過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

第4章

93話 リガスの余裕

「魔族には気をつけろ、必ず複数で相手をしろ！」

　リザードマン達は連携の取れた動きで少しづつ距離を詰めてくる。リザードマン達は四方から徐々に俺達の動ける範囲を狭めて来る。

「ほっほっほ。良い気迫ですな」
「負けない……」

　チルがリザードマン達に向かい走り出す。リガスもそれに続き走り出すが、リザードマン達がリガスを囲む様に移動した事により、チルとリガスが分断された。

「ふむ。まぁ、今のチル様でも大丈夫だとは思いますが一人厄介そうな者がいますな」

　リガスは冷静に状況を判断して一先ず囲まれているリザードマン達の相手をする事にしたらしい。

「あわわ、お兄さん始まちゃったよ！」
「ここまで、来たらやるしかないだろ」
「で、でもここら辺石が無くてスキル使えない」

　辺りに小石などが転がってないらしく、ロピは慌てている。そしてチルの方はリザードマン相手に苦戦している。

「アームズ……」

　スキルを発動させてリザードマン相手に拳を叩きつけるが、流石は歴戦の戦士達なのかチルの放つ攻撃を受けずに避けていた。これでは、いくら攻撃力のあるチルでも意味が無い。そしてリザードマン達は連携しながらチルに攻撃を仕掛ける。

「ガード！」

　チルに攻撃が当たる前に青ラインを敷く。そして、リザードマン達の攻撃をチルは手でガードし急所などに入らない様にしている。

「な、なんだ！？　この獣人全然効いてないぞ？」
「いくら防御してても普通は衝撃などがあるはずだろ！」

　俺のスキル効果でチルの防御力が上がっている為、リザードマン達の攻撃が全く効いていない。

「流石、アトス様です」
「ほっほっほ。これなら安心して見てられますしチル様の成長にはもってこいですな」
 
　リガスは複数のリザードマン達を相手しながらもチルの様子を見ていたらしい。そして何人かは既にリガスに沈められたのか地面にリザードマン達が倒れている。

「お兄さん、チルちゃん大丈夫かな？」
「今の所は大丈夫そうだ」

　チルはリザードマン達の攻撃を受け切り再び攻撃のモーションに入る。

「くっ……、当たらない……」

　先程から休まず手を出し続けているが、当たる気配が無いな。だが向こうの攻撃も俺のスキルによってチルにダメージは無い。

「ガード！」

　リザードマン達は複数でチルに攻撃をしているのに、全然効かないのが不思議でならないらしい。

「クソ！　この獣人に攻撃が効かないぞ！」
「刃が通らないのは流石におかしいだろ！」
「なんかのスキルなのか？」

　リザードマン達はこの現象を普通では考えられ無いと思ったのかスキルが原因では無いか？　と考えたらしい。

「恐らく、身体強化の防御系か特殊スキルなんじゃ無いか？」
「とにかく、獣人に攻撃をし続けるしかない！」
「「「おう！」」」

　話が纏まり再度チルに攻撃を開始するリザードマン達は、時間差を利用して攻撃の隙を生み出さない様にしている。

「ガード！」

　いつもの様に青ラインを敷きチルの防御力を上げる。だが、ついにリザードマン達に勘付かれた……。

「おい！　あの人間族のスキルじゃないか？」
「今何か叫んでたし、可能性はあるな！」

　先程までこちらを気にもしなかった者達の何人かが俺とロピの方に顔を向けた。

「お、お兄さんもしかしたらバレた？」
「どうやらそうらしい……」
「ど、どうするの！？」

　リザードマン達の何人かがこちらに向かって来て俺達の逃げ場を無くすように四方から少しづつ近づいて来る。

「お兄さん、逃げ場無いよー」
「戦うしか無いか……？」
「でも、お兄さん攻撃力皆無じゃん！」
「う、うるさい！　敵の前で何を言う！」
「お兄さんは、危ないから私の後ろに居て！」

　そして、ロピが俺を守る様な立ち位置で腰を屈め、戦闘の構えを取る。スキルの特性上、以前よりは組手の戦闘訓練をしていないが、前まではチルと毎日の様に行なっていた。

「ふぅ……」

　ロピは一度深呼吸をして顔を引き締める。

「なんだか、情けない様な気がするが、この際構わない！　ロピ頑張れー！」
「お兄さんの応援で元気出た！　いっくよー！」

　ロピは鋭い足捌きにてリザードマンの一人に近づき攻撃を仕掛ける。

　そして、返り討ちに合う……。

「あわあわあわ」

　ロピは一瞬でリザードマン達にやられて気絶させられた。そして俺も呆気なく捕まった……。

「おい！　そこの獣人と魔族！　お前らの仲間を預かった」
「アトス様、姉さん！？」
「ふむ。人質とは卑怯ですな」

　俺とロピが捕まったのを見てチルは焦ったらしい。戦闘中にもかかわらず俺達の方に全力で走りながら向かってくる。

　そして、チルも捕まった……。

「私の主人と仲間を捕まえるとは勇敢なのか、それともバカなのか判断に迷うところですな」

　リガスの周りに居たリザードマン達は全て倒れて居た。そして、リガスは俺達を助ける為にゆっくりとこちらに向かってきた。

「ほっほっほ。チル様、皆さん今助けます」

　リガスの進むスピードが徐々に上がり、まずはチルを捉えている場所に着く。そしてリザードマン達がリガスに反応して攻撃を仕掛けるが……

「ほっほっほ。そんな攻撃は私めには当たりません」