過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第3章

86話 デグとベム

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 扉を叩く音で俺は起きる。

「デグさーーん、起きていますか?」

 どうやら村人の一人が俺に用があって起こしに来たらしい。

「おう。どうした?」
「また、移住希望者が来ました」
「そうか。準備してすぐに行く」
 
 村の祭りを終えてからは、徐々に移住者が増えて来た。今では30人以上の住人がこの村に住み、また今日も移住者が来たと言うから、更に増えるだろう。

 だがここ最近は頻繁に移住者が来ている感じがする。恐らく人間族の住処から来た者達なのだろう。

 あれから定期的に人間族の住処について調べているが、やはり内部には入れずどうやら食料や日常品などは内部の者達が調達しに外部まで行っているらしい。

「一体、人間族の住処内で何が起きているんだ?」

 俺は一通り準備して移住希望者達の所まで向かう。その途中でベムと会った。

「おうベム! 今日も移住者が来たらしいぞ」
「知っている……」
「最近は特に多いよな」
「うん。人間族の住処で何かしらあるんだと思う……」
「ベムもそう考えていたか」

 ひとまず、移住者達に事情を聴いてみるしかないな。

 何か分かればいいが……。

「今回は何人か聞いたか?」
「ううん、移住希望者がまた来たからとしか聞いてない……」
「俺もだ」

 村人が多くなる事は良いことだが、ここ最近は住人の増えるペースが早くて住む場所を確保出来なくなってきた。村人の器用な者達には急いで建物を作ってもらっては居るがそれでも追いつかないので今は共同施設的な場所に住んでもらっている。

「今作りかけの柵をもっと広げないとダメかも……」
「そうなんだよなー。いずれは大きい街にするつもりだが、まさか村を作り始めて三年で移住者が来ると思わなかったな」

 村人はこれからもどんどん増やすつもりではいた。だが、まずは安全の確保をしたいのでモンスター用の柵や小型を想定した戦闘術などを確立して、何かあった時でも犠牲者を出さない様に生活基盤を整えてから村人を増やすつもりだったんだよな……。

 村に人が増えれば活気が出てきて労働力も増えて発展するスピードは段違いだろう。だが、人が増えれば増えるほどモンスターに襲われやすくなる。

 小型用に戦闘訓練をしているが、まだ一度も実戦では試せていないのが現状だ。討伐人数として今の村人半分以上は訓練に参加して貰っているし、中には戦闘経験が無かった者までいる。
 だが、村を守る為にと戦闘班に志願してくれたりして、なんとか二十人程揃ったがやはり訓練も一筋縄ではいかなかった。それを考えると安易に人を増やすのはリスクが高いんだよな……。

「デグ、今回の移住者は受け入れるの……?」
「とりあえず、移住する理由とか聞いてから判断だな」
「でも、そろそろ人数的に増え過ぎてる。モンスターに見つかる可能性が高くなって来ると思う……」
「それなんだよな。ベム、何か良い案ないか?」

 俺も同じ事を懸念していたので、丁度良いと思い聞いてみる事に。

「今は思い付かない……。私だったらこれ以上移住者を取らない様にする」
「それは、可愛そうな気もしてな……」
「そんな事言って、村人達がモンスターに襲われるよりはマシ」

 ベムの言う事は正しいな。俺は村の村長として村人達を守る義務がある。いくら村の発展や村を大きくする為に人が必要だとしても、それでモンスターに襲われたら意味が無い。

「ひとまずは話を聞いてみてからだな」
「分かった……」

 ベムと話していると目的地まであっという間に着く。

「デグさん、ベムさんこちらが今回移住希望者です」

 移住者達は三人組で、中年の男一人と若者二人の三人組だった。だがどう見ても普通には見えない。まず中年男はニタニタと笑みを浮かべて胡散臭そうな表情を作り俺に向かって話しかけてきた。

「貴方様がこの村の村長さんでしょうか?」
「あぁ、そうだ。移住希望と聞いたが?」
「そうです。私達は人間族の住処から来ました」

 気味の悪い笑みをしながら、男は淡々と移住してきた理由を話す。どうやら、人間族の住処では、食料不足らしい。国民に一応の食料は毎日配られるらしいが、大人にしたら一食分にも満たない量を二日分として配られるらしい。

「そんな事で、これ以上はお腹が減って倒れてしまうと思い抜け出して来ました」
「それは大変だったな」
「えぇ、それはもう……」

 男の風貌は丸々と肥えている。そして後の若者二人も結構肥えている。食料の話が本当だとしても、この三人は何かしらの手段で十分な食料を手に入れていたんだろう。ますます怪しいな……。

「他に脱げ出した理由はあるのか?」
「他と言いますと?」
「今人間族の住処は入れない状態だが、なんでだ?」
「申し訳ございません。確かに外部に出る時に門番からは一度出たら二度と内部には入れないとは言われましたが理由までは分かりません」

 申し訳無さそうにしているが、やはりどこか信用ならなかった。

「申し遅れました。私はガバイと申します。そして後の二人が私の息子で、サットとマットと申します」

 後の二人もガバイ同様頭を下げてきたが、先程までは親譲りの笑い方で、村の女達をニタニタ見ていた。

「俺の名前はデグだ。そしてこっちの小さいのが副村長のベムだ」

 ベムはガバイ達が気に食わないのか一切対応する気は無いらしい。

「デグ様にベム様ですね。それで私達はこの村に住んでもよろしいのでしょうか?」
「それなんだが、今は受け入れられる程の余裕が無いんだ」
「はっはっは。私どもなんて柵の内側にさえ住まわせて貰えれば後は自分達で作りますよ」

 ガバイは凄い下手に出ているが、俺的には村に置いときたく無いんだよな……。ベムも恐らく同じだろう。だが、やはり断りにくい。

「なら、本格的に村に住むかどうかは期間を置いてから決めさせてくれ」
「そう、申しますと?」
「俺達も知らない奴をいきなり村に住まわせる気は流石に無い。だが、その場で断るのも良く無いと思うからしばらく一緒に過ごして決めさせてくれ」
「ええ。デグ様の言いたい事は分かりますとも、私共も皆さんに気に入って貰える様精一杯頑張ります」

 こうして、村に新しい仮住人が加わった。

「コイツらは絶対怪しいと思う……」

 ベムは俺にだけ聞こえる様に呟く。
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