105 / 492
第4章
104話 リザードマンの事情
しおりを挟む
「あ、お兄さんおかえりー」
俺はグイン達のやり取りを見た後にコッソリ戻った。何やら穏やかでは無さそうな雰囲気だったな。
嫌だぞ、また何かに巻き込まれるのは……
「アトス様お帰りなさい。どちらにいかれていたんですか?」
「ちょっとみんな集まってくれ」
そして、俺は三人に今見てきた事を説明した。
「ふむ、何やら厄介そうですな」
「だねー」
「アトス様どうしますか?」
「うーん。みんなはどうだ?」
どうするか悩んでいると扉をノックする音が聞こえた。
「アトスさーん、今大丈夫か?」
どうやらトッポとグインが来たらしい。扉を開けて中に入れる。
「どうした、トッポ」
「ちょっと話したい事があるんだ」
「話したい事?」
「あぁ。他の三人にも聞いてほしい」
俺達は顔を見合わせて、どうするか決める。そして皆が俺の方を見るので恐らく俺が決めろって事だろう。
「分かった。座ってくれ」
「お茶を用意致します」
「リガス、私も手伝う」
「わ、私も!」
ロピの奴は逃げたくて手伝いに行ったな……。
「急に来てすまねぇ」
「いや、大丈夫だ。それにしてもさっきはいきなりどうした?」
「実はその事についてなんだ」
トッポの隣に座っているグインはいつもより更に無口である。トッポも言い辛い事なのか、神妙な面持ちで皆が揃うのを待っている。
恐らく先程のリザードマン達のやり取りについてだろう。暫くしてから全員が席に着く。
「それで? どうしたトッポ」
「あぁ。実はな手を貸して欲しいんだ」
「どういう意味だ?」
トッポは一拍置いて深呼吸をしてから話し始める。
「俺達の村を見ておかしいと思う所は無いか?」
「うーん、無いと思うけど?」
「私も分からない! チルちゃんは?」
「私も分からない」
「ふむ。女性がいませんな」
あ! 確かに。この村に来てから女性のリザードマンを一人も見かけてないな。
「そうなんだ。実は村の女達が攫われちまったんだよ……」
「……」
その話が始まってからはグインの表情がより一層神妙な面持ちになる。
「攫われたって誰にー?」
「もう一つ近くにある村のリザードマン共にだ」
「近くにもう一つ村があるの?」
「あぁ。ここから程良く離れた場所にリザードマンの村がもう一つある」
どうやら元々は一緒に暮らしていたらしいが、村の権力争いやルールに嫌気を指したグイン達リザードマンが半分程連れてこの村を作ったらしい。
「女性はどうした?」
「女性も半数程、この村に連れてきたんだけどよ、最近アッチのリザードマン達がこの村を襲って来てな……」
どうやらその際、戦闘している間に別部隊が村人の女性達を全員攫ってしまったらしい。
「戦闘に関してはグインが居たからコチラは怪我人が数人程度で済んだが向こう側は死者が出ちまった」
「そうなんだ……」
「それで向こうも本気になってな。俺達は女達を取り返しに行こうと思い攻めに行ったが、かなり強固な砦が出来上がっててな、村にすら入れなかった」
グイン達は総出で救出を試みたらしいが、砦などが強固で村に入る前に退散する羽目になったと言う。
「それで俺達に救出するのに手を貸して欲しいって事か?」
「そうだ……。俺達リザードマンがこんな事言える義理じゃねぇーが頼む!」
恐らく俺達の力では無くリガスの力を借りたいんだろう。リガスはグインですら赤子の手を捻るように倒したのだ。
「ちょっと考えさせてくれ」
「あぁ! 勿論だ。考えてくれる余地があるだけ嬉しいぜ」
そしてグインが立ち上がり話し出す。
「……俺の嫁と子供も攫われました。どうかお願いします」
グインは深く頭を下げる。
「先生のお嫁さんと子供もですか……?」
「……あぁ」
チルは、グインの事を先生と呼んでいるらしい。そしてチルが俺の方を見て頭を下げた。
「アトス様、私からもお願いします。先生達を助けてあげたいです」
グイン同様に隣に並び頭を下げる。それを横で見ていたトッポも慌てて並び、頭を下げる。
「アトスさん、頼む!」
ここまで言われたらしょうがないか……。
「はぁ……。分かったよ助けるのを手伝う」
俺の返答に三人は勢いよく頭を上げて再度お礼を言いながら頭を下げた。
「ほっほっほ。よろしいのですか?」
「チルにあそこまで頼まれたからな」
「お兄さんはチルちゃんに甘いね!」
「ロピ殿にも甘いと思いますぞ?」
「知ってる!」
よし! そうと決まれば作戦会議だな。
「まずは、相手の戦力がどれくらいか教えてくれ」
「あぁ! 任せてくれ。直ぐに会議場所を用意して村人達を集めてくる!」
そう言ってトッポは建物から勢いよく出て行った。
「……アトスさん本当にありがとうございます」
「先生良かったですね」
「あぁ。ありがとう」
そう言ってグインも勢いよく建物から出て行った。
「アトス様ありがとうございます」
「チルの頼みだからな!」
「ふふ、チルちゃん良かったね」
「うん!」
「ほっほっほ。チル様の願いを叶えるのも執事の役目でございますな」
「リガスも宜しくね」
「かしこまりました」
こうして俺達は準備が整ったとトッポからの知らせを受けてリザードマン達が集まっている場所に向かうのであった。
俺はグイン達のやり取りを見た後にコッソリ戻った。何やら穏やかでは無さそうな雰囲気だったな。
嫌だぞ、また何かに巻き込まれるのは……
「アトス様お帰りなさい。どちらにいかれていたんですか?」
「ちょっとみんな集まってくれ」
そして、俺は三人に今見てきた事を説明した。
「ふむ、何やら厄介そうですな」
「だねー」
「アトス様どうしますか?」
「うーん。みんなはどうだ?」
どうするか悩んでいると扉をノックする音が聞こえた。
「アトスさーん、今大丈夫か?」
どうやらトッポとグインが来たらしい。扉を開けて中に入れる。
「どうした、トッポ」
「ちょっと話したい事があるんだ」
「話したい事?」
「あぁ。他の三人にも聞いてほしい」
俺達は顔を見合わせて、どうするか決める。そして皆が俺の方を見るので恐らく俺が決めろって事だろう。
「分かった。座ってくれ」
「お茶を用意致します」
「リガス、私も手伝う」
「わ、私も!」
ロピの奴は逃げたくて手伝いに行ったな……。
「急に来てすまねぇ」
「いや、大丈夫だ。それにしてもさっきはいきなりどうした?」
「実はその事についてなんだ」
トッポの隣に座っているグインはいつもより更に無口である。トッポも言い辛い事なのか、神妙な面持ちで皆が揃うのを待っている。
恐らく先程のリザードマン達のやり取りについてだろう。暫くしてから全員が席に着く。
「それで? どうしたトッポ」
「あぁ。実はな手を貸して欲しいんだ」
「どういう意味だ?」
トッポは一拍置いて深呼吸をしてから話し始める。
「俺達の村を見ておかしいと思う所は無いか?」
「うーん、無いと思うけど?」
「私も分からない! チルちゃんは?」
「私も分からない」
「ふむ。女性がいませんな」
あ! 確かに。この村に来てから女性のリザードマンを一人も見かけてないな。
「そうなんだ。実は村の女達が攫われちまったんだよ……」
「……」
その話が始まってからはグインの表情がより一層神妙な面持ちになる。
「攫われたって誰にー?」
「もう一つ近くにある村のリザードマン共にだ」
「近くにもう一つ村があるの?」
「あぁ。ここから程良く離れた場所にリザードマンの村がもう一つある」
どうやら元々は一緒に暮らしていたらしいが、村の権力争いやルールに嫌気を指したグイン達リザードマンが半分程連れてこの村を作ったらしい。
「女性はどうした?」
「女性も半数程、この村に連れてきたんだけどよ、最近アッチのリザードマン達がこの村を襲って来てな……」
どうやらその際、戦闘している間に別部隊が村人の女性達を全員攫ってしまったらしい。
「戦闘に関してはグインが居たからコチラは怪我人が数人程度で済んだが向こう側は死者が出ちまった」
「そうなんだ……」
「それで向こうも本気になってな。俺達は女達を取り返しに行こうと思い攻めに行ったが、かなり強固な砦が出来上がっててな、村にすら入れなかった」
グイン達は総出で救出を試みたらしいが、砦などが強固で村に入る前に退散する羽目になったと言う。
「それで俺達に救出するのに手を貸して欲しいって事か?」
「そうだ……。俺達リザードマンがこんな事言える義理じゃねぇーが頼む!」
恐らく俺達の力では無くリガスの力を借りたいんだろう。リガスはグインですら赤子の手を捻るように倒したのだ。
「ちょっと考えさせてくれ」
「あぁ! 勿論だ。考えてくれる余地があるだけ嬉しいぜ」
そしてグインが立ち上がり話し出す。
「……俺の嫁と子供も攫われました。どうかお願いします」
グインは深く頭を下げる。
「先生のお嫁さんと子供もですか……?」
「……あぁ」
チルは、グインの事を先生と呼んでいるらしい。そしてチルが俺の方を見て頭を下げた。
「アトス様、私からもお願いします。先生達を助けてあげたいです」
グイン同様に隣に並び頭を下げる。それを横で見ていたトッポも慌てて並び、頭を下げる。
「アトスさん、頼む!」
ここまで言われたらしょうがないか……。
「はぁ……。分かったよ助けるのを手伝う」
俺の返答に三人は勢いよく頭を上げて再度お礼を言いながら頭を下げた。
「ほっほっほ。よろしいのですか?」
「チルにあそこまで頼まれたからな」
「お兄さんはチルちゃんに甘いね!」
「ロピ殿にも甘いと思いますぞ?」
「知ってる!」
よし! そうと決まれば作戦会議だな。
「まずは、相手の戦力がどれくらいか教えてくれ」
「あぁ! 任せてくれ。直ぐに会議場所を用意して村人達を集めてくる!」
そう言ってトッポは建物から勢いよく出て行った。
「……アトスさん本当にありがとうございます」
「先生良かったですね」
「あぁ。ありがとう」
そう言ってグインも勢いよく建物から出て行った。
「アトス様ありがとうございます」
「チルの頼みだからな!」
「ふふ、チルちゃん良かったね」
「うん!」
「ほっほっほ。チル様の願いを叶えるのも執事の役目でございますな」
「リガスも宜しくね」
「かしこまりました」
こうして俺達は準備が整ったとトッポからの知らせを受けてリザードマン達が集まっている場所に向かうのであった。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚
ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。
原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。
気が付けば異世界。10歳の少年に!
女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。
お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。
寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる!
勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう!
六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる!
カクヨムでも公開しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜
ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。
同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。
そこでウィルが悩みに悩んだ結果――
自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。
この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。
【一話1000文字ほどで読めるようにしています】
召喚する話には、タイトルに☆が入っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる