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第3章
73話 山神様とレギュ
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「山神様! 今週のご飯来ましたよー」
「今日はなんだ?」
「猪の肉になります!」
私の記憶が無くなって、レギュと出会った日から約三年程経った。正確な年数は分からないが、恐らくそれくらいだ。
その間もレギュを生贄に捧げた村人達は律儀に一週間毎に食料をこの大穴に投げ落としている。
「山神様、今日はどの様に召し上がりますか?」
「肉の丸焼きだな」
「畏まりました! 今処理しますので少々お待ちを!」
この三年間で、レギュは大分明るくなった。
生贄に捧げられた当初は、やはりショックだったのか全然話などしなかった。私自身もそんなに話す方では無いらしく、しばらくの期間無言の大穴生活を送っていた。
レギュが大穴に降りてきてからの事を少し思い出してみる。
レギュとはしばらく、無言の生活を送っていたが、レギュの方から私に話しかけて来た。
「山神様、私は食べられるんですか?」
レギュの第一声だった。
「いや、特に人間を食べたいとは思わないな」
「そうですか。私の話を聞いてくれますか?」
全く興味が無いが他にする事も無いので聴くことにした。
「私はあの村の出身では無いんです」
レギュは、ポツリポツリと語り始める。
「私は両親の記憶が無いのですが、どうやらあの村の入り口に捨てられていたらしいんです」
「捨て子なのか?」
「はい……。ですが悲観な気持ちは無いです。だって親の事なんて覚えて無いんですもん」
レギュは私を見ながら苦笑いをしている。
「あの村に拾われてからは、子供の居ない老夫婦に育てられました。とても愛情を注いで育てられましたが、五年前に二人とも事故で亡くなってしまいました」
「それは、残念だったな……」
「はい……。そこからですかね? 村人達から少しずつですが距離を置かれ始めたのは」
苦笑いを止めて悲観な表情をするレギュ。
「元々、赤子だった私を村で育てるのも、相当反対だったらしくて、私を育ててくれた老夫婦が無理を言って引き取ったらしいです。ですが、その老夫婦が居なくなり、私は村のはみ出し者になってしまいました……」
私の記憶は、思い出部分がすっかり抜け落ちているが、何故か一般常識的なのは残っている。
そして、今回の様な場合、村などでは他人を安易に引き入れない事は良くある事だ。
それは食料問題だったり、自分達の村の血筋などに他人を入れたく無いなど様々だ。
「ある日、村長がモンスターが今後も現れない様にと山神様に生贄を捧げると言い出しました。もちろん村人達は自分の子供が生贄に捧げられるのはゴメンと言わんばかりに、私が生贄になるべきだという声が多数上がり、反対も無かった為私が生贄になりました……」
「そうか。だからこの大穴に降ろされてきたんだな」
「はい……」
私は何故そんな行動を取ったのか分からないが、レギュの頭を優しく撫でてあげた。
そして、私自身も何故か懐かしい感覚がする。
「!?」
レギュは最初驚いた顔をしていたが、しばらく撫でていると目を細め嬉しそうにしている。
それからレギュは徐々に話す様になり、私を慕う様になって今に至る。
「山神様! 下処理終わりました! 火の準備お願いします」
「あぁ」
私は拳から炎を生み出す。私のスキル能力は拳に炎を付与する事が出来る。なので肉を焼く時などは私のスキルを使用して焼く。
「わー! やっぱり山神様凄いです!」
レギュは私がスキルを使うと毎回パチパチと拍手をしてくれる。
「そろそろ、いいだろう。食べよう」
「山神様の肉料理はメチャクチャ美味しいです!」
二人して食べ進める。食料は村人達が大穴に投げ入れた物しか無い為少しずつしか食べられないのが残念だ。
今の所は一度も忘れずに食料を投げ入れてくれるが、それが止まれば直ぐに私達二人は倒れるだろう。
この大穴は水だけは沸いている為水分には困らないが食料が一切ない事が難点だ……
「山神様、今日はどうしますか?」
「そうだな、また穴掘りだな」
「分かりました!」
この三年間で大穴から出ようと色々試したが、やはり深すぎて登ったとしても途中で力尽きてしまったり、滑ったりと、とてもじゃないが自力で登り切るのは難しそうだ。
なので、次にこの大穴を少しずつ横に穴を掘ってみようと思い、三年を掛けて掘り進めている。
大分長い距離を掘り進めているが、芳しい結果は出ていない。
「山神様は、そこで座っていて下さい!」
レギュは腕を捲り上げて穴掘りを行なっている。
レギュは私の事を神聖化している為、私に力仕事系をやらせない様に常に率先して穴を掘る。少しでも私が穴を掘ろうとすると慌てて止めに入り自ら穴を掘る。
単純に横穴を掘っている訳では無く階段みたいに掘り進めて少しづつだが上にも掘り進めているのだ。
後どれくらいで地上に着くか想像も付かないが、やらないよりはマシだろ。
「レギュ、疲れたら代わるぞ?」
「とんでもない! 私が掘りますので山神様は見ててください!」
そんなこんなで、私達の最近の一日の過ごし方は、穴掘りのみである。
掘る道具も無い為約三年程掘っているが地上まではまだまだ。
だが、私は地上に出て、たまに夢や頭に浮かんでくる人間族の男の子の正体を探したいと思っている。
「今日はなんだ?」
「猪の肉になります!」
私の記憶が無くなって、レギュと出会った日から約三年程経った。正確な年数は分からないが、恐らくそれくらいだ。
その間もレギュを生贄に捧げた村人達は律儀に一週間毎に食料をこの大穴に投げ落としている。
「山神様、今日はどの様に召し上がりますか?」
「肉の丸焼きだな」
「畏まりました! 今処理しますので少々お待ちを!」
この三年間で、レギュは大分明るくなった。
生贄に捧げられた当初は、やはりショックだったのか全然話などしなかった。私自身もそんなに話す方では無いらしく、しばらくの期間無言の大穴生活を送っていた。
レギュが大穴に降りてきてからの事を少し思い出してみる。
レギュとはしばらく、無言の生活を送っていたが、レギュの方から私に話しかけて来た。
「山神様、私は食べられるんですか?」
レギュの第一声だった。
「いや、特に人間を食べたいとは思わないな」
「そうですか。私の話を聞いてくれますか?」
全く興味が無いが他にする事も無いので聴くことにした。
「私はあの村の出身では無いんです」
レギュは、ポツリポツリと語り始める。
「私は両親の記憶が無いのですが、どうやらあの村の入り口に捨てられていたらしいんです」
「捨て子なのか?」
「はい……。ですが悲観な気持ちは無いです。だって親の事なんて覚えて無いんですもん」
レギュは私を見ながら苦笑いをしている。
「あの村に拾われてからは、子供の居ない老夫婦に育てられました。とても愛情を注いで育てられましたが、五年前に二人とも事故で亡くなってしまいました」
「それは、残念だったな……」
「はい……。そこからですかね? 村人達から少しずつですが距離を置かれ始めたのは」
苦笑いを止めて悲観な表情をするレギュ。
「元々、赤子だった私を村で育てるのも、相当反対だったらしくて、私を育ててくれた老夫婦が無理を言って引き取ったらしいです。ですが、その老夫婦が居なくなり、私は村のはみ出し者になってしまいました……」
私の記憶は、思い出部分がすっかり抜け落ちているが、何故か一般常識的なのは残っている。
そして、今回の様な場合、村などでは他人を安易に引き入れない事は良くある事だ。
それは食料問題だったり、自分達の村の血筋などに他人を入れたく無いなど様々だ。
「ある日、村長がモンスターが今後も現れない様にと山神様に生贄を捧げると言い出しました。もちろん村人達は自分の子供が生贄に捧げられるのはゴメンと言わんばかりに、私が生贄になるべきだという声が多数上がり、反対も無かった為私が生贄になりました……」
「そうか。だからこの大穴に降ろされてきたんだな」
「はい……」
私は何故そんな行動を取ったのか分からないが、レギュの頭を優しく撫でてあげた。
そして、私自身も何故か懐かしい感覚がする。
「!?」
レギュは最初驚いた顔をしていたが、しばらく撫でていると目を細め嬉しそうにしている。
それからレギュは徐々に話す様になり、私を慕う様になって今に至る。
「山神様! 下処理終わりました! 火の準備お願いします」
「あぁ」
私は拳から炎を生み出す。私のスキル能力は拳に炎を付与する事が出来る。なので肉を焼く時などは私のスキルを使用して焼く。
「わー! やっぱり山神様凄いです!」
レギュは私がスキルを使うと毎回パチパチと拍手をしてくれる。
「そろそろ、いいだろう。食べよう」
「山神様の肉料理はメチャクチャ美味しいです!」
二人して食べ進める。食料は村人達が大穴に投げ入れた物しか無い為少しずつしか食べられないのが残念だ。
今の所は一度も忘れずに食料を投げ入れてくれるが、それが止まれば直ぐに私達二人は倒れるだろう。
この大穴は水だけは沸いている為水分には困らないが食料が一切ない事が難点だ……
「山神様、今日はどうしますか?」
「そうだな、また穴掘りだな」
「分かりました!」
この三年間で大穴から出ようと色々試したが、やはり深すぎて登ったとしても途中で力尽きてしまったり、滑ったりと、とてもじゃないが自力で登り切るのは難しそうだ。
なので、次にこの大穴を少しずつ横に穴を掘ってみようと思い、三年を掛けて掘り進めている。
大分長い距離を掘り進めているが、芳しい結果は出ていない。
「山神様は、そこで座っていて下さい!」
レギュは腕を捲り上げて穴掘りを行なっている。
レギュは私の事を神聖化している為、私に力仕事系をやらせない様に常に率先して穴を掘る。少しでも私が穴を掘ろうとすると慌てて止めに入り自ら穴を掘る。
単純に横穴を掘っている訳では無く階段みたいに掘り進めて少しづつだが上にも掘り進めているのだ。
後どれくらいで地上に着くか想像も付かないが、やらないよりはマシだろ。
「レギュ、疲れたら代わるぞ?」
「とんでもない! 私が掘りますので山神様は見ててください!」
そんなこんなで、私達の最近の一日の過ごし方は、穴掘りのみである。
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