過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第4章

111話 レギュの訓練

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「はぁはぁ、山神様ありがとうございました」

 そう言ってレギュは地面に倒れ込む。モンスターや人間相手に対しての戦闘訓練をここ最近行っていた。無尽の体力を持つレギュでも流石に疲れるらしく訓練が終わると毎回地面に倒れ込む。

「大分良くなった」
「えへへ」

 もう体力が回復したのかレギュは立ち上がりご飯の仕度をしますと言いどこかに行ってしまった。穴を掘り進める方も終盤になり恐らく明日辺りには上の頂上に行けるくらいまでいけそうだ。

 ここから出たらまずは頭の中に出てくる少年を探しにいこうと思う。

 また、何故か少年ともう一人出てくる獣人の女性が気になるな……

 そっちは、少年みたいに顔がはっきりと分からず朧げになっている。

 ここを出たら、レギュも恐らく付いていきたいと言うだろう。やはり私自身記憶を失って未だに自身の名前や頭の中に出てくる少年の事を思い出す事が出来ない。

「山神様、ご飯出来ましたよー」

 レギュの作ったご飯を食べてから一休みして私達はまた穴を掘り進めた。

「山神様! もうゴールは目の前ですよ!」
「あぁ。疲れたら言うんだぞ?」
「まだまだ余裕ですよ!」

 レギュは人間族の筈なのに体力が異様に多い。スピードに関しては私の方が早いが体力に関しては同じか私以上にあるだろう。

「山神様の為なら私はなんだってやりますよー!」

 どんどん穴を掘り、とうとう私達が出られる所まで掘る事が出来た。正確には大穴の7分目くらいまでだが後は自力で登り切る事が出来るだろう。

「レギュ、食料の準備などは大丈夫か?」
「はい! 準備万全です!」
「よし。なら登るか」

 私達は必要最低限の水と食料を持ち穴を登り始める。

「岩が崩れるかもしれないから気をつけろよ?」
「はい!」

 少しずつだが穴の先が見えてきた。そしてとうとう私達は大穴を登りきった。

「やったー! 山神様、外ですよ」
「あぁ。とうとう出られたな」
「本当ですよー。どれくらい時間が掛かったか途中から数えなくなりましたもんね」
 
 上から大穴を覗き込む。底が見えない。やはり一番下から登ってきても途中で体力尽きていたな。

「凄いですよねー。こんな場所から私達は出てきたんですから!」

 レギュは大穴から抜け出した事に興奮しているようだ。それもそうだろう最初は死ぬつもりでこの大穴に入ったのが今でも生きているのだから。

「レギュ」
「はい?」
「この先はどうする?」
「……私は……山神様に付いて行きたいです!」

 やはりそうか。

「ダメですか?」
「……言っても聞かなさそうだな」
「はい! 全力で付いていくつもりです!」
「しょうがない奴だ……」
「えへへ」

 レギュは嬉しそうにこちらを見て一度だけ頭を下げた。

「山神様、これからもよろしくお願いします」
「あぁ」

 こうして私達は再び一緒に行動する事になった。

「一つ質問だ」
「なんですか?」
「レギュの事を生け贄に捧げた村人達に仕返しはしたいか?」
「……」

 レギュは暫く黙り込み考える。そして決心した様に大きな声で私に言った。

「いえ! 大丈夫です。ここまで私を育ててくれた事実もありますし!」
「そうか。なら行くか」
「はい!」

 私達は当てもなくジャングルを歩き回り始めた。

「凄い動物が居ますね。これならご飯に困らなそう……」

 レギュはヨダレを垂らしながら、動物の動きに合わせて視線が動く。今まではお供え物だけで過ごしていたし、週に一度一人分のお供えが来るだけで、それを二人で分けていた為、お腹いっぱい食べた事は無かった。

「よし、腹ごしらえに捕まえて食べるか」
「賛成です! 山神様は待ってて下さい。私が捕まえてきますので!」

 そう言ってレギュは先程から見ていた動物に向かって全力で走り始めた。相当楽しみなのか不気味な笑みを浮かべながら動物を追い回している。

 そしてレギュが動物を捕まえて来た。

「……流石に捕まえすぎじゃないか?」
「そ、そんな事ないですよー」
「まぁいい食べよう」

 私達はいつ振りか思い出せない程の満腹感を味わう事が出来た。

「ふぅ……。もう食べられません」
「私も流石にキツイな」
「でもここまでお腹が満たされたのは久しぶりです」
「そうだな」

 そして、暫く休憩して再び歩き始める。

「山神様、これからどこに向かうんですか?」
「うーん、一応人間族の住処に行こうかと」
「例の頭の中に映る男の子ですね?」
「あぁ」
「きっと見つけられますよ! そしたら三人で落ち着いた場所にでも住みましょう!」
「それはいい考えかもな……」
「私は楽しみです! よーし、なんだか気合いが入ってきました!!」

 二人で歩きながら将来の事をあれやこれやと話し合っていると急に不穏な雰囲気を感じ取る。

「……なんだ?」
「どうしたんです?」
「変な気配がするな」
「動物ですか?」
「いや、違うと思うが……」

 そしてその気配はどんどん近づいて来る。

「モンスターだ……。レギュ! 逃げるぞ」
「は、はい」

 逃げきれるか……? 体力的には何時間でも逃げられるがモンスターの無尽蔵な体力には流石に勝てないだろう。

「もしかしたら、追いつかれる可能性もある。どこかに擦りつけるぞ」
「分かりました! 村が無いか注意深く探してみます!」
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