過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
74 / 492
第3章

73話 山神様とレギュ

しおりを挟む
「山神様! 今週のご飯来ましたよー」
「今日はなんだ?」
「猪の肉になります!」

 私の記憶が無くなって、レギュと出会った日から約三年程経った。正確な年数は分からないが、恐らくそれくらいだ。
 その間もレギュを生贄に捧げた村人達は律儀に一週間毎に食料をこの大穴に投げ落としている。

「山神様、今日はどの様に召し上がりますか?」
「肉の丸焼きだな」
「畏まりました! 今処理しますので少々お待ちを!」

 この三年間で、レギュは大分明るくなった。
 生贄に捧げられた当初は、やはりショックだったのか全然話などしなかった。私自身もそんなに話す方では無いらしく、しばらくの期間無言の大穴生活を送っていた。

 

 レギュが大穴に降りてきてからの事を少し思い出してみる。
 レギュとはしばらく、無言の生活を送っていたが、レギュの方から私に話しかけて来た。

「山神様、私は食べられるんですか?」

 レギュの第一声だった。

「いや、特に人間を食べたいとは思わないな」
「そうですか。私の話を聞いてくれますか?」

 全く興味が無いが他にする事も無いので聴くことにした。

「私はあの村の出身では無いんです」

 レギュは、ポツリポツリと語り始める。

「私は両親の記憶が無いのですが、どうやらあの村の入り口に捨てられていたらしいんです」
「捨て子なのか?」
「はい……。ですが悲観な気持ちは無いです。だって親の事なんて覚えて無いんですもん」

 レギュは私を見ながら苦笑いをしている。

「あの村に拾われてからは、子供の居ない老夫婦に育てられました。とても愛情を注いで育てられましたが、五年前に二人とも事故で亡くなってしまいました」
「それは、残念だったな……」
「はい……。そこからですかね? 村人達から少しずつですが距離を置かれ始めたのは」

 苦笑いを止めて悲観な表情をするレギュ。

「元々、赤子だった私を村で育てるのも、相当反対だったらしくて、私を育ててくれた老夫婦が無理を言って引き取ったらしいです。ですが、その老夫婦が居なくなり、私は村のはみ出し者になってしまいました……」

 私の記憶は、思い出部分がすっかり抜け落ちているが、何故か一般常識的なのは残っている。

 そして、今回の様な場合、村などでは他人を安易に引き入れない事は良くある事だ。

 それは食料問題だったり、自分達の村の血筋などに他人を入れたく無いなど様々だ。

「ある日、村長がモンスターが今後も現れない様にと山神様に生贄を捧げると言い出しました。もちろん村人達は自分の子供が生贄に捧げられるのはゴメンと言わんばかりに、私が生贄になるべきだという声が多数上がり、反対も無かった為私が生贄になりました……」
「そうか。だからこの大穴に降ろされてきたんだな」
「はい……」

 私は何故そんな行動を取ったのか分からないが、レギュの頭を優しく撫でてあげた。
 そして、私自身も何故か懐かしい感覚がする。

「!?」

 レギュは最初驚いた顔をしていたが、しばらく撫でていると目を細め嬉しそうにしている。

 それからレギュは徐々に話す様になり、私を慕う様になって今に至る。




「山神様! 下処理終わりました! 火の準備お願いします」
「あぁ」

 私は拳から炎を生み出す。私のスキル能力は拳に炎を付与する事が出来る。なので肉を焼く時などは私のスキルを使用して焼く。

「わー! やっぱり山神様凄いです!」

 レギュは私がスキルを使うと毎回パチパチと拍手をしてくれる。

「そろそろ、いいだろう。食べよう」
「山神様の肉料理はメチャクチャ美味しいです!」

 二人して食べ進める。食料は村人達が大穴に投げ入れた物しか無い為少しずつしか食べられないのが残念だ。
 今の所は一度も忘れずに食料を投げ入れてくれるが、それが止まれば直ぐに私達二人は倒れるだろう。
 この大穴は水だけは沸いている為水分には困らないが食料が一切ない事が難点だ……

「山神様、今日はどうしますか?」
「そうだな、また穴掘りだな」
「分かりました!」

 この三年間で大穴から出ようと色々試したが、やはり深すぎて登ったとしても途中で力尽きてしまったり、滑ったりと、とてもじゃないが自力で登り切るのは難しそうだ。
 なので、次にこの大穴を少しずつ横に穴を掘ってみようと思い、三年を掛けて掘り進めている。
 大分長い距離を掘り進めているが、芳しい結果は出ていない。

「山神様は、そこで座っていて下さい!」

 レギュは腕を捲り上げて穴掘りを行なっている。
 レギュは私の事を神聖化している為、私に力仕事系をやらせない様に常に率先して穴を掘る。少しでも私が穴を掘ろうとすると慌てて止めに入り自ら穴を掘る。

 単純に横穴を掘っている訳では無く階段みたいに掘り進めて少しづつだが上にも掘り進めているのだ。
 後どれくらいで地上に着くか想像も付かないが、やらないよりはマシだろ。

「レギュ、疲れたら代わるぞ?」
「とんでもない! 私が掘りますので山神様は見ててください!」

 そんなこんなで、私達の最近の一日の過ごし方は、穴掘りのみである。
 掘る道具も無い為約三年程掘っているが地上まではまだまだ。
 だが、私は地上に出て、たまに夢や頭に浮かんでくる人間族の男の子の正体を探したいと思っている。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。 同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。 そこでウィルが悩みに悩んだ結果―― 自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。 この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。 【一話1000文字ほどで読めるようにしています】 召喚する話には、タイトルに☆が入っています。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...