80 / 492
第3章
79話 チルと魔族
しおりを挟む
「なんか、怒声が聞こえる」
「そうですな。お嬢さん今日は祭りか何かあるのですか?」
「ううん、聞いてない」
私はリガスと話し込み、そろそろアトス様と姉さんの所に戻ろうとした時に外が騒がしい事に気付いた。
「ちょっと、様子見に行ってくる」
「それでは、私もいきます」
そう言って、リガスは平然とした表情で牢屋を破壊して出てくる。
「……いつでも抜け出せたの?」
「お嬢さんのお陰ですよ」
リガスはこぼれる笑顔を見せる。この場におじさま好きの女子が居ればイチコロだっただろう。
「では。いきましょう」
「うん」
リガスと一緒に外に出た。そうすると、怒声の声は更に大きくなり、耳を澄ませてみると、どうやら戦闘を行っている模様だ。
「誰かが戦っておりますね」
「様子見にいってみよう」
「かしこまりました」
私とリガスは気配を消して戦闘が行われている場所に向かう。近づくに連れて誰が戦闘しているか見えてきた。どうやらオーク族とゴブリン族が戦っている様だ。
「ほっほっほ。あの一回り大きいオーク以外は大したことない者ばかりですな」
私から見たら、オーク族の方は全員凄く見えるが、リガスから見たらそうでも無いらしい。
「アトス様と姉さんを探さないと」
「私も手伝いますよ」
二人して移動を試みようとした際にリガスが何かに反応する。
そして、少し遅れて私も反応する。
「「ッ!?」」
何かがこちらに向かってくる気配を感じて、気配の方に顔を向ける。
「どうやら、モンスターがこちらに向かっておりますな」
「やっぱり?」
「オーク達は気付いて無いようですが、ゴブリン達は気付いているみたいです」
ゴブリン達の方に耳を澄ませてみる。
「皆さん、目的完了です!! よくやりましたね!! 全員逃げる準備を!」
グダがゴブリン達に声を張り上げて逃げる様に指示している。
「お嬢さん、どうやら来たようですよ」
リガスの言葉に合わせて茂みから小型が現れる。
「小型……」
「そうですね。小型の中でも、まだ小さい様に見えますな」
「リガスは、小型倒せる?」
「流石に一人では倒せませんね」
小型は、どうやらディングを執拗に狙っている。
この結果もゴブリンの作戦通りなのかは不明だが、ディング達オーク族が小型に応戦している間にゴブリン達は村から逃げ出した。
「お嬢さんどうしますか?」
「……アトス様と姉さんを探す」
「かしこまりました」
私とリガスはオーク達が小型の相手をしている間にディング宅に向かう事にした。
「では、気配を消して私の後に付いてきてください」
「分かった」
リガスは長生きしている魔族の為私の知らない事を沢山知っていた。それは戦闘面でもそうだろう。私は素直にリガスの言う事を聞き後をついていく事にした。
移動しながらも、オーク達の戦闘を見ていると、どうやら劣勢らしい。
何故かオークの人数が少ない。その為小型に攻撃が通らない様だ。
ディングがメインで攻撃をしているらしいが、やはり陽動が足りないのか小型の攻撃がディングにかなり集中している。
「リガス、何であの一回り大きいオークばかり執拗に小型は狙らっているの?」
「ふむ。あれはですね、小型が認知している範囲の中で一番珍しいスキルを使用したからですな」
「?」
ん? どう言う事なのか分からない……。
「モンスター達は、スキルの珍しい者を狙う習性があるんですよ」
「そうなの!? 知らなかった……」
「ほっほっほ。この事はあまり知られていませんな」
なら、アトス様が危ない! 私が動揺しているのが、分かったのかリガスが更に情報を提供してくれる。
「ただ、スキルを使用していないならモンスターに気づかれません」
「……でもいつアトス様がスキルを使用するか分からない!」
「その、アトス様のスキルは珍しいんですか?」
「うん。ランクが凄く高い」
「なるほど……少し急ぎますか」
私とリガスは更にスピードを速めてディング宅に向かったが、建物内には既にアトス様と姉さんは居なかった。
「アトス様! 姉さん!」
「……人の気配を感じませんね」
「どうしよ……」
二人が居ないことにより、どんどん焦る気持ちが増してきた。
「もしかしたら、お嬢さんを探す為に村を探し回っているかもしれませんね」
「うん。村を探そう!」
「かしこまりました」
リガスはこんな状況だが、余裕ある態度で私に頭を下げて了承した。
ディング宅を出て村を歩き回り、再度リガスが囚われて居た建物まで確認したが、アトス様と姉さんを見つける事が出来なかった……。
そして、再びオーク族と小型が戦闘している場所まで来て見ると……。
「居た!! リガス! あそこにアトス様と姉さんが居る!」
「ほっほっほ。良かったですね。お姉さんはあの方ですね。似ているから分かります。アトス様と言う方はあの人間族の子供ですかな?」
「そう! 見た目は子供に見えるけど私達より年上だよ!」
二人を見つけた事により、少し心に余裕が出てきた。
「リガス! 私は二人に合流するから、あなたは逃げて良いよ!」
「ほっほっほ。お嬢さん改めて聞きましょう。私に何か出来る事はありませんか?」
リガスは口調は笑っているが表情は真剣そのものだ。
「……いいの?」
「何がですかな?」
「……アトス様と姉さんを助けるの手伝って!」
「ほっほっほ。かしこまりました。ただし条件がございます」
「なに?」
「私は根っからの執事体質でしてね……。ご主人様の為に尽くすのが生きがいなのです。良ければお嬢さん、私のご主人様になってくれませんか?」
私がご主人様?!
「え? でも、なる理由が無いよ?」
「いえいえ、あのままでしたら私は奴隷にされていたか、野たれ死んでいたのですから、お嬢さんは命の恩人です」
少し前にも、リガスは同じ様な事を言っていた。私としては自分自身と重ねてしまったので、勝手に助けただけなのだが……。
「リガスがそれでいいなら。私の執事になって、私達を助けて!」
「かしこまりました。チル様……」
そして、リガスは目にも止まらないスピードで小型に向かって走り出した。
「そうですな。お嬢さん今日は祭りか何かあるのですか?」
「ううん、聞いてない」
私はリガスと話し込み、そろそろアトス様と姉さんの所に戻ろうとした時に外が騒がしい事に気付いた。
「ちょっと、様子見に行ってくる」
「それでは、私もいきます」
そう言って、リガスは平然とした表情で牢屋を破壊して出てくる。
「……いつでも抜け出せたの?」
「お嬢さんのお陰ですよ」
リガスはこぼれる笑顔を見せる。この場におじさま好きの女子が居ればイチコロだっただろう。
「では。いきましょう」
「うん」
リガスと一緒に外に出た。そうすると、怒声の声は更に大きくなり、耳を澄ませてみると、どうやら戦闘を行っている模様だ。
「誰かが戦っておりますね」
「様子見にいってみよう」
「かしこまりました」
私とリガスは気配を消して戦闘が行われている場所に向かう。近づくに連れて誰が戦闘しているか見えてきた。どうやらオーク族とゴブリン族が戦っている様だ。
「ほっほっほ。あの一回り大きいオーク以外は大したことない者ばかりですな」
私から見たら、オーク族の方は全員凄く見えるが、リガスから見たらそうでも無いらしい。
「アトス様と姉さんを探さないと」
「私も手伝いますよ」
二人して移動を試みようとした際にリガスが何かに反応する。
そして、少し遅れて私も反応する。
「「ッ!?」」
何かがこちらに向かってくる気配を感じて、気配の方に顔を向ける。
「どうやら、モンスターがこちらに向かっておりますな」
「やっぱり?」
「オーク達は気付いて無いようですが、ゴブリン達は気付いているみたいです」
ゴブリン達の方に耳を澄ませてみる。
「皆さん、目的完了です!! よくやりましたね!! 全員逃げる準備を!」
グダがゴブリン達に声を張り上げて逃げる様に指示している。
「お嬢さん、どうやら来たようですよ」
リガスの言葉に合わせて茂みから小型が現れる。
「小型……」
「そうですね。小型の中でも、まだ小さい様に見えますな」
「リガスは、小型倒せる?」
「流石に一人では倒せませんね」
小型は、どうやらディングを執拗に狙っている。
この結果もゴブリンの作戦通りなのかは不明だが、ディング達オーク族が小型に応戦している間にゴブリン達は村から逃げ出した。
「お嬢さんどうしますか?」
「……アトス様と姉さんを探す」
「かしこまりました」
私とリガスはオーク達が小型の相手をしている間にディング宅に向かう事にした。
「では、気配を消して私の後に付いてきてください」
「分かった」
リガスは長生きしている魔族の為私の知らない事を沢山知っていた。それは戦闘面でもそうだろう。私は素直にリガスの言う事を聞き後をついていく事にした。
移動しながらも、オーク達の戦闘を見ていると、どうやら劣勢らしい。
何故かオークの人数が少ない。その為小型に攻撃が通らない様だ。
ディングがメインで攻撃をしているらしいが、やはり陽動が足りないのか小型の攻撃がディングにかなり集中している。
「リガス、何であの一回り大きいオークばかり執拗に小型は狙らっているの?」
「ふむ。あれはですね、小型が認知している範囲の中で一番珍しいスキルを使用したからですな」
「?」
ん? どう言う事なのか分からない……。
「モンスター達は、スキルの珍しい者を狙う習性があるんですよ」
「そうなの!? 知らなかった……」
「ほっほっほ。この事はあまり知られていませんな」
なら、アトス様が危ない! 私が動揺しているのが、分かったのかリガスが更に情報を提供してくれる。
「ただ、スキルを使用していないならモンスターに気づかれません」
「……でもいつアトス様がスキルを使用するか分からない!」
「その、アトス様のスキルは珍しいんですか?」
「うん。ランクが凄く高い」
「なるほど……少し急ぎますか」
私とリガスは更にスピードを速めてディング宅に向かったが、建物内には既にアトス様と姉さんは居なかった。
「アトス様! 姉さん!」
「……人の気配を感じませんね」
「どうしよ……」
二人が居ないことにより、どんどん焦る気持ちが増してきた。
「もしかしたら、お嬢さんを探す為に村を探し回っているかもしれませんね」
「うん。村を探そう!」
「かしこまりました」
リガスはこんな状況だが、余裕ある態度で私に頭を下げて了承した。
ディング宅を出て村を歩き回り、再度リガスが囚われて居た建物まで確認したが、アトス様と姉さんを見つける事が出来なかった……。
そして、再びオーク族と小型が戦闘している場所まで来て見ると……。
「居た!! リガス! あそこにアトス様と姉さんが居る!」
「ほっほっほ。良かったですね。お姉さんはあの方ですね。似ているから分かります。アトス様と言う方はあの人間族の子供ですかな?」
「そう! 見た目は子供に見えるけど私達より年上だよ!」
二人を見つけた事により、少し心に余裕が出てきた。
「リガス! 私は二人に合流するから、あなたは逃げて良いよ!」
「ほっほっほ。お嬢さん改めて聞きましょう。私に何か出来る事はありませんか?」
リガスは口調は笑っているが表情は真剣そのものだ。
「……いいの?」
「何がですかな?」
「……アトス様と姉さんを助けるの手伝って!」
「ほっほっほ。かしこまりました。ただし条件がございます」
「なに?」
「私は根っからの執事体質でしてね……。ご主人様の為に尽くすのが生きがいなのです。良ければお嬢さん、私のご主人様になってくれませんか?」
私がご主人様?!
「え? でも、なる理由が無いよ?」
「いえいえ、あのままでしたら私は奴隷にされていたか、野たれ死んでいたのですから、お嬢さんは命の恩人です」
少し前にも、リガスは同じ様な事を言っていた。私としては自分自身と重ねてしまったので、勝手に助けただけなのだが……。
「リガスがそれでいいなら。私の執事になって、私達を助けて!」
「かしこまりました。チル様……」
そして、リガスは目にも止まらないスピードで小型に向かって走り出した。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚
ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。
原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。
気が付けば異世界。10歳の少年に!
女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。
お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。
寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる!
勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう!
六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる!
カクヨムでも公開しました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる