけなったが、すぐさま先程と同じく俺を睨みつけて来る。
「えっと……」
俺は何て切り出さそうか言い淀んでいるとチルが切り出した。
「何故アトス様を狙った?」
「そうだー、そうだー!」
「お前らを助けようとしたんだよ!」
……やっぱり。コイツらはロピとチルが俺の奴隷だと思っていたのか。
「私達?」
「そうだよ! 獣人のお前らだよ」
「なんで?」
「このクソ人間族に奴隷にされているんだろ?! ッッイッテ!」
「アトス様の悪口を言うな」
チルは相変わらずだな……。このままだと話がどんどん変な方向に飛びそうだな。
「なぁ」
「んだよ!?」
「お前ら勘違いしているぞ?」
「勘違いだと?」
もう一人の獣人が俺の問いに聞き返す。
「兄貴、こんな奴の話聞くだけ無駄だぜ!」
「お前は少し黙っていろ」
「ッチ!」
「それで、勘違いとはどういうことだ?」
「あぁ。この子らは俺の奴隷じゃ無いぞ?」
「「なに!?」」
え? なんでそんなに驚いた反応なんだ?
「ほっほっほ。アトス殿、それ程人間族が他種族と共に行動する事は珍しいのですよ」
「そうなのか?」
「えぇ。人間族と他種族が一緒に行動していたら、まず間違いなく奴隷だと思われますな」
この世界では、そういう固定概念が根付いてしまっているのか。迷惑極まりないな。
「おい、クソ人間族! 本当に奴隷じゃないのか?」
「だから、そう言っているだろ」
それでも、信用してない様で獣人二人はロピとチルの方を向き真意を問うていた。
「ホントだよー。私もチルちゃんも奴隷じゃないし好きで付いてきているだけ」
「私の身も心も全てアトス様の物です」
「お、おまえ! やっぱりこの子を奴隷に!」
「ち、違うよ! 私の妹は偶に頭のネジが緩む時があるだけで奴隷でも何でも無いの!」
ロピが慌てて訂正して獣人達はなんとか納得した様なので、縄を解いてあげた。
「……人間族の子供よ、すまなかった」
「……悪かったな」
おー、コイツらが素直に謝って来ると思わなかったので少し驚いている。
「私の名前はガルル。そしてコイツがググガだ」
「二人って兄弟なのー?」
ロピが不思議に思っていたのかググガに聞いていた。
「本当の兄弟じゃねぇーよ。俺が人間族に奴隷にされていた所を兄貴に助けられたんだよ」
「そっかー」
「……」
チルがググガに近づき頭を撫でていた。
「な、何すんだよお前! や、やめろ!」
「よく頑張ったね」
「なんだよ、コイツ」
ググガはガルルの背に隠れてしまう。
「照れているのか、ググガよ」
「誰が! あ、兄貴行こうぜ!」
「人間族よ、何かあれば言ってくれ手助けをする」
「あぁ。その時は頼んだ」
そして、顔を真っ赤にしたググガに引き連れられてガルル達は自分の寝床に戻った。
「なんか、台風みたいな奴らだったな」
「そうだねー」
「アトス様はお怪我は?」
「みんなが守ってくれたから平気だ」
「ほっほっほ。アトス殿も最低限は肉弾戦の訓練をした方が良いかもしれませんな」
……何も言えね。確かにリザードマン達の時といい今回二人に襲われた時といい一切反応が出来なかったな。
「大丈夫、アトス様は私が守ります」
「私もお兄さん守っちゃうよー!」
「それは、俺的に情けないというか」
「ほっほっほ。アトス殿も男の子ですな」
木刀でも買って素振りでも始めるかな……。少し考え混んでいると人間族の商人が近付いて来た。
「皆さん大丈夫でしたか?」
「あぁ。仲間が強くて助かったよ」
「えぇ。そこの魔族さんなんか特に凄いですね」
「ほっほっほ。ありがとうございます」
「申し遅れました。私商人をしておりますピタと申します」
「アトスです、先程は色々教えて頂きありがとうございます」
そして、他にもいくつかの情報を交換した。
「それでは、私は戻りますので何か欲しい物があれば寄ってください」
「是非行かせて頂きます」
この休憩所でみんなの身体を休めたらロピの武器を作る為の材料集めをするつもりだ。
丁度良くこの場には何人も商人が居るので材料が全て揃うかもしれないな。
「そういえば、二人はあんな連携いつ練習したんだ?」
「えへへ、チルちゃんと隠れて特訓してたんだよ!」
「姉さんと頑張りました」
二人はどんどん成長していくな。これは俺も負けていられないな!
そして今は二人の獣人を縛り上げて目を覚ますのを待っている状況だ。チルは納得がいかないのかスキがあれば火炙りにしてやろうと、獣人の周りをウロウロしている。
「リガス、アトス様が少しでも離れたらヤルよ?」
「かしこまりました」
なんか、コソコソとリガスと話しているな……。これは目を離さない方がいいかな。
「ねぇ、お兄さん」
「なんだ?」
「チルちゃんがどんどん逞しくなっていくよ……」
目を虚空にしてロピは乾いた笑いをしていた。それから少し時間を置き、獣人達が目を覚ました。
「ヴゥ……、気絶しちまったのか」
「起きたか?」
俺が声を掛けると凄い勢いでこちらを睨みつけて来た。
「お前……。クソ人間族が……」
「ヴゥ……気絶していたのか……」
「兄貴、目が覚めたか!」
「あぁ、すまない」
口調の悪い方が安堵した表情に一瞬だけなったが、すぐさま先程と同じく俺を睨みつけて来る。
「えっと……」
俺は何て切り出さそうか言い淀んでいるとチルが切り出した。
「何故アトス様を狙った?」
「そうだー、そうだー!」
「お前らを助けようとしたんだよ!」
……やっぱり。コイツらはロピとチルが俺の奴隷だと思っていたのか。
「私達?」
「そうだよ! 獣人のお前らだよ」
「なんで?」
「このクソ人間族に奴隷にされているんだろ?! ッッイッテ!」
「アトス様の悪口を言うな」
チルは相変わらずだな……。このままだと話がどんどん変な方向に飛びそうだな。
「なぁ」
「んだよ!?」
「お前ら勘違いしているぞ?」
「勘違いだと?」
もう一人の獣人が俺の問いに聞き返す。
「兄貴、こんな奴の話聞くだけ無駄だぜ!」
「お前は少し黙っていろ」
「ッチ!」
「それで、勘違いとはどういうことだ?」
「あぁ。この子らは俺の奴隷じゃ無いぞ?」
「「なに!?」」
え? なんでそんなに驚いた反応なんだ?
「ほっほっほ。アトス殿、それ程人間族が他種族と共に行動する事は珍しいのですよ」
「そうなのか?」
「えぇ。人間族と他種族が一緒に行動していたら、まず間違いなく奴隷だと思われますな」
この世界では、そういう固定概念が根付いてしまっているのか。迷惑極まりないな。
「おい、クソ人間族! 本当に奴隷じゃないのか?」
「だから、そう言っているだろ」
それでも、信用してない様で獣人二人はロピとチルの方を向き真意を問うていた。
「ホントだよー。私もチルちゃんも奴隷じゃないし好きで付いてきているだけ」
「私の身も心も全てアトス様の物です」
「お、おまえ! やっぱりこの子を奴隷に!」
「ち、違うよ! 私の妹は偶に頭のネジが緩む時があるだけで奴隷でも何でも無いの!」
ロピが慌てて訂正して獣人達はなんとか納得した様なので、縄を解いてあげた。
「……人間族の子供よ、すまなかった」
「……悪かったな」
おー、コイツらが素直に謝って来ると思わなかったので少し驚いている。
「私の名前はガルル。そしてコイツがググガだ」
「二人って兄弟なのー?」
ロピが不思議に思っていたのかググガに聞いていた。
「本当の兄弟じゃねぇーよ。俺が人間族に奴隷にされていた所を兄貴に助けられたんだよ」
「そっかー」
「……」
チルがググガに近づき頭を撫でていた。
「な、何すんだよお前! や、やめろ!」
「よく頑張ったね」
「なんだよ、コイツ」
ググガはガルルの背に隠れてしまう。
「照れているのか、ググガよ」
「誰が! あ、兄貴行こうぜ!」
「人間族よ、何かあれば言ってくれ手助けをする」
「あぁ。その時は頼んだ」
そして、顔を真っ赤にしたググガに引き連れられてガルル達は自分の寝床に戻った。
「なんか、台風みたいな奴らだったな」
「そうだねー」
「アトス様はお怪我は?」
「みんなが守ってくれたから平気だ」
「ほっほっほ。アトス殿も最低限は肉弾戦の訓練をした方が良いかもしれませんな」
……何も言えね。確かにリザードマン達の時といい今回二人に襲われた時といい一切反応が出来なかったな。
「大丈夫、アトス様は私が守ります」
「私もお兄さん守っちゃうよー!」
「それは、俺的に情けないというか」
「ほっほっほ。アトス殿も男の子ですな」
木刀でも買って素振りでも始めるかな……。少し考え混んでいると人間族の商人が近付いて来た。
「皆さん大丈夫でしたか?」
「あぁ。仲間が強くて助かったよ」
「えぇ。そこの魔族さんなんか特に凄いですね」
「ほっほっほ。ありがとうございます」
「申し遅れました。私商人をしておりますピタと申します」
「アトスです、先程は色々教えて頂きありがとうございます」
そして、他にもいくつかの情報を交換した。
「それでは、私は戻りますので何か欲しい物があれば寄ってください」
「是非行かせて頂きます」
この休憩所でみんなの身体を休めたらロピの武器を作る為の材料集めをするつもりだ。
丁度良くこの場には何人も商人が居るので材料が全て揃うかもしれないな。
「そういえば、二人はあんな連携いつ練習したんだ?」
「えへへ、チルちゃんと隠れて特訓してたんだよ!」
「姉さんと頑張りました」
二人はどんどん成長していくな。これは俺も負けていられないな!
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