過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
111 / 492
第4章

110話 アトスの実力 2

しおりを挟む
 俺は意識をチル以外にも向ける。もちろんチルのサポートは引き続き継続しているが、グイン達の方も視界に収める。

 そして、グインに青いラインを敷く。

「ガード!」

 グインの足元に俺にしか見えない青いラインが現れる。

「どうだ……?」

 様子を見てみるが何の変化もしていない様だ。

「ダメなのか……?」
「お兄さん、何か試しているの?」

 ロピが心配そうに見つめて来るが今は応える余裕が無い。そもそもロピやチル、グインに対してはサポート効果が反映して他の者には反映されないのは何故だ?
 俺に酒場で能力向上を教えてくれたカカは俺に対して効果を反映させていた。別にその場で会った関係なのにもかかわらずだ。

「俺の意識の問題か?」

 俺は仲間意識の領域を仲間のリザードマン達まで広げてみた。無理やりだろうが、頭の中ではグイン達が仲間だと何度も繰り返す。

 その間にもリザードマン達は致命傷は負わないまでも、擦り傷などがドンドン増えて来る。そしてグインに対して複数の敵が剣撃を振り下ろす。

「あ! チルちゃんの先生が!」

 ロピは斬られる瞬間を見たく無いのか目を背けてしまっている。

「頼む! ガード!!」

 そして最期のチャンスだと思い再びグインに青ラインを敷く。

「お、お兄さん! チルちゃん先生無事だよ!!」
「よし!」

 グインの方を見ると斬られた筈なのに無傷なのが信じられないと言うように不思議そうな顔をしている。そして相手側のリザードマンも不思議そうにしている。

「おい! グインの野郎も獣人みたいに攻撃が効いてねぇーぞ!」
「……話している暇があるのか?」

 グインは直ぐに正気に戻り不思議現象については一度忘れる事にしたのか鋭い肘打ちを敵にかましている。

「お前ら、グインを早くやっちまえ!」
「おう!」

 相手側も正気に戻り再び攻撃を再開した。だがグインには攻撃が効かない。何故なら俺のスキル効果が反映しているからだ。

「成功して良かったぜ……」

 そして俺はそのまま他の仲間であるリザードマン達にも意識を広げてサポートを試みる。

「ガード!」

 よし! 他のリザードマン達にもしっかりと効果が効いている! そして今気付いたが青のラインを俺は一度に5個も出している。

「最大何個まで出せるんだ?」
「え? なんか言った?」
「いや、何でもない。ロピはこっちに敵が来ないか確認しててくれ」
「まかせて!」

 俺は意識や視野をどんどん広げる。

「ガード!」

 五つのラインを一気に出す。そして仲間をひたすら守り続ける。グイン達も状況に慣れてきた様でチル同様相手からの多少の攻撃は無視して、攻撃に集中し始める。すると敵の数がどんどん減っていく。さすがここまで耐え忍んだだけはある。一人一人が相当の戦士なので敵を次々倒していく。

「お兄さん見て見て! チルちゃん達がどんどん薙ぎ倒していくよ!」

 ロピは空を切る様にシャドーボクシングの真似をする。
 そして、しばらく経つと数も減り残りはトッポと相手側の村長だけになった。

「えへへ、グ、グイン作戦成功だな」
「……何を言っている?」
「俺は、裏切った様に見せてただけなんだよ!」

 なんて言い訳だ……。

「チルちゃん先生、そんな奴ぶっ飛ばしちゃえ!」
「……そうだな」
「ま、待ってくれよ! な?」
「……問答無用だ」

 グインは素早くトッポに三発放つ。

「ウゥ……、イテ……」

 トッポは地面に片膝を着く。そして次は村長の方に詰め寄る。

「グイン、やめてくれ。女達は返すから」
「先生、そんな奴ぶっ飛ばすべき!」
「……承知した」

 チルはロピと同じ様にグインに言うと、またグインも同じ様に三発放ち村長は気絶した。

 そして、グイン達は奥さんや子供達を解放してお互い抱き合っている。

「お兄さん良かったね!」
「あぁ。やっぱり家族は一緒じゃないとな……」
「アトス様には私達がいます」
「そうだよ! 魔族さんもね!」
「ありがとうな」

 俺は二人を優しく抱きしめる。

「「えへへ」」

 二人はお互い向き合って最高の笑顔を向けあっている。そして俺が離れると物足りなさそうに見ている。

 ……はは、まだ子供だな。

 そして、喜びの再会を果たしていたグイン達がこちらに来た。

「……アトス様、今回は本当にありがとうございました」
「「「「「「ありがとう!」」」」」」

 グインの言葉に続けて他のリザードマン達もお礼を言ってきた。

「……チルから聞きました。途中から敵の攻撃が効かなくなったのはアトス様のお陰だと」
「いや、気にしないでくれ。これからどうするんだ?」
「俺達は村に戻って生活を続けます」
「そうか」

 どうやら今回の戦闘で大人数のリザードマン達が亡くなった。それは両方の村合わせてだ。グイン達はこの村のリザードマン達の生き残りと一緒に生きていくらしい。もちろん罰は与えると言っていた。ただしトッポに関しては他者より重い罪を与えるらしい。

「……アトス様達はこれからどうされるつもりで?」
「その事なんだが、一つお願いがある」
「……なんなりと」
「しばらく村で休ませてくれ。リガスを回復させたい」
「……もちろんです」
「それと、この子を引き続き鍛えてあげて欲しい」

 俺はチルの背中を優しく押して一歩前に出す。

「アトス様?」
「強くなりたいんだろ?」

 俺はチルに慣れないウィンクをする。

「はい! 先生、引き続き戦闘を教えて下さい」
「……アトス様が仰るなら心得た!」
「チルちゃん良かったね」
「うん!」

 こうしてリザードマンの女性達を助け出して俺達はしばらく村に滞在した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

チート能力【無限増殖】を得た俺は終末世界でもファンタジーしている ~無限に増え続ける能力で世界最強~

仮実谷 望
ファンタジー
ある日、俺は謎の薬を手に入れてそれを飲んだら、物を増やす能力に目覚めていた。お金儲けしたり、自分自身の欲望を叶えているうちに厄介ごとやモンスターと出会う。増える超能力。増え続ける超能力が進化していつの日か世界最強の男になっていた。基本的に能力は増え続けます。主人公は色々なことをしようとします。若干異能力バトルに巻き込まれます。世界は終末世界に移行してしまいます。そんな感じでサバイバルが始まる。スライムをお供にして終末世界を旅して自由気ままに暮らすたまに人助けして悪人を成敗する毎日です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...