過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第5章

115話 アトスの不調 2

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 俺が体調を崩してから何日か経ってしまった。あれから本格的に具合が悪くなり寝込んでしまったのだ。

 それを見たロピとチルは顔を真っ青にしながらますます心配になってきたらしく必ずどちらかが常に俺の側にいる事になった。

 二人の親代わりとしては情け無い姿を見せたく無かったが、なってしまったのでしょうがない。恐らく雨に濡れた事によって身体が弱り熱が出たのだろう。そして雨は今も降り続いている。

「アトス様平気ですか?」
「あぁ。この前よりは大分良くなったよ」
「無理だけはしないで下さいね」

 前世だったら薬を飲んで安静にしていれば確実に治る程度の病気でもこの世界では医学が発展してない為些細な怪我や病気でも死に繋がってしまう。今回はリガスが薬法の知識があったので熱が徐々に下がってきた。

「いや、大分良くなって来たよ」
「油断禁物です。ぶり返す可能性もありますから」
「そ、そうだな」

 これではどっちが親だか分からないな……。やはり、種族柄人間族は他種族に比べて病気とかになりやすいそうだ。

 人間族はどんだけ弱いんだよ……。

「ただいまー!」
「ただいま戻りました」

 どうやらロピ達が帰ってきたらしい。

「お兄さん大猟だよー」
「お、美味そうな肉達だ」
「魔族さんが獲ったんだよー」
「ほっほっほ。ここら辺の動物達はあまり警戒心が無いので捕まえやすかったですな」
「それじゃ、直ぐ準備するね」

 二人はご飯の準備をして、チルは少し離れた場所で訓練をしている。グインのスタイルであったカウンターは習得出来なかったが、それでも毎日反復で練習している。

 そういえばリザードマン達の村での出来事やオークとゴブリン達の時の出来事などで思った事がある。
 この世界に来た時にシクの講義を何回も受けた。その際、この世界ではモンスターが支配していると学んだ。今までの成り行きなどを見ていて、それは確かだったし、モンスター相手に俺達人間はどうにも出来ない。

 仮に小型を少しばかり倒したとしても、それを上回るスピードでモンスター達は増えていくのだろう。
 だが今回思った事はモンスターの事では無く人間達の事だ。モンスターという強大な敵が居るのに人間同士で争って死者を出している割合の方が多いんじゃないか? 

 モンスターの問題が一切解決してないのに、人間同士で争っている暇なんてあるのかね……? 

 まぁ、実際俺も協力してモンスター達と戦おうと言われても、恐らく共闘するかは微妙なんだけどね。

 見ず知らずの人と命懸けの戦いなんて出来ないしな。だからこそ今、こういう現状が出来上がっているのだろうけど。

「なぁ、リガス」
「なんでしょうか?」
「モンスターっていつからこの世界にいるんだ?」
「ほっほっほ。そんな事考えた事もございませんな。確実に言える事は、私が生まれる前には既にこの土地を支配しておりましたな」
「確かにモンスターとかっていつからいたんだろうね?」
「私もリガス同様考えた事ありませんでした」

 やはりこの世界ではモンスターは当たり前の事と認識されているので疑問にも思わないものか……

 確かにロピやチル、リガスが俺が前に居た前世にいきなり来て、科学や電化製品、車などを見たらとても驚くだろうが、俺からしたら生まれた時からあったのでそれが当たり前になるしな。

 中にはモンスターについて研究している人も居るだろうが、会いたいと思っても会えるかも分からないな。

「お兄さん、そんな事考えてどうしたの?」
「いや、暇だったから少し考えてただけだ」
「ふーん」
「聡明なアトス様の事です、何か考えがあっての事でしょう」
「ほっほっほ。なんでも疑問に思う事は良い事です」

 チルは一人で納得して首を何度も上下に動かしている。
 まぁ、今回こんな事を考えたが俺自身は別にこの世界を救ってやるぜ! なんて事は考えてない。そんな事考えていたらシクに怒られそうだしな。
 
 恐らく、シクが生きていたら、自分の幸せを第一に考えろ! って言っていたかもな……いや、多分ゲンコツくらいは貰うかな……? 

 今の俺はこの三人を守るのが一番大事だからな。現状は俺が一番守られる側なのが悔しいが。

「ふむ。アトス様の容体も大分良くなって来ましたし明日には旅を再開出来るでしょう」
「やっとか……。みんな足止めしちゃって悪いな」
「全然平気だよ!」
「そうですよ! それよりもアトス様の身体が一番大事です」

 よし、明日までに絶対治して旅を再開するぞ! ロピの強化だけじゃ無くて俺も強くなりたいからな。リザードマン戦の際に仲間じゃない奴にも俺のスキル効果を反映させる事は出来た。他にもこのスキルの可能性を広げて見たいな。

「明日は雨止んで欲しいねー」
「確かに、止まないとアトス様の身体に障ります」
「ふむ。それは少し難しいかもしれないですな」
「おいおい、そこまで心配しないでも身体が少し濡れた程度で毎回こんな風にはならないさ」
「説得力なーい!」
「今回ばかりは姉さんの意見に賛成です」
「ほっほっほ。お二人に賛成です」

 こうして、この数日間は頭を整理する時間になって案外良かったのかもしれない。


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