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第3章
67話 人間族の住処について
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「ディングちょっといいか?」
「どうした?」
「人間族の住処についてなんだが」
恐らく、ディングとグダの話している雰囲気的に、人間族の住処が一度崩壊した事を知らなそうだな……。
「俺達は三年前は、まだ人間族の住処に住んでいたんだ」
「お!? そうか! 魔族の奴隷は高く売れそうか?」
「奴隷の値段は分からないが、今は奴隷を買い取ってくれないかもしれない」
「ッ?! アトス様、それはどういう事でしょうか!?」
俺とディングの会話に、いきなりグダが入ってきた。
「人間族の住処にモンスターが攻めてきたんだよ」
「攻めてきたって言っても、あの要塞があれば大丈夫だろう?」
「そうですとも。あの大岩なら小型モンスターが何体来ようが平気ですとも」
やはり、あの大岩要塞を一度でも見た事がある者ならモンスターが攻めて来ても大丈夫だと思うだろう。
「確かにグダが言った通り小型ならどれだけ攻めてきても平気だが、中型が二体攻めて来たんだ」
「中型だと……?」
「中型ですか……?」
ディングとグダは驚き、固まってしまった。やはり、中型と言うのは珍しいらしく、あまり目撃されない様だ。
「中型二体によって人間族の住処である、あの大岩要塞は破壊された」
恐らく、純粋に中型二体だけで要塞が崩された訳では無いだろう。
きっと、小型達も次々に集まり沢山のモンスター達によって壊されたと、俺は考えている。
俺の説明に二人は驚いた様子で、こちらを見ている。
「アトス様、その後はどうなったんですか……?」
グダが望みを掛けて俺に聞く。
「分からない……。俺はこの子達を連れて逃げたから。だけど、逃げる途中にあの大岩が壊れたのはこの目でしっかり見た」
「そ、そんな……。魔族を売り払い、食料を手に入れる為に頑張ったのに……」
グダは膝から崩れ、膝立ちになる。
あの様子だと、ゴブリン族の食料は大分少なかったのだろう。ほとんどオークに食料が回ってしまっていたのか?
「一応、今の情報は三年前のものだから、今はどうなっているか分からない。だから一度人間族の住処に偵察した方がいいと思う」
「確かに…。グダよ、すぐ偵察組を編成して偵察させろ!」
「は、はい」
ディングの指示により、グダが慌てて外に出て行った。
「みっともない所を見せたな」
「いや、大丈夫だ」
「グダも、ゴブリン族の代表としてゴブリン共に食料を供給したい為、魔族を高く売ろうと算段していたから、アトスの言葉にショックを受けたのだろう」
「それじゃ、あの魔族は実際には悪い事は何もしてないのか?」
「あぁ、そうだな」
その話を聞いていた、チルは唇を噛み何かを我慢している様子だった。
恐らく、ますます自分達の境遇に魔族を重ねてしまったのだろう。
「アトスよ、良い情報をありがとう」
「いや、気にしないでいい」
「明日、何も無ければスキル儀式をしよう」
「あぁ、頼む」
「それじゃ、村長として俺もグダの所に行ってくるから、アトス達はゆっくりしていてくれ」
そう言って、ディングも早々とグダの所に向かっていった。
「アトス様、私はあの魔族逃がしたいです」
「私も私も!」
ディング達が居なくなった途端、チルとロピが口を開く。
「そうだな……。チルの好きにするといい」
「ありがとうございます。アトス様」
「ただし! 二人のスキル儀式が終わってからな」
「あはは、それは確かにー!」
「利用できる者は最大限利用すると言う事ですね。さすがアトス様です」
そう言うと、チルがいつもの様に俺に対して片膝を突いて祈る様なポーズを取る。
「チ、チルちゃーん、お姉ちゃんとの約束はどうしたのかなー?」
「……」
「嬉しいのは分かるけど、それはやめよーね?」
「……」
「お兄さん! お願い!」
「チル、ご飯にしようか」
「はい」
「──ッなんで!?」
俺の言葉にチルがすぐ反応した事に納得がいかないらしく、ロピは頬を大きく膨らませて俺の方を睨んでいる。
「いや、ロピがお願いしたじゃん!」
「でもでも、納得いかなーい!」
「姉さん、ご飯一緒に作ろう?」
「チルちゃーん、やっぱり好き!」
ロピがチルに抱き着く。
そして、チルはロピを引きづりながらキッチンに向かい、ディング宅に住み込みで働いている人の手伝いをしに行った。
先程の反応からディングは普通だったが、グダのあの慌てようは凄かったな。
だがグダもゴブリンの代表として村にいる他のゴブリン達に腹一杯ご飯を食べさせたいのだろう。
気持ちは分かるが、肝心のディングが気付いてないのか、気付いていて敢えてなのか分からないがゴブリン達には全然食料が行き渡っていない。
反乱しようにも、戦闘力の差があまりにも開きすぎていて出来ないだろうな……。
ディング一人でゴブリン達を一掃出来るかもしれないからな。グダも仲間を犠牲にしてまでオーク族に反乱はしないだろう。
ゴブリン達が村の為にしている生活面を豊かにする労働も、とても大切だと思うが、ディングはそこをあまり重要視していない様に見える。
この村にはあまり居るべきでは無いのかもしれない。
「どうした?」
「人間族の住処についてなんだが」
恐らく、ディングとグダの話している雰囲気的に、人間族の住処が一度崩壊した事を知らなそうだな……。
「俺達は三年前は、まだ人間族の住処に住んでいたんだ」
「お!? そうか! 魔族の奴隷は高く売れそうか?」
「奴隷の値段は分からないが、今は奴隷を買い取ってくれないかもしれない」
「ッ?! アトス様、それはどういう事でしょうか!?」
俺とディングの会話に、いきなりグダが入ってきた。
「人間族の住処にモンスターが攻めてきたんだよ」
「攻めてきたって言っても、あの要塞があれば大丈夫だろう?」
「そうですとも。あの大岩なら小型モンスターが何体来ようが平気ですとも」
やはり、あの大岩要塞を一度でも見た事がある者ならモンスターが攻めて来ても大丈夫だと思うだろう。
「確かにグダが言った通り小型ならどれだけ攻めてきても平気だが、中型が二体攻めて来たんだ」
「中型だと……?」
「中型ですか……?」
ディングとグダは驚き、固まってしまった。やはり、中型と言うのは珍しいらしく、あまり目撃されない様だ。
「中型二体によって人間族の住処である、あの大岩要塞は破壊された」
恐らく、純粋に中型二体だけで要塞が崩された訳では無いだろう。
きっと、小型達も次々に集まり沢山のモンスター達によって壊されたと、俺は考えている。
俺の説明に二人は驚いた様子で、こちらを見ている。
「アトス様、その後はどうなったんですか……?」
グダが望みを掛けて俺に聞く。
「分からない……。俺はこの子達を連れて逃げたから。だけど、逃げる途中にあの大岩が壊れたのはこの目でしっかり見た」
「そ、そんな……。魔族を売り払い、食料を手に入れる為に頑張ったのに……」
グダは膝から崩れ、膝立ちになる。
あの様子だと、ゴブリン族の食料は大分少なかったのだろう。ほとんどオークに食料が回ってしまっていたのか?
「一応、今の情報は三年前のものだから、今はどうなっているか分からない。だから一度人間族の住処に偵察した方がいいと思う」
「確かに…。グダよ、すぐ偵察組を編成して偵察させろ!」
「は、はい」
ディングの指示により、グダが慌てて外に出て行った。
「みっともない所を見せたな」
「いや、大丈夫だ」
「グダも、ゴブリン族の代表としてゴブリン共に食料を供給したい為、魔族を高く売ろうと算段していたから、アトスの言葉にショックを受けたのだろう」
「それじゃ、あの魔族は実際には悪い事は何もしてないのか?」
「あぁ、そうだな」
その話を聞いていた、チルは唇を噛み何かを我慢している様子だった。
恐らく、ますます自分達の境遇に魔族を重ねてしまったのだろう。
「アトスよ、良い情報をありがとう」
「いや、気にしないでいい」
「明日、何も無ければスキル儀式をしよう」
「あぁ、頼む」
「それじゃ、村長として俺もグダの所に行ってくるから、アトス達はゆっくりしていてくれ」
そう言って、ディングも早々とグダの所に向かっていった。
「アトス様、私はあの魔族逃がしたいです」
「私も私も!」
ディング達が居なくなった途端、チルとロピが口を開く。
「そうだな……。チルの好きにするといい」
「ありがとうございます。アトス様」
「ただし! 二人のスキル儀式が終わってからな」
「あはは、それは確かにー!」
「利用できる者は最大限利用すると言う事ですね。さすがアトス様です」
そう言うと、チルがいつもの様に俺に対して片膝を突いて祈る様なポーズを取る。
「チ、チルちゃーん、お姉ちゃんとの約束はどうしたのかなー?」
「……」
「嬉しいのは分かるけど、それはやめよーね?」
「……」
「お兄さん! お願い!」
「チル、ご飯にしようか」
「はい」
「──ッなんで!?」
俺の言葉にチルがすぐ反応した事に納得がいかないらしく、ロピは頬を大きく膨らませて俺の方を睨んでいる。
「いや、ロピがお願いしたじゃん!」
「でもでも、納得いかなーい!」
「姉さん、ご飯一緒に作ろう?」
「チルちゃーん、やっぱり好き!」
ロピがチルに抱き着く。
そして、チルはロピを引きづりながらキッチンに向かい、ディング宅に住み込みで働いている人の手伝いをしに行った。
先程の反応からディングは普通だったが、グダのあの慌てようは凄かったな。
だがグダもゴブリンの代表として村にいる他のゴブリン達に腹一杯ご飯を食べさせたいのだろう。
気持ちは分かるが、肝心のディングが気付いてないのか、気付いていて敢えてなのか分からないがゴブリン達には全然食料が行き渡っていない。
反乱しようにも、戦闘力の差があまりにも開きすぎていて出来ないだろうな……。
ディング一人でゴブリン達を一掃出来るかもしれないからな。グダも仲間を犠牲にしてまでオーク族に反乱はしないだろう。
ゴブリン達が村の為にしている生活面を豊かにする労働も、とても大切だと思うが、ディングはそこをあまり重要視していない様に見える。
この村にはあまり居るべきでは無いのかもしれない。
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