上 下
86 / 492
第3章

85話 戦闘が終わって……

しおりを挟む
 オーク族の長であるディングがこちらにやって来た。

「アトスよ今回の事は、なんてお礼を言ったらいいのか」
「オーク族は大丈夫か?」
「あぁ。何人かは怪我をしたが、小型との戦闘による死者は出ていない。本当にありがとう」

 ディングは真摯にお礼を言ってくる。

「これからどうするんだ?」
「うむ。この村で再び再興していこうと思っている。グダが担当していた仕事も今後はオーク族でやっていくつもりだ」

 今までは、生活面ではゴブリン達に頼っていた為最初は苦労しそうだな。

「まずは、小型に壊された建物や柵などを直すしかないな」
「大変だと思うが頑張ってくれ」
「おう! 力だけはあるからな!」

 ディングは筋肉を見せつける様にポーズを取る。

「アトス達はこれからどうするつもりだ?」 
「二人のスキル儀式も終わったし自分達の家に帰るよ」
「そうか。ここの近くに寄ることがあれば是非顔を見せに来てくれ! 今は無理だが最高級のおもてなしをしよう」
「あぁ。そうさせて貰う」

 辛い出来事だと思うが、オーク族達はみんな前向きに村の復興の為動いている。小型との戦闘が終わったばかりだと言うのに疲れた様子も見せず働いている。

「オーク族はタフな奴らが多いな」
「おう! それはオーク族の特徴でもあるぜ」

 ディングも戦闘中やゴブリンとのやり取りの時は鬼の形相だったが、今は現実を受け止め前を向いている。

「そういえば、グダ達ゴブリン族はどうしたんだ?」
「分からん……。ゴブリン共は小型が現れた瞬間、俺達に背を向けて逃げ出しやがった」

 あれは、恐らくグダが計画的に小型をこの村に招き入れたのだろう。

「ゴブリン共の捜索はもちろんするつもりだが、やはり村がこの状況では探すのに人数を充てる訳にはな……」
 
 確かに。ただでさえゴブリンの策略によって同胞達も少なくない人数やられ、更に村を復興するなら探索に人数を充てる事は出来ないだろう。

「同胞達がやられた事は確かに許せない……」

 亡くなった仲間達の事を思い出したのだろう。とても悲しそうな表情をした後に怒りの形相になる。そして少し諦めた様な、なんとも言えない表情に戻る。

「だが、今は生きている同胞達が大事だから、村復興に力を入れるさ」
「そうか」
「何かアトス達にお礼がしたいところだが……」
「気にするな。もし気にするなら、あの魔族を貰っていくつもりだがいいか?」
「あぁ。もちろんだ」

 今更リガスの事で文句を言わせるつもりは無いが念の為聞いたら、快く承諾してくれた。

「それじゃ、俺達はそろそろ行く」
「そうだな。あまりアトス達を引き止めても悪い、気をつけろよ!」

 こうして、俺達はオーク族の村を後にした。オーク族総出で見送られ、村を出る際は一人一人からお礼を言われた。


「お兄さん、これからどうするの?」

 オークの村を離れて、木々が生い茂るジャングルを歩いているとロピが聞いてくる。

「家に帰ろうと思っているぞー」
「そっかー。これでグッスリ寝られるねー。他の場所だと熟睡出来なくて」

 ロピは十分熟睡していたと思うが……。

「そういえば、リガスのスキルって何だ?」
「ほっほっほ。実はあの小型との戦闘まで私自身スキルを持っていないと思っていました」
「持っていない?」
「そうです。まだ私が子供の頃にスキル儀式をしたのですが、スキルが発現しなかったんですよ」
「へー。そんなことあるんだー」

 ロピは不思議そうにリガスの話を聞いている。

「ほっほっほ。でも魔族だったからなのか戦闘で困った事はあまり無いですな」
 「なんで、魔族さんは自分のスキルに気付いたの?」
「あの小型との戦闘時に落ちていた盾を拾った瞬間頭の中に入ってきた感覚でしたね」

 リガスのスキルは通常の三つのスキルに該当されない為恐らく特殊スキルなのだろう。特殊スキルと言えば、凄い珍しい。俺のSランクスキルも相当珍しいが、リガスが所持している特殊スキルはそれ以上に珍しいとシクに習ったな……。

「魔族さんの、スキルは結局なんなの?」
「ほっほっほ。敢えて名前を付けるとしたら、【盾の極み】といいますかな」

 盾の極みか。なんかカッコいいな。俺の心をくすぐるぜ!

「リガス、なんかそのスキルカッコいい」
「ほっほっほ。チル様ありがとうございます」
「そのスキルはどんな能力を持っているの?」
「盾を使った防御がとても上手くなるらしいです。そして何個かの盾に変形させる事ができるみたいですな」

 変形? なんだよそれ! リガスのスキルいいなー!!

「リガス、盾の変形って?」
「まだ、全ては分からないですが先程使用した大きい盾に変形したのが一種類目ですな。どうやら衝撃に強い盾らしく小型の攻撃を受けきれました」
「そう! 魔族さん一人で小型の攻撃を受け切った時は本当に驚いたよ!」

 確かに、あの小型の体当りを一人で受け切った時は俺もかなり驚いた。やはり特殊スキルって言うのはずば抜けて性能が良いのかもしれないな。

「リガス、他の変形スキルはどんなの?」
「チル様、それは後のお楽しみと言うことで」

 リガスは主人であるチルにウィンクしながら微笑んだ。

「よし、仲間も増えた事だし家に帰るか!」
「はーい!」
「分かりました」
「ほっほっほ。皆さんこれからよろしくお願いします」

 こうして、ロピとチルのスキル儀式も終わり、俺達は家に帰る事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...